第20話 サンガネプット、緑の海亀が泳ぐ
20話目です。
エジプト・北アフリカ風の国、ナプトレーマ王国で戦うクレードたちをよろしくお願いします。
<主な登場人物の紹介>
<クレード一行 計11人>
(宝石の輝士団クリスタルナンバーズ 3人)
◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)
・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。
持っている剣の名は「魔蒼剣」、盾の名は「アイオライトの盾」。
魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身できる。
自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。
クリスタルナンバーズNo.1。
◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)
・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。
馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。使う武器は槍(翠電槍他)と斧。愛馬の名はベリル号。
魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身できる。
クリスタルナンバーズNo.2。
◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)
・白い髪をしている新人音楽家で、ムーンマーメイド交響楽団の非常勤楽団員。
武器はハープと鞭。ハープの名は「ホワイトコーラルハープ」、鞭の名は「真珠貝の鞭」。
魔法の宝石グラン・ホワイトパールにより、クリスターク・ホワイトに変身できる。
クリスタルナンバーズNo.3。
(ナンバーズの協力者たち 8人)
○ナハグニ・按司里(男・31歳)
・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。
日本の世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(文化遺産 2000年登録)からイメージしたキャラ。
○鵺洸丸(男・30歳)
・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。
日本の世界遺産「小笠原諸島」(自然遺産 2011年登録)からイメージしたキャラ。
○ウェンディ・京藤院(女・20歳)
・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身。柔道家。
日本の世界遺産「古都京都の文化財」(文化遺産 1994年登録)からイメージしたキャラ。
○ホヅミ・鶴野浦(女・22歳)
・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。
日本の暫定リスト掲載物件「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」からイメージしたキャラ。
○ススキ(女・22歳)
・ワトニカ将国エゾ藩出身の新人くノ一。
○千巌坊(男・39歳)
・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。
日本の世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」(文化遺産 2004年登録)からイメージしたキャラ。
○リンカ・白鳥森(女・22歳)
・ワトニカ将国サンナイ藩出身。津軽三味線を弾く新人音楽家。
