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第弐ノ裏集:ある娘の独白

 わたしは家族を殺された。


 わけがわからない。

 いっそ今すぐ殺してしまおうか?

 いや、まだわたしにはそんな力はない。

 なぜわたしだったのだろう。

 なぜわたしの家族だったのだろう。

 なぜ死ななきゃならなかったんだ。

 何も悪いことはしていないのに。

 法も倫理もモラルも犯さず、ただ普通に生きていただけなのに。

 誰が見たって、殺されてしかるべきな理由は何一つ見当たらない。


 あいつは幸せを手にした。

 本人はどう思っているかわからないが、どういう関係性であれ、あいつはこれから幸せになるのだろう。

 なぜ?

 あいつが歩く道全てが腐臭を放ち、枯れ、死にゆく絶望で埋まりますように。

 そう願ってやまない。


 夢を見るんだ。

 家族と過ごしていたころの幸せな記憶。

 わたしはいつだって愛されていた。

 みんなわたしの味方だった。

 友人もたくさんいた。

 わたしの家族の葬儀の時、祖父母を支えながらテレビのインタビューに答えていた○○○。

 あの子はわたしの一番の親友だ。

 生まれた病院も、母親の仕事先も一緒。

 まるで姉妹のように育った。

 わたしの妹も○○○のことを「○○姉」と呼び、親しくしていた。


 なぜだろう、名前が思い出せない。


 父も、母も、家族全員。


 誰の名前も思い出せない。


 恋しいよ、お母さん、お父さん。


 今わたしの頭の中にあるのは、わたしからすべてを奪っていったやつらの名前だけ。

 憎い。

 悔しい。

 死んでほしい。

 優しくされるたびに、私の中の黒い糸が張り詰めてゆく。

 これが切れたら、わたしはいったいどうなってしまうんだろう。

 なにかのセーフティラインなのだろうか。

 それとも、殺意の解放線か。


 自殺は考えていない。

 なぜなら、きっとこのままでは家族と同じ場所へは行けなさそうだからだ。

 のこのこと殺人鬼に支えられながら生きてしまっている。

 こんな大罪人のわたしが、天国など望めるはずもない。

 死後、どんな拷問が待ち受けているのだろうか。

 まぁ、それだけでもない。

 わたしは復讐すると決めたんだ。

 きっとあいつと同じ地獄に落とされるのだろう。

 死んでまで一緒にいるはめになるなんて、最低の気分だ。

 でもいい。

 殺すと決めている。


 この世界で与えられた力。

 それを高め、殺傷能力をいかに強めるか。

 それが今の生きがいだ。

 それ以外のことはすべて額縁の中。

 他人事。

 わたしの人生には無関係。

 わたしは優しい。

 そうだ、あいつの周りにいる全てのものも一緒に殺してあげよう。

 ははは、最期くらい一緒にしてあげたい。

 頭を切り落とそう。

 そして付け替えるんだ。

 それがいい。

 あぁ、なんてわたしは優しいのだろう。

 その時が来るのを楽しみにしているよ。


 はやく、はやく殺したい。


 はやく、はやく死にたい。


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