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第12話 マリーチェルの物語

12話目です。ルスカンティア王国から次のダールファン王国にたどり着いたクレードやオリンスたちのことをよろしくお願いします。

2番目の国、ダールファン王国では主に、イエメン・イラク・イラン・オマーン・カタール・サウジアラビア・シリア・バーレーン・レバノンといった中東の国々にある世界遺産をモデルにした村・町・遺跡・自然などが登場します。


<主な登場人物の紹介>


<クレード一行 計8人>

◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。

持っている剣の名は「魔蒼剣」。盾の名は「アイオライトの盾」。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身する。

自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。

◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)

・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。

馬にまたがり騎兵として戦うが、戦局によっては馬を降りて戦うこともある。使う武器は槍(翠電槍他)と斧。愛馬の名はベリル号。

魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身する。

○ナハグニ・按司里あじさと(男・31歳)

・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。

愛用する刀の名は「グスク刀」。

日本の世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(文化遺産 2000年登録)からイメージしたキャラ。沖縄県出身のイメージ。

鵺洸丸やこうまる(男・30歳)

・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。

日本の世界遺産「小笠原諸島」(自然遺産 2011年登録)からイメージしたキャラ。東京都小笠原村出身のイメージ。

○ウェンディ・京藤院きょうどういん(女・20歳)

・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身。柔道家。

語頭に「押忍」、語尾に「~ッス」と付けて話すことが多い。

日本の世界遺産「古都京都の文化財」(文化遺産 1994年登録)からイメージしたキャラ。京都府出身のイメージ。

○ホヅミ・鶴野浦つるのうら(女・22歳)

・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。

日本の暫定リスト掲載物件「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」からイメージしたキャラ。新潟県出身のイメージ。

○ススキ(女・22歳)

・ワトニカ将国エゾ藩出身の新人くノ一。内気な性格だが、おしとやかで可憐な女性。

駱駝車を操縦する御者。

千巌坊せんがんぼう(男・39歳)

・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。

回復魔法(※魔法はワトニカでは「妖術」という)が使える。

ススキと同様、駱駝車を操縦する御者。

日本の世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」(文化遺産 2004年登録)からイメージしたキャラ。和歌山県出身のイメージ。


<その他人物>

◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)

・北の月(北側の大陸)ウインベルク共和国出身(※1)。

白い髪をしている新人音楽家。

この4月に国立ウインベルク第三音楽大学を卒業したばかりで、女性だけの楽団「ムーンマーメイド交響楽団」に正楽団員として所属している。

得意な楽器はハープで、音楽大学を卒業しただけにその腕前は高い。歌唱力もある。

魔力は生まれつき高いほうで、「ホワイトコーラルハープ」という魔力がこもったハープも所持している。

同じ楽団に所属するマリーチェルとリンカはかけがえのない友人たち。

父親のチャロックスキーはムーンリアスで有名なピアニストである。

この物語における重要人物の一人。

☆○マリーチェル・アフランデウス(女・22歳)

・北の月(北側の大陸)ウインベルク共和国出身。

アンシーとは学生時代からの親友で、アンシーと同様ウインベルク第三音楽大学を卒業し、ムーンマーメイド交響楽団に正楽団員として所属している。得意な楽器はフルート。

親友のアンシーと違い魔力は乏しいが、作曲・演奏・歌などのセンスはアンシー以上。

父親は地元のウインベルクでは名の知れたパイプオルガンの演奏者である。

誕生日は8月11日。

☆○リンカ・白鳥森はくちょうもり(女・22歳)

・ワトニカ将国サンナイ藩出身で、津軽三味線の奏者。

今年4月からムーンマーメイド交響楽団に正楽団員として所属している。楽団の中でアンシーやマリーチェルたちと知り合い友人となった。

津軽三味線の奏者ではあるが、同時にヴァイオリニストでもあり、オーケストラではヴァイオリンを担当する。三味線とヴァイオリン、どちらも上手。

ススキと同様おしとやかで可憐な女性だが、リンカのほうが泣き虫でか弱い。

普段はりんごの柄が入った着物を着ているが、ヴァイオリンを弾くときはドレス姿になる。

魔力はアンシーと同様、高め。

日本の世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」(文化遺産 2021年登録)からイメージしたキャラ。青森県出身のイメージ。

誕生日は1月7日。

☆○ストルラーム・ウォーガンベルロ(女・74歳→75歳)