日本の世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」(文化遺産 2021年登録)からイメージしたキャラ。
○沖津灘(男・32歳)
・ワトニカ将国ヤハタ藩出身。ワトニカ大相撲の現役力士で、大関経験者。
日本の世界遺産「「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群」(文化遺産 2017年登録)からイメージしたキャラ。
<その他人物>
○イルビーツ・サウロザーン(男・35歳)
・ダールファン王国東部の騎士団を束ねる副騎士団長(三人いる副騎士団長の一人)。
行方不明になっているシェルージェの捜索に協力するため、クレードや兵士たちと共にダールファン王国の東の国ナプトレーマ王国(※1)へとやって来た。
○ネフェルーグ・ラバルペリド(男・52歳)
・ナプトレーマ王国騎士団団長。
「ラーレのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、ファラオナイト(※)。
(※ナプトレーマの騎士団員は、男性の場合「ファラオナイト」、女性の場合「イシスナイト」と呼ばれる)
○イザベリス・デラムジャール(女・23歳)
・ナプトレーマ王国騎士団の女兵士。
「ネクベトのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、イシスナイト。
ナプトレーマ王国の兵士ではあるが、王国の北にあるサフクラント公国の出身。
ナプトレーマ王国内でサフクラントの前大公の孫娘シェルージェらしき女性を見かけた人物。
△シェルージェ・クランペリノ(女・18歳)
・黄色い髪をしている女の子。
貴族の国サフクラント公国の前大公の孫娘だが、なぜか南のナプトレーマ王国で目撃されるなど、いろいろと訳ありの人物。
この物語における重要人物の一人。
△ヴェルトン・リオロッグ(男・150歳)
・魔法道具学を専攻するアイルクリート第一魔法大学の元名誉教授であり、魔法武装組織メタルクロノスの元一員。通称ヴェルトン博士。
クレードにとっては恩人。
名前のみの登場。
クレード・オリンス・イルビーツ・ネフェルーグ・イザベリスたちは公爵家の孫娘シェルージェの捜索へ、アンシー・ナハグニ・鵺洸丸・ウェンディ・ホヅミ・ススキ・千巌坊・リンカ・沖津灘たちは魔獣や野盗たちを退治するため、ナプトレーマ王国各地へと赴いた。
ここはキュレネーンの町(※2)。
町にはナハグニや兵士たちが来ており、ナハグニは町並みを見て、
ナハグニ「建物や服装、ここは王都とはまた違う雰囲気の町でござるなあ」
ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「この町は大昔エーゲポリス王国(※3)から移民してきた方々が開拓した町なのです」
「そのためエーゲポリスの文化が今も町に根付いているのです」
「この町の神殿や劇場などもエーゲポリスの建築様式で造られております」
ナハグニ「なるほど。そういう異文化の町でござったか」
そして話題を変え、
ナハグニ「して、この町の郊外に物の怪どもの群れがいるのでござるな?」
ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「はい。数日前の調査で確認いたしました」
ナハグニ「ならば拙者に任せるでござる!」
「我がグスク刀の錆にしてくれよう!」
ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「期待させていただきますよ、お侍様」
兵士たちから期待されるナハグニであったが心の中では、
ナハグニ(心の中で)「(くーっ!兵たちと一緒では遊郭のような店に入れんではないか!)」
「(こうなれば物の怪どもを倒し、この鬱憤を晴らさせてもらうでござる!)」
張り切るナハグニであったが、同時に煩悩もすごかった。
