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山猫姫と俺  作者: ルイ シノダ
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プロローグ

久々の新作です。

地方都市に住む少年が、小さい頃に体験した不思議な経験が、青春ラブコメとしてよみがえります。

楽しい要素と、ちょっとドキッとした要素等々入れて描きたいと思っています。



感想、レビュー受け付けます。

良ければ、☆も★にして下さい。




プロローグ


俺は、山瀬裕一郎やませゆういちろう。これと言ってとりえのない男。まだ十三歳。

「裕一郎。竿を取ってきて」

「わかった」

母親の言葉で、刈り取ったばかりの稲を干す為に、田んぼの側にある小屋に竿を取りに行く。田んぼのあぜ道を歩きながら、草むらから何が出てくるかわからないから注意しながら歩くと、一匹の蛇が俺を見ていた。金と黒の縞々の様な、少し珍しい色だなと思いながら・・。


そいつをじっと見ながらやり過ごす。蛇はこちらから攻撃しない限り、向かってこない。むしろ人間をみると逃げるはずだ。でもその蛇は、まるで俺を観察するように、じっと俺を見ていた。


「母ちゃん、お疲れ様」

「裕一郎。ありがとね」


そう言いながら刈り取った稲を竿に干した田んぼを見ながら、俺と母ちゃんが、山道を家へと歩いていくと、俺たちの姿を見つめている目があった。でもこの時は、まだ何かわからなかった。


やがてまた春が来た。苗を田んぼに植えるには、相応の準備がいる。秋から春にかけて寝ていた田んぼの起こし、ザリガニで開けられたあぜ道の穴を埋めなくてはいけない。お母ちゃんは、田んぼを起こし、俺は、あぜ道の修復をする。結構大変だが、小学校の頃からやっていたから、もう慣れた。


何となく誰かに見られているような気がして後ろを振り向くと、蛇がいた。目があったが、攻撃してくる様子もないので、おれもじっと見た後、

「あぜ道直しているから危ないぞ」

蛇にはわかるはずもないのに声をかけて仕事に戻ったが気になって後ろを見るともういなかった。


「母ちゃん、釣りしてくるね」

竹竿を片手にエサは、ご飯粒。田んぼの側のため池で釣りを始めると

「ねえ、何しているの」

まだ、小学校くらいかな。と思うような女の子が話しかけてきた。顔を声の方に振り向けると目は切れ長できついが、少し緑色とも青色とも言い難い腰近くまである髪の長い可愛い女の子が立っていた。


一瞬ドキッとした。「あれ、この辺に女の子なんていないのに」と思って

「あれ、お前も田んぼの手伝いか」

おれの言葉に不思議そうな顔をしたが、

「うん」

と言ってため池に浮いているウキを見ていた。


「あっ」と女の子が言ったので、俺もウキを見ると水の中に引き込まれて言った。

俺は夢中になって釣れた魚をゆっくりと手元に引いてきて、女の子の顔を見上げると

「えっどこに」

どこにも周りにも居なかった。

「そんな」


周り見ても、山の麓までとんでもなく距離がある。わからないままに俺は、帰り道に母ちゃんにその話をすると

「裕一郎、山猫姫でも見たんだろ。まあいい。幸せを呼ぶ女神だよ」

と言って冗談で笑われた。


 あれから三年が経った。

 俺は、今年高校に入学した。切れ長の目と細面の顔に、はっきりとした鼻筋は、父親に似ている。

親族曰くだが。・・・


 前髪を長くしているので、顔はあまり目立たない。人と話すのは苦手ではないが、口はやや重い。成績は優秀で高校に三番目の成績で入学している。一番だと、入学した時から色々やらされると聞いていて、意図的な三番である。・・多分・・


 家のある駅から5つ目の駅にある長陽高校は、地元でも有名な進学校で毎年、東大に何人も送り込んでいる。

幼い頃、サラリーマンだった父を事故で無くし、母の手で育てられた。早くして父を亡くし、女手一つで俺を育ててくれている母親には、苦労させるわけにはいかないと思い、地元の国立大学を目指して、勉強してここに入学できた。


身長は、高校入学前に一七〇センチを過ぎ順調に伸びている。細身だが、田植えの手伝いと蛇やタヌキ、キツネとの遊んでいて、相当に運動能力は高い。・・と思っている。


今日も、駅から十分程、高校の校門を入ろうとすると、どこかで見た顔をいた。でも思い出せない。少し見ていると向こうも一瞬こちらを見た気がしたが、気のせいかと思いそのまま、教室に向かった。


「おはよう」

「おはよ山瀬。」


鞄を机の上に置き、席に座ると、前の席に座る小峰功こみねいさおが、僕の顔をじっと見ている。がっちりした顔で目が大きく、人からあまり話かけられない僕に珍しく、声をかけてきたクラスメイトだ。


「どうした。僕の顔に何かついているか」

「いや、お前、朝校門を通る時、姫君を見ていただろう」

「姫君?」

意味の分からない事を言われながら、朝の事を思い出した。


「ああ、でも姫君ってなんだ」

「えっ、お前、長陽の姫気味知らないのか」

驚く小峰に、首を振ると

「長陽の姫君というのは、同じ一学年で、入学試験をトップ合格し、新入生答辞を務めたあの姫君だ。入学以来、立っているだけで、その美しさに誰もがあこがれを抱く、この長陽高校一年生の姫君だ」


「・・・・・・」


だからどうした。という顔をすると、

「だから、お前も見惚れていたのかなと思って」

「あーっ、それは全く違う」


チャイムがなり、担任の先生が入ってきたので、話は、そこで切れた。



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