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Arm_for_you  作者: 青川
25/25

黄金の角を撃て/5


 砕かれた装甲の欠片を踏み潰し、ミノストのディアロンが一歩前に出る。

 ハンドキャノンを構え、CYDが一歩前に出る。


 先制攻撃を仕掛けたのはCYDだ、走りながらハンドキャノンから3発の弾丸を放つ。

 それを「目視」でディアロンがステップで回避、回避方向を予測し更にCYDが相手の胴体を狙って射撃、ディアロンが斧杖の刃で防御、予測射撃を防がれた事でCYDはターゲットサイトを胴体から足へと変更し射撃を再開。

 僅か一瞬でかなりの距離を移動したが、中に居るアルフィは揺らされながらもしっかりとモニターに映った敵の姿を見ていた。


「素早いねっ!さすがは「異世界」の技術だ……だけど!」


 ディアロンの斧杖はただの近接武器ではない、魔力をコントロールし最低限の消耗で強力な魔法を発生させる為の増幅装置でもある。

 ミノストがディアロンの右手に魔力を集中させて斧杖に光を集める。


「サイダ!伏せて!」

 それを見ていたアルフィが叫ぶとCYDはすぐさま姿勢を低くし建物に身を隠しながらブーストを噴かす。

 その上を「雷撃」が通り抜け、遅れて轟音が響き、壁としていた石造りの倉庫が赤熱して吹き飛ぶ。


『助かりました』

「まだ来る、あの杖を壊して!」


「おや、避けたかい!どうやら多少は魔法に詳しいと見る。けど彼らはダメだったみたいだね!」


 ディアロンの雷撃を回避できたのはアルフィとCYDだけ、生き残っていたゴルトン達は雷撃に巻き込まれて無残な姿となっていた。


「……よくもっ!」


 それに気付いて憤るアルフィだが、今のアルフィにできるのはCYDに相手が魔法の予備動作に入った事を教える事だけ。


『敵の行動予測パターンを登録』


 ディアロンか死角となる物影で姿勢を直し、再び射撃体勢に入るCYD。

 しかし引き金を引くより早くディアロンが高く跳躍、空中で斧を大きく振り上げていた。

 即座に射撃を中止して横方向にステップで振り下ろされた斧を回避。

 瓦礫を巻き上げ、地面に深く突き刺さったディアロンの斧杖を認識してCYDは銃口をディアロンに向けるが。

 アルフィは石畳が怪しい青白の光を放っている事に気付いた。

 そして、それはもう口で伝えるには遅すぎる。


 ミノストのディアロンは斧の刃が地面に当たったその瞬間、何かの魔法を発動したと一瞬で理解したアルフィが選んだのは。


「サイダ!前に進んで!!!」

『了――……不明なアクセスを検知、アルフィ何を』


 アルフィは魔眼を使って、CYDのコントロールに介入し、無理矢理にブーストを噴かせて前進、ディアロンとぶつかる程の距離まで接近。

 次の瞬間、先程まで立っていた場所が青白い光を放つのを止め赤熱して爆発する、衝撃が後ろからアルフィとCYDを襲うが、関係ない。


 アルフィからコントロールを取り戻したCYDはすぐさまエネルギーシールドを纏ったパンチでディアロンの頭部を殴打、ミノストの視界が一瞬遮られる。


 続けざまにCYDはディアロンの腹を強く蹴る、CYDの蹴りを受けて後ろに倒れるが同時に地面から斧が引き抜かれ、倒れるより早くミノストはディアロンに斧杖を振るわせた。

 それには先程と同じ「雷撃」の魔法が込められていて、それを見抜いたアルフィは再び魔眼でCYDのコントロールを奪い後ろに飛ぶ。


 重い音を立て、仰向けに倒れたディアロンの目の前をなぎ払うように雷撃が走り、CYDの目の前の石畳が瓦礫と吹き飛び爆炎と煙が互いの姿を覆い隠す。


『アルフィ、魔眼をつかったのですか』

「それしかない、間に合わないと思った」


 魔眼で動作制御システムと自分の思考を繋げ、自分が動く様にCYDの体を動かせるかは賭けだった、しかしアルフィはその賭けに勝利した。


 コックピットの中で目を赤く光らせるアルフィ、それに対してCYDは冷静に分析をする。

 敵は強力な魔法を操る、こちらの攻撃は効果が薄い、味方の支援はない、そしてアルフィはこの敵に反応が追いつく。


『戦力評価の結果、現状私だけであのゴーレムに勝てる可能性は3割程度でしょう。しかしあなたが協力してくれれば、勝率は5割に持ち込めると判断します』

「つまりは……?」

『アルフィ・セアル、あなたをCYD-8385の臨時パイロットに任命。操縦者権限を付与、脳波リンクを開始します。同期完了するまでの30秒の間、耐えてください。そうすれば勝機が見えるかもしれません』

