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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

求めていたものは

作者: 札幌太郎

「魔」……死者の悪心、怨念、妄執、未練が幻影のように形をとったものを我々の地域ではそう呼ぶ。

 魔は往々にして生者へ害悪をもたらすため、儀式をして祓うべき「敵」であると認識されている。それゆえ、元がひとであろうとそうは扱わない、異国で言うところの悪魔のような扱いを受け、当然のように祓われるのだ。

 それでも、その魔を構成するものはひとの心だ。そこに心があるのなら、歩み寄ることができるのだろうか。「敵」であるという認識にも変化があるのだろうか。

 これは、そういう話だ。



 視界は一面の白であった。空は一面の曇り空で、夕暮れ時だというのにちっとも赤みが差さない。一度溶け、再び固まった氷が村に張り巡らされた細い路を覆い、その後降り積もった雪がその氷を覆っている。家屋の屋根も同様だ。おまけに私が吐く息も白く、凍てつく外気に当てられてすぐさま水滴になった息は、剃り損ねた顎髭に張り付き、やがて凍る。

「こんなところに人が住んでいるというんですから、不思議ですよね……ウチの地方でもこんなに積もりませんよ」

 髭に張り付いた氷を慎重にめくる私の横で、身震いしながら若い金髪の男が呟いた。じゃきじゃきと表面の凍りかけた雪を踏みつけつつ、私は部下である彼の背中を叩く。

「人が住んでいなければ我々のようなものが訪れることもないだろうが。それより、既に事件の現場に近いんだ、気を抜くなよ」

 若い男は寒さに震えながら弱弱しく返事をしつつも、前を歩く私たちと同じ服装のものたちの後を追う。

 私と若い男を含めた、十数名がぞろぞろと北の寒村を行脚する。時折窓から外の様子をうかがう村人も居たが、誰もが白と黒を基調とし、各所に細かい刺繍が施された服装を見た瞬間、忌々し気な顔で目を背けるのだった。

 とても歓迎されている雰囲気ではないが、それも慣れたものだった。私たち……この北方で退魔を生業としている一族は、不幸の象徴と扱われているからだ。退魔の一族が来ているということは、その場所で何か魔が生じているということだから、たとえその魔を解決する側であっても、不幸な出来事、という大枠に括られてしまっている。しかし、百年単位で続くこの枠組みを今更変えることもできず、我々にできるのはその忌々し気な視線を無視することだけだった。

「そういえば、今回はどんな事件――魔が生じているんでしたっけ」

「お前……本当に大丈夫か?」

 軽薄な調子で尋ねてくる金髪に、私は不安を覚える。出立前に確認はしたのだが。

「いやいや、ただの確認ですってば! 本気で忘れるわけないじゃないですか!」

 本当だろうか。疑いのまなざしを数秒向けるも、彼の表情は薄ら笑みのまま微動だにしなかったので、諦めて話を始める。

「現場はこの先へ進んだ家屋。一月ほど前の朝から、その周辺で心臓を潰された少年少女の死体が頻繁にあがるようになった。一般の事件の線で村の自警団も調査していたらしいが、その死に方が異様だったために、私たちに仕事が回ってきた」

「たしか、他に外傷の痕跡は無く、心臓のみに小さな手で握りつぶされたような痕があった、とかでしたっけ」

 なんだ、きちんと憶えていたのか。私の部下はそれほどまでにちゃらんぽらんではないことに安堵の息を吐いた。が、その息もまた髭にまとわりつく。この村の寒さはこの地域でも異常なほどだ。今回の魔の影響でもあるのだろうか。