・北の月(北側の大陸)ウインベルク共和国出身。

ムーンマーメイド交響楽団の楽団長(代表)で、オーケストラの指揮者でもある。

温厚で優しい人柄だが、きつく指導するときもある。

誕生日は5月19で、75歳になる。

☆○アケメス・パルーザン(男・52歳)

・ダールファン王国騎士団の部隊長。兵たちを束ね王都周辺の警備をしている。

名前の由来は、ペルシアの「アケメネス朝」とイランのファールス地方の古地名「パールサ地方」より。

(☆:新キャラ)

ケルビニアン暦2050K年5月17日。

ここはダールファン王国。人口約7000万人、建国約1200年の砂漠の国。

王国の南、サナンダルアの町(※2)を出発したクレード一行はダールファンの王都を目指し駱駝車と共に砂漠を進んでいた。

ウェンディ「押忍!ルスカンティアのナミーブル砂漠(※3)でも感じていたことッスけど、砂漠って思っていたほど暑くねぇッス!」

 「ワトニカや地元のキョウノミヤの夏のほうが暑いと思うくらいッス!」

ホヅミ「ルスカンティアのぉリヒタルース村(※4)のぉ女性兵士さぁんも言っていたことですがぁ、ルスカンティアやぁダールファンはぁこれから冬に入るからぁ今の時期はそこまで暑くないらしいですぅ」

オリンス「そうなんだ。ルスカンティアやダールファンを含む南半球では、6・7・8月は寒くなる冬の時期だからね」

 「だから冬に近い5月の今の時期は砂漠でもそこまで暑くならないから、ちょうど過ごしやすい時期だと思うんだ」

クレード「ならば俺たちはある意味いいタイミングで砂漠の国に来たかもしれないな」

オリンス「俺もそう思うよ。12・1・2月の夏はとにかく暑いからね」

 「ちゃんと熱中症の対策とかをしないと本当に危ないから」

千巌坊(駱駝車を操縦しながら)「6・7・8月が冬、12・1・2月が夏…季節がワトニカとは真逆だな…」

オリンス「ワトニカを含む北半球では、逆に6・7・8月が夏、12・1・2月が冬になるからね」

ススキ「北半球に南半球、同じガイノアースでも北と南で季節も変わっちゃうのね…」

ナハグニ「うーむ、拙者も南国育ちの人間であるが、12月や1月が夏という感覚はないでござるよ」

鵺洸丸「季節の違い、まさにガイノアースの不思議…」


次の日の18日、一行は砂漠の村ダールデクス村(※5)に到着し、黒い石などで建築された村の教会でクレードや千巌坊たちはお祈りした。そして教会のマザー(※指導者的シスター)と話し、

千巌坊「マザー殿…今この国で困っている事はございませぬか?」

 「私たちは助けになるために来たのですが…」

マザー「そうですね…この辺りの南の地方は魔獣の被害が少ないようですが、王都周辺や国の東部地方では被害が拡大し困っているようです」

 「それもあってか東部地方の騎士団を束ねる副騎士団長が今王都に来ていて、王や騎士団長たちとどう対処していくか話し合っているらしいですが…」

ナハグニ「ならば王都へと行き、拙者らも力を貸したいでござるな」

マザー「魔獣たちと戦ってくださるのですか?」

ホヅミ「そのためにぃホヅミたちはぁ来たんですぅ」

マザー「ありがとうございます。皆さんのお心遣いに感謝いたします」

マザーはクレードたちに頭を下げ、そして、

マザー「この村から王都の中心街まで行くとしたら、まだ三日はかかるでしょう」

 「どうかお気をつけて」

オリンス「お気遣いありがとうございます!必ずや国王様たちのお力となります!」

クレード「期待していてくれ、俺たちにはそれだけの実力がある」


次の日の19日、クレードたちはバハラダールの町(※6)へ来ていた。

この町は日干しレンガ(アドベ)などで造られた城塞に囲まれ、町の中にはヤシの木が立ち並ぶ大きなオアシスがあり栄えていた。

クレードたちは町の中心街で買い物や食事、聖堂でお祈りなどを済ませ、その後城塞を抜け、外の砂漠で、

鵺洸丸「町の者たちの話では、今月末頃王都で「ムーンマーメイド交響楽団」というウインベルクの楽団によるコンサートがあるらしいな」

ススキ(駱駝車を操縦しながら)「何でも女性だけの楽団らしいわね。私も知らなかったけど」

ホヅミ「ススキさぁん、私はぁその楽団知ってましたよぉ」

ウェンディ「押忍!ホヅミさん!もしかして以前演奏でも聴いたことがあるんッスか!?」

ホヅミ「はいぃ。私がまだぁ高寺小屋生(※7)でぇ女流2級になったばかりの頃ぉ、そのムーンマーメイド交響楽団がぁサド藩まで来てくれてぇ、コンサートをぉ開いてくれたんですぅ」

