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Arm_for_you  作者: 青川
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黄金の角を撃て/2


 西端前線の崩壊の報告はすぐに多くの者の耳に入った、マルキア王国では西側に近い都市には元から防衛の為に騎士団が置かれていたが、そこに東側で他国との国境を監視していた部隊をも引き上げさせ、西側へと向かわせる事がすぐに決まった。


 それは数百年ぶりの人類と魔族と全面的な戦争の始まり、小競り合いを繰り返していた人類圏の国々もすぐさま魔族との戦いに備えを始め、マルキア王国へ支援を送る事、つまりは「盾」を強化する事を決めた。


 一方でジュギーツは特に西側に近い街だ、住人達の反応は二つ、それは東側へ逃げる者とこれを商機と見て残る者、ヒバナ達は後者だった。


「これを逃す手はありません、戦争特需という奴です」

「ヒバナは東へ帰らなくてよかったの?」

「何をいいますかアルフィちゃん、元より東へ帰っても私の技術じゃ勝ち目はないんですよぉ!だから西へ逃げて来て店を開いたのですから!」

「そうだったんだ……」


 武器を魔法道具化させるのが苦手だったヒバナは東側ではハッキリ言って中の下くらいの職人として扱われる、生産競争の激しい東側では生き残れない、故に西側でのニッチに食い込む事で稼ぎに来ていたのだ。


『アルフィ、前線が崩壊したと言う事は生産拠点であるこの街は恐らく優先して狙われます。訓練をして戦闘に備えましょう』

「わかってる、これは魔王軍に復讐するチャンスでもある、叩き潰して絶対に後悔させてやるつもり」

「フフフ……そんな張り切ってるアルフィちゃんにプレゼントがあります!」


 ヒバナが取り出したのは一丁のいわゆる「リボルバー式拳銃」だ。

「キトヨウの名物拳銃です、魔法道具化はしてませんけど護身用にどうぞ!」

「ありがとうヒバナ、大事に使うね」

『堅実な構造で、よい銃だと思います』

「それほどでも~へへへ……」

『では今日の訓練は試し撃ちも兼ねた動きながらの射撃訓練にしてはどうでしょうか、アルフィ』

「そうする」


 この世界では既に銃器はそれなりに発展している、しかしそれ単体ではまだ火力が低く、まだ精度の高い弾丸の大量生産体制が確立されておらず、また「魔法の防壁」によって簡単に防がれてしまうので、西側ではまだサブウェポンとして使われるという認識が強い。


 魔法使いは火力支援などを担当する事が多く、アルフィはその例に漏れず魔法道具による肉体と機動力の強化で高機動高火力の戦術を選んだ。

 この世界ではこれは隊列や連携などを重視する正規軍というより傭兵の戦い方に近く、またCYDの世界の一騎当千のパイロットの戦い方にも近い。


『では、街の外の森で訓練をしましょう。街中での発砲は思わぬ事故に繋がりかねません』

「それじゃ行って来る、ヒバナ」

「はいはーい、後で感想聞かせてね」


 火打ち工房を出て二人は外へと繋がる大通りへと向かう、とそこで見回りをしていた騎士隊と出くわす。


「おや、久しぶりだねサイダ、外装はちゃんと買えた様だね」

『その件はお世話になりました、ロディアス氏』

「何、恩にはきちんと報いる主義なんでね。ところで君がアルフィ・セアルかい?」


 そこにはこの街の騎士を纏めるリーダーであるロディアスも居て、CYDは以前の報酬の礼を伝える。


「はい、私がアルフィ・セアルです。サイダの外装や報酬の件はありがとうございました。おかげできちんと生活もできています」

「そうか、それはよかった……君の故郷の件は残念だったが、これから君はどうするつもりだ?」

「この街に残って、いずれは魔族と戦うつもりです」

「そうか……いい目だ、覚悟のあるしっかりとした目だ。だが私は君の様な未来ある子供が戦わずに済むように全力を尽くさせてもらうよ」

「……そうですか、でもそうなると私は仇討ちができなくて困りますね」

「気持ちは分かるさ、前線に出ていた友が死んだと聞いた時は私も怒りに身を震わせた。でもそれよりもまずは今あるモノを失わないようにする事、その方が大事だと自分を抑えた。仇討ちも結構だが、君も復讐に囚われて今あるものを無くさないようにね」


 ロディアスはアルフィにそれだけ言うと騎士隊と共に見回りに戻る、アルフィとCYDはそれを見送った。


『良き大人の見本の様な人物でしたね』

「良く出来た人、できれば長生きして欲しいと思う」

『同感です』


 急いで荷物を積む馬車や、物資を運ぶゴーレム、忙しない様子の街の通りを抜け、門の外へと出て、アルフィとCYDは森へと入っていく。


 それと同じ頃、反対側から森へと入っていく一団があった。


 戦火は近い。

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