ここはMW=アベリ=ベンジャリン自然保護区(※4)。
鵺洸丸や兵士たちは保護区内に巣くう魔獣たちを退治するため、ここへやって来ていた。
そして兵士から、
ナプトレーマ兵③(ファラオナイト)「この自然保護区にはナプトニジェルン川(※4)という大河が流れているのですが、この保護区内ではM字型、W字型に蛇行しております」
「そのためこの保護区内は複雑な地形をしておりまして…」
鵺洸丸「構わぬ。どれだけ複雑な地形で戦おうとも勝利してみせるのが忍びというもの…」
「この自然豊かな土地を守るため、力を貸そうではないか…」
鵺洸丸は愛用する「メグロの手裏剣」を手に取った。
すると兵士が、
ナプトレーマ兵③(ファラオナイト)「鳥の形をした武器ですか?」
鵺洸丸「左様。この手裏剣はオガサワラ藩にのみ生息する貴重な鳥「メグロ」を模した手裏剣…」
「物の怪どもが如何なる場所に現れようとも、この手裏剣で仕留めてみせる…」
どのような場所であっても、戦うのが忍び。
広大なMWの自然保護区で鵺洸丸は忍びの魂を燃やしている。
ここはナプドルビリスの考古遺跡(※5)。
遺跡内に残る凱旋門の前でウェンディは魔獣たちと戦っていた。
ウェンディ「教王!護国膝車!」
魔獣(断末魔)「グギャッ…」
ウェンディ「押忍!遺跡を荒らす不届きな物の怪たちは、ウチが成敗してやるッス!」
ウェンディの熱血柔道パワーが魔獣たちを叩き潰す。
ここはパンディアガルラの村(※6)。
ススキは村の郊外で魔獣たちと戦っていた。
魔獣たち「ガッガッグバーッ!」
ススキ「この村では「アンマ」というカムイ(※7)が崇められているわ…」
「カムイを信じる戦士として私は戦うわ!」
魔獣たち「ガッズーッ!」
魔獣たちがススキに襲いかかろうとするが、ススキは愛用するコロポックルの忍刀を構え、
ススキ「コロポックルの忍刀・アペヌイ斬り(※7)」
火炎を纏った忍刀により、魔獣たちの体は斬られ、そして焼かれた。
魔獣たち(断末魔)「ギャ…ギュ…」
ススキ「カムイのために私は負けない!」
普段はおしとやかで内気なススキではあるが、カムイ(神様)への想いによりその心は熱くなる。
ここは谷間の町、ムザブルナプート(※8)。
町にアンシー・ホヅミ・リンカたちが来ていた。
リンカ「本当に申し訳ねぇだ…」
「ここまで一緒についてきてもらって…」
ホヅミ「リンカさぁん、もう謝らなくていいですよぉ」
アンシー「そうよ。リンカはまだ戦いに慣れていないんだから、私たちでフォローしてあげないと」
リンカ「本当はこの谷の物の怪たちはおらや兵士さんたちで退治しなきゃならねぇってのに、アンシーやホヅミさんにまで来てもらって…」
アンシー「だからもういいってば」
ホヅミ「ホヅミとぉアンシーさんもぉ来たことですしぃ、手早く物の怪たちをぉ退治するですぅ」
アンシー「そうね。あたしとリンカとホヅミ、三人のパワーを合わせて戦いましょう」
リンカ「アンシー、ホヅミさん、ありがとごす(※9)…」
普段のススキ以上に気弱なリンカ。だが支えてくれる仲間がいれば彼女も少しずつ変わっていくかもしれない。
ここは聖都カイラワンドの町(※10)。
千巌坊や騎士団たちは町民から、この町で今、盗賊団による被害が出ていることを聞いた。
そして千巌坊たちは町の郊外で盗賊団のアジトを見つけ、中に入ると、
盗賊①「俺たちのアジトに踏み込むとはいい度胸じゃねぇか!」
盗賊②「騎士団だろうが相手になってやるぜ!」
千巌坊「やれやれ…私は物の怪退治に来たのだがな…」
続いて兵士たちが、
ナプトレーマ兵④(ファラオナイト)「聖都を荒らす盗賊どもめ!我々騎士団がお前たち如きに負けると思ったか!」
ナプトレーマ兵⑤(ファラオナイト)「盗賊ならシェルージェ様のことも何か知っているかもしれん」
「全員捕らえるぞ!」
盗賊③「やれるもんならやってみやがれ!」
盗賊たちは剣や鎖鎌など武器を手に取った。
