冒険家探偵
Q, 先ずは現時点での感想をお聞かせください。
A, そうですね。本当にクタクタですけど、やっぱり行って良かったってそう思いますね。
Q, 今回前田さんは、探偵として、とある事件を追いかけ、南極探検に至ったとのことでしたが……。
A, はい。
Q, どうしてわざわざ南極まで?
A, もちろん捜査の一環です。動機が知りたくてね。とある事件で、容疑者が私に言ったんですよ。『あの南極の景色を守るためなら、僕は殺人だろうが、どんなことだって辞さない』ってね。何だか清々しい顔までしちゃって。それで、そんなに良い景色なのか、自分で確かめてみなくちゃなって。
Q, なるほど。容疑者の動機を知りたくて、南極まで出向いた訳ですね。前田さんは、南極に行く途中、北京に寄っておられますね。
A, ええ。それも当然、捜査です。
Q, そこで前田さんは北京ダッグと、上海蟹、中華三昧フルコースを注文しておられます。
A, はい。被害者の胃の中から、鴨肉が見つかりましてね。それで、鴨肉の消化具合をこの身をもって確かめようと……。どうしても捜査上、食べざるを得なかったんです。
Q, 捜査上食べざるを得なかった。それから北京を丸2日満喫した後、エジプトに向かった。
A, エジプトも良かったなぁ! 実は、担当する事件が起きた部屋が、『ツタンカーメンの間』って言う名前でね。それでツタンカーメンの存在感をこの目で確かめねばならないと、探偵の勘がそう言っていた訳です。
Q, 探偵の勘。あくまで捜査の一環だった、と。
A, もちろんですよ! あの時エジプトに出向いてなきゃ、『ツタンカーメンの間』を、私は実感として捉えることができなかった……考えるだけでもゾッとします。それからイギリスに行ってね。
Q, イギリスはどうでした?
A, 最高。もうね、最高だった。私は昔からハリー・ポッターの大ファンでねえ。イギリスと言ったらハリー・ポッターじゃないですか。魔法の国。2泊のつもりが、4泊もしちゃった……。
Q, イギリスと言えばシャーロック・ホームズじゃないんですか?
A, え?
Q, ホームズ……。
A, ……もちろんホームズだよ! 私はさっきからその話をしてるじゃないか! なんだい急に?
Q, 失礼しました。てっきり魔法界に魂を売ったのかと。
A, 魔法の……魔法のような捜査だと言ったんだ、私は! 記事ではそこんとこ上手く……書いといてくれよ!
Q, 分かりました。それでイギリスを立ち、フランス、スペイン、ポーランドと周り……各国にはどのようなご用件で?
A, フランスは……なんだったかな? そう、凶器がフランスパンだった。それに被害者の生前のあだ名が、『闘牛』でね。殺された時床に出来た血痕が、ポーランドに酷似していたんだ。
Q, それでポーランドに……。
A, 事件を解決するためなら! どんなところにだって飛んで行くのが探偵ってもんさ! たとえラスベガスだろうと、グアムだろうと、バリ島だろうと、モスクワだろうと台北だろうとドバイだろうとハバナだろうと……。
Q, 観光地ばっかりですね。
A, どんな些細な証拠でも! 地道にこの足で現地に赴き、捜査して行くのさ! そうだろう!?
Q, 大きな声出さなくても大丈夫ですよ。雑誌の記事なんで。そして先生は、最終的に南極にまで向かわれた……確か事件はまだ、解決してないんでしたよね?
A, ああ。犯人は捕まったけど、私は徹底的に調べなくては気が済まないタイプでね。たとえば私は、容疑者が日頃ハンバーガーを好んで食べていたところまで掴んでいる。それで来週、ハンバーガーと事件の関係性について調べるため、アメリカに行くつもりなんだ。必要とあらば、もう一周くらい世界を回ってみせるよ。探偵の誇りにかけてね!
Q, なるほど。本日は冒険家兼探偵の、前田克家さんにお越しいただきました。前田さん、そんなポーズとってもあんまり意味ありません……写真とかないんで。どうも、ありがとうございました。
A, 誇……ありがとうございました。
〜Fin〜