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第21話 誘拐犯たち

21話目です。今回は第1話に登場したあるキャラたちが再登場します。

それと「佐渡島の金山」の世界遺産登録、おめでとうございます。

きっとホヅミも喜んでいますよ。


<主な登場人物の紹介>


<クレード一行 計11人>

◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。

持っている剣の名は「魔蒼剣」、盾の名は「アイオライトの盾」。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身できる。

自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。

◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)

・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。

馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。使う武器は槍(翠電槍他)と斧。愛馬の名はベリル号。

魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身できる。

(別行動中の仲間たち)

◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)

・白い髪をしている新人音楽家で、ムーンマーメイド交響楽団の非常勤楽団員。

魔法の宝石グラン・ホワイトパールにより、クリスターク・ホワイトに変身できる。

○ホヅミ・鶴野浦つるのうら(女・22歳)

・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。

日本の世界遺産「佐渡島の金山」(文化遺産 2024年登録)からイメージしたキャラ。

(※金山は第1話から20話までを書いた時点では、「暫定リスト掲載物件」だった)

○リンカ・白鳥森はくちょうもり(女・22歳)

・ワトニカ将国サンナイ藩出身。津軽三味線を弾く新人音楽家。

日本の世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」(文化遺産 2021年登録)からイメージしたキャラ。

△ナハグニ・鵺洸丸やこうまる・ウェンディ・ススキ・千巌坊せんがんぼう沖津灘おきつなだ


時鋼ときはがねの魔獣団メタルクロノス>

○キャプテン・キャンサー(男・158歳)

・元デスカット海賊団の船長である大海賊。

現在はメタルクロノスの幹部の一人。

金属の「亜鉛」と黄道十二星座の「蟹座」からイメージしたキャラで、またの名は「亜鉛の蟹」。

○レジーヌ・アラストロ(女・7歳)

・メタルクロノスの幹部の一人。真鍮でできた猫の仮面を被っている。

首領であるバーテッツ(男・150歳)の娘ではあるが、血の繋がりはない。

合金の「真鍮」と十二支に入る可能性もあった「猫」からイメージしたキャラで、またの名は「真鍮の猫」。

☆○アーバニオ・アラストロ(男・5歳)

・メタルクロノスの幹部の一人。洋白でできた仮面を被っている。

バーテッツ(男・150歳)の息子で、レジーヌの弟であるが、父や姉との間に血の繋がりはない。

合金の「洋白」と13星座の「へびつかい座」からイメージしたキャラで、またの名は「洋白の蛇使い」。

誕生日は11月30日。

☆○第11刻徒 マグネシウムのへび

・「刻徒こくと」と呼ばれるメタルクロノスの幹部の一人。

人間の言葉を喋る大蛇。魔法実験により生み出された怪物。

アーバニアを慕っているが、彼からはあまり相手にされていない。

軽金属の「マグネシウム」と十二支の「巳」からイメージしたキャラ。

(☆:新キャラ)


<その他登場人物>

△シェルージェ・クランペリノ(女・18歳)

・黄色い髪をしている女の子。

貴族の国サフクラント公国の前大公の孫娘だが、なぜか南のナプトレーマ王国で目撃されるなど、いろいろと訳ありの人物。

この物語における重要人物の一人。

○盗賊の頭(男・47歳)

・ルシアという女盗賊と一緒にいる。

△ララーシャ・エルゴンジャルム(女・当時12歳)