 「そしてぇホヅミも演奏を聴いたですぅ」

オリンス「へぇー、聞いた感想はどうだったの、ホヅミ?」

ホヅミ「はいぃ。とても感動したですぅ。美しくぅ、心地の良い素晴らしい音楽でしたぁ」

ススキ(駱駝車を操縦しながら)「そうなの?私もなんか聴いてみたくなったわ…」

クレード「まあその楽団が近いうちにこの国へ来るようだがな…」

ナハグニ「しかし女子おなごだけの楽団とは…なんと素敵な…ああっ…♡」

千巌坊「喝ーっ!」

駱駝車の中で千巌坊は警策を手に取り、煩悩で溢れたナハグニを叩いた。


続いてオリンスが、

オリンス「それにしてもウインベルクの楽団か…」

 「北の月(北側の大陸)のウインベルクは「音楽の国」ともいわれるくらい音楽活動や教育が盛んな国だからね。美しい歌声を出せたり、ハイレベルな演奏ができたりする音楽家たちが様々な楽団に入り、ムーンリアス各地に赴いて歌や演奏を披露しているんだよ」

クレード「音楽の国ウインベルクか…俺もヴェルトン博士からその国のことを聞いているよ」

ナハグニ「と、とにかく、女子おなごだけの楽団がこの国に来るというのなら、なんとしても物の怪どもを退治し安全にお迎えせねば!」

ウェンディ「押忍。さっき叩かれたばかりなのにやたらテンション高いッス」

千巌坊「この男の煩悩を消し去るのは私でも困難だ…」

クレード(心の中で)「(魔獣たちの被害に、交響楽団の来訪、どうやらこの国でもまた一波乱ありそうだな…)」

ホヅミ(心の中で)「(ホヅミがぁ前に聴いたのはぁもう6年前のことですぅ)」

 「(今はぁまた新しい人たちがぁ楽団にいるかもしれないですぅ)」



ここは南の月(南側の大陸)の海。

ダールファン王国でのコンサートを控えているムーンマーメイド交響楽団の楽団員たちを乗せた船が海を進んでいる。

そして船の上では、


女性楽団員①(指揮者)「本日5月19日は、私たち楽団の代表、ストルラーム楽団長のお誕生日でございます」

 「そこで楽団長に私たちから音楽を贈らさせていただきます」

 「楽団長、どうぞ私たちの演奏をお聴きください!」

ストルラーム「今回は聴く側ってことね。だったらちょうどいいわ」

 「ここで日頃の練習の成果を確認させてもらうわよ」

女性楽団員①(指揮者)「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

女性楽団員たちは船の上でオーケストラ演奏を始めた。

演奏している楽団員たちの中には、アンシー・マリーチェル・リンカという新人の楽団員たちもおり、それぞれ、ハープ(大型のグランドハープ)・フルート・ヴァイオリンを奏でていた。


