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第11話 ナミーブル砂漠

11話目です。今回の話の主な舞台となる「ナミーブル砂漠」のモデルは、ナミビアの世界遺産「ナミブ砂海(or ナミブ砂漠)」で、個人的にも好きな世界遺産です。


<主な登場人物の紹介>


<クレード一行 計8人>

◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。持っている剣の名は「魔蒼剣」。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身する。

自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。

◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)

・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。

馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。愛馬の名はベリル号。

戦局によっては馬を降りて戦うこともある。使う武器は槍(翠電槍他)と斧。愛馬の名はベリル号。

魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身する。

大学で地理を勉強した。

ルスカンティア王国ジルミエンス村(※1)出身。

○ナハグニ・按司里あじさと(男・31歳)

・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。

愛用する刀の名は「グスク刀」。

鵺洸丸やこうまる(男・30歳)

・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。

○ウェンディ・京藤院きょうどういん(女・20歳)

・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身。柔道家。

語頭に「押忍」、語尾に「~ッス」と付けて話すことが多い。

○ホヅミ・鶴野浦つるのうら(女・22歳)

・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。

○ススキ(女・22歳)

・ワトニカ将国エゾ藩出身の新人くノ一。

千巌坊せんがんぼう(男・39歳)

・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。

回復魔法(※魔法はワトニカでは「妖術」という)が使える。


<その他人物>

☆◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)

・この4月に音楽大学を卒業したばかりの新人音楽家。得意な楽器はハープ。

白い髪をしている。

この物語における重要人物の一人。

誕生日は2月24日。

(☆:新キャラ)

ケルビニアン暦2050K年5月10日。

一行はルスケニーア山(※2)を下山し、北の荒野・砂漠地帯にたどり着いた。

そしてリヒタルース村(※3)郊外の荒野を歩いている時、

ホヅミ「この辺りはぁ森や緑もぉ少ないですねぇ」

 「まさに荒野ですぅ」

ウェンディ「押忍!それでも所々に大きな木が生えてるッス!」

オリンス「あれはアロエ・ディコトマって木なんだ」

 「この辺りにはよく生えているよ」

ナハグニ「その名からすると、あの木はアロエの仲間なんでござるか?ヨーグルトとかによく入っている」

オリンス「うん。アロエの仲間でも大きくなる種類らしいね」

鵺洸丸「さすがは遠い異国…ワトニカでは目にすることもない植物だ…」

オリンス「植物だけじゃないよ」

 「カラカルやヒョウ、クリップスプリンガーっていう見た目が鹿に似ているウシ科の動物なんかもこの辺りに生息しているよ」

ススキ「痩せている土地かと思っていたけど、いろいろな植物や動物がこの場所で暮らしているんですね」

オリンス「朝と夜の気温差で露ができるんだ。その露がこの地に暮らす動物たちの命を支えているんだよ」

千巌坊(馬車を操作しながら)「露…つまりは水…まさに命の源」

クレード「さすがは地元の人間だ。ここに限らずお前はルスカンティアのことをよく知っているよ」

オリンス「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺としてはルスカンティア以外の国のことももっと知っていきたいんだ。大学で地理を学んだ人間として…」