「そうだ。『小さな手の痕』だ。ここで、その現場にある家屋の話が出てくるわけだ。そこは憶えているか?」

「ええっと……な、なんか、きょうだいがかくれんぼしていたことは、憶えてます……けど……」

 ……まあ、事件の概要を憶えていただけ良しとしよう。我ながら甘いと思いつつも、補足を行う。

「そうだ。両親が漁で数日留守にしている間に、その家に住んでいた三人きょうだい……上から男、女、女、だな。それが家屋でかくれんぼをして遊んでいたそうだ。しかし、下の妹はいつになっても見つからない。夕飯時になっても姿を現さないことに不安を覚え、近隣の住民にも捜索の手伝いを頼む。そして、村全域にわたって捜索が行われたが……発見されたのは三日後、件の家の暗くなった地下室で凍死していた、という話だ」

 地下へは入ることは容易だが、幼い少女たちの背丈では頭上の天蓋にある出口を押すことも叶わず、外に声も届かない地下で段々と冷気に蝕まれ、死んでいったそうだ。発見後、遺体の胃袋には何も入っていなかったらしい。

「心臓、少女……確かに、今回の発生した魔と似通ったことはありますけど、どうして。殺す必要、あるんでしょうかね……?」

「さあてな。その魔の元凶がその亡くなった少女だとしても、亡者となった者の思考は読めないものだ」

 仮にひとだった者が死に、亡者となっているとしたら、死ぬ間際に抱いていた何かに執着している場合が多いとは聞くが、全部が全部そういった事例だというわけでもない……まあ、何一つ魔の正体を知らずとも、我々が儀式を行い浄化を行えば魔は去るのだから、気にすることでもないのかもしれない。

 金髪の部下と話していると、ふと先頭集団の足が止まる。前の者にぶつかりそうになりながらも、私たちは前に倣って歩みをやめた。どうやら、件の家屋に着いたようだった。

 見上げれば……と言うほどの高さでもないが、煉瓦造りの二階建ての家が眼前に建っている。既に人は去っており、排雪もされておらず屋根はひしゃげている。そんな廃墟然とした風貌に、部下の男は唾を飲み込んでいた。

「入るぞ」

 先頭に立つ棟梁が腐った扉をばきりと取り外す。そして彼の声を皮切りに隊列を組んで家屋へと侵入が始まった。

 外観を見た際には「廃墟然とした」などという感想を抱いていたが、中の状態を見た後に再度形容するならば「魔窟じみた」と言った方が正しかったかもしれない。踏み入れるだけで血と死体の饐えた臭いが鼻腔を刺し、点々と血の痕跡の残る木製の床はぎちぎちと不気味に軋む。私はそれなりに場数も踏んでいたため侵入の足を止めることは無かったが、金髪の部下は耐えきれず吐いてしまったようだ。

「この様子だと、まだ中に未発見の死体が残っているのかもな」

 私も部下の気が落ち着くまで少し待ってから、遅れ気味に本隊に合流する。依然不快な臭いで満ちる廊下を歩きながら、先頭集団が退魔……浄化の儀式の準備を行う。廊下に紋の描かれた紙を貼り付けていき、部屋ごとに浄化を行っていくのだ。

 その間に私たち後続が周囲の警戒に当たるわけだが……何やら物音がする。後続集団は顔を見合わせ、頷いてから、私とその部下を含む五名が物音の発生元と思しき場所へ足音を殺しながら近づく。

 その音に近づくたびに、屋内に充満していた臭いが強くなる。確実に何か居る、もしくは、ある。息がつまるような感覚を覚えながら、目的地と思われる部屋の扉を開けると、それはあった。

 そもそもがこれほど冷え切った環境で死体があったとて、激しい腐臭がするわけもなし。しかし現実としてこれほどまでに臭うということは腐るほどの気温の場所があるということ……つまりは「誰かが暖を取っていた」ということ。人ひとりいない廃墟にあるはずのない、ゆらりとたわむ暖炉の火の前には人が五、六人転がっている。歳は若く……というよりは、幼く、十歳にも満たないような子ばかりだ。いずれの者も既に瞬きひとつせず、青い顔をしている。既に息はしていないように見えた。

