第25話(前編) ようこそプリンセス、俺たちの駱駝車へ(前編)
25話目です。
今回はクリスターク・イエローとなったシェルージェが、クレードや仲間たちと駱駝車(※馬の代わりに駱駝で動かす車)で交流する話などを書いています。
(※今回の話は前編と後編に分かれています)
<主な登場人物の紹介>
<クレード一行 計11人>
(宝石の輝士団クリスタルナンバーズ 3人)
◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)
・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。
持っている剣の名は「魔蒼剣」、盾の名は「アイオライトの盾」。
魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身できる。
自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。
◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)
・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。
馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。使う武器は槍(翠電槍他)と斧。愛馬の名はベリル号。
魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身できる。
ナプトレーマ王国(※1)ではシェルージェと二人っきりになり、彼女と楽しいひと時を過ごした。
◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)
・白い髪をしている新人音楽家で、ムーンマーメイド交響楽団の非常勤楽団員。2本の羽根が付いた帽子を被っている。
武器はハープと鞭。ハープの名は「ホワイトコーラルハープ」、鞭の名は「真珠貝の鞭」。
魔法の宝石グラン・ホワイトパールにより、クリスターク・ホワイトに変身できる。
父親のチャロックスキー(68歳)はムーンリアス全土で有名なピアニストである。
(ナンバーズの協力者たち 8人)
○ナハグニ・按司里(男・31歳)
・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。
○ウェンディ・京藤院(女・20歳)
・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身。公家の娘で柔道家。
○ホヅミ・鶴野浦(女・22歳)
・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。
○千巌坊(男・39歳)
・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。
○リンカ・白鳥森(女・22歳)
・ワトニカ将国サンナイ藩出身。津軽三味線を弾く新人音楽家。
○沖津灘(男・32歳)
・ワトニカ将国ヤハタ藩出身。ワトニカ大相撲の現役力士で、大関経験者。
△鵺洸丸・ススキ
<その他人物>
◎シェルージェ・クランペリノ(女・18歳)
・黄色い髪(※長髪)をしている女盗賊。
貴族の国サフクラント公国の前大公の孫娘だが、貴族の生活が嫌になり家出した。元盗賊の頭ロイズデンたちの力を借り、南のナプトレーマ王国にやって来た。
魔法の宝石により、クリスターク・イエローに変身できる。
「サンフラワーブーメラン」というブーメランを武器にする他、ナイフや投げナイフなども扱える。
一時的にオリンスと二人っきりになり、彼と楽しいひと時を過ごした。
この物語における重要人物の一人。
○レモン号(メス・4歳)
・シェルージェがオリンスと二人だけで行動している時、購入したメスのラクダ。
まだ買ったばかりだが、シェルージェはレモン号のことをとても気に入っている。
☆◎カミッシュ・Y・アルバーグン(男・32歳)
・異文明国家サンクレッセル連邦国の海軍将校で、階級は大尉。
海軍士官学校を卒業。
黒い髪をした戦艦の艦長で、特定危険生物(※2)から連邦国の海域を日夜防衛している。