しかし千巌坊は怯むことなく、
千巌坊「図に乗るな…俗物風情が…」
盗賊④「その変わった恰好、もしやワトニカの生臭坊主か!」
盗賊⑤「だったらテメェはもう祖国に帰れねぇかもな!」
千巌坊「何度でも言うがいい…」
「尤もそれで立ち止まるつもりなどないがな…」
続いて、
千巌坊「お主らは人間だ…私もその命まで奪いはせん…」
「だが聖なる都を荒らすというのなら、相応の報いを受けてもらうぞ…」
坊主(僧)の千巌坊は聖職者。
そのため神聖な都を荒らす者たちを決して許しはしない。
千巌坊は先端に八咫烏の飾りが付いた大きな錫杖を振りかざし、盗賊たちを次々と成敗した。
ここはカルタタンゴの町(※11)の郊外。
大銀杏の髷、上半身は裸、化粧廻しを締めた、大関経験者の沖津灘が盗賊たちと戦っていた。
沖津灘「ふんっ!」
四股を踏む沖津灘。妖力(※魔力のこと)を込めたそのパワーは凄まじく、四股を踏むだけで地面に衝撃波が走った。
盗賊⑥「ぐわっ!」
衝撃波により盗賊たちが次々と倒れていく。
沖津灘「どうした!四股だけで終わっては相撲にならんたい!」
続いて、
沖津灘「このカルタタンゴの町は立派な浴場がある町たい!」
「お主らを成敗し、ひとっ風呂浴びさせてもらうたい!」
相撲と妖力のパワーで盗賊たちを懲らしめる沖津灘。
クレード一行の新参者である彼は頼れるパワーファイターだ。
ケルビニアン暦2050K年6月15日。
ここはサンガネプットの海岸(※12)。
シェルージェらしき女性を捜索するため、早朝海岸に来た、ネフェルーグ(ナプトレーマ王国騎士団団長)、イザベリス(ナプトレーマ王国騎士団員)、イルビーツ(ダールファン王国副騎士団長)、クレード、クリスターク・グリーン(オリンス)たちであったが、海岸を見渡すと魔獣たちで溢れていた。
怪魚型の魔獣(鳴き声)「シャーッ!」
海老や蟹型の魔獣たち(鳴き声)「ギッ!ギッ!」
海中には怪魚型、浜辺には海老や蟹型の魔獣たちなどが大量にいる。
魔獣たちを見たイザベリスやネフェルーグたちが、
イザベリス「魔獣たち!?なんて数なの!?」
ネフェルーグ「シェルージェ様を捜索するためにここへ来たのだがな…」
イルビーツ「とにかく戦いましょう。放ってはおけません」
イザベリス「はい!」
ネフェルーグはラーレのケペシュ(鎌型の剣)を、イザベリスはネクベトのケペシュ(同じく鎌型の剣)を、イルビーツは魔法のランプをそれぞれ手に取り、
ネフェルーグ「太陽の神を模したこの剣でお相手しよう」
イザベリス「私のケペシュは神聖なる鳥「エジプトハゲワシ」を模した剣です!」
「聖なる鳥の力で魔獣たちを倒してみせます!」
そしてイルビーツは自身の魔力を体に込めて魔法のランプをこすり、
イルビーツ「いでよ!ランプの魔神、ラジャナーン!」
魔神ラジャナーン「オオオッ!」
イルビーツの魔力によりランプの先から具現化した魔神が現れた。
そして、
イルビーツ「魔神ラジャナーンよ!魔獣たちを仕留めるのだ!」
魔神ラジャナーン「フォーッ!」
そして同行しているクレードも、
クレード「グリーン(オリンス)、俺は海中の魔獣どもと戦う」
「お前はネフェルーグ騎士団長たちと共に浜辺の魔獣たちを倒せ」
グリーン「クレード!?」
クレードはグラン・サファイアを手に持ち、そしてクリスターク・ブルーへと変身した。
そして、
ブルー「サファイア・アビリティ。ブルーシャークウイング」
ブルーは戦士一人一人の固有の能力「ジュエル・アビリティ(※13)」を発動させ、背中に鮫の背びれのような翼を生やした。
そしてブルーは海へ潜り、怪魚型の魔獣たちと戦った。
そんなブルーの姿を見て、グリーンは思うところがあったのか、
グリーン(心の中で)「(くっ…俺では水中の魔獣たちを相手しづらい…)」
「(この間のウニアルガット湖群(※14)での戦いでもそうだ…)」
「(俺ではなく鵺洸丸とススキが水中戦を頑張ってくれたから、無事に勝利することができたんだ…)」