鵺洸丸「だから馬車に世界地理の本を積んでおったのか。時々確認するために」

オリンス「うん。大学で勉強したことを忘れないためにもね」

ホヅミ「ウェンディさんもぉそういう本読んでくださいよぉ」

ウェンディ「押忍…ウチは地理どころか、勉強はどれも苦手ッスよ…」


千巌坊が話を変え、

千巌坊(馬車を操作しながら)「オリンス…このまま進めば関所に着くのか?」

オリンス「うん。この村の北にナミーブル砂漠(※4)への関所があるから」

クレード「関所か、確かラグラード騎士団長がサインしてくれた協定書を見せる場所だったな」

ススキ「そうですね、ちゃんと見せましょう」


5月12日の朝、一行はナミーブル砂漠への関所に来ていた。

ルスカンティア兵①(軽装な砂漠の騎士・サンドナイト)「協定書を確認いたしました」

 「サインをしていただいたラグラード騎士団長のためにもお力になりましょう」

続いて別の兵士が、

ルスカンティア兵②(サンドナイト)「では申し訳ございませんが馬4頭をお返しください」

 「代わりにラクダを4頭ご用意いたしますので」

馬車の馬たち「ヒッヒーン!」

千巌坊「馬車を引いていた馬たちともここでお別れか…」

ススキ「ここまで私たちを運んできてくれて、本当にありがとう」

 「イヤイライケレ(※5)」

ルスカンティア兵②(サンドナイト)「この馬たちにはまた別の馬車を引く仕事をしてもらうつもりです」

クレード「だったらそっちでも頑張ってくれ」

オリンス「馬に乗る人間として君たちの活躍を祈っているよ」

馬車の馬たち「ヒッ!」

クレードたちは馬たちに言った。そして、

オリンス「ほら、ベリル号も馬車の馬たちにお礼を言わなきゃ」

ベリル号「ヒン!ヒーッ!」

馬車の馬たち「ヒヒーッ!」

馬車の馬たちもベリル号の声に反応するかのように鳴き声をあげた。そして馬たちは兵士たちに引かれ去っていった。


馬たちはいなくなったが、代わりとなるラクダ4頭を貸してもらい、馬車の箱部分とラクダたちを繋いだ。

ラクダたち「ブェー!」

ウェンディ「押忍!新しい旅の仲間たちッスね!」

ホヅミ「よろしくお願いしますぅ」

ナハグニ「こうして見ると馬とは全然違う生き物でござるなあ」

鵺洸丸「一般にワトニカではラクダを家畜にしておらぬからな。それがしたちにとっても珍しい動物でございまする」

ススキ「私と千巌坊さんであなたたちを動かしていくわ。よろしくね」

千巌坊「砂漠での移動はよろしく頼むぞ…」

ラクダたち「ブッ!」

クレード「しかしこのラクダたちもレンタルなんだろ?俺たちにくれるわけじゃないんだろ?」

ルスカンティア兵①(サンドナイト)「申し訳ございませんが、それが「南の月馬車協定」の内容でございますので」

ルスカンティア兵③(サンドナイト)「ラクダの代わりとなる馬たちは砂漠地帯を抜けた関所でまた別にご用意いたします」

オリンス「旅の予定ではアイルローマ市に続く関所を通るつもりです」

ルスカンティア兵①(サンドナイト)「それでしたら、そちらの関所でまた協定書を見せてください」

オリンスたちは兵士から協定書を返され受け取った。


続いて兵士たちから話があり、

ルスカンティア兵③(サンドナイト)「では皆さん、これからラクダのことや乗り方、扱い方についてお話しします」

 「馬車の御者でない方も一緒にお聞きください」

ルスカンティア兵④(女性・聖侶)「その他熱中症対策についてもお話しします」

 「今の5月(※6)の時期は砂漠も涼しいほうなので熱中症の危険はほぼないと思いますが、初めて砂漠を移動する方には必ずお話ししていることですので」

クレード(心の中で)「(熱中症…博士が言ってた注意すべき病気か…)」

クレードたちはラクダという動物やその扱い方、熱中症対策に関するレクチャーを受けた。

ウェンディ「押忍!ウチ、ラクダなんて動物ほとんど知らなかったから、勉強になったッス!」

ホヅミ「ラクダさんにはぁ、ヒトコブラクダさんとぉフタコブラクダさんがいてぇ、家畜としてぇ利用しているのはぁほとんどヒトコブラクダさんなんですねぇ」