指揮能力に優れ、操舵の技量もかなりのもの。しかし多くの物事に対してはとても不器用で、護衛用の拳銃もまともに扱えず、銃の代わりにカットラス(舶刀)を所持している。
しかしカットラス(舶刀)は科学が発達したサンクレッセルにおいて原始的な武器であるため、カットラス(舶刀)しか扱えないカミッシュ大尉のことを陰で馬鹿にする者も多い。
彼の名前の「Y」はミドルネームで、サンクレッセル人には皆同じようにミドルネームがある。
誕生日は8月12日。
この物語における重要人物の一人。
(☆:新キャラ)
<名前のみの登場>
△ヴェルトン博士(男・150歳)
・クレードの恩人で、クリスタークの戦士に変身できるようになる特殊な石「グラン・ジェムストーン」の開発者。魔法武装組織メタルクロノスの元一員。
△バーテッツ、シャリアンル、キャプテン・キャンサー、レジーヌ、アーバニオ
・メタルクロノスの者たち。
△セルタノ・リクゼストン(男・33歳)
・オリンスの親友でルスカンティア王国の騎士団員。現在は王族を守る親衛隊の地位に就いている。
△ゼランダル・リクゼストン(男・66→ 67歳)
・セルタノの父親で、セドルース村(※3)の村長。騎士の家系であるリクゼストン家の当主で、貴族の子爵でもある。
クレード一行に「イエロークォーツナイフ」を渡した。
誕生日は5月9日で67歳になった。
△イルビーツ・サウロザーン(男・35歳)
・ダールファン王国東部の騎士団を束ねる副騎士団長(三人いる副騎士団長の一人)。
行方不明になっていたシェルージェの捜索に協力するため、クレードや兵士たちと共にダールファン王国の東の国ナプトレーマ王国へとやって来た。
△キャプテン・ゼベルク(男・享年80歳)
・ナプトレーマ王国近海などを縄張りとしていた海賊の頭だったが、半年ほど前病により亡くなった。
生前は盗賊ロイズデンと手を組んでいた。
「黒鰐の舶刀」という舶刀「カットラス」を武器にしていたが、譲り受けたロイズデンは自分が持っていた「スカラベのケペシュ」、シェルージェへの手紙と一緒に舶刀を置いていった。
ピラミッド(※4)での戦いに勝利したクレードやシェルージェたちだが、シェルージェはクリスターク・イエローとなり、一度の戦闘でジュエル・アビリティ(※5)を2つ発動させた疲労などにより倒れてしまった。シェルージェを回復させるために、一行はアガデプトスの町(※6)の砦に立ち寄ることに。
回復魔法をかけたことによりシェルージェは次の日の朝目を覚まし、そして国王が待つアブジンベルノン神殿(※7)に彼女を連れて行くことになった。
ケルビニアン暦2050K年6月20日。
シェルージェと共に砦で朝食を食べたクレード一行はアガデプトスの町の砦の入り口で、
シェルージェ「お話があるっていうから、シェルージェちゃん来たよ」
クレード「ようこそ、ノーブルプリンセス(※8)」
「俺たちの駱駝車(※9)へ」
アンシー「歓迎しますよ、プリンセス・シェルージェ」
クレード「千巌坊、悪いが駱駝車の入り口を閉めるぞ」
千巌坊「まずはそちらだけで話を進めてくれ…私の紹介は後でいい…」
駱駝車を引くラクダたち「ブエーッ!」
千巌坊は自分たちの駱駝車を動かし、砦を出発した。
レモン号「プエー!」
ナプトレーマ兵(女性・イシスナイト)「シェルージェ様は大切なお話があるの」
「あなたのことは私が責任持って連れて行くから安心して」
レモン号「プッ!」
駱駝車で話をするシェルージェに代わり、女性兵士がラクダのレモン号を神殿まで連れて行くことになった。
またオリンスの愛馬ベリル号も兵士が連れて行くことに。
神殿へと進むクレードたちの駱駝車、その道中で、
オリンス「来てくれてすごく嬉しいよ、シェルージェちゃん…」
「それに俺が買った服を着てくれたなんて…」
シェルージェ「ご飯食べた後お着替えしてみたんだけど、これ動きやすくてすごくいいよ!」
「オリンスが買ってくれたこのTシャツやショートパンツとか気に入っちゃったよ」
「オリンス、本当にありがとね」
オリンス(にやけた顔で)「可愛いよ…最高だよ、シェルージェちゃん…」
「ああ…♡」
シェルージェは砦でオリンスが買ってくれた服装(※10)に着替え、駱駝車までやって来たようだ。
オリンス(にやけた顔で)「ああ…シェルージェちゃん…シェルージェちゃん♡」
