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Arm_for_you  作者: 青川
24/25

黄金の角を撃て/4


 一度目の轟音、壁を破壊した爆発の音は夕暮れの森で訓練をしていたアルフィ達にも届いた。


『敵襲の可能性があります、ヒバナの安否が気になります。急いで街に戻りましょう』

「わかった、急ごう」

『コックピットへ乗ってください』


 膝を着き、ハッチを開けるCYDにアルフィは助走を着けたジャンプで搭乗する。

 アルフィがシートに座った事を確認するとシート後ろから二つのベルトが降りて来る。


『非常に揺れますので、シートベルトをしてください』

「前はなかったけど、これどうやってつけるの?」

『体の前で交差させ、それぞれ反対の下側のスリットへ差し込んでください』

「わかった」


 CYDの指示通りにアルフィはシートベルトを装着し、それを確認したCYDは次の指示を出す。


『両サイドのコントロールバー、緑の灯りがついた棒です。それを掴んでおいてください』

「これ?」

『そうです、では急ぎましょう』


 アルフィがきちんとした姿勢だと内部センサーで確認するとCYDは最大速度で移動を開始する。


「うっ」


 ちなみにアルフィが乗った状態で最大速度を出したのは初めて、コックピット内に掛かる重力にアルフィは思わずうめく。


「これがっ……CYDの動きっ……」


 パイロットとの動きをリンクしていない状態のCYDの動きに振り回されそうになりながらアルフィは振動と重圧に耐える。

 魔法を付加した戦闘服でなければ今頃もっとひどい事になっていただろう。


『舌を噛みます。口を開けない事を推奨』


-----------------------------------------------------


 ロディアスのゴーレム・ゴルトロンの槍が魔王軍のゴーレム・ボルバロを貫く。

 魔法によって回転を加えられたこの槍は重力と速度と回転によって貫通力を加えた特注品、並のゴーレムなら容易く粉砕できる逸品だ。


「これで3体、残りは……」


 戦闘開始から早くも3体のゴーレムを撃破したロディアスは次の標的を選ぶ為にゴルトロンの足を止める、そこへ一体の砲を持ったボルバロが狙いをつける。


「こっちか!」


 強力な砲弾が放たれるが、それを「目」で追い、丸盾で受け流して防御、驚いて動きの止まったボルバロに槍を投擲、回転と質量と速度の加わった槍はボルバロの腹部を貫通、中の操縦者が死亡しボルバロは仰向けに倒れる。


 その頃、周囲ではロディアスの部下が操るゴルトンが2体で1体のボルバロの相手をする。

 多少性能差があるとはいえ、数の利は強い。

 メイスによって滅多討ちにされればどんなに頑丈なゴーレムでもいつかは沈む。


 装甲をボコボコに凹まされて一体のボルバロが沈黙、相手をしていたゴルトンも多少のダメージは負ったがまだ戦えると、他に加勢に行こうとするが離れた場所のボルバロの大砲から放たれた砲弾を身に受けて上半身が吹き飛ぶ。

 当然中の操縦者も即死だ。


「はぁ、本っ当に……役に立たないねぇ」

 その戦いの様子を見ていたミノストは部下の不甲斐なさに呆れ、溜息を吐く。


 そして残るボルバロが大砲を持った5体となった時、ついにミノストのディアロンが動いた。

「もういいよ、全員死んでたら報告が面倒だから後は僕がやるから、後ろで見てなよ」


 敵であるゴルトンの数は17、それにロディアスのゴルトロンだ。


「もはや利はこちらにある、囲んで叩き潰せ!」

 ロディアスが部下へ向けて叫ぶ、が次の瞬間、轟音と共に一番前に居たゴルトンの上半身が宙を舞った。


 ディアロンが凄まじい速度で踏み込んで斧でゴルトンを両断したのだ。

 激しい音を鳴らして地面に叩き付けられるゴルトンの残骸、切断された位置的に搭乗者は即死だ。


「さて、残り17体、このくらい質のゴーレムなら数に入らないね」


 固く強化された石畳を踏み込みで破壊しながらディアロンが再び飛ぶ、標的は二体並んだゴルトン、なんとかメイスで防御しようとするが、青白い軌跡が走りメイス諸共に二体纏めて横一文字に切断。


 ディアロンの武器である斧杖は魔力結晶によって常に高濃度の魔力の刃を展開できる、この刃の切断力は見ての通り、ゴーレムを容易く破壊する程。


「下がれ、あれは私が相手をする!」


 それに気付いたロディアスはすぐに部下を下がらせ、ゴルトロンで前に出る。


「強者が強者の相手をする、旧き良き決闘だ、だけど君は」


 ミノストのディアロンは足を止め、姿勢を低くして斧を構える。


「僕にとっては敵じゃない」


 そしてロディアスのゴルトロンが切り込んでくるより早く斧を振り切り空を切り裂く。

 すると青い光が石畳を切り裂きながらゴルトロンへ向かって走る。

 それに気付いたロディアスもゴルトロンの姿勢を低くして盾を坂道になる様に斜めに構え、石畳に突き刺すが、青い光は盾を切り裂いて諸共にゴルトロンの左肩を切断した。


 片腕を失ってバランスを崩したゴルトロンが膝を着き、槍を杖代わりとして立ちあがろうとするがそれよりも歩いてきたディアロンの方が早かった。


「終わりだ」


 見せしめの様にミノストはディアロンの右手をゴルトロンの腹部へと突き込み、鎧を破壊して中のロディアスを引き摺り出して投げ捨て、ゴルトロンを蹴り倒して踏みつけた。


「さて、破壊を再開しろ。夜明けまでに終わらせろ」


 障害となる相手がいなくなったと判断したミノストが部下に命じて、大砲を構えさせる。


 しかし、その時である。

 炸裂音と共にボルバロの持つ大砲が砕けて暴発、一体のボルバロが沈んだ。


「何だ……?」


 続けて他のボルバロ達の大砲も次々と砕け、爆発に巻き込まれないように投げ捨てて身をかがめたり、建物に身を隠す。


 ミノストはその目で「弾」の飛んできた方向を向くとそこには一体のゴーレムが居た。


「へぇ、ただのゴーレムじゃないね……どちらかというと彼の言う「ダイダロス」みたいな……いやそのものか……面白いものがあるじゃないか」


 それはアルフィが乗ったCYDだ、崩落した壁の穴からボルバロ達を狙い撃ったのだ。


『アルフィ、これより戦闘に入ります。先程より更に激しい動きが予想されます。覚悟を』

「大丈夫、覚悟は出来てる」



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