そして演奏が終わり指揮者の女性楽団員が一礼し、

船乗り「いやあ、実に見事な演奏だったよ!」

ウインベルク兵(騎士)「さすがは我がウインベルクが誇る音楽団の演奏です!」

 「我々も護衛として付いてきた甲斐があったというものですよ!」

周りで聴いていた船乗りや兵士たちも演奏を絶賛し拍手を送った。


そしてストルラーム楽団長も、

ストルラーム(笑顔で)「素敵なプレゼントをありがとう…音色や旋律とかも悪くなかったわよ…」

女性楽団員①「ありがとうございます!楽団長!」

ストルラーム「でもダールファンでのコンサートは今以上の演奏でなきゃダメよ」

女性楽団員①「そうですよね。大勢のお客様だけでなく、国王様たちもお越しになる予定ですからね…」

ストルラーム「そのために各々しっかりと練習しなさい」

 「たとえ航海中でもやれることはやってもらうわよ」

女性楽団員①「はい!私たちにお任せください!」

アンシー(心の中で)「(楽団長は私たちに期待してくれている…)」

 「(だったらダールファンでも精一杯頑張らなくちゃね…)」


演奏後、新人音楽家のアンシー・マリーチェル・リンカたちは船内の部屋(相部屋)へと戻り、三人は、

マリーチェル「ストルラーム楽団長の期待に応えるためにも、ダールファンでの演奏は最高のものにしないとね」

アンシー「もちろんそのつもりよ!」

 「大学を出た私たちにとっては初の海外演奏なんだしね!」

 「気持ちや技量、全てを出し切るつもりなんだから!」 

リンカ「気合十分だ、アンシーは…」

アンシー「気分はいつでもフォルティッシモ!私は大体こんな感じよ!」


そして話題を変え、

マリーチェル「そういえば二人はもうソロ演奏のほうはバッチリなの?」

リンカ「ソロ演奏…オーケストラの前に各自ソロでの演奏を披露するんだべな…」

マリーチェル「私たちは新人ということで注目を集めるわ。しっかりやらないとね」

アンシー「マリーチェル、あなたはもうほとんど曲のイメージができているんでしょ?」

マリーチェル「ええ、「砂漠の町に住む青年はある日宝物があるといわれている遺跡を探しに旅に出た。だけど青年は遺跡を見つけることができなかった。その代わり星の形をした珍しい砂丘を見つけることができたの。そして青年は幼馴染の女性に声をかけ、二人で星形の砂丘を見に行った。そうしたら女性は星の砂丘の前で青年に告白したの。長年愛を伝えることができなかった女性が言葉にできたのは、星の砂丘が女性に勇気を与えてくれたのかもしれない…」。私の曲のイメージはそんな感じね。あとは上手く音楽として表現できるかどうかだわ…」

リンカ「すごいわマリーチェル。そったに(※8)具体的なイメージができてるなんて…」

アンシー「マリーチェルの作曲のセンスは私たち以上だわ。そこは見習うべきところよ、リンカ」

マリーチェル「褒めてくれてありがとうね」

 「でも私だってすぐに曲をイメージできたわけじゃないのよ」

 「本を読んでダールファン王国のことを調べて、そしてこの砂漠の国に合いそうな場面をイメージして曲にしたの」

 「0の状態から曲をイメージできるほど私はまだプロじゃないからね…」

リンカ「それでも十分すごいと思うだ」


続いてリンカとアンシーたちは、

リンカ「おらは今回自分で曲をイメージできる自信はないから、「三内じょんがら節」っていう地元の民謡を弾こうかと思うだ…」

アンシー「リンカはヴァイオリンじゃなくて、今回は地元の楽器、津軽三味線で演奏するわけね」

リンカ「んだ」

 「正直ヴァイオリンのほうがうけると思うだが、おらとしては世の中にこういう楽器や曲もあるってことを知ってほしいだ…」

マリーチェル「良いじゃないの。いろいろな楽器や曲の魅力を伝えるのも音楽家の仕事なんだし」

アンシー「やってみなよ、リンカ」

 「今回は総合的な評価よりも、津軽三味線という楽器を伝えることに意味があると思うわ」

リンカ「ありがとごす(※8)、アンシー、マリーチェル」

 「それじゃあ、おら、楽団長に言われた通り早速練習するだ」


アンシー「そうね。船の揺れに気をつけながら練習を始めましょうか」

 「私もソロ演奏では真珠をイメージした淡い曲を奏でようと思っているしね」

マリーチェル「真珠…確かあなたが好きな宝石よね」

 「そうなるとアンシーの曲は自分が好きな物からイメージしたってわけね」

アンシー「それもあるけど、ダールファン王国って真珠の一大産地でもあるじゃない」

リンカ「その話、世界地理の授業で聞いたことがあるだ」

アンシー「本で確認したところ、国の中でも海沿いのダルムハラックの町(※9)やダールズバーラン村(※10)などでは真珠産業が盛んで、真珠の採取や養殖、取引により栄えているらしいの」

