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Arm_for_you  作者: 青川
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鉄の試練/4


 夜明けはこの星にもやってくる。


「夜明けなんて、久しぶりにみた」

『この星の夜明けは初めて見ます』

「……違う星での夜明けは?」

『夜明けと共に月の様な衛星が昇ってくる星もありました』

「あまり想像がつかない」


 両親を失った日、眠る事が出来ず迎えた夜明けと同じ様に、アルフィは眠る事なく夜を過ごした。

 心の整理はまだつかない、昨日までの日常と今ある非日常、支えとなるのは魔族に対する怒りだけ。


『あなたは強い、訓練を受けてきた兵士ですら部隊が自分を残して全滅したとなればここまで冷静で居られません』

「……師匠が言ってた、どんな時も慌てるなって……」

『よき師であったのですね、軍の教育でも冷静であれと教えますが実際にその状況で冷静で居られるのは20パーセントを切ります』

「本当に……いい人だった……大事な人だった……」

『報復という行為は軍規ではあまり認められませんが、心の整理という意味では認められる行為です、故に私は否定しません』


 アルフィは協力者である、しかしCYDにとっては協力者であって友軍ではない、だから軍規などでは縛る必要はない。

 だから自身の意思で自由に意見が言える。


『私にもパイロット、よき友がいました、しかし敵の襲撃によって戦死しました』


 CYDは何処まで行っても兵器だ、兵器であるCYDに「与えられた任務」の変更権はない。


『私は報復を行えません、何故ならそれよりも優先される任務があるからです。故に私はあなたの報復という選択をうらやましく思います』


 それがアルフィにとっては嬉しい事だった、孤独となってしまった自分を認めてくれる者がありがたかった、例えそれが遠く彼方からやってきた鉄の巨人でも。


「……そろそろ準備して行こう、街まではまだある、出来るだけ早く着きたいから」

『了解、肩に乗ってください、荷物は私が持ちます』



 少女と異界から来た鉄の巨人兵器という風変わりな組み合わせは森を通る道を行く。

 この道には大きな危険が伴う、それは野獣や魔獣、盗賊など、アルフィ一人であれば恐らく避ける必要のあった近道。

 だが今はCYDが居る、獣達は襲ってこない、警戒すべきは盗賊だけ。


「この道は護衛無しなら極力通るべきではないと師匠が言っていた、だからサイダ、あなたの力を頼りにする」

『了解、現在センサーには大きな反応はありません』

「……見えるの?」

『はい、呼吸や体温などの生体反応を検知する事ができます』

「体温や呼吸なら隠蔽する方法がある、別の方法で周囲を警戒できないの?」

『他には音、振動でしょうか、私はあくまで対ダイダロス戦闘などに特化している為、そこまで強力なセンサーは搭載していません』

「……わかった、なら索敵は私もやる」


 アルフィが鞄から取り出したのは4つの結晶。


「動け、灯し見(ともしみ)


 アルフィがそう唱えると結晶は周囲に浮遊し、360度、円を描くように回転を始める。


『これはどういう魔法道具ですか』

「ある程度以上強い魔力を持ったモノに反応して赤く光る、生き物は強ければ強いほど魔力を溜め込む、肉食獣なんかは特に、だからこうすれば魔法などで姿が見えなくても人間や魔族、あるいは危険な獣の接近は分かる」

『魔力検知器といった所でしょうか、欠点などは?』

「魔力が濃すぎる場所じゃ役に立たないのと、動かすのに定期的に自分で魔力を入れなきゃいけない」

『魔法やそうやって道具に供給した後の魔力はどうやって回復するのですか?』

「食事や呼吸、魔力が濃い場所に居るだけでもいい、その許容量以上は体に取り込まれないから摂りすぎるという事もない」

『なるほど、技術などではなく、生物の種というレベルで魔法というものは深く関わっているのですか』

「サイダの居たところには魔法はない様だけど、サイダはどうやって動いているの?」


 アルフィによって魔法の仕組みを教わったCYDは自身のリアクターの秘密を明かしていいか、少し考え。

 ダイダロス全体で共通する技術までなら大丈夫であろうと判断した


『動力に関しては原理が機密の為に教える事はできませんが、一度起動してしまえば壊れない限りは何処であってもいつまでも使える、非常に強力な動力炉です。動作に関してはリアクターから供給される電力によって内外にエネルギーフィールド作用を発生させ、駆動しています』

「動き続けられるってことはわかったけど、他はよくわからなかった」

『つまりは見えざる手で動く人形という事です』

「……わかるようなわからないような、とにかくサイダを作った人達は凄いって事はわかった」


 そんな一機と一人に近づく複数の気配があった。


「……何か来る、数もそれなり」

『私の方でも検知しました、戦闘準備』


 背中にマウントしていた30mmハンドキャノンを手にして、CYDはその「何か」へ向けて構える。


 補給の見込みがない以上、実弾兵器である30mmハンドキャノンは無駄撃ちできないが、敵との戦力の違いが分からない以上、まずはこれを出すしかなかった。


 やがて姿を現したのは灰色の肌をした半裸の3m程の肥えた人型達、数は27。


「トロールの群れ……」

『これは敵対勢力と認定してもいいのですか』

「そう、人を襲う魔物だから、できるだけ始末して」

『了解、戦力の確認の為にも少々動きます、出っ張りに掴まって、落ちない様にお願いします』


 CYDにとって、この世界に来て初めての戦い。

 トロール達が咆哮を上げ向かってくる。

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