第67話 ヴェルトン memory ② ~ 浅葱色の髪、おトミ登場 ~
67話目です。
今回の話で、ep数が100に達成しました。
記念すべき100epで本作の重要人物の一人である「おトミ」を登場させることができて、作者としても嬉しいです。
おトミの髪色である「浅葱色」は好きな色の一つです。
(※今回の登場人物たちについては、前々回「○第66-72話の主な登場人物の紹介」の回をご参照ください)
ヴェルトンの合成魔法により思うように指が動くようになったバーテッツには、屋敷内の工房よりも立派な大学内の工房が与えられ、
バーテッツ「結構な広さじゃなか…」
「街中にある鍛冶屋よりも立派だぞ…」
ヴェルトン「ふふっ、気に入ってくれたかい?」
バーテッツ「本当に俺一人でここを使っていいのか?」
ヴェルトン「人手が欲しいのなら、助手や私のゼミ生たちに手伝わせるぞ」
「特にゼミ生たちにとって防具作りは学習になるからな」
バーテッツ「分かった。必要なものがあれば、その都度用意してもらうぞ」
ヴェルトン「ハッハッハッ!いい防具を作ってくれるのなら出し惜しみはしないさ!」
「なんでも遠慮なく言ってくれ!」
ヴェルトン「それとあんたはこれからこの大学内で寝泊まりしてくれ」
「客人用の宿舎の中から3部屋確保した。今後はその3部屋を自由に使ってくれて構わんよ」
バーテッツ「大したものだな。通常は一人一部屋なんだろ?」
ヴェルトン「まあな。だがあんたに対してはできる限りのもてなしをしなければならない」
「あんたに満足してもらうためなら、この大学に如何なる要求もするさ」
バーテッツ「ふっ、大した権力だよ…」
ヴェルトン「私は次の学長になるべき大学教授、学内に権力がなくてどうするというのかね?」
それからバーテッツは大学内で生活し、学内の工房で防具作りに励んでいた。
バーテッツ(金槌で鉄を叩きながら、心の中で)「(感謝するぞ、ヴェルトン…)」
「(おかげで思い出してきたよ、防具作りの楽しさを)」
手伝いのゼミ生①(小声で)「(バーテッツさん、なんか生き生きしているね)」
手伝いのゼミ生②(小声で)「(元々凄腕の防具職人なんだ。久しぶりに鍛冶をして楽しさを思い出してくれたんじゃないかな)」
手伝いのゼミ生③(女子・小声で)「(仕事に「楽しさ」や「やりがい」があったからこそ、バーテッツさんは凄腕以上の「鋼神の腕」とまで呼ばれるくらい腕が上がったんじゃないかしら)」
かつて鋼神の腕とまで称されたバーテッツにより作られた鎧・盾・兜といった防具はヴェルトンに届けられ、ヴェルトンは合成魔法を使い、とある石とバーテッツの防具を合成していた。
ヴェルトン(心の中で)「(いいぞ、バーテッツ。その調子だ)」
「(お前の防具を合成すればするほど、この「プロト・ジェムストーン」にパワーがみなぎっていくぞ…)」
3ヶ月後の1961K年の5月、ヴェルトンとバーテッツは研究室で話をしていた。
バーテッツ「俺の防具がそんな石ころと一緒にされてしまうとはな…」
ヴェルトン「この「プロト・ジェムストーン」をただの石ころ扱いしないでくれ」
「これは変身ヒーローを誕生させるための重要な道具なのだよ」
バーテッツ「あんたの描く変身ヒーローというのはよく分からんが、その石ころには「プロト」とついていることから、あくまで試作品というわけか?」
ヴェルトン「その通りだ。完成形を作るためにはどうしても試作品が必要だからな」
「私はこの「プロト・ジェムストーン」を通じ、完成形ともいえる「グラン・ジェムストーン」を最終的に20個程度作りたいと思っている」
「強力な魔力を宿した20人くらいの変身ヒーローに世界中の魔獣どもを撲滅してほしいのだよ」
バーテッツ「ジェムストーンは魔獣撲滅のための手段というわけか…」
ヴェルトン「3年後の学長選挙までに20個程度のグラン・ジェムストーンを完成させるのは絶対に無理だろう」
「だが一つ二つでも完成すれば、それは私にとって大きな実績となる」
「その実績こそが選挙戦で有利に働いてくれるはずだ」
バーテッツ「フンッ。あんたが何を考えていようが、俺はあくまで職人として防具を作り続けるだけだ。あんたの実績作りを第一に考えているわけじゃない」
「俺にとって選挙の結果など知ったことではないのだ」
ヴェルトン「構わんさ。これからも好きにしてくれ」
「なんであろうと防具を作ってくれるのなら、それでいいのだよ」
「結果を出すのはあくまでこの私なのだからな」
バーテッツ「まったく…「水と油」だよ、俺とあんたは…」
ヴェルトン「水と油であろうと結果は確実に出ている」
「プロト・ジェムストーンのパワーは以前よりも増している。これもあんたの防具のおかげでというわけだ」
バーテッツ「…」
ここで話題が変わり、
バーテッツ「しかし相変わらず趣味の悪い部屋だな…」
「水槽の中の金属メダカや金属金魚が不気味でしょうがないよ…」
ヴェルトン「私の合成魔法の腕を上げるためだよ」
ヴェルトン「ラトイエル牧場のような指定された牧場から購入し、ヒメダカや和金のような指定された実験動物を使い、動物一匹一匹に対し魔法使用書を記入したうえで、合成魔法を使っているのだ」
「つまり完全な合法なのだよ」