・オリンスの初恋の相手。オリンスとは同郷で、小学校6年生の時同じクラスだった。

名前のみ登場。

ケルビニアン暦2050K年6月16日。

ここはナプトレーマ王国(※1)のラバプット市(※2)。

中世(※3)に造られた旧市街と、近代(※3)に造られた新市街が共存する大都市にアンシーたちは来ていた。


戦いの合間に休憩するアンシー・ホヅミ・リンカの三人。そして新市街のカフェで、

アンシー「ぶっ!!」

アンシーはリンカの一言で、飲んでいたお茶を吹き出した。

アンシー「ちょっと、リンカ!あなたに何言って…」

リンカ「アンシー、おらは本気で言ってるだ」

 「もしクレードさんに恋人や婚約者がいたとしても奪っちまうだ」

アンシー「リ、リンカ!そ、そんなことできるわけ…」

リンカ「おらは見ず知らずの人よりもアンシーが幸せになってほしいだ」

 「アンシー、クレードさんが好きならもっと積極的になるだ」

アンシー「リンカ!あたしは彼のことをそんな風には…」

ホヅミ「と言いつつもぉ、顔がぁ赤くなってますよぉ、アンシーさぁん」

アンシー「ほ、ほっといてよ!」


クレードのことを指摘されて動揺するアンシーだが、ここで話題を変え、

アンシー(動揺しながら)「そ、そうだ!あの緑の髪のオリンスはどんな人なのよ!?」

 「あ、あたしまだ出会ったばかりだから、あまり彼のこと知らなくて!」

リンカ(心の中で)「(アンシー、無理に話を逸らそうとしているだ…)」


オリンスのことを聞くアンシーにホヅミが、

ホヅミ「オリンスさんはぁルスカンティア王国のぉ元騎士団員ですぅ」

 「クレードさぁんの旅にお供するためぇ、物の怪たちとかとぉ戦うためぇ、旅に出ましたぁ」

アンシー(動揺しながら)「そ、その彼なんかどうなのよ!?誰か恋人とかいるわけぇ!?」

ホヅミ「いやぁ、オリンスさんはぁ最近全然恋をぉしてないみたいですぅ」

 「旅の途中オリンスさんからぁ、聞いたんですけどぉ、小寺小屋(※4)六年生の12歳の時ぃ、同じ組の女の子にぃ告白してぇ振られたらしいですぅ」

 「女の子にぃ振られたのがショックでぇ、オリンスさんはぁそれから恋をぉしてないそうですぅ」

アンシー(オリンスの話を聞いて落ち着いて)「そ、そうなんだ…」

リンカ「そういえばオリンスさんって今29歳だから、彼は17年も恋をしていないことになるだよ」

アンシー「じゅ、17年か…その間性欲とかがずっと溜まっていたら、それがどこかで爆発してしまいそうだわ…」



アンシーたちがカフェにいる頃、エネディナープ山塊(※5)で異なる2つの盗賊団を見つけたクレードやオリンス、兵士たちは岩陰に隠れながら、

ナプトレーマ兵①(小声)「(2つの異なる盗賊団、別々のグループみたいだが…)」

ナプトレーマ兵②(小声)「(先にいた奴らが13人、後から来たのが8人か…)」

ナプトレーマ兵①(小声)「(後の奴らは全員顔を布で隠している…それにラクダも連れていない…)」


ここでクレードが、

クレード(小声)「(俺たちはどうするんだ?両方のグループを相手にするのか?)」

ナプトレーマ兵①(小声)「(そうですね。盗賊同士の抗争となれば、ここは出向いたほうが良いでしょうな)」

ナプトレーマ兵②(小声)「(盗賊たちに捕まっている仲間たちもおります。抗争に巻き込まれれば彼らもさすがに危ないかもしれませんしね)」

クレード(小声)「(だが後からやって来た盗賊団(B)はその兵士たちを放すように言ってたぞ)」

 「(向こう(盗賊団B)は向こうで、気にかけているんじゃないのか?)」

 「(俺はもう少しだけ様子を見てもいいと思うが…)」

ナプトレーマ兵②(小声)「(何を言っているんですか)」

 「(騎士団が盗賊の言うことを鵜吞みになどするものですか)」

 「(こうなれば我々も出向き、奴らを止めてみせますよ)」

クレード(小声)「(そうか……)」


そして、盗賊団たちは、

盗賊の頭(盗賊団Bの)「頼むぜルシア、向こうは13人いるようだが、お前一人でも大丈夫だろ」

ルシア(盗賊団Bの一人)「任せてよ、おかしら!ルシアちゃん、ブーメランで暴れちゃうんだから!」

オリンス(心の中で)「(ルシアちゃんっていうのか…なんか可愛いな…♡)」

 「(ああ…ルシアちゃん…♡)」

オリンスは岩陰から盗賊団(B)のルシアを見てひとりときめいていた。気持ち悪いくらいに。


女盗賊(別の盗賊団(A)の一人)「はっ!調子に乗るんじゃないよ、小娘が!」

盗賊①(盗賊団A)「それじゃあねさん、その生意気な小娘から袋にしてやりましょうぜ」

女盗賊(盗賊団A)「そうだね。やっちまいな!」

ナプトレーマ兵③(盗賊団Aに倒された)「うっ…くっ…」

異なる盗賊団同士の抗争が始まろうとしたその時、


ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「動くな、盗賊ども!」

 「全員武器を下ろせ!そしてこちらに従え!」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「やれやれ騎士団かよ…こいつはまた面倒だな…」

