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序
アイエネスという叙情詩があった。叙情詩のなかのアイネイアスはトロイア軍の将軍で、トロイアの没後に数々の恋愛と冒険をする。これはその話がエルドラドという空想の世界に渡った後の話。
語り継がれたアイエネスはエルドラドの人々に口伝されて伝説となり空想の中で本物となった。アイエネスは人として誕生し、人とは何か、愛とは何かを人々に教えその唱えは多岐にわたり人々に信じられた。そうしてやがて生まれるアイエネス協会の父となった。
アイエネスがなくなるとアイエネス協会は西と東に分かれそれぞれの役割を担った。東は政治に与し西は人々にアイエネスの教えを語り継ぐ教団となった。
東はさらに正協会、諸協会に分かれた。そしてその正協会の会長と副会長はアイネイアスの子孫として重宝されている。この話の主人公はその副会長ヴァルである。ヴァルはある理由でエルドラドの旅を続けているのだが。