バーテッツ「たとえ実験動物であり合法だとしても、金属化されて泳ぐメダカや金魚を見てもなんとも思わないのか?生き物に対する情というものはないのか?」
ヴェルトン「実験動物を供養するための慰霊碑はキャンパス内にあるし、時折神父やシスターを呼び慰霊祭も行っている」
「実験動物たちに対して敬意がないわけではない」
バーテッツ「だが後日供養すればなんでも許されると思っているのか…」
ヴェルトン「確かに命ではある。しかし同時に商品でもある」
「商品でもある以上、使うべきときに使わねばなるまい」
バーテッツ「命を商品扱いか…あんたみたいな考え方をする奴らが世の中にいたから、奴隷制度が生まれたんだろうな…」
ヴェルトン「あんたは気難しく考えすぎだよ」
「あんただって家畜の肉は食うだろ?」
「実験動物たちを哀れむのなら、まずは食用となる家畜たちのことも考えてみるんだな」
バーテッツ「まあそう言われると反論のしようもないが…」
一旦口を閉ざしたバーテッツであるが、部屋に飾られているとある絵が目に映り、
バーテッツ「緑の背景に白いDの文字…」
「金属魚の水槽といい、あんたの趣味はよく分からんな…」
ヴェルトン「緑とDの絵の事か。あの絵は若い頃の私をイメージした絵なのだよ」
「ゲン担ぎのために家から持ってきて、研究室に飾ったのさ」
バーテッツ「緑というのはあんたの髪の色でもイメージしたのか?」
ヴェルトン「その通りだ。60になった今は白髪も目立つが、若い頃は緑一色の髪だったのだ」
ヴェルトン「緑色の髪で、緑豊かなオルドルチャ村(※1)で生まれたことから、私は「ヴェルトン」と名付けられた」
「ヴェルトンの名はアイルクリート語で緑を意味する「verde」(※2)が由来なのだよ」
バーテッツ「あんたにとって緑は自分の名前に繫がる色というわけか」
「ならDのほうは何を意味するというのだ?」
ヴェルトン「ハッハッハッ!「D」というのは、いろいろと考察されるものではないのかね!ホオジロザメ、大教授よ!」
バーテッツ「ホオジロザメ…大教授…」
(どこか嬉しそうな様子で)「まったく、何を言っているのやら…」
二人が話をしているそのとき、
「失礼します」
研究室に女子生徒が入ってきた。
浅葱色の髪のおトミ「ヴェルトン先生、バーテッツさん」
「レモンティーをお持ちしました」
ヴェルトン「気が利くじゃないか、おトミ」
トミ「ありがとうございます。クッキーも持ってきましたので、どうぞ召し上がってください」
バーテッツ「君は確か3年生のゼミ長だったね?」
おトミ「トミ・天音舟渡と申します」
「ワトニカ将国ヤマトエド出身です」
ヴェルトン「卒業生も含め私の教え子は150人以上もいるが、ワトニカ人は彼女が初めてだよ」
バーテッツ「ワトニカか、開国したのが1945K年だから、もう15年くらい経つのか…」
ヴェルトン「ワトニカでは開国後一般市民たちも自由に海外に行けるようになったからな、おトミのように異国へ学びに来る学生たちも増えているようだ」
おトミ「ヴェルトン先生、大学近くのカフェやレストランでは、今、和食フェアを開催してますよ」
「お寿司・焼き鳥・天ぷら・生姜焼き・お豆腐のお味噌汁とかが食べられるんですよ」
ヴェルトン「おトミ、いい情報を持ってきてくれたな」
「それならば今日のpranzo(※2)は皆で和食を食べようじゃないか」
おトミ「分かりました、先生」
「ゼミの先輩方や同級生たちにも声をかけてきます」
ヴェルトン「お前も来い、バーテッツ」
「和食は実に美味いぞ」
バーテッツ「和食か、確かにあまり食べたことはないが…」
おトミ「そういえば、先生」
「アイルクリート料理のピザに和食の照り焼きチキンをのせた「照り焼きチキンピザ」もメニューに出しているみたいですよ」
ヴェルトン「照り焼きチキンピザだと、それは本当か!?」
バーテッツ「どうしたんだ、ヴェルトン?」
「そのピザが気になるのか?」
ヴェルトン「私の大好物なのだよ!今一番好きな料理といっても過言じゃないくらいな!」
おトミ(笑顔で微笑みながら)「ふふっ、先生ったらそんなに興奮しちゃって」
「照り焼きチキンピザだけではなく「スティックチーズの細巻き」もあるそうですよ」
ヴェルトン「私の大好物が2品もあるとはな!実に楽しみだ!」
「今日は最高の一日になるぞ!」
「ハッハッハッ!」
バーテッツ「まったく…61のいいオヤジが大はしゃぎして……」
バーテッツ(心の中で)「(しかし随分久しぶりな気がするよ…こういうはっちゃけた空気を感じたのは…)」
「(ヴェルトン、あんたは何かと破天荒な奴だが、今の俺にとって数少ない友人の一人になったのかもな…)」
「(だがヴェルトン、俺の最大の友たちはコオタたち12人なのだぞ…)」
「(あんたが俺の中でコオタたち以上の存在になることだけはありえないのだ…)」
少しずつではあるが、ヴェルトンに対し打ち解けていくバーテッツ。
大学での生活により、彼も変わっていくだろうか?
次回へ続く。
※1…村の名前の由来は、イタリアの世界遺産「ヴァル・ドルチャ(オルチア渓谷)」(文化遺産 2004年登録)より
※2…元ネタはイタリア語。『verde』は「緑」、『pranzo』は「昼食」などを意味する。