ルシア(盗賊団B)「騎士団!?やばっ!」

女盗賊(盗賊団A)「チッ!騎士団相手に連戦はきついね!」

 「お前たち、ここは退くよ!」

盗賊①(盗賊団A)「へ、へい!」

盗賊団(A)は自分たちのラクダに乗り逃げて出した。


しかし騎士団は、

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「待て!見す見す逃がしはせん!」

ナプトレーマ兵④(ファラオナイト)「ここは俺たちに任せてくれ!奴らを捕らえ知っていることを吐かせてやる!」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「分かった!そっちは任せたぞ!」

ナプトレーマ兵18人のうち、15人が盗賊団(A)を追いかけた。


逃げ出す盗賊団(A)。しかしもう一方の盗賊団(B)は騎士団から逃げることもなく、その場で立ち止まった。

ルシア(お頭の近くで、小声で)「(お、お頭…シェ…ルシアちゃんたちも逃げようよ)」

盗賊の頭(小声で)「(ルシア、ここは待つんだ…)」


動かない盗賊団(B)、その間に倒れている兵士たちを介抱した。

ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「しっかりしろ、大丈夫か?」

ナプトレーマ兵③(盗賊団Bに倒された)「あっ…うっ…」

ナプトレーマ兵⑤(女性・聖侶)「今回復魔法をかけてあげますからね」


そして盗賊団(B)に兵士が話しかけ、

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「そちらは逃げ出させんというのか?」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「まあ用件ぐらいは聞いてやるよ」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「ならばそちらにいるルシアさんという女性を我々に引き渡してほしい」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「何でだ?」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「我々ナプトレーマ王国騎士団の中に北のサフクラント公国出身者がいてな」

ルシア「!?」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「その者は少し前にピラミッド(※6)の付近で前大公の孫娘、シェルージェ・クランペリノ様らしき女性を目撃した」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「それが何だっていうんだよ?」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「目撃した女性兵士の証言から、シェルージェ様は今盗賊団と共に行動している可能性が高いと思われる」

 「そのため我々は女の盗賊を見かけ次第保護し、シェルージェ様本人かどうかを確かめさせてもらっている」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「うちのルシアがそのシェルージェ様だっていうのかい?」

ルシア(心の中で慌てている)「(あわわ…)」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「可能性は0ではないだろう。とにかく彼女を引き渡してほしいのだが…」


盗賊の頭(盗賊団Bの)「ならルシア本人に決めてもらうか…」

ルシア「えっ!?」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「どうするルシア、騎士団についていくか?」

ルシア「や、やだよ!おかしらたちとこんな所でお別れしたくないよ!」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「そっか…俺は一つのチャンスだったと思うけどな…」

クレード(心の中で)「(チャンスか…だとしたらやはり彼女は…)」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「悪いな、騎士団」

 「ルシアに投降の意思はねぇってさ」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「そうか…だが我々も兵士として仕事をしなければならないのでな…」


そう言ってナプトレーマ兵たちは鎌型の剣「ケペシュ」を手に取った。

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「悪いがお前たちを倒してでも彼女を連れていく」

ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「こちらも退くわけにはいかないのだ!」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「はっ、こっちの意思も関係なく力づくってわけか」