「やっと認めてもらえた」

『いいえ、もっと前からあなたの事は認めていました』

「そうだったんだ」


 不敵に笑うアルフィの頭の横に来るように二つのデバイスがセットされる、それは脳波リンクの為のマシン。


『自分の体を動かすように思考してください、そして体の回りに流れる力を感じ、身を委ねてください』


 煙が晴れるとそこには立ち上がったゴーレム・ディアロンの姿。

 残り25秒。


「やってくれたねぇ!僕に土を付けたのは君で二人目だ……!それ敬意を表して本気で吹き飛ばしてあげよう!」

 残り23秒。


 ミノストの感情の昂ぶりと共にディアロンの各部が激しく発光する、ゴーレム内に貯蔵されている魔力がミノストの感情によって刺激され増幅、そして斧杖が今までよりも大きな光を放ち始める。

 残り18秒。


『高エネルギー反応、危険です。私の制御での回避行動は困難、アルフィあなたの判断を信じます』

「活路は、開く」

 現在、CYDのボディはアルフィの魔眼によって制御されている。

 それはCYDが演算機能の殆どをアルフィの脳波とのリンクの確立に使用されている為だ。

 残り16秒。


 アルフィがCYDのボディを歩行させ、前へと進ませる、エネルギーフィールドによるブーストは現在リチャージ中。

 残り15秒。


「前に進んでくる!?面白い奴だね!!」


 それを見てミノストが笑う、どちらにせよ後ろに避けても前に来ても結果は変わらない。

 ミノストが今発動させようとしている魔法は「断絶(オーバースラッシュ)

 空間諸共に敵を切り裂く防御不能の一撃、ミノストが操る中では最強の魔法だ。


 残り13秒。


『ブースト、リチャージ完了』

「いくよ、サイダ!」

 ブーストを開放、歩行から走行へ、そして跳躍へ。

 残り11秒。


「来るかいっ!受けてみなよぉッ!!」

 ミノストの魔法が完成、CYDとの距離は9メートル。

 杖斧が振り上げられ、光の刃は斧ではなく剣の様に伸びていく。


 残り8秒


断絶(オーバースラッシュ)!」


 振り下ろされる破壊の光を前にアルフィは、再びCYDを加速させる。

 残り7秒、光との接触まで3メートル、ディアロンとの距離は5m。


「う……させ、なぁああああい!」


 CYDの身を屈ませ、ディアロンの懐に飛び込みんだアルフィはそのままCYDの右上腕で斧杖の「柄」を打ち上げる。

 肩の増加装甲が若干切断されるがそれを気にせず、左腕を加えて、両の腕をクロスさせる形で「断絶(オーバースラッシュ)」を振り下ろすのを阻止する。


 残り3秒。


「バカだ!こいつはトンでもないバカだッ!!」


 結果はCYDの力を信じたアルフィの勝ちだった、質量とパワー、ディアロンの斧杖を振り下ろしす「力」とCYDの機体の力が拮抗したが為に「断絶(オーバースラッシュ)」は夜空に浮かぶ雲を少し切っただけで終わった。


 残り0秒。


『脳波リンクの確立を完了。』


 CYDの宣言と共にアルフィの頭の中で何かが切り替わった感覚がした。

 それは今まで魔眼で無理矢理に動かしていたが為に感じていた、まるで水の中の様な重さが消えた様な感覚、自分の体が大きくなったような感覚。


 そして魔法の力の流れが自分の体に流れるのと同じ様に、CYDの機体の中に浸透していくような感覚。


「これが……っ!」


 アルフィは機体の両腕に魔力を溜め、魔法による「強化」を発動して、CYDの元の出力と合わせてディアロンの杖斧を弾き上げる。


「これがっ!!」

 そしてその魔力を機体の拳へ移動させ、魔法「焼却」を発動させる。

 この魔法は魔力をそのまま炎に変える物。

 数千度の炎がCYDの機体表面に張り巡らされたシールドの上から吹き上がる。


「なんだそのバカな力ッ!?」

 驚愕しながらもすぐさま斧杖を振り下ろそうとするミノストだったが、それよりもCYDとアルフィの拳が早かった。

 焼却によって圧倒的な熱量を持った拳は右ストレートでディアロンの胸装甲を貫き、内部にいたミノストを圧殺、そして焼却の効果で内部の魔力に引火させ、ディアロンを大爆発させた。


「これが私達のっ……力……!」


 爆炎の中、立っていたのはCYDとアルフィ。

 それはまるで新しい「勇者」の誕生の様だった。


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