鵺洸丸「ゆえに先程頂いたラクダたちも種はヒトコブというわけか…」


千巌坊「手綱をしっかりと持つ…動かす方向を調整する…」

 「馬の扱いと変わらぬ面もあるな…」

ススキ「でもこの先ラクダたちを上手く扱い切れるかしら…ちょっと心配だわ…」

 「乗馬だって覚えられたけど、それは大学とかでやってきたことだから…」

ルスカンティア兵③(サンドナイト)「確かに初めてではいろいろと心配でしょう。ですから最初はラクダをよく扱っている方々と同行するのはどうでしょうか?」

ルスカンティア兵④(女性・聖侶)「少なくともナミーブル砂漠を渡り切るまではそのほうがよろしいかと」

オリンス「どなたか当てがあるんですか?」

ルスカンティア兵③(サンドナイト)「ここは関所のある村ですから、商人なども多く通ります」

 「ラクダで砂漠を通りその先の町や村にまで行く商人も多いので、そういった者たちに声をかけ皆様の同行をお頼みしようかと思います」

ナハグニ「おおっ!そこまでやってくれるんでござるか!」

ルスカンティア兵①(サンドナイト)「皆様のお役に立たないと、こちらもラグラード騎士団長に合わせる顔がございませんので」

クレード「感謝するよ。騎士団長にもあんたらにもな」


その後食糧などを運ぶ商人の団体が関所に来て、

ルスカンティア兵③(サンドナイト)「こちらの方々はラクダの扱いにまだ慣れていない」

 「ナミーブル砂漠を渡る間だけでも同行を頼めないだろうか?」

商人①(中年男性)「それでしたら、我々の荷物を守るボディーガードをしていただけますか?」

 「ナミーブル砂漠の先にあるキルワンキルースの町(※7)でボディーガード代をお支払いしますので」

オリンス「それは助かります。こちらこそよろしくお願いします」


一方クレードとナハグニは商人たちの魔力を感じ取り、

クレード(心の中で)「(この商人たち、そこそこの魔力がある…)」

 「(おそらく自分たちだけでも魔獣と戦えるのだろうな…)」

 「(まあ常にボディーガードがついているとも限らないしな…自分の身は自分で守るってことか…)」

ナハグニ(心の中で)「(うーむ…むさ苦しいおっさんばかりでござるなあ…まあ妖力が高いのは認めるでござるが…)」


クレードたちは商人と共に関所を越え、ナミーブル砂漠へと進んだ。

ウェンディ「押忍!この砂漠は海にも近いんッスね!」

ホヅミ「砂漠のそばに海ぃ。面白い景色ですぅ」

オリンス「ウェンディ、ホヅミ、このナミーブル砂漠にとって海はとても大切なんだよ」

 「海から流れ込む霧が砂漠では水資源になるからね。その水のおかげでこの辺りの植物や動物たちは生きていけるんだよ」

商人③(中年男性)「君はこの砂漠の環境に詳しいようだね。地元の人かい?」

オリンス「故郷は山村のジルミエンス村なんで、地元ってほど近くはないです」

 「でも俺は大学で地理を勉強しました。それでいろいろ覚えたんです。この国の事も他の国々の事も」

オリンスは明るい表情で地理を勉強したことを話した。


次の日の5月13日。

砂漠の中でキャンプをしたクレード一行や商人たちは、ナミーブル砂漠の中でも「死の沼地」と呼ばれる場所に来ていた。しかしここで魔獣たちと遭遇し、

魔獣たち「ギャ!ギャオー!」

商人①(中年男性)「参ったな…こんな所で魔獣たちと遭遇してしまうとは…」

オリンス「心配しないでください!そのために俺たちがいるんです!」

ウェンディ「押忍!ここが砂漠だろうと叩き潰してやるッス!」

鵺洸丸「しかしこの辺りは「死の沼地」と呼ばれておるのか…」

商人②(中年男性)「そうなんだ。なんでも大昔は水のある沼地だったらしいからね」

商人③(中年男性)「まあ今は水も干上がってしまい、沼地の塩分や化石となった枯れ木だけが残っているが」

ススキ「それじゃあ、あの枯れ木も大昔からあるのね…」

ホヅミ「でもぉその枯れ木のおかげでぇ、なんか面白い景色になってますぅ」

商人①(中年男性)「ハッハッハッ。良いことを言うじゃないか」