 「何でも無理やり奪おうっていうなら、お前ら騎士団も野盗と変わらねぇぞ」

クレード(心の中で)「(そうだな…俺も少し共感できるよ…)」

オリンス(心の中でときめいて)「(ルシアちゃん…ルシアちゃん…♡)」


ルシア「おかしら!こうなったらシェ…ルシアちゃん戦っちゃうんだから!」

盗賊の頭(盗賊団Bの)「大丈夫だ。ここは俺たちが退くぞ」

ルシア「えーっ!」

盗賊の頭(心の中で)「(俺の目に狂いがなければ、一緒にいる青い髪の剣士は気づいたはずだ…)」


盗賊団(B)の一人が頭とルシアに話しかけ、

盗賊②(小声)「(おかしら、ルシア、ここはアレを使う)」

 「(グラスとマスクを急いで付けてくれ)」

盗賊の頭(小声)「(分かった。頼む)」

ルシア(小声)「(ちぇ…)」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「待て!逃がしはせんぞ!」

盗賊②(盗賊団B)「これでも食らいな、騎士団!」

そう言うと盗賊②は丸い玉を投げつけた。

地面に落ちた丸い玉、すると玉から大量の煙と粒が吹き出した。

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「くっ!小賢しい真似をしてくれ…」

 「バクシュッ!」

 「け、煙だけじゃない…胡椒も大量に混じってる…」


クレード「カラーチェンジ&クリスタルオン…」

大量の煙や胡椒の粒が周りを包む中、クレードはクリスターク・ブルーに変身した。

そして兵士から話しかけられ、

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「そ、そのマスクとスーツ姿…」

 「変身したクレード殿か…」

ブルー「マスク姿の俺に煙や胡椒は通じない」

 「あの盗賊団(B)は俺が追いかける」

ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「た、頼んだぞ…」

 「ゴホ!ゴホ!」


ブルー「オリンス、お前もグリーンに変身しろ」

ブルーはオリンスにそう言ったが、彼はその場にいなかった。

ブルー「オリンス?」

 「あいつ、まさかすでに…」


騎士団から逃げる盗賊団(B)たち。

盗賊②「かしら、ここは二手に分かれようぜ」

盗賊の頭「分かった。お前ら6人は先にアジトに戻ってくれ」

 「俺とシェルージェ(※ルシアのこと)はこの辺りであの剣士を待つ」

シェルージェ「えっ!?おかしら、なんで今シェルージェちゃんの名を!?」

盗賊の頭「こっちも最後くらい、名前で呼びたいからな…」

シェルージェ「な、何言って!?」

盗賊②「シェルージェ、一緒に盗賊をやれて楽しかったぜ」

盗賊③(盗賊団B)「元気でな、シェルージェ」

盗賊④(盗賊団B)「お前と過ごした3年間は忘れねぇよ」

シェルージェ「な、何よ!?急にみんなして…」

盗賊の頭「心配すんな、もうじき迎えが来るはずだ」

シェルージェ「む、迎えって、何!?」

盗賊⑤(盗賊団B)「じゃあな、シェルージェ」

シェルージェ「あっ、ちょっと!?」

6人の盗賊たち(盗賊団B)はシェルージェにそれぞれ別れのあいさつをして岩陰に消えていった。


シェルージェ「もう、何なのよ、みんなして…」

盗賊の頭「お前の盗賊稼業は今日で終わりかもしれねぇってことだ」

シェルージェ「えっ、それどういう意味?」


その時、かしらとシェルージェたちの後方から馬の足音が聞こえた。

オリンス「うおおっ!ルシアちゃーん!」

ベリル号「ヒッ!ヒーッ!」

シェルージェ(※ルシアのこと)「げっ!何、あいつ!?」

 「おかしらが言ってた、お迎えってあいつのこと!?」

盗賊の頭「いや、俺は青い髪の剣士が来ると思ったんだが…」

オリンス「そこにいたんだね、ルシアちゃん!君の騎士ナイトが迎えに来たよー!」

盗賊の頭「あいつ、まさかシェルージェに一目惚れしちまったのか?」

オリンス「キャメルに変身するんだ、ベリル号!」