続いて、

アンシー「真珠の産地であるのなら、私の真珠の曲をこの国でぜひ奏でたいわ」

マリーチェル「確かにこの国で披露する曲としては合うと思うわ」

 「でもそれが良い曲になるか悪い曲になるかは全てあなた次第よ、アンシー」

アンシー「任せてよ、マリーチェル!」

 「私にできる最高の音楽を披露してみせるわ!」

マリーチェル「天才ピアニスト、チャロックスキー・ヒズバイドンの娘の音楽、楽しみにしているわよ」

アンシー(苦笑いしながら)「あはは…お父さんにはまだまだ及ばないけどね…」

その後アンシー・マリーチェル・リンカたちは船の中で揺れに気をつけながら各自の曲を練習した。



次の日の20日、王都郊外にあるベルゼポリスの遺跡(※11)に魔獣たちが出現し、ダールファンの兵士たちは遺跡で戦っていた。

魔獣たち「ジュッ!ジュ!」

ダールファン兵①(軽装な砂漠の騎士・サンドナイト)「魔獣どもめ!この遺跡で好きにはさせんぞ!」

ダールファン兵②(サンドナイト)「曲刀シャムシールの威力、受けてみるがよい!」

ダールファン兵③(駱駝騎兵)「大いなる遺跡の門よ!万国の門よ!クセルクゼスの門(※11)よ!我らに力を!」

ダールファン兵④(サンドナイト)「この遺跡を造りし、古の国王ダールレイオス1世様(※11)!どうか我らにご加護を!」

アケメス(部隊長・駱駝騎兵)「兵たちよ!なんとしても排除するのだ!」

 「これ以上王都周辺に魔獣どもをのさばらせてならん!」


戦いの中、王都の中心街を目指すクレードやオリンスたちも来て、

オリンス「ダールファン王国騎士団の方々ですね!俺たちはルスカンティアから来た旅の戦士たちです!この戦いに加勢させてください!」

ダールファン兵⑤(魔法使い)「な、何だと!?」

オリンス「俺たちはルスカンティアの国王様から紹介状を貰っていて、これからダールファンの国王様にお会いするつもりです!どうか信用してください!」

アケメス(駱駝騎兵)「ルスカンティア国王からの紹介状を持っている者たちなのか!?」

ダールファン兵⑥(サンドナイト)「アケメス部隊長、いかがいたしましょうか?」

アケメス(駱駝騎兵)「あの者たちの事情はよく分からんが、他国の王から信頼を得ている戦士たちであるというのなら今は賭けてみるか…」

部隊長のアケメスはクレードやオリンスたちに声をかけ、

アケメス「分かった。ひとまずそなたらを信用しよう」

 「加勢したいというのなら、すぐに戦いに加わってくれ」

オリンス「ありがとうございます!」

ナハグニ「そうと分かれば早速迎え撃つでござる」

ウェンディ「押忍!ウチらに任せるッス!」

鵺洸丸「物の怪たちから遺跡を守って進ぜよう」


加勢しようと敵を迎え撃つナハグニやウェンディたち。だがクレードは、

クレード「悪いが、今回は俺とオリンスと先陣を切らせてくれ」

オリンス「クレード!?どうしたの!?」

クレード「あいつらが王都の兵たちだというのなら、俺とオリンスの特殊な力を見せておきたいのさ」

 「俺たちが只者ではないことを証明するためにもな」

千巌坊「この国の王に会うだけの者たちであれば、その力を十分に見せるのも良いだろう…」

クレード「あいつらに力を見せておけば、王や騎士団長への証明にもなりそうだからな」

ススキ「確かに王都の兵隊さんたちなら、私たちと同行してこの戦いの事を話してくれるかもしれないわね」

ホヅミ「そうですねぇ、お城に着いてからぁ「そなたらの力を証明しろ」なんてぇ言われたらぁ面倒ですしねぇ」

クレード「そういうことだ。力を見せるなら今のうちだ」


続いてクレードは、

クレード「オリンス、変身しろ」

オリンス「まあ変身するほどの数じゃないと思うけど、今回はいいか」

ウェンディ「押忍!そういえばウチら、クレードたちの変身姿見たことねぇッス!」

ホヅミ「どんな姿かぁ、楽しみですぅ」

ススキ「忍術とも違うその力、私も気になるわ」

千巌坊「やってみせよ、クレード、オリンス…」

クレード「いくぞ」

オリンス「うん」