 その屍の山から、一つ。ぬらりと起き上がる者がいた。他の子どもたちと同じように血の気のない顔色で、色素の抜けた髪で、白、という一文字が思い浮かぶ。

 しかし、続いて浮かんだ言葉は赤だった。起き上がった子ども……少女の右手はぬめりのある赤黒い液体に浸され、暖炉の光を受けて不気味にてかっていた。それを見た瞬間、私たちは一斉に魔を捕縛するための札を構えた。

≪……さむいの≫

 白と赤の少女は脳を揺するような声で呟く。その声は暖炉のある部屋ではなく、もっと暗く冷たい、牢獄のような場所で発せられたかのような薄ら寒い響きがあった。

≪せっかく、外に出られたから、友だちたくさん連れてきたのに≫

 少女の視界がこちらを捉える。

≪温まるためにみんなでいたのに≫

 少女の足が一歩、二歩。

≪だれも、この寒いのを終わらせてくれないの≫

 右手を伝い、血がぽたり。

≪ねえ、わたしの寒いの、いつ終わるの?≫

 そしてふつ、と少女の姿が消えたかと思えば、右横の仲間がごぼごぼと泡立たせながら口から血を吐いていた。

「なっ……」

 何事だ、と言う間もなく仲間の男は苦しさに身を屈め、焦点の定まらない目で恐怖の表情を浮かべる。その左胸には少女の右腕がするりと透過するかのように入り込んでいた。当の少女は相手の苦悶など意に介さず、されどもその表情には嫌悪も愉悦もなく、ただ己の「寒さ」とやらを訴えるのみであった。

≪こころは心臓にあるの? だから温かいのかな。でも、しばらくすると冷たくなっちゃう……≫

 何かが、例えば太いロープのような繊維の束が千切れるような音がして、それから少女は右腕を男から引き抜く。その手には文字通り人肌ほどの温度の液体と、肉片のような物が握られている。混乱する頭でもわかる。その肉片は、きっと――。

「対象を魔の発生源と推定する。お前たちは先発部隊へ伝令を……!」

 私よりも手練れの二人が私と金髪の部下の前に立ち、少女の足止めをしようとする。我々ではきっと足止めにもならないだろう、そして、儀式を行う先発部隊がこの少女に攻めこまれてしまえば、仕事を果たせない。それに考えたくはないが、先に血を吐いた彼は、もう。

「行くぞ」

「は、はい」

 これが最良だと考え、行う短いやり取りに金髪が小さく頷いて返す。私でも混乱したのだ、こいつはもっと心理的に危ない状態だろう。私が、先導せねば。そうやって惑いを振り切り、惨状が広がる部屋に背を向けて儀式を準備する先発部隊へのもとへと駆けた。

 幸い、現在地と先発部隊の位置とはそれほど離れてはいない。足止めに入った二人の断末魔が耳に入らぬよう、もしくは幻聴と思うようにしながら、私たちは息も絶え絶え、目的地へたどり着く。儀式の準備は八割終了、と言ったところだろうか。その場に残り警戒に当たっていた同僚に状況の報告を

 ……している最中に、警戒に当たっていた者の内、一人が血を噴いて倒れた。

「――そういう訳だ、儀式の遂行を阻害させないために、時間稼ぎを……!」

 手早く報告を済ませ、臨戦態勢へと移り変わり、敵対する少女へ睨みかかる。少女は先ほど共に部屋の様子を見に行った三人と、たった今引き抜いたばかりのもの、計四つの心臓の断片を手にしている。また、身体には焼き切れた捕縛の札が張り付いていた。おそらくは、足止めに入った二人が使用したものだろう。あの様子からすれば、効果はなかったようだが。