「(自分には無理だと言って、いつまでも他人任せにしていて良いのだろうか…騎士として…)」
一人悩むグリーンにキャメル・ベリル号が、
キャメル・ベリル号「ブエーッ!」
グリーン「キャ、キャメル・ベリル号…」
「…」
グリーンはキャメル・ベリル号がまるで自分を励ましてくれているように感じたのだ。
そしてグリーンは意を決し、キャメル・ベリル号に話しかけ、
グリーン「キャメル・ベリル号、兵士の話によるとこの辺りの海にはウミガメが生息しているんだ…」
「大海原を悠々と泳ぐウミガメ…キャメル・ベリル号、この姿はどうかな?」
キャメル・ベリル号「ブッ!ブー!」
グリーン「ありがとう、キャメル・ベリル号…君の想い確かに受け取ったよ…」
「一緒に行こう!あの海へ!」
キャメル・ベリル号「ブッ!ブッ!」
そしてグリーン(オリンス)は、
グリーン(オリンス)「ネフェルーグ騎士団長!イルビーツ副騎士団長!」
「俺はブルーと一緒に海中の敵と戦います!浜辺の敵たちはよろしくお願いします!」
イルビーツ「オ、オリンス殿!?」
グリーン(オリンス)「うおおっ!」
キャメル・ベリル号に乗ったグリーンは翠電槍を持ちながら、海へと向かって行った。
そしてラクダの姿をしたキャメル・ベリル号の体が海に浸かると、その体が強く輝きキャメル・ベリル号は緑色に輝くウミガメの姿になった。
グリーン「いいぞ!ウミガメの姿になった君は今から「タートル・ベリル号」だ!」
タートル・ベリル号「グー!」
グリーン「よし、海の中に潜ろう!」
タートル・ベリル号に乗ったグリーンは海中へとダイブした。
一方水中ではブルーが怪魚型の魔獣たちと戦っていた。しかしブルーは特に苦戦しているわけではなかった。
そこへタートル・ベリル号に乗ったグリーンがやって来て、
グリーン「ブルー、加勢にきたよ!」
ブルー「グリーン…その緑の海亀はベリル号なのか?」
グリーン「うん!今回もエメラルド・アビリティを発動させたんだ!」
続いて、
グリーン「それにしても水中なのに地上と同じように普通に会話できるんだね」
「これもクリスタークの戦士の力なのかな?」
ブルー「だろうな」
怪魚型の魔獣たち「ジャッ!ジャー!」
ブルー「グリーン、魔獣どもが来たぞ」
グリーン「ブルー、あとは俺に任せて!」
タートル・ベリル号に乗ったグリーンは翠電槍を持ち、魔獣たちに突撃した。
グリーンは怪魚型の魔獣に翠電槍を刺し、そして、
グリーン「翠電槍の電撃攻撃を受けてみろ!」
バチ!バチ!
槍の一撃に加え電撃を与えた。
怪魚型の魔獣(断末魔)「ジャバ…」
グリーン「いいぞ!電撃は魔獣の体を焼き尽くすだけで、周囲には広がらない!」
「これなら周りの魚たちを傷つけずに済む!」
そしてグリーンは翠電槍を魔獣たちの体に刺してどんどん倒し、周辺の怪魚型魔たちを全て倒した。
しかしそこに別の大型魔獣が一体やって来て、
アンボイナガイ型の大型魔獣「ギュッ…」
グリーン「貝型の大型魔獣!?海底を這って移動しているのか!?」
ブルー「グリーン、俺は手を貸さんぞ」
「戦うと言ったのなら自分でやってみせろ」
グリーン「大丈夫だよ、ブルー!」
「どんな大物が相手でも戦ってみせるから!」
そう言ってグリーンは貝型の大型魔獣に突撃し、翠電槍を刺したが通用しなかった。
アンボイナガイ型の大型魔獣「ギィ…」
グリーン「そ、そんな翠電槍が通用しないなんて!?」
ブルー「どうやらかなり硬い殻を持っているようだな」
グリーン「電撃の威力だってあるっていうのに!」
アンボイナガイ型の大型魔獣「キ…キュ…」
大型魔獣は大きな針の形をした歯舌でグリーンを攻撃した。タートル・ベリル号に乗ったグリーンはなんとか攻撃をかわすが、
グリーン「くそっ!どうしたら!?」
タートル・ベリル号「グー!?」
苦戦するグリーンだが、ここでブルーが、
ブルー「グリーン、ここは水の中だ。どうせなら、水中用の武器を使ってみろ」