クレード&オリンス「カラーチェンジ!&クリスタルオン!」

クレードとオリンスの体が光り輝き、

ブルー(クレード)「栄光のサファイア!クリスターク・ブルー!」

グリーン(オリンス)「希望のエメラルド!クリスターク・グリーン!」

二人はそれぞれ変身した。

ウェンディ「押忍!すげー変わったデザインッスね!」

ホヅミ「ホヅミもびっくりですぅ!こんな姿の戦士ぃ初めて見たですぅ!」

ススキ「マスクと全身を覆うスーツ…忍者やくノ一でもそんな恰好しないわ…」

千巌坊「確かに何とも言えん姿だ…だがその妙な姿とは裏腹におぞましいほどの妖力(※ワトニカでは「魔力」を妖力という)を放っている…」

鵺洸丸「それがしたちも変身したクレード殿の姿を見たときは最初驚いた…」

ナハグニ「しかし青き戦士となったクレード殿の実力は真でござった!」

鵺洸丸「緑の戦士となったオリンス殿の戦いを見るのは今回初めて…」

ナハグニ「ではその戦いぶりをしかと見届けさせてもらうでござる!」


変身した二人は先陣を切って加勢した。

当然その妙な姿に兵たちも驚き、

ダールファン兵⑦(サンドナイト)「何だ!?あの青と緑の戦士たちは!?」

ダールファン兵⑧(駱駝騎兵)「あのような者たちが南のルスカンティアから来たというのか!?」

アケメス「変わった姿だが、恐るべきはその魔力…」

 「あれだけの魔力で攻撃されれば、魔獣たちもひとたまりもないだろう…」

ブルーは魔蒼剣で魔獣たちを次々と倒した。そしてグリーンも槍(翠電槍)を手に取り、

グリーン(心の中で)「(強い魔力を放つことから重みを感じる翠電槍だけど、今はとても軽く感じる…)」

 「(やっぱり変身して魔力を高めたほうが、上手く扱えるってことなのかな?)」

魔獣「グガッ!」

グリーン(心の中で)「(とにかく今はこの翠電槍でしっかり戦おう…)」

グリーンは翠電槍を振りかざし、魔獣たちを倒した。


ブルー(クレード)とグリーン(オリンス)に続き、ナハグニや鵺洸丸たちも、

ナハグニ「さすがでござるな!クレード殿!オリンス殿!」

 「そのお力見させてもらったでござる!」

鵺洸丸「ではそれがしたちもそろそろ参ろうか…」

ウェンディ「押忍!変身できないウチらも十分強いところを兵隊さんたちに見せるッス!」

千巌坊「進もう…戦いの場へと…」

ナハグニたちも加勢し、ブルー(クレード)たちは遺跡の魔獣を全て倒した。

ダールファン兵⑦(サンドナイト)「見事だったぞ…そなたら…」

ダールファン兵⑧(駱駝騎兵)「おかげで我々兵の被害も最小限で済んだ…」


ブルー(クレード)たちに礼を言う兵士たちだったが、その時遠くから更なる魔獣たちが押し寄せ、

魔獣たち「ギャン!バフォッ!」

ダールファン兵⑤(魔法使い)「くっ!魔獣たちの増援か!」

そして増援を知ったグリーン(オリンス)は、

グリーン「任せてください!先陣を切ります!」

ブルー「クリスタークの戦士になれば、砂地でも馬(エメラルド・ベリル号)が機敏に動けるというわけか」

グリーン「いやブルー、ベリル号はもっと素早く動けるはずだよ」

ブルー「どういう意味だ?」

グリーン「ここは砂漠…だったらベリル号も馬からラクダに変われば、もっとに機敏に、もっと速く動けるはず!」

ブルー「お前、まさかまた…」

グリーン「エメラルド・ベリル号!姿をラクダに変えるんだ!」

エメラルド・ベリル号「ヒンッ!ヒーッ!」

グリーンと馬のベリル号の想いが重なり、ベリル号は馬からラクダの姿に変わった。

グリーン「いいぞ!ベリル号!」

 「ラクダのときの君はキャメル・ベリル号だ!」

キャメル・ベリル号「ブエーン!」


馬がラクダに変わった、それには皆驚き、

ダールファン兵⑦(サンドナイト)「馬がラクダに変わっただと!?」

アケメス「まさに変幻自在な魔力…力で攻撃するだけの戦士ではないようだ…」

ススキ「ま、まるで変化の術みたい…」

鵺洸丸「変化の術とはまた違うものであろうが、オリンス殿が相当すごいことをやったのは確か…」

千巌坊「姿を変える…多くの人間にとっては憧れの術…」