 「ラクダの足なら、ルシアちゃんも楽に連れて行けるはず!」

ベリル号「ヒッ?」

オリンス「カラーチェンジ&クリスタルオン!」

オリンスはクリスターク・グリーンに変身した。


続いて、

グリーン「エメラルド・アビリティ!キャメル・ベリル号!」

ベリル号の姿が馬から駱駝に変わった。

キャメル・ベリル号「ブッ!?」


それを見たかしらとシェルージェは、

盗賊の頭「妙なマスクとスーツ姿、それに馬を駱駝の姿に変えただと!?」

 「何なんだ、あいつは!?」

シェルージェ「変!何もかも変だよ!」

グリーン「さあ、ルシアちゃん!俺と出かけよう!」

そう言ってグリーンはシェルージェ(※ルシアのこと)の体を掴み、持ち上げた。

シェルージェ「何!何!何っ!?」

グリーン「キャメル・ベリル号!まっすぐ突き進むぞ!」

キャメル・ベリル号(なんか乗り気ではない)「ブェ…ブゥ…」

グリーン(心の中で)「(17年ぶりだ…小学校6年生の時ララーシャちゃんに振られた時以来だ…)」

 「(俺は今、ルシアちゃんに恋してる!)」

グリーンは久しぶりに恋を感じたが、グリーンに掴まれたシェルージェは嫌がり、

シェルージェ「離して!離してよーっ!」

キャメル・ベリル号に乗ったグリーンはシェルージェを連れどこかへ去っていった。


盗賊の頭「ったく…」

 「こんなの誰が予想できるかよ…」

盗賊の頭はあっけにとられていた。


そこにブルー(クレード)も遅れてやって来た。

盗賊の頭(冷汗をかきながら)「青いマスクとスーツ姿…」

 「さっきの緑の奴のお仲間ってことか?」

ブルー「変身したオリンスのことか?」

 「あいつはどこへ行った?」

盗賊の頭「緑色に光るラクダに乗って走って行ったよ…」

 「シェルージェを連れてな…」

ブルー「シェルージェ…やはりあのルシアという女盗賊はシェルージェ・クランペリノ様だったか」

盗賊の頭「どこで気がついた?」

ブルー「あんたが「チャンス」という言葉を使ったからだ」

 「彼女を危険な目に遭わさず、無傷で保護してほしかったからそう言ったんだろ?」

盗賊の頭「大した洞察力だ…お前みたいなつわものがあの場にいたから俺も賭けてみたんだがな…」

ブルー「俺が兵士たちと一緒にいた剣士だって分かっているようだな」

 「まあいい、とにかく俺はシェルージェ様を連れたグリーン(オリンス)を追う」


盗賊の頭「俺は前大公の孫娘であるシェルージェを誘拐した主犯者だぜ…」

 「俺のことはどうでもいいのか?」

ブルー「俺たちの一番の目的はシェルージェ様の保護だ。捜索班からも場合によっては盗賊たちを見逃していいとも聞いている」

 「尤も誘拐の主犯者となれば話は別だがな」

盗賊の頭「だろうな…サフクラントの大公がこの場にいたら、俺は処刑を言い渡されるだろう…」

 「名門公爵家の孫娘を3年も誘拐していたんだ…軽い刑で済むはずがねぇ…」

ブルー「だが俺は今あんたを捕まえる気はない」

盗賊の頭「なぜだ?俺をここでわざと見逃せばお前も罪に問われるぞ」

ブルー「あんたが主犯者だとしてもシェルージェ様のことを大切に思っているはずだ」

 「そんな人間を捕らえるつもりはない。少なくともこの場ではな」

盗賊の頭「そうか…やはり俺の目に狂いはなかったな。お前はいろいろな意味で信用できる…」


続いて盗賊の頭は、

盗賊の頭(気持ちを落ち着かせて)「シェルージェのことも話してやる。俺と少し話をする気はあるか?」

ブルー「いいのか?グリーンに連れ去られたシェルージェ様の行方が気にならないのか?」

盗賊の頭「少々心配だが、シェルージェを守ってくれる気があるんなら、ひとまずそれでいいさ…」


岩陰に隠れたブルーと盗賊の頭の二人、そしてブルーは変身を解いて、

クレード「クレード・ロインスタイトだ」

 「シェルージェ様を捜索するため隣のダールファン王国からやって来た」

盗賊の頭「大した男だな。雰囲気や魔力も含め、お前がつわものだってことはすぐ分かったよ」