 「お嬢さんの言うように、あの枯れ木と砂地が作る景観は独特ともいわれ、観光目当てでこの死の沼地を見に来る人間もそれなりにいるんだよ」

ナハグニ「なるほど。ここが観光スポットだと申すのなら、なんとしてもお守りせねば!」

クレード「その通りだ。ここはお前ら魔獣が踏み込んでいい場所ではない」

千巌坊「私も共に戦おう…静かに眠る木々を守るために…」

魔獣たち「ウガーッ!」

オリンス「いこう、みんな!」

クレード「オリンス、お前は今回ベリル号から降りて戦う気か?」

オリンス「うん。馬にとって砂漠は決して楽な環境じゃないからね」

 「だから少しでもベリル号の負担を減らすためにも、今回は降りて戦うよ」

千巌坊「確かに砂漠で馬に乗って戦うとなると、馬自身にも負担はくるであろうな…」

オリンス「城で貰った斧を使う!これで勝負だ!」

魔獣たち「グガッ!グーガッ!」


ナミーブル砂漠の死の沼地で、クレードたちは魔獣たちとの戦いを始めた。

クレード「砂地で足を取られるな…」

 「ならばオーラの剣を伸ばすまでだ…」

 「ハァァッ!」

クレードは魔蒼剣にありったけのオーラを込め、剣よりも何倍も長いオーラを纏わせた。

クレード「長く伸びたオーラの力で仕留めてやる!」

 「ハァッ!」

魔獣たち「グギャッ!?」

魔蒼剣のオーラが魔獣たちの体を貫いた。


オリンス「トゥワ!」

魔獣「グベッ!?」

オリンスは斧で魔獣を倒した。

オリンス「動きづらい分、敵の動きをよく見て確実に斬る!」


続いてナハグニたちも、


ナハグニ「我がグスク刀の斬撃!受けてみるでござる!」

 「グスク刀・勝連の太刀!」

ナハグニがグスク刀を振りかざすとその斬撃が飛ぶ刃となり、離れた所にいる魔獣たちは飛ぶ刃を食らい切り裂かれた。


鵺洸丸「それがしは忍び…たとえ砂地であろうとその歩みは止まらん…」

動きづらい砂地にもかかわらず、鵺洸丸は目にも留まらぬ速さで魔獣たちに近寄り、

魔獣(突然近づいた鵺洸丸に驚き)「ヴェズ!?」

鵺洸丸「このオカヤドカリの手甲鉤で切り裂いてくれる…」

鵺洸丸は手甲鉤で魔獣たちの体をズタズタに切り裂いた。


ウェンディ「押忍!砂地にその醜い体を叩きつけてやるッス!」

 「高山!石水体落としィ!」

柔道の技「体落とし」でウェンディは魔獣を倒した。


ホヅミ「香車さぁん、思いっきり前進してくださぁい」

ホヅミが将棋盤の香車の駒を動かすと、駒の分身である駒人形たちも動き、

駒人形(香車)①「香!香!香!」

駒人形(香車)②「香!!香!!香!!香っ!!」

車輪付きの板(板の形は将棋の駒の形)に乗った武者の姿をした香車の駒人形2体が魔獣たちを倒した。


ススキ「私は蝦夷忍法を使うわ」

 「蝦夷忍法!ナナカマド火遁!」

忍術で大きな炭のようなものを生み出し、魔獣たちを取り囲んだ。

魔獣(大きな炭に驚く)「グゲッ!?」

ススキ「アペニ(※5)!」

ススキがアペニと言うと炭は一斉に燃え始め、魔獣たちの体を焼き尽くした。


千巌坊「フンッ!ハッ!」

千巌坊は持っている錫杖に妖力(※魔力)を込め、近づいてくる魔獣たちを錫杖で叩き倒した。

千巌坊「物の怪たちよ…坊主が戦えぬと思ったら大間違いだ…」


一方クレードたちの戦いを見ていた商人たちは、

商人①(中年男性)(小声で)「(あの若者たち、大したものだな…)」

商人②(中年男性)(小声で)「(いざとなったら俺たちも援護するつもりだったが、これでは全く必要ないだろう…)」

商人③(中年男性)(小声で)「(ハッハッハッ!普段は野菜や果物を保存するために使っている冷凍魔法を戦いの場で見せても良かったんだがな!)」


死の沼地での戦いの後、クレードたち7人は千巌坊に回復の妖術をかけてもらった。

千巌坊「回復の小妖術 浅陽治光・連灯…」

一度に複数の人間を回復させる連灯の術式により、クレードたちの疲労感が取れた。

ウェンディ「押忍!疲れが吹き飛んだッス!」

 「千巌坊!おおきにッス!」

