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では、みなさんまた明日学校で会いましょう!



「では、みなさんまた明日学校で会いましょう!」


 学校に途中入学して初日がやっと終わった。

 この学校では放課後は自由ということになっている。

 街に買い物に行く人もいれば、部屋でゆっくりする人もいる。

 エンマはもちろんこの世界に送った三人の勇者の情報集めを行うつもりだ。

 お通夜状態な生徒たちを元気付けるのも大切だが、こちらもそれと同じぐらい大切な仕事だから。

 いったん荷物を寮に置いて、それから出かけようと席を立った頃、教室に見慣れない女子生徒が入ってきた。


「エンマくんって子はいる?」


 背筋をピンと伸ばし、ルールは絶対ですなんて言い出しそうなお堅くピリピリした雰囲気を漂わせた人だった。

 

「ノアさん。彼がエンマです」


 そう言ってクラスメイトが俺の方を指差した。

 一体何の用だろうか。

 こっちは今から勇者探さないといけないっていうのに。

 腰ぐらいまである長い髪を揺らしながら、早足でこちらに向かってくるノアと呼ばれた少女。


「初めまして。三年のノア・スプリングです。あなた、壁を超えた生徒なようね。放課後、剣の自主練習会があるの。あなたも参加しなさい」


 いきなりきて参加しろとは随分な言いようだな。

 どこが自主だ。


「毎週何曜日に行われているとかあるんですか?」


 でも、教室にいきなり入ってきて話しかけた生徒から名前を呼ばれているということは、この学校ではそれなりに名前の知られた方なのだろう。

 生徒たちを元気付けるために、何かの力になってくれるかもしれない。

 その物言いに一瞬苛ついたが、これはいきなり放課後の予定が狂うデメリットを差し引いても十分に元の回収できるチャンスなのではないだろうか。

 だから、週一回ぐらいなら出てもいい。


「毎日に決まっているでしょう。平日は放課後、休日は朝から晩までずっとやっています」


「はい?」


 ごめんなさい。

 やっぱり無理です。

 それじゃあ勇者探す時間がないじゃん。


「とりあえず、週一回とかから始めていいですか?」


「この国存亡の危機なのですよ? 何を呑気なことを言っているのですか? 冠婚葬祭と病気以外での欠席は許しません」


 いや、そうだけど。

 こっちにはこっちの事情があるんだよ。

 それと、あなたは一回自主って言葉の意味を調べたほうがいいと思いますよ?

 余計なお世話かもしれませんがね。


「あなたのような才能がある生徒は貴重です。時間ももったいないですので、はやくいきましょう。次は、隣のクラスです。もう一人の子を勧誘に行きます」


 オニユリ〜。

 助けてくれ。

 エンマは手を引かれながらそう思った。





「あなたがオニユリさんね」


 先ほどと同じ流れで隣のクラスに乗り込むノア。


「はい、そうですけど」


 そして、エンマの時と同じように自主練習と言いながらオニユリを強制連行しようとする。


『この女をなんとかしろ』


 エンマはオニユリに向かってそうテレパシーを送った。


『エンマ様が断れなかった相手を私がどうこうできるわけないじゃないですか』


「はぁ」


 なんとも覇気のない返事でやり過ごそうとするオニユリ。

 何を勘違いしたのか知らないが、今のが肯定の返事に聞こえたようだ。

 満足そうな表情を一瞬した後、キリッと別方向に視線を向ける。


「それと、スズカ。あなた、今日こそ本気を出しなさい。そうじゃないと許しません」


 こいつ、許さないこと多いな。


「…本気、出してるよ」


 視線を下に向けて、そう言い返すスズカ。


「嘘をつかない。では、行きますよ」


 そう言って自主練習に強制連行されるエンマたちであった。


「なぁ、あの人は誰なんだ?」


 エンマはオニユリに聞いた。


「さぁ。私は全く知りません。スズカさん、何か知っていますか?」


「…私と同じ、四大貴族のスプリング家長女です。去年の上着持ちで学校代表を務めました」


「上着持ち? 学校代表? なんだそれは」


「あなた、そんなことも知らずにこの学校の門を叩いたの?」


 先頭を歩くノアが後ろを向いてエンマを見てそう言った。

 うるさい。

 少なくとも、自主の意味も知らない奴に言われたくない。


「今、それぞれの学年で上位四人を決める試合、学年内戦をしているのは知っていますか?」

 

 スズカがこちらを向いてそう言ってきた。

 もちろん知っているに決まっているじゃありませんか。

 次の試合があるからって強引に俺の話を断ち切ったあれだろ。


「ああ、知っている。その上位四人が学年代表となって同級生たちをまとめるんだよな」


「そうです。そこで勝ち残った各学年の上位四人には学年代表の証として特別なパーカーを付与されます。なので、それらの人たちは単純に上着持ちと言われています」


 なるほど、それは分かりやすいな。


「その後、三学年の学年代表、要するに上着持ちたちによるトーナメント戦、代表選が行われます。その戦いで優勝した人が、その年の学校代表と呼ばれます」


 ほほぅ。

 つまり、去年この学校で一番強かった人と言うわけか。

 それに現三年生ということなので当然去年は二年生だったのだろう。

 それで上級生に勝っているのだから、流石、四大貴族というところか。


「つきました。ここが練習場所の第一実習室になります。明日から迎えに行きませんが、遅れないようにしてください」


 いくらすごいと言っても気にくわないことには変わりないので、去年の学校代表さんの言うことはとりあえず聞き流しながら中を見ると、それなりの人数がいるようだ。

 ススムやカケルと戦っていた場所へ最後に訪れたあの優等生裏番長やユズルなどの見たことある人が目につきやすいが、それ以外にもたくさんの人数がいる。


「では、二年生以上は真剣で、一年生は木剣でいつものように素振りから始めましょう」


 木剣がどこにあるか分からないため、とりあえずどこかに歩く人たちについて行くエンマとオニユリ。

 とりあえず、スズカも歩いて行っているし、悪いようにはならないだろう。

 そんな俺たちとは対照的に腰に本物の剣を吊るしている人たちはそれぞれその剣を抜く。

 一年生は真剣を持っておらず、二年生以上は持っているのか。

 そんな推理をしていると、木剣がある場所についた。

 なるほど、ここに木剣があるのか。

 それぞれ一本ずつ手に取り、戻っていく。


「皆さん、剣は持ちましたね。では、始めます」


 早く終わらないかなぁと思いながらエンマは素振りを始めた。


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ほんの少しでも続きが読みたい、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をお願いいたします。


何卒よろしくお願いいたします!

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