2.何すりゃ良いのかわからねぇからとりあえず悩んでみた
前略、雲の上より娑婆のおやっさんへ
【北海の鬼殺し】こと時任尊、エンコならぬチ○コ詰めてお嬢になりました!
どうぞ、今後とも御贔屓によろしゅうたのます
かしこ
「ああ、違う違う! これじゃガキの頃に見ていた11午後のネタにもならねぇ。しかも【かしこ】って確か女が使う言葉だったよな? 馬鹿か俺は!」
ごわつく紙をくしゃくしゃに丸めて投げると、ジャイアンツのエースもかくやと思われる弧を描いてゴミ箱に決まる。
「どだい、族だった頃に公衆便所の壁に爆走天使と書こうとして爆走不便って書いちまうような学の無い俺が文を書くってのが間違いなんだ。まぁ、おやっさんならネタとして笑って……」
や、ちゃうかぁ。ネタにするような話ではねぇのよなぁ。
今俺がおかれている現状ってのは酷く複雑だ。
殺されたと思ったらあの世で蘇った。しかもあの世ってヤツにゃ国が幾つもあって化け物どもが跳梁跋扈してやがる。
笑えるのが、俺がその国で聖女様とか呼ばれてる王女に生まれ変わって城に連れてこられたんだから、手塚治虫もビックリだ。
ああ、あれか?
これが火の鳥の呪いってヤツか?
そういやクラウン契約しに行く前日、焼き鳥屋でたらふく食いまくったなぁ。
火の……鶏……これじゃただの焼き鳥だなぁ。
や、ちゃう。
そうじゃない。
いけねぇなぁ、どうも難しく考えると余計なことばかり考えちまう。
とにかく俺は手塚治虫ぐらしか思い付かねぇような未知の体験をしている。これは、死んだ人間が全部こんな目に遭ってるのか、俺だけがそうなのかはわからねぇ。
あー、悩めば悩むほどくさくさしやがる。
ムニン♪
「うひょう!」
チッ、思わず変な声が出ちまった。
癖で胸ポケットからタバコを取ろうとして、てめぇのパイオツ揉んでりゃ世話ねぇぜ。
ゴロリとベッドに寝転がる。
にしても、このベッドってヤツは異様にフカフカしてやがる。俺は煎餅布団で良いんだがなぁ、柔いのは腰が痛くてどうにもいけ好かねぇ。
「あ゛あ゛ぁ゛あ゛……ピースを寄こせとは言わねぇ。シケモクで良いから灰一杯に吸い込みてぇ」
だりぃ、そして暇だ。
にしても天国か地獄か知らんが、とにもあの世に来てまで俺は何をやりゃいいんだ?
しかも人徳がやたらありそうな姫さん何かに化けさせやがって、神さんか仏さんか知らんが俺に一体何をさせようってんだ?
世直し? ガラじゃねぇ。
人助け? 人選ミスも甚だしい。
国助け? 無茶言うな。
「考えれば考えるほど何も出来ることねぇぞ、どうすんべか? ん~………………んがー!! 悩んでても仕方ねぇ! ここがあの世なら、遅かれ早かれいずれおやっさん達も来るんだ。なら似非ルマンドだかなんだかしらんが、この国を新泉組の新たな根城にするだけだ!」
※ エセルヴァルド
幸いこの身体はこの国じゃ聖女とかなんとか言われて慕われている。
そこに、俺の男気プラスで任侠叩き込んでやりゃ、この国だってすぐに新泉組の傘下よ。
よっしゃ! そうと決まれば、頼れる舎弟が必要だ!
思い立ったら吉日。
俺は頼れる舎弟を探しに、早速城の中を散策することにした。