ホヅミ「やっぱりぃ回復できる人がいるとぉ違うですぅ」

鵺洸丸「千巌坊殿、感謝いたしまする」

ナハグニ(心の中で)「(うーむ…アラフォーおじさんの妖力を分けてもらって回復したと思うと、素直に喜べないでござるな…)」

 「(まあ千巌坊殿もあの商人の方々からみれば若いほうなのだが…)」

千巌坊「回復の術は早くかけたほうが良いのだ…」

クレード「その辺の魔法の話はヴェルトン博士から聞いているな」

 「回復魔法は早めにかけないと効果が出にくいってな」

ススキ「怪我をして次の日になったら妖術で直すよりもお医者様に診てもらうほうが良いっていうくらいですからね」

オリンス「そう考えると世の中うまくできているよ」

 「回復魔法が万能だったらお医者さんはみんな廃業しちゃうかもね」


仲間たちを回復させた後、千巌坊は魔獣たちの死骸の前で念仏を唱えた。

千巌坊(手を合わせながら)「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…」

クレード「人々に害をなす魔獣にまで供養をするとはな」

ナハグニ「千巌坊殿自身も物の怪たちと戦ったというのに」

商人①(中年男性)「それが聖職者ってもんだぜ、兄ちゃんたち」

商人②(中年男性)「聖職者らしく相手が何もんだろうと命を尊く思うんだろう」

鵺洸丸「まあそういう気持ちがなければ念仏など唱えんか…」

ウェンディ「退治するけど同時に供養する心もあるみたいッスね」

ホヅミ「さすがはぁお坊さんですぅ。ホヅミなんてそこまでぇ考えないですよぉ」

オリンス(心の中で)「(魔獣相手でも命を想う気持ちか…)」

ススキ(心の中で)「(千巌坊さんには悪いけど、悪さをする物の怪たちの魂はきっとテイネポクナモシリ(※5)へと送られるでしょうね…)」

魔獣たちの命に対する考え方はそれぞれであった。 


次の日の5月14日の夕方。クレードや商人たちはナミーブ砂漠を抜け、ルスカンティア王国とダールファン王国の国境まで来た。

オリンス「キルワンキルースの町、ダールファン王国との国境にある町…」

 「黄金・鉄・魔獣の牙・繊維・陶磁器とかを取引している町なんだけど、俺も今回初めて来たよ」

ウェンディ「押忍!ここもリヒタルース村と同様栄えているッス!」

オリンス「旅人や商人、遠征に出る兵士とか、関所は多くの人が出入りする所だからね」

 「世界的に見ても関所のある町や村なんかは栄えていることが多いよ」

ホヅミ「町にぃ商人さんがぁいっぱいいるからぁ、いろいろなぁお店や品がぁあるんですねぇ」

街並みを見てホヅミは思った。


そしてここでクレードたちと同行していた商人たちが、

商人①(中年男性)「それでは私たちはこの町の宿に泊まりますので、ここで失礼させていただきます」

ススキ「ラクダのお世話や扱い方などを教えていただき、いろいろありがとうございました」

 「イヤイライケレ(※5)」

千巌坊「この先は自分たちで駱駝車を動かしていこう…世話になったな…」

商人①(中年男性)「いえいえ、お役に立てて何よりですよ」

商人②(中年男性)「では町に着きましたので今日までのボディーガード代をお支払いしますね」

 「30万カラン(※8)です。どうぞお受け取りください」

鵺洸丸「こんなに頂いてよろしいのか?」

 「野菜や果物を中心に売るそなたらにとっては安くない額であろう?」

商人③(中年男性)「お気になさらず。魔獣たちとも戦ってくれたんですから」

商人②(中年男性)「それに我々が売る野菜や果物を高値で買っていただいている貴族のお得意様もおりますのでね」

クレードたちは商人たちと別れた。


そして、

オリンス「それじゃあ俺たちも行こう」

 「今日中にルスカンティアを抜けてダールファンにたどり着きたいからね」

 「そっちに着いてから一泊しよう」

ホヅミ「町の案内板を見るとぉ、この大通りを進めばぁ関所に着くみたいですぅ」

クレード「砂漠の夜は冷える。もう夕方だし急ぐぞ」


ナハグニ「これでルスカンティアともお別れでござるか…」

