80.バトルマスター観戦
「ほほう、それで、装備を作ってやったというわけか」
翌日の午後、『リーブズメモリーズ』のギルドハウスで昨日あったことを話した。
サイ姉さんはブレンのことであきれていたが、フォレスト先輩が目をつけたのはリンスというバトルマスター参加者のほうだった。
「ええ、まあ。お金を払ってもらえるなら断る理由もなかったので。どうも、『一本桜』の職人とはすぐに連絡がつかなかったみたいですし」
「さもありなん。夏休み期間の日曜日とはいえ、昼間にログインしているとは限らないからな」
「そう言うことですね。……それで、フォレスト先輩はリンスって人を知っているんですか?」
「ふむ、ほとんど知らないな。知っていることは、闘技場の有名選手でファンクラブがあるという話くらいだ」
なるほど、確かにほとんど知らないようだ。
でも、ファンクラブか……それなり以上には有名人だったのかな。
「エイト君、気になるの?」
「うん? 同じ刀使いだったみたいだし、どんな戦い方をするのかは気になるかな」
実際、刀使いは珍しいし、どんな風に使っているのかはとても気になる。
かといって、わざわざ闘技場まで足を運ぶのも面倒だし。
「それなら、いまバトルマスターの大会をやってるよー。目的の試合がやっているかはわからないけど、見てみるー?」
「そうですね、お願いできますか、ブルー先輩」
「はーい。それじゃあ、配信チャンネルにアクセスするねー」
バトルマスターの配信チャンネルでは、いま現在もプレイヤー同士による対戦が行われていた。
ただ、お目当ての対戦ではなかったのだが、これはこれで面白い対戦だな。
「おー、PvPっていうのも見てみると面白いね。エイト君、なにか飲み物ある?」
「ミックスジュースでいいですか、サイ姉さん」
「オッケー。ありがとう」
観戦モードに入った皆をよそに、俺は配信チャンネルの説明欄を読むことにした。
説明によれば、すでに終わった対戦カードの動画も見ることができるらしい。
選手名や試合IDなどで検索できるらしいので、『リンス』の名前で検索すると一件の試合がヒットした。
さて、この試合を見てみるか。
「む、エイト、その試合はなんだ?」
「アーカイブにあった、リンスの試合のようですよ。いまから始まるところです」
「なるほど、こっちも見てみるか」
フォレスト先輩が俺の横に座り、動画を見始める。
審判の合図とともに試合が始まったのだが、勝負は割と一瞬でついてしまった。
「……なんだ、ずいぶんとあっけないな」
「それだけ実力差があったということでしょうね」
開幕と同時に間合いを詰めたリンスが連閃を発動。
防御が間に合わなかった対戦相手は、それだけで戦闘不能に陥った。
「これでは戦い方もなにもないな」
「ですね。……現在行われている試合でも見ましょうか」
「そうしよう」
その日から、数日間は全員でバトルマスターの試合を観戦する日々が続くことになった。
PvPも見ているだけなら楽しいものである。
自分がやりたいとは思えないけど。
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「ほう、リンスはベスト16まで残ったか」
「のようですね。ほかのメンバーが強いのかどうかはわかりませんが」
「掲示板情報だと、ほかのメンバーも闘技場の上位陣が多いらしいわよ。ここからが本番だって掲示板も熱くなってるわね」
「バトルマスターって残り二日ですよね。誰が優勝するんでしょう?」
「それはわからないかなー。私たち、PvPには詳しくないからー」
「そうですねぇ。詳しい連中なら……個人的な推しに賭けてるでしょうね」
結局は、自分の勝ってほしいプレイヤーが一番というわけだ。
さて、そんなことより、今日の第一試合は……。
「第一試合はリンスの出番ですね。エイト君、この試合なら参考になるんじゃない?」
「だといいんだけどな。……始まった」
まずはお互いに相手の出方をうかがうが、先に動いたのは対戦相手のほう。
武器は手斧系、攻撃力もそれなりにありつつ小回りがきく武器だ。
前方から迫り来る手斧に対し、リンスは……。
「手甲ではじいた!?」
「あー、あの手甲の特性、使いこなせるようになってたか」
「どういうことだね、エイト」
「あの手甲、バックラーのように相手の攻撃をはじくことができるんですよ。タイミングはシビアですけど」
「そうか、そうなのか」
「……やっぱり、プレイヤースキルが高すぎて参考にならないなぁ」
攻撃をはじかれて体勢を崩したところに連閃でダメージを重ねる。
その後も、優位に試合を進めたリンスが無事に勝利することとなった。
「……さて、ここまでを見てどうだね、刀使いの感想は」
「やっぱり【居合い】あっての刀って感じですね。連閃をうまく当てて、ダメージを積み重ねていくことが大事に思えます」
「そうだな。それが簡単にできれば苦労しないのだろうが」
「ですよねえ」
その次に行われた試合でリンスは負けてしまい、ベスト8となった。
敗因は……やはり、竜撃鋼の防具を狙った防具破壊で防御力を下げられたことだった。
『一本桜』の鍛冶士も脆弱性のある装備を作って悔しいだろうなぁ。
大会参加者には賞金なんかも出るらしいので、それで新しい装備を調えてほしいところだけど。
さて、明後日は待ちに待ったオリジナルアイテムコンテストだ。
どんな結果が出るか、いまから楽しみで仕方がないな。
目標は打倒、大旦那だ!





