鉄の試練/6
ダイダロスの内外を覆うエネルギーフィールドは動力としてだけではなく、その重量によるフレームへの負荷を軽減したり、衝撃を相殺するなど様々な効果を持つ。
このエネルギーフィールド技術はダイダロス以外にもパワードスーツ歩兵から戦闘艦、輸送艦にまで幅広く使われている。
「つまりは、見えない力の壁があって、それが動いたり回ったりしているということ?」
『そういう解釈でかまいません』
「……魔法で再現するならどうしたものかな……」
『私としては先ほどの熱線兵器が気になります、あれの芯となるのは赤い結晶でしょうか?私のデータにない未知の物質で構築されていました』
「あれは火の魔法結晶、火山の近くの様な火の力が強い場所で育つ結晶を精錬して作った球に、魔法の術式を込めたプレートを繋げたもの、原理としては圧縮した炎を内側反射させて魔力の筒で包んで一直線に飛ばす。それだけだと使ってる方も熱でやられるからプレートには余剰の魔力で空気層を自動で発動する機能もついてる」
トロールの群を撃破し、旅を再開するアルフィとCYDはそれぞれの技術について意見や疑問を交換する。
『それの製作に掛かった期間や費用はどの程度のモノでしたか?』
「基本のプレート自体は他のモノの流用で、魔法術式を書くのに2週間、火の魔法結晶の原石は師匠がくれたもので……研磨にかけたのは半年程……」
『話の腰を折る事になるのですが暦と一日の時間を教えてくれませんか、私の中の時計と同期させる必要がありそうです』
「一日は24時間、一週間は風・土・水・火・月・太陽の6曜、一ヶ月は30日、一年は366日……」
聞けば聞くほど地球によく似た環境、三柱の神によって「作られた」星という神話が現実味を帯びてくる、ここは高度な文明を持った異星人が実験の為に作った人工惑星なのかもしれないとCYDは考察する。
そして気づく。
『待ってくださいアルフィ、今まで認識していませんでしたが……新たに疑問を検知しました、何故我々は言語が通じているのですか』
「どういうこと?」
アルフィが首を傾げる。
『この世界には文字を含め、言語が一つしか無いのですか?』
「……確かに文字は国によって違ったりもするけど……言葉が通じない事はない」
『何か、文字を書いた物はありませんか?』
「……私の魔法道具の設計メモなら」
アルフィ達は足を止め荷物の中から一冊の本を取り出す、茶色みを帯びた紙に黒いインクで書かれた文字、それはCYDにとって未知の文字であった。
『未知の文字です、学習が必要だという事がわかりました。また優先度は低いですが言語翻訳の謎を調べる事も行わなければ、どこかで食い違いが起こった際が危険だと推測します』
「……そのよくわからないけれど、文字なら教えるし、疑問に思ったら2度と言わず3度聞き返し、言い方を変えて本当に意味が伝わってるか確かめる」
『ありがとうございます、そろそろ森を抜けそうですが、森から街まではどれくらいですか?』
「森を抜ければすぐに見える」
ナドーコの街を出て二日目、森を抜けた先にあるのはジュギーツと呼ばれる街、ここもまた職人の街であり、ナドーコとの違いはこちらはゴーレムなどの大きなモノを作る事や鎧などの規格化された量産品を作る事を得意としている事。
しかしその街はいま燃えていた。
「ジュギーツが襲われてる…っ!!」
『急ぎましょう、今ならまだ間に合うかもしれません』
「……許せない…っ!」
背部のブースターによって歩行速度を上げ、CYDとアルフィは急いでジュギーツへ向かう。