グリーン「ブルー!そんなこと言ったって、ここには銛とかないよ!」
ブルー「ならば銛を作ってみせろ、お前自身の魔力で」
グリーン「どうやって!?」
ブルー「それくらい自分で考えろ」
グリーン「まったく、君は!」
アンボイナガイ型の大型魔獣「キ…リュ…」
歯舌攻撃をかわしながらグリーンは考えた。そして、
グリーン「待てよ、この翠電槍を銛に変えることはできないかな?」
タートル・ベリル号「グー、グー」
グリーン「タートル・ベリル号、俺はすごい魔力を秘めたクリスタークの戦士なんだ」
「何かできないかやってみるよ…」
グリーンは心の中で強くイメージした。
グリーン(心の中で)「(水中にいる間だけでいい…翠電槍を銛の形に…)」
攻撃をかわしながらイメージするグリーン。すると翠電槍が強く光り、緑色に輝く銛へと形を変えた。
グリーン「翠電槍が四俣の銛に!?」
「これもジュエル・アビリティなのか!?」
ここでブルーが、
ブルー「いや、それはアビリティではなく、クリスタークの戦士の力だろう」
グリーン「ブルー!?」
ブルー「ヴェルトン博士は、炎・雷・氷・風・水・大地・爆発などの基本的な魔法はあまり得意ではない」
「だが博士は世界でも数少ない合成魔法の使い手だ」
「そしてその博士の魔力を吸収してきたのがグラン・ジェムストーン(※15)だ」
グリーン「そういえば見せてもらった博士のレポートに少し書いてあったね」
「グラン・エメラルドを始めグラン・ジェムストーンに選ばれた俺たちクリスタークの戦士には博士の合成魔法の魔力も混じっている。だから俺たちにも合成魔法のような能力が備わっているかもしれないって」
ブルー「グリーン自身の魔力と翠電槍の魔力を合わせたから、翠電槍を銛の形にすることができたのだろうな」
グリーン「二つのものを合成する能力か…」
アンボイナガイ型の大型魔獣「キィ…」
歯舌攻撃をしようとする大型魔獣。そして、
ブルー「グリーン、その銛であの貝の化け物をさっさと倒せ」
グリーン「任せて、ブルー!」
「よし、銛の形になった翠電槍は「翠電銛」と名付けよう!」
そして、
グリーン「いくよ!翠電銛!」
グリーンは翠電銛で貝型の大型魔獣を突き、その殻を破壊した。
アンボイナガイ型の大型魔獣「?」
グリーン「すごい威力だ!さすがは水中用の武器だ!」
アンボイナガイ型の大型魔獣「キ…?」
グリーン「硬い殻がないなら、こっちのものだ!」
「ハァァッ!」
グリーンは翠電銛に電撃を込めた。
バチ!バチ!(電撃の音)
グリーンは殻がなくなった大型魔獣を突き、電撃で焼き尽くした。
グリーン「やったぞ!」
タートル・ベリル号「グッ!」
海中の敵を倒し、浜へと戻ったブルーとグリーン。
海から出るとタートル・ベリル号は海亀から馬の姿に戻り、翠電銛も元の翠電槍の形に戻った。
しかしグリーンだけは変身が解け、元のオリンスの姿に戻って気を失った。
オリンス「うっ…」
イルビーツ「オ、オリンス殿!」
イザベリス「急いで手当てしましょう!」
ベリル号(元の馬の姿)「ヒッヒー!」
ブルー(クレード)「大丈夫だ、ベリル号」
「オリンスは合成魔法の魔力を使って疲れただけだ」
オリンスは駱駝車(※ラクダで引く馬車)の中で回復魔法をかけてもらい、その日の夕方頃には目を覚ました。
だがこの日の捜索活動はすでに終わっていた。
その日の夜クレードとオリンスは渡り鳥の飛来地として知られるイシュケールン村(※16)の砦で、
オリンス「翠電槍を翠電銛に変えたのはいいけど、予想以上に疲れたな…初めて「ジュエル・アビリティ」を発動させた時と同じくらい疲れた気がするよ…」
クレード「そう考えると、合成魔法の魔力はあまり多用できないかもな」
オリンス「まあそうかもね。使える武器があるときは、無理して新しい物を作らなくてもいいかもね」
クレード「だがこの魔力は後々必要になると思っている」
「例えば、科学大陸の奴らが仲間になったときとかな」