ブルー(心の中で)「(オリンスが変身して戦うのは今回で2回目だ)」

 「(前回の戦いで馬のベリル号を象に変えたが、今回は駱駝か…)」

 「(2度の戦闘で、それぞれジュエル・アビリティ(※12)を発動させるとは…)」

グリーン「いいぞ!かなりの速さで砂漠を走れる!」

キャメル・ベリル号「ブゥッ!」

そしてグリーンの持つ翠電槍も電撃をバチバチと放ち、

グリーン「キャメル・ベリル号の力と翠電槍の電撃の力、この2つの力で増援の魔獣たちを倒してやる!」

グリーンは増援で現れた魔獣たちをほとんど一人で倒した。

そしてグリーン(オリンス)を見たブルー(クレード)は、

ブルー(心の中で)「(オリンス、やはりお前は俺が思っている以上に…)」


増援も含め遺跡周辺の魔獣たちを全て倒し、ブルーとグリーンは変身を解いた。そして部隊長のアケメスから、

アケメス「君たちのおかげでベルゼポリスに現れた魔獣たちを短時間で駆除できた。心から礼を言おう」

オリンス「アケメスさん、お願いがあるのですが…」

アケメス「分かっている。我らの国王様にお会いしたいのだろ」

 「君たちへのお礼として、国王様のいるゴレスダール宮殿(※13)まで案内しよう」

オリンス「ありがとうございます」

クレード(心の中で)「(ルスカンティアの王は城に住んでいるが、ダールファンの王は城ではなく宮殿に住んでいる)」

 「(これも文化の違いということか…まあヴェルトン博士も言っていたことだが)」

ダールファン王国の国王に会うため、いざ宮殿へ。

次回へ続く。


※1…国の名前の由来は、オーストリアの世界遺産「ウィーン歴史地区」(文化遺産 2001年登録)とドイツの世界遺産「バンベルク市街」(文化遺産 1993年登録)より

※2…町の名前の由来は、イエメンの世界遺産「サナア旧市街」(文化遺産 1986年登録)より

※3…砂漠の名前の由来は、ナミビアの世界遺産「ナミブ砂海」(自然遺産 2013年登録)より

※4…村の名前の由来は、南アフリカの世界遺産「リフタスフェルトの文化的・植物的景観」(文化遺産 2007年登録)より

☆※5…村の名前の由来は、イランの世界遺産「イランのアルメニア人修道院建造物群」の構成資産「聖タデウス修道院」(文化遺産 2008年登録)より

☆※6…町の名前の由来は、オマーンの世界遺産「バハラ城塞」(文化遺産 1987年登録)より

※7…元ネタは江戸時代の教育施設「寺小屋」より。「高寺小屋」はワトニカの高校のこと。また、小学校は「小寺小屋」、中学は「中寺小屋」という。ただしワトニカでも、大学はそのまま「大学」、短大も「短大」という。

※8…元ネタは青森の方言、津軽弁。「そったに」は「そんなに」、「ありがとごす」は「ありがとう」の意味。

☆※9…町の名前の由来は、バーレーンの世界遺産「真珠採り、島の経済を物語るもの」(文化遺産 2012年登録)がある「ムハッラク島(ムハラク島)」より

☆※10…村の名前の由来は、カタールの世界遺産「アル=ズバラの考古遺跡」(文化遺産 2013年登録)より

☆※11…遺跡の名前の由来は、イランの世界遺産「ペルセポリス」(文化遺産 1979年登録)、門の名前の由来はペルセポリスの「クセルクセス門(万国の門)」、王の名前の由来は「ダレイオス1世」より

※12…「ジュエル・アビリティ」とは、クリスタークの戦士一人一人がそれぞれ発揮できる「固有の特殊能力」。ブルーなら鳥のような翼で空を飛んだり、グリーンなら乗っている馬(エメラルド・ベリル号)を象(エレファント・ベリル号)に変えたりといったところ。

ブルーにしてもグリーンにしても、今後戦いの中で更なる特殊能力を引き出せるかも?

☆※13…宮殿の名前の由来は、イランの世界遺産「ゴレスターン宮殿」(文化遺産 2013年登録)より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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