 「思えばこの国に来て半年、ルイボスティーをよく飲んだでござるなあ…」

クレード(心の中で)「(そういえばワトニカの侍であるこいつが遠い異国のルスカンティアにまで来た理由をまだ聞いてなかったな)」

 「(まあナハグニ本人は俺たちにその理由をあまり話したくないようだが、少しは気になるな…)」


クレードたちは大通りを通り関所まで来た。

ルスカンティア兵④(鎧を来た騎士)「旅の方々ですね。どうぞお通りください」

 「ダールファン王国への関所は橋の向こうにありますので」

クレードたちはキルワンキルースの町の関所を抜け、橋を渡り、

ホヅミ「下にぃ大きな川が流れているですぅ」

オリンス「この川はソンゴムーラ川(※7)だね。ルスカンティアとダールファンの国境沿いを流れているんだ」

鵺洸丸「なるほど。川が国境の役割を果たしているのか」

オリンス「世界的にも川が境界線になっている所は多いよ」

大河ソンゴムーラ川に架かる橋を渡り切り、クレードたちはダールファン王国サナンダルアの町(※9)の関所に着き、

ダールファン兵①(サンドナイト)「ルスカンティアからの旅の方々ですね。どうぞお進みください」


続いて兵士は、

ダールファン兵①(サンドナイト)「我が国の王都はこの町からですと一週間程度はかかります。どうぞお気をつけて」

クレードたちはルスカンティア王国を抜け新たな国ダールファン王国にたどり着いた。そして乳香の交易が盛んなサナンダルアの町の宿で一泊し、彼らは王都を目指し砂漠を進んで行った。



そしてクレードたちがダールファン王国に着いた頃、北の月(北側の大陸)のウインベルク共和国(※10)の近海では、

アンシー(心の中で)「(砂漠の国ダールファン王国…初めて行く国だわ…)」

 「(遠い異国の人たちにも感動してもらえるよう精一杯頑張らなきゃね…)」

船に乗っている新人音楽家のアンシー。どうやら彼女はこれからクレードたちがいるダールファン王国へ向かうようだが…

新たな国ダールファン王国にたどり着いたクレードたち。この国で待つものとは…

そして新人音楽家のアンシーとどう関わっていくのか?

次回に続く。


※1…村の名前の由来は、エチオピアの世界遺産「シミエン国立公園」(自然遺産 1978年登録)より

※2…山の名前の由来は、ケニアの世界遺産「ケニア山国立公園/自然林」(自然遺産 1997年登録 2013年拡張)より

☆※3…村の名前の由来は、南アフリカの世界遺産「リフタスフェルトの文化的・植物的景観」(文化遺産 2007年登録)より

※4…砂漠の名前の由来は、ナミビアの世界遺産「ナミブ砂海(or ナミブ砂漠)」(自然遺産 2013年登録)より

※5…元ネタはアイヌ語。「イヤイライケレ」は「ありがとう」の意味、「アペニ」は「火の木」の意味で「ナナカマド」のこと、「テイネポクナモシリ」は「地獄」や「冥界」のこと。

※6…ルスカンティア王国はガイノアースの南半球にある国なので、北半球の国々とは季節が逆になる。そのためルスカンティアの5月は北半球の11月、晩秋の時期に相当し肌寒い頃なのだ。

☆※7…町や川の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「キルワ・キシワニとソンゴ・ムナラの遺跡群」(文化遺産 1981年登録)より

※8…「カラン」とは魔法大陸ムーンリアス全土で流通しているお金。1カランは日本円の1円とほぼ同じ価値。

☆※9…町の名前の由来は、イエメンの世界遺産「サナア旧市街」(文化遺産 1986年登録)より

※10…国の名前の由来は、オーストリアの世界遺産「ウィーン歴史地区」(文化遺産 2001年登録)とドイツの世界遺産「バンベルク市街」(文化遺産 1993年登録)より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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