クレード「つわものか…まあ並みの兵士どもに負ける気はしないが…」

盗賊の頭「優れた戦士は優れた洞察力も持っている…」

 「だからこそ俺はあの場ではお前を試させてもらった」

クレード「そいつは光栄だな。俺が目に留まるほどの男だったんだからな」

盗賊の頭「強い奴にシェルージェを引き渡しかった」

 「一時的な行動だとしても、弱い奴にシェルージェを任せたくはないからな」

クレード「俺の実力を評価してくれたことは素直に感謝するよ」

盗賊の頭「つわもののお前ならあの煙なんぞ振り切り、ルシアをシェルージェだと気づきすぐ追いかけて来ると思った…」

 「まあ先にやって来たのはノーマークだった緑の髪の騎兵だったがな」

クレード「オリンスのあの行動は俺でも読めなかった」

 「シェルージェ様に一目惚れし、愛の力が爆発したのかもな」

盗賊の頭「はっ、だとしたらそれはそれで大したもんだ」


続いて盗賊の頭は、

盗賊の頭「俺の名は、ロイズデン・ギナデルク」

 「17人の盗賊たちを率いているあたまだ…」

クレード「ロイズデン…その名前はあんたの本名でいいんだな?」

盗賊の頭改めロイズデン「そこをツッコんで聞くか?まあそれも洞察力だな」

クレード「シェルージェ様がルシアと名乗っていたからな」

ロイズデン「ルシアってのは盗賊としての偽名だ。盗賊は基本的に本名を隠すんだよ」

 「だから俺もヨークガルフって偽名で盗賊行為をさせてもらっている」

クレード「本名を隠すための偽名…なるほどな、そういうところはワトニカの忍者やくノ一に似ているよ」

ロイズデン「忍者とくノ一ねぇ…そいつらは盗賊よりも優れているっていうからな。俺は好きじゃねぇよ…」

 (心の中で)「(まあ、忍者の知識はシェルージェにとって役に立ったんだがな…)」

クレード「まあいいさ、あんたのことは名前くらい聞ければ十分だ」

 「俺としても聞きたいのはあんたのことよりもシェルージェ様のことだからな」

ロイズデン「そうだな。俺も自分の経歴とかをここでベラベラ喋る気はねぇしな」


ロイズデンは自分の事ではなくシェルージェについて話し始めた。

ロイズデン「あいつと俺が出会ったのはちょうど3年前の6月…」

 「俺がサフクラントの公都に行った時、あいつは街の隅にあった大きなゴミ箱の中に隠れていたよ」

クレード「何だその状況は?何で前大公の孫娘がゴミ箱の中にいなければならない」

ロイズデン「どうやら貴族の生活が嫌になって家を飛び出したらしい」

 「兵士たちに見つからないよう隠れていた」

クレード「それで公都に来ていたあんたと偶然出会ったわけか?」

ロイズデン「まあな」

 「あの時あいつは初対面の俺に対して、自分から「遠くへ連れて行ってほしい」と言ってきた」

 「よほど貴族の生活が嫌だったのかもな…その辺りは今もよく分からねぇが…」


クレード「しかしあんたら盗賊もよく都から無事に脱出できたな。シェルージェ様も連れていたんだろ?」

ロイズデン「下水道の裏道を通ったり、仲間だった海賊の力を借りて海を渡ったりして、俺たちはナプトレーマに戻ってきた」

 「そして今日までシェルージェと過ごしてきたってわけだ」


クレード「そして3年か、その間シェルージェ様はあんたらと盗賊稼業をしてきたってことか?」

ロイズデン「俺たちはシェルージェを「ルシア」という偽名で呼ぶようになり、この国であいつを盗賊として育てた」

 「それでナイフの扱い方や身の潜め方なんかも教えたよ」

 「貴族のお姫様が盗賊になる…前代未聞の出来事だが、あいつはいつも楽しそうだった」

 「堅苦しい貴族の生活よりも体を伸び伸びと動かすほうがあいつには合っていたんだろ」

 「物事をあれこれ考えない天真爛漫な娘だからな」


クレード「だがあんたはそんなシェルージェ様を他人に保護してもらいたいんだろ?」

ロイズデン「あいつは強がっているが、内心ではサフクラントにいる家族たちに会いたいはずだ」

 「シエスタ(※7)している時も、よく寝言で「お母さん」や「お祖母ちゃん」とか言ってるしな」