シェルージェを見てにやけるオリンスに対しクレードたちは小声で、
アンシー「(またにやけてるわ…)」
「(ねぇ、オリンスって元からあんなに女性にだらしない人だったの?)」
リンカ「(おら、大人しくて真面目な人だと思ってただ…)」
ウェンディ「(押忍。ウチらもずっとそんな印象だったッスよ)」
クレード「(そういうことならお前に似てきたんじゃないのか、ナハグニ)」
ナハグニ「(何を申す!拙者のことは女子を愛する健全な男児といってくだされ!)」
沖津灘「(それにしてもかなりの煩悩たい。坊さんでもないオイでもはっきり分かるくらいたい)」
クレード「(よし、駱駝車を操作している千巌坊の代わりに、俺が魔蒼剣で喝を入れてやるか)」
ホヅミ「(今はぁそこまでぇしなくてもいいですよぉ)」
ここでシェルージェが、
シェルージェ「さっき砦で朝ごはん食べた時、軽くあいさつとかしたけど、改めてみんなのこと聞かせてよ」
クレード(心の中で)「(朝メシの時はオリンスが出しゃばったせいで、俺たちは大してシェルージェと話ができなかったからな)」
シェルージェ「青い髪の剣士さんがブルーに変身してたクレードさんで、羽根つきの帽子を被った白い髪の人がホワイトに変身していたアンシーちゃんでいいんでしょ?」
アンシー「はい。私がクリスターク・ホワイトのアンシー・ヒズバイドンでございます」
「よろしくお願いします」
シェルージェ「こちらこそよろしくね、アンシーちゃん」
アンシー「同じクリスタークの戦士として、これから頑張っていきましょうね」
シェルージェ「そうだね。すごい力を手に入れちゃったんだし、しっかりしないとね」
シェルージェ「そういえばアンシーちゃん」
「二人だけで行動していた時オリンスが言ってたけど、アンシーちゃんってあの有名なチャロックスキーさんの娘さんなんでしょ?」
アンシー「はい。おっしゃる通り私は彼の一人娘です」
シェルージェ「へぇ、そんな有名人の娘さんと会えるなんて感激だなぁ」
「シェルージェね、小さい時にチャロックスキーさんのピアノ、聞いたことがあるんだ」
「うまく言えないけど、すごく引き込まれる演奏だったよ」
アンシー「お父さんがシェルージェ様の前で演奏を!?」
シェルージェ「うん。あの時はシェルージェちゃんも含め、サフクラント中の貴族や国民たちが、シェルージェちゃん家が管理するクランターニャ音楽堂(※11)に集まってみんなで聴いたよ」
アンシー「そんなこともあったんですか…」
クレード「アンシー、お前は自分の父親の行動も知らないのか?」
アンシー「お父さんは有名なピアニストとして今もムーンリアスの各地に出向いているのよ」
「あまりに多忙だから、娘の私でさえ今どこの国や地域に行っているのか分からないくらいなの」
クレード「そうなると、これから旅先で偶然出会うことになるかもな」
シェルージェ「オリンスはクレードさんのことも話してたよ」
「魔蒼剣っていう青い剣で戦う強い剣士さんで、変身もできる人だって」
クレード「まあそういうことですよ、ノーブルプリンセス」
「オリンスが申したように、私めがクリスターク・ブルーに変身できるクレード・ロインスタイトでございます」
ここでシェルージェが、
シェルージェ「クレードさんにアンシーちゃん…あとはそれ以外の人たちか」
アンシー「彼らも私たちの大切な仲間なんですよ」
シェルージェ「でもあの人たちは変身できないんでしょ?」
「オリンスから少し聞いてるよ」
クレード「まあ、そういうことになりますが…」
シェルージェ「情けないなあ。シェルージェちゃんなんて一発で変身できたのに」
沖津灘「ハッハッハッ!ストレートに物を言うお姫様たい!」
リンカ(落ち込みながら)「でも情けないと言われたら、それまでだ…」
ウェンディ(落ち込みながら)「押忍…何だか知らないけど、グラン・ジェムストーンってウチらには無反応なんッスよ…」
ナハグニ(落ち込みながら)「うーむ、クレード殿たちとは2ヶ月くらい一緒に行動しておるのだが…」
ホヅミ「だけどぉ、ホヅミたちだってぇ、戦いとかでぇ手を抜いているわけじゃないんですよぉ」
クレード「それは十分わかっている」
「だから俺もオリンスもアンシーも、お前たちのことをまったく悪く思っていない」
オリンス(にやけた顔で)「ああ…シェルージェちゃん、シェルージェ♡」
オリンスは話に入ってくるわけでもなく、ただシェルージェに見惚れていた。
