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山猫姫と俺  作者: ルイ シノダ
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昼休みの出来事

いよいよ本編に入ります。

昼休みの出来事


チャイムがなり、担任の先生が入ってきたので、話は、そこで切れた。

四限目の授業が終わり、昼休みになった。俺は小峰に

「学食行くか」

「そうだな」


小峰が、鞄から弁当箱を取り出すと、二人で席を立って、教室の出口に向かう。俺は、母さんが、弁当作ると言ってくれたが、仕事が忙しい中で、弁当まで作ってもらう訳には行かず、学食を利用することにしている。


俺が、トレイ乗った定食を持ち、小峰が弁当を持って、学食の隅の方にある四人掛けのテーブルに座った。


昼食を食べながら世間話をしていると、何やら出口辺りが賑やかだ。

ちらっと見ると、近くの生徒全員が、出口に注目している。


「長陽の姫君」

小峰の一言で、俺は何が起きたか理解した。そう、朝校門で目に入った女の子が、学食に入って来たのだ。

随分遅い昼食だなと思っていると、何かを探すように周りを見ている。やがて、視線がこちらに向けられると、その動きが止まった。

周りの生徒もこちらを見ている。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


俺は、周りを見たが、俺達以外にいない。小峰と俺は顔を見合わすと


「「お前知り合い」」

「「いや」」

思わず声が重なって笑いそうになったが、小峰が

「こっちに来るぞ」と言って、弁当に手も出さずに、こちらに来る女の子を見ていた。

 

腰まである長い黒髪。少し青とも緑ともとれる色が混じっている。切れ長の目にすっと通った鼻筋、可愛い唇に細面の輪郭が、余人を早々に近づけない雰囲気を醸し出している。身長は一六〇センチ位はあるだろうか。

やがて俺たちの側に来ると、俺の顔をじっと見て

「放課後、下足箱の入り口で待っている」


「「「「えーっ」」」」


周りの生徒の反応が凄かった。長陽の姫君が、同学年の男子に声を掛けたのだ。


皆が姫君と俺を交互に見ている。やがて姫君は踵を返すように学食から出ていくと、今度は、男子の視線が、鋭い視線に変わった。


視線が痛い。何なんだ。心当たり無い。俺の平穏な学生生活が、崩れ始めた壁の様に見えて来た。


「山瀬。お前心当たりは」

「・・・・」

何も言わずに首を横に振る。

「とにかく早く食べて出よう」

そう言って小峰は、凄まじい勢いで弁当を口に運んだ。


小峰と二人で裏庭のベンチに座っている。手には、二人とも缶コーヒー。あのまま教室に戻ったら質問攻めに遭うのは、分かっている。と言う訳で、ここにいる。


「はあーっ」

空を見ながらため息をつく。

「山瀬。心当たり無いのか」

「まったく」


もうすぐ、中間テストがあるというのに。ぼーっとしながら午後の授業は上の空。先生の声は、羽が生えてどこかに飛んで行き、俺の耳の中に入ってこない。あっという間に放課後になってしまった。


「山瀬。帰らないのか」

クラスの中には、俺と小峰のみ。

「あっ、ああ」

壁掛けの時計を見るとホームルームが終わって十五分が経過していた。仕方なく席を立つ。


一年生の下足箱の側に行くと入り口で姫君が待っていた。周りには、噂を聞きつけたのか、男子生徒だけでなく、女子生徒も遠巻きに彼女を見ていた。


みなさーん。暇なのですか。早く帰ってくださーい。心の中でそう思うも、動く気配がない。


ローファーに履き替えて、彼女の側に行くと


「遅い」

切れ長の目をきつくして一言だけ言うと、先に歩き始めた。

「おい、何か用なのか」

「あるから声を掛けた」振り返りながらそう言うとまた歩き始めたので、

仕方ない。そう思いながら後ろに付いて行く。並んで歩くとますます、居心地が悪くなりそうだ。


校門まで来たところで、

「ねえ、後ろにいたら、話が出来ない。横に来て」

足を止めて振り返り、そう言うと、じっと俺の顔を見た。


見られた顔を見返したが、記憶にない。どこかで会ったのかな。と思いつつも

「そろそろ話してくれないか」


周りをちらりとみて

「もう少し、学校から離れたら」彼女はそう言うと俺が隣に来るよう手招きしている。


どういうつもりなんだ。俺の平穏な学生生活を返せ。心の中で文句を言いつつ、また付いていく。今度は隣を歩く。


「降りて」

俺が下りる一つ前の駅で強制的に電車を降りさせられると、今度は改札を出て、近くの公園に来ていた。ここまで来るとさすがに同じ学校の制服の姿はない。


また、じっと俺を見ると

「覚えていない。私の事」

「・・・・・・」


まったく、心当たりがない俺は、黙っていると、その美しい顔のその切れ長の目で、更にじっと見ている。何分か経った後、言葉を言わない俺に向かって


「ゆういち」と一言だけ言った。

「えっ、ええーっ。なんで俺の名前を」


「どうしても思い出せないんだ。わかったわ。ゆういちが思い出すまで、毎日一緒に帰りましょう」

「えっ、えーっ」

こんなきれいな女の子と毎日帰ったら、学校内で何が起こるか、考えただけでもぞっとする。

「勘弁してくれ。どこのどちら様か知らないが、君の様な美しい女性と毎日下校したら俺のメンタル面が持たない。俺の学校生活も考えてくれ」


少し考えるような仕草をした後、

「そうか、分かった。じゃあ、毎朝一緒に登校しよう」

「同じだ!!!」

少し大きくなってしまった声に「済まない」と言うと

「どちらか選んで。登校か下校か。思い出すまで」


「じゃあ、ここで」

俺は、彼女よりゆっくりとした速度で歩き始めた。

駅からの通学路で学校に一番近い四つ角で別れる事を条件に、彼女の駅から一緒に登校することになった。



少しでも興味持たれた読者様、もう少し続き読みたいなと思われた読者様。

次回投稿のエネルギーになります。ぜひ☆☆☆☆☆を★★★★★にお願いします。


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