クレード「だから彼女を故郷に帰したいと思うわけか?」

ロイズデン「母親や祖母ばあさんと再会すればあいつはきっと大泣きするよ」


その時ロイズデンの仲間である盗賊たちがやって来た。

盗賊②「ここにいたのか、かしら

盗賊④「アジトに戻ってなかったから様子を見に来たんだぜ」

ロイズデン「悪いな、少しこいつと話してみたくなったんでな」

盗賊②「青い髪の剣士か」

 「かしらが睨んだ通り、俺たちの跡を追って来たってわけか」

盗賊④「だがシェルージェがそばにいないようだが、どうしたんだ?」

 「かしらの見立てでは、青い髪の剣士がシェルージェを保護するってことだが」

ロイズデン「ああ、その事なんだがな…」

ロイズデンやクレードは変身したオリンス(グリーン)がシェルージェを連れて行ったことを盗賊たちに話した。


盗賊②「なるほど先に追って来たのは、緑の髪の騎兵だったのか」

盗賊④「ハッハッハッ!そりゃあ傑作だ!」

 「おかしらや俺たちも予想が外れたってわけか!」

ロイズデン(明るい表情で)「焼きが回っちまったのかもな。俺たちの盗賊稼業ももうお終いだな」

盗賊④「まあ良いじゃねぇか。今回のシェルージェの件で引き際にしたって」

盗賊②「今日はシェルージェの機嫌取りのために偶々外に出ていただけだが、思わぬ収穫を得られたかもな」

クレード「あんたらもかしらと同様、シェルージェ様を故郷に帰したいと思うのか?」

盗賊②「貴族の孫娘がずっと盗賊をやっていくのはやっぱり無理があるんだよ」

盗賊④「本人だけでなく、その家系の名誉とかも傷つけることになるからな」

盗賊②「公爵家で、しかも前大公の孫娘となれば尚更だ」

 「さすがの俺たちだって、サフクラント公国のクランペリノ家の名誉を傷つけてまで盗賊を続けたいとは思わねぇ」

クレード(心の中で)「(公爵家の名誉を守るためか…)」

 「(こいつら盗賊でも国の家臣と同じようなことを考えるんだな…)」


続いて、

ロイズデン「貴族の世界に戻ることはあいつにとって酷だろうが、どこかで決断しなければならないとずっと思っていた…」

 「まあその日がクレードやオリンスっていう騎兵と出会った今日なのかもな…」

クレード「何でもいいさ、あんたの期待には応えてやるよ。あんたが盗賊だろうと俺を認めてくれたんだしな」

ロイズデン「ここに来た仲間たちも誘拐犯として捕らえる気はねぇんだろ」

 「だったらもう行ってくれ。シェルージェをよろしくな」

クレード「俺はここであんたと別れても構わないが、あんたはシェルージェ様にもう一度会ってちゃんと別れの言葉を言ったほうがいいんじゃないのか?」

ロイズデン「まあそのほうがシェルージェも喜ぶかもしれねぇけど、あっさりとした別れだとしても、それはそれだ」

 「出会った人間全員とちゃんとした別れができるわけじゃねぇんだよ…人生ってのは…」


クレード「そうか。あんたがそう考えるならそれでもいい」

 「だが報告くらいはしてやろう」

ロイズデン「何っ?」

クレード「シェルージェ様が無事に保護されたかどうか、俺の口からあんたに伝えてやるよ」

 「そのほうが少しは安心するだろう」

ロイズデン「お前がそこまで気にすんな…そんな手間必要ねぇよ…」

 「シェルージェのことは噂話とかで聞ければ、それで…」

盗賊②「別にいいじゃねぇか、かしら。そいつの口から聞いておけよ」

ロイズデン「お、おい…」

盗賊④「それをシェルージェとの区切りってことにしな」

ロイズデン「…」


ロイズデンは少し黙った。そして、

ロイズデン「分かった。シェルージェに対する「けじめ」ってことでお前から直接報告を聞こう」

クレード「俺の案に賛成してくれたことは感謝するよ」

ロイズデン「なら待ち合わせ場所を決めるか」

 「三日後の19日の昼頃、ピラミッドの前でいいか?」

クレード「いいだろう。その日、その場所で落ち合おう。約束する」

ロイズデン「ピラミッドへは俺一人だけで来る。よろしく頼むぜ」


続いて、

ロイズデン「俺たちは一旦アジトへ帰る」