クレード「適正も含め、グラン・ジェムストーンはいつどこで誰を選ぶかまったく分からない」
「だからこればかりはもうどうしようもないと思っている」
アンシー「クレード、ジェムストーンの話は一旦いいから、まずはシェルージェ様に他のみんなをちゃんと紹介しましょうよ」
クレード「そうだな。ノーブルプリンセスにも仲間のことを聞いてもらうか」
アンシーがシェルージェに、
アンシー「シェルージェ様、変身はできなくても彼らは大切な仲間なんです」
「だからみんなのことも分かってあげてください」
シェルージェ「分かったよぉ。それじゃあ、みんなが誰だかシェルージェに教えてよぉ」
ナハグニ「承知いたしました!ではうちなー侍の拙者から!」
ナハグニ・ホヅミ・リンカ・沖津灘たち四人はシェルージェに自己紹介をした。
そしてウェンディがシェルージェに自己紹介を、
ウェンディ「押忍!ウチはウェンディ・京藤院ッス!」
「柔道が得意な公家の娘ッス!」」
シェルージェ「公家?」
「公家って確かワトニカの貴族だよね?」
ウェンディ「押忍!その通りッス、お姫様!」
「昔はそのまま「貴族」と呼ばれてたり、さらに大昔は「豪族」とも呼ばれてたりしたッスけど!」
シェルージェ「それにしても京藤院家って、どこかで聞いたことあるような…」
ウェンディ「押忍!わずかッスけど、京藤院家は大公様のサフクランドス家とも交流があるッス!」
シェルージェ「そうだ、サフクランドス家とも繋がりがあるから、聞いたことあるんだよ!」
ウェンディ「まあサフクランドス家は、ウチの京藤院家だけじゃなく、キョウノミヤ藩の藩主、平安鶯京家とも交流しているッスけどね…」
「でもウチの京藤院家だって公家の名家として、藩内ではよく知られているッスよ」
「さすがに藩主の平安鶯京家には及ばねぇッスけど、京藤院家は藩内の誰もが認める正真正銘の名家ッス!」
ここでホヅミがウェンディに、
ホヅミ「ちょっとぉウェンディさぁん」
ウェンディ「何ッスか、ホヅミさん」
ホヅミ「そうやってぇ、自分やお家のことをぉ特別だとぉ思っていることがぁ良くないんですよぉ」
ウェンディ「いやでもホヅミさん、ウチだって公家の娘ッスから誇りの一つや二つは…」
ホヅミ「だからぁそんな風にぃ特別だという考えがぁ積もり積もっていくからぁ、貴族の社会はぁ腐敗していくんですよぉ」
「ウェンディさんもぉ腐敗ぶりを嘆く前にぃ、自分の考えをぉ見直すべきですぅ」
ウェンディ「うーん…でもやっぱり実家の名が知られているほうが嬉しいッスよぉ…」
ホヅミ「一人一人がそういう考えをぉ捨てない限りぃ、社会全体が変わらないですぅ」
クレード(小声)「(ホヅミの奴、意外と鋭い指摘をするな)」
アンシー(小声)「(あの娘はワトニカ版のチェスといわれる「将棋」のプロよ)」
「(洞察力とかもないとそこまで強くなれないと思うわ)」
ここでシェルージェが、
シェルージェ「まあまあ、ウェンディちゃん、ホヅミちゃん」
「貴族の社会に嫌なところがあるのはシェルージェもよく分かるよぉ」
「シェルージェのお祖父ちゃんも名門公爵家の当主だからっていっつも偉そうにしてたし、周りの男爵家や子爵家の人たちもそのお祖父ちゃんにやたらヘコへコしていたしさあ」
「こんな偉い偉くないがはっきりしている貴族の社会にいたって楽しくなかったよ」
貴族の社会を否定するシェルージェではあったが、
シェルージェ「でも一般国民の人たちから感謝されることもいっぱいあったよ」
「シェルージェ、そういう良い部分を忘れちゃったから、あの時家出したんだろうなあ…」
シェルージェ「まあ貴族の話はもういいや。それよりも本題を聞かせてよ」
「自己紹介のためだけにシェルージェをここに呼んだんじゃないんでしょ?」
クレード「その通りだ。重要なのはここからだ」
クレードはシェルージェに対し口調を変えて話した。
クレード「オリンス、お前もいつまでもにやけてないで話に加われ」
オリンス「あ、ごめん。大事なことだからシェルージェちゃんにもちゃんと伝えないとね」
シェルージェ「大事なことってなあに?シェルージェにも深く関係あるの?」
クレード「ああ、ヴェルトン博士の言葉に従えば、クリスタークの戦士には2つの目的がある」
「一つはあらゆる魔獣たちと戦い、奴らを駆除すること」
「そしてもう一つは…」
(※後編へ続きます)