「捕縛なんて生ぬるいことをしていたら俺たちが仕留められる! 多少魔に損壊を与える武装を使用し――」

 魔である少女の力量を推して、指示を出す上司は言い切らぬうちに心臓を掴まれ、その場にうずくまった。

 儀式で浄化せねば魔の残滓が残り、事件の完全な収束には至らないため、本来ならば魔を打ち滅ぼす武装……この場合は札の使用は禁じられているが、今はそうも言っていられない状況だ。精神的な要素で構成される魔へ負傷させることのできる札を数枚、手にする。

 ――が、しかし、攻撃を加えるものは誰一人として居なかった。

 各々表情を見れば、そこに在るのは恐怖。危害を加えれば自分も先に死んだ上司のように心臓を潰され、引きちぎられ、苦痛の間に死にゆくのではないか。逆に、ここで攻撃しなければ見逃され、自分以外の誰かが標的となり自分は助かるのではないか。そんな死への恐怖と、そこから逃れようとするむき出しの人間らしさをこの空間に垣間見る。

 我々退魔の一族とて、今回のように魔と直接戦う機会など、そうありはしない。このような状況に陥るのもある種、致し方無いのかもしれない。

 などと達観したように頭を回す私自身の手も、札を使用しようとはしていない。結局は自分も、自分ではない誰かが死んでくれればいい、その隙に儀式が終わればいいと考えているのかもしれない。その醜さに吐き気がするが、そう思っているのは自分の表面的な道徳心だろうか。

≪終わらないの、終わらないと、温かくないの≫

 次々と血に溺れ床に伏す仲間を認識したくない心と、自身に迫る死を認識したくなくて脳裏に刻む達観した思考。両者が混乱のうちにかき混ぜられ、身動きが取れずにいる間にも、続々と仲間は死んでいく。死に際の絶叫、床に血の撒かれる重い水音、焦りの浮かぶ儀式準備の音、逃げようと踏みしめる床のきしむ音、その者の心臓の筋繊維を引きちぎる音、音、音、音――声。

「先輩っ、前を!」

 金髪の部下の声にはっとすると、既に手遅れである、と直感する。

 倒れ伏す仲間のせいだろうか? 先ほどの部屋に負けず広がる生臭い血の臭いのせいだろうか? どちらも違う。首を曲げ、自分の胸の方を見れば「手遅れ」と断じた根拠となるそれは直ぐに理解できた。

 手首よりも少し奥まで、透けるように自分の左胸に入り込む少女の腕。きゅう、と内側に触れられる気持ち悪さが急に湧き立つ。

≪あなたは寒いのを終わらせてくれるの? それとも、他のひとたちみたいに温めてくれるの?≫

 終わりだ。自分も他の者と同じように、想像もできない痛みを伴って死に絶えるのだろう。心臓を掴みながら小首をかしげる少女の、懇願するような顔を視界の正面に捉える。なぜ、そんな、表情を。

 部下が止めようと決死の攻撃を加えようと札を投げるが、少女は空いた左手でそれを受け、痛みも何も感じないかのように札を握りつぶす。

 結局、何をしても無駄なのだろうか。諦観じみた心境で、不意に少女と同じ年の頃だった自分を思い出す。走馬燈というものだろうか。

 「終わらないと、温かくないの」。そういえばそうだ。雪の降る私の周りでは、特に冷え込む冬場、外で遊ぶときはそういったことを感じたこともあった。

 例えば、彼女と同じようにかくれんぼをした時。じっと隠れているうちに体の端から冷えて感覚もなくなってくるのだが、終わらなくては家に帰って温まる事もできない。その寒さと孤独を終わらせるために、時には降参して鬼の前へわざと出ていくこともあった。

 そういった時は「見つけた」の一言が悔しさではなく、安堵を与えることばとなるのだった。

 ……彼女がしているのは、そういう事ではないか?