オリンス「それってサンクレッセル連邦国の人たちのことだよな」
「約500年も接触していない異文明の人たちと俺たちが出会えるのかな?」
クレード「オリンス、俺は本気だぞ」
「もしメタルクロノスの奴らがサンクレッセルの地でも宣戦布告するというのなら、俺は連邦国にも行ってやる」
「そこが異文明の地であろうと、俺は奴らを叩き潰してやる」
オリンス(少し驚いて)「ク、クレード…」
次の日6月16日。
クレードやイルビーツたちはこの日も海岸や海沿いのエリアを捜索したが、シェルージェらしき女盗賊を見つけることはできなかった。
そして二日後の18日。
まだ女盗賊を見つけられない一行は、エネディナープ山塊(※17)まで来ていた。
クレードとオリンスは、ネフェルーグやイルビーツたちと一旦別れ、18人の兵士たちと行動を共にしていた。
象や仮面などの形をした様々な奇岩に、大昔の岩絵が残っている山塊を進む一行。
だがそこで盗賊たちを見つけ、
女盗賊(姉御肌)「ハッ!あたいが貴族の孫娘だぁ…」
「勝手なこと言うんじゃないよ!冗談も休み休みにしな!」
ナプトレーマ兵⑥(倒れている)「うっ…」
盗賊⑦「俺たちを甘く見たな、騎士団!」
盗賊⑧「盗賊だから騎士よりも弱いと思ったか?そりゃあ残念だなあ!」
盗賊⑨「姐さん、こいつらどうしましょうか?」
女盗賊(姉御肌)「そうだね。1、2人アジトに連れて行こうか」
「今この国にダールファン王国の兵士たちが来ている理由でも吐いてもらおうじゃないか」
盗賊⑩「さっきこいつらが言っていた貴族の孫娘の事と関係がありそうですね」
盗賊⑦「まあとにかく連れて行くか」
盗賊たちの様子を離れた岩場から見ている一行はここで、
オリンス(小声)「(盗賊団に、倒れている騎士たち!?)」
「(まさか返り討ちにあったのか!?)」
ナプトレーマ兵⑦(小声)「(おそらくそうでしょうな。倒れている者たちは別の捜索班でしょう)」
ナプトレーマ兵⑧(小声)「(盗賊団を見つけ捕らえようとしたが逆に返り討ちにあった、そんなとこかと)」
オリンス(小声で)「(早く助けに行きましょう!このままでは盗賊たちに連れて行かれます!)」
ナプトレーマ兵⑦(小声)「(落ち着いてください。今回の目的はシェルージェ様の捜索です)」
ナプトレーマ兵⑧(小声)「(あの姉御肌の女盗賊はシェルージェ様ではないようですが、奴らのアジトにシェルージェ様がいる可能性も0ではありません)」
ナプトレーマ兵⑨(小声)「(ならばここは尾行しアジトに着いてから行動すべきかと…)」
オリンス(小声)「(そんなこと言っている場合ですか!奴らに連れて行かれたら何をされるか分かりませんよ!)」
「(今は仲間の兵士たちを助けるときです!)」
続いて、
オリンス(小声)「(クレード!君からも何か言ってあげてよ!)」
クレード(小声)「(待てオリンス、誰か来たようだ)」
オリンス(小声)「(えっ!?)」
倒れているナプトレーマ兵たちを連れて行こうとする盗賊団(数13人)。
しかしまたそこに別の盗賊団(数8人)がやって来て、
別の盗賊団の頭「やれやれ、ちょっと散歩にきただけだってのに、薄汚ねぇ顔を見ちまうとはな…」
女盗賊(姉御肌)「何だい、あんたらは!?」
ナプトレーマ兵⑩(気を失っている)「…」
盗賊団の頭「国の兵士たちを助けるつもりはねぇが、そいつらを放せ」
女盗賊(姉御肌)「バカ言うんじゃないよ!素直に「そうですか」と返す盗賊がいるとでも思うのかい!」
盗賊団の頭「なら少し痛い目にあってもらうか…」
「おいルシア、好きに暴れていいぞ」
頭がそう言うと、顔を布で隠したルシアという女盗賊が前に出てきて、
ルシア「はーい!シェ…ルシアちゃんにお任せ!」
離れた所から女盗賊ルシアを見たオリンスは、
オリンス(ちょっと大きめの声で)「(えっ!?誰、あの可愛い感じの娘!?)」
クレード(小声で)「(オリンス、お前そんなキャラだったか?)」
女盗賊ルシアとは何者か?