 「今後のことを仲間たちと話し合いたいからな」

盗賊②「そうだな。かしら

 「シェルージェが無事に保護されれば、俺たちはもう解散してもいいって思っているしな」

クレード「あんたらにも事情はあるわけか」

ロイズデン「もう行けよ、クレード。お前には緑の奴が連れて行ったシェルージェを探してほしいからな」

クレード「分かった。それじゃあ、また後でな」

ロイズデン(明るい表情で)「良い報告を期待しているぜ」


クレード「ここでシェルージェ様を見つけた事はこの後兵士たちに報告させてもらうが、あんたのことは黙っておいてやる」

 「俺を認めてくれた事やシェルージェ様の事を話してくれた礼としてな」

ロイズデン「大した礼だ。しっかり受け取っておくぜ」


ロイズデンたちと別れ、クレードはクリスターク・ブルーに変身した。

そして、

ブルー(クレード)「サファイア・アビリティ。ジェイブルーウイング」

アビリティにより翼が生えたブルーは空を飛び、上空からグリーン(オリンス)とシェルージェを探した。しかし二人を見つけることはできなかった。


ブルー(空の上で一人)「二人の姿が見当たらないな。もう山塊を出たのか?」

 「まあオリンス(グリーン)も根は真面目な奴だ」

 「先走った行動をしたが、あいつならシェルージェ様を兵士たちに引き渡しただろう」


空を飛びエネディナープ山塊を抜けたブルー。そこで捜索班と合流し、変身を解いた。

そして兵士たちにシェルージェのことなどを話し、

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「シェルージェ様を見つけたのですか!?」

ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「ですがシェルージェ様もオリンス殿も我々のところには来ておりません!」

ナプトレーマ兵⑤(女性・聖侶)「他の捜索班からもお二人のことは聞いておりません!」

クレード「なんだとっ!?」

 

クレード(心の中で)「(オリンスのバカ、シェルージェ様を一体どこに連れ去った!?)」

 「(これではあいつも誘拐犯だぞ!)」



ここはピラミッド内部、

レジーヌ「ナプトレーマに着いたわよ、アーバニオ」

複数の人間が入れるくらい太い金属の菅から一人の老人と二人の子供、一匹の大蛇が出てきた。

キャプテン・キャンサー「アーバニオ、今からこのピラミッドはお前の遊び場だ」

 「何でも好きにしな」

アーバニオ「ありがとう、お姉ちゃん、キャンサー」

 「僕、いっぱい遊ぶね」

マグネシウムの巳(喋る大蛇)「楽しんでくださいね、坊ちゃん!ジャッ!ジャッ!」

レジーヌ、アーバニオ、キャプテン・キャンサー、マグネシウムの巳…

クリスタルナンバーズの宿敵となる魔法武装組織「時鋼ときはがねの魔獣団メタルクロノス」がついに動き出す…

次回へ続く。


※1…王国の名前の由来は、「ナイル川」と、古代エジプトの王朝「プトレマイオス朝」より

☆※2…市の名前の由来は、モロッコの世界遺産「ラバト:近代都市と歴史的都市が共存する首都」(文化遺産 2012年登録)より

※3…この作品では、「中世」の時代は「1100K年~1600K年頃」、近代は「1870K年~1940K年頃」を指している。

ただし魔法大陸ムーンリアスの文明レベルは、中世・近代・現代ともにあまり変わらない。

※4…小寺小屋は他国ではいう小学校のこと。

※5…山塊の名前の由来は、チャドの世界遺産「エネディ山塊:自然的・文化的景観」(複合遺産 2016年登録)より

※6…元ネタはエジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」(文化遺産 1979年登録)の「ピラミッド」より

※7…シェルージェにとってのシエスタは昼寝。

(☆:物語初登場の世界遺産)

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