 走馬燈は失せ、視界に現実が帰ってくる。しかしそこに見出すのは先ほどまでの諦念ではなく、可能性だ。私は心臓へ圧を加える少女を、自分の両腕で……ゆる、と抱いた。

「見つ、けたよ……帰ろう、か」

 口に広がる錆の味を無視して、苦痛を抑え込み、私は精一杯の笑顔で言う。上手く発音は出来なかったかもしれない。それでも、彼女が求めていたものは、この言葉だと思えたから。

≪……うん、負けちゃったね……ありがとう≫

 圧迫されていた心臓が解放される。血圧の上昇に一瞬ふらつくが、目ではその少女の最期をしっかりと捉えていた。

 ゆっくりと涙を流し、嬉しそうに笑むその顔は、先ほどまでの恐れるべき魔――「敵」ではなく、心の通じるひとのものだった。



 結局、儀式は未完のまま、多数の犠牲者を出しながらも魔の無力化は成功した、という結果になった。魔と対話をして事件を解決したなどという事例は初だったため、金髪の部下はそのあと数日にわたって詰所の机で騒いでいた。もっとも、犠牲者の居る手前、大声を出すようなことはなかったが。

「にしても、どうしてあんな解決方法がわかったんですか?」

「ああ、私も昔――」

 事件からもう五日も経っただろうか。数日経っても部下の質問にも上の空で返答するくらい、私の心境は泥のような、鍋のような、形容しがたいどろりとしたものが渦巻いていた。

 あの少女は、薄暗い、声も届かない冷え込む地下室で。一人で、寒くて、腹もすいて、寂しくて。どれだけあのことばが恋しかっただろうか。数時間だけ外で遊んでいても、私のように早く鬼に見つけてもらいたくなる時だってあったのだ。かくれんぼをしていた彼女はそれを三日も経験していたのだから、私に想像のつくようなものでもないのだろうが。

 そんなときに聞こえる「見つけた」という声は、その孤独の終わりを告げる音であり、温かな心が流れるものだっただろう。そこに共感した時から、彼女が行った凶行の動機は何だったのかばかり考えていた。

 孤独を紛らわせるために少年少女を連れた。温かな心が欲しくて、心があると思われた心臓に触れた。しかし物理的な温みはあれど、真に心を温めるためのことばはそこにはなかった。終わっていないかくれんぼを続けていた彼女はそこから生じる孤独と言う心の冷えを温める手段が分からず、凶行に及んでいたのだろうか……今となっては、もうわからないが。

 そうして考えるうちに私の考えにも変化があった。魔への対処は儀式による浄化ではなく、その無念を晴らすことではないかと。彼ら、彼女らは討つべき「敵」ではなく、理解すべき個人なのではないかと。そう思うようになった。

 あの日、私は亡者の思考など理解できないと言ったが、それは理解しようとしていなかっただけではないだろうか。「敵」と断じて討つことばかり考えていたせいではないだろうか。少女の心に、私のことばで触れた時から、そういった考えが私の中をめぐっている。

 しかし、それも正しいのか解らない。もしかしたらあの少女が稀な例で、多くの場合は対話できない、そもそも対面することもなく浄化して終わってしまうだろうし、その方が早いのかもしれない。

 このように、何が正しいのか分からず、どろりとした心境なのであるが、二つ確かに思うことはある。

 理解できないと恐れるから「敵」なのであって、共感が生まれればその認識が覆ると。そういった認識の転換をするために、私のことばでも心に届くのならば、発するべきだと。

「あ、先輩。そろそろ次の事件の話が始まりますよ」

「……ああ、行こうか」

 私は部下と詰所を出て、少し離れた本部へ向かう。次の事件はどのようなものだろうか。もし、先日のように魔と対面するようなことがあれば、私は札よりも先にことばを使うかもしれない。その結果、ことばは通じず首が跳ねられたら、私は後悔するだろうか。

 何も考えず今まで通り浄化を行えば良いのか、それとも魔の求めることばをかけて心を理解するのが良いのか。結論は未だ出ない。

 彼女の求めていたものは届けられた。私の求める結論は、いつか見つかるのだろうか。

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