次回に続く。
※1…王国の名前の由来は、「ナイル川」と、古代エジプトの王朝「プトレマイオス朝」より
☆※2…町の名前の由来は、リビアの世界遺産「キュレネの考古遺跡」(文化遺産 1982年登録)より
※3…王国の名前の由来は、「エーゲ海」と、古代ギリシャの都市国家「ポリス」より
☆※4…自然保護区の名前の由来は、ニジェールなどの世界遺産「W=アルリ=ペンジャリ国立公園複合体」(自然遺産 1996年登録 2017年拡張)、川の名前の由来は、同国立公園内を流れる「ニジェール川」より
☆※5…考古遺跡の名前の由来は、モロッコの世界遺産「ヴォルビリスの考古遺跡」(文化遺産 1997年登録)より
☆※6…村の名前の由来は、マリの世界遺産「バンディアガラの断崖」(複合遺産 1989年登録)より
※7…元ネタはアイヌ語。「カムイ」は「神、神様」、「アペ」は「火」、「ヌイ」は「炎」を意味する。
☆※8…町の名前の由来は、アルジェリアの世界遺産「ムザブの谷」(文化遺産 1982年登録)より
※9…元ネタは青森の方言、津軽弁。「ありがとごす」は「ありがとう」の意味。
☆※10…町の名前の由来は、チュニジアの世界遺産「聖都ケルアン(or 聖都カイラワーン)」(文化遺産 1988年登録)より
☆※11…町の名前の由来は、チュニジアの世界遺産「カルタゴ遺跡」(文化遺産 1979年登録)より
※12…海岸の名前の由来は、スーダンの世界遺産「サンガネブ海洋国立公園とドゥンゴナブ湾=ムカッワル島海洋国立公園」(自然遺産 2016年登録)より
※13…「ジュエル・アビリティ」は総称で、ブルー(クレード)の固有能力名は「サファイア・アビリティ」、グリーン(オリンス)の固有能力名は「エメラルド・アビリティ」という。
☆※14…湖群の名前の由来は、チャドの世界遺産「ウニアンガ湖群」(自然遺産 2012年登録)より
※15…「グラン・ジェムストーン」とはヴェルトン博士が魔法や魔力を使い開発した特別な魔法の石で、この石に選ばれた人物はブルーやグリーンのようにクリスタークの戦士に変身できるようになる。
変身能力を得ると「グラン・ジェムストーン」は魔法の宝石になり、色や形を変えるので、クレード(ブルー)は「グラン・サファイア」、オリンス(グリーン)は「グラン・エメラルド」とそれぞれ名付けた。
☆※16…村の名前の由来は、チュニジアの世界遺産「イシュケル国立公園」(自然遺産 1980年登録)より
※17…山塊の名前の由来は、チャドの世界遺産「エネディ山地の自然的・文化的景観(or エネディ山塊:自然的・文化的景観)」(複合遺産 2016年登録)より
(☆:物語初登場の世界遺産)




