それを知る為に/3
「お前は忌み子だ!呪われた子だ!」
「お前など生まなければよかった!」
炎の記憶、忘却の向こうに置いて来た筈の過去が追って来る。
向けられる炎の魔法に魔眼が煌いて、顔から破裂する様に血を噴出し倒れる父と母、使い手を失った炎はあらぬ方向へと燃え移り、屋敷は瞬く間に地獄と化す。
両親の最後の感情は恐怖、最後の思考は私への殺意、それを読み取った私は両親の頭を「壊して」殺した。
私の魔眼は「相手と自身の思考の共有」。
簡単に言えば相手を自分の手足と同じように使えてしまう、禁じられた力。
しかしまだ幼かった私はその力の恐ろしさを知らず、使用人や父や母に向けて魔眼を使い。
全てを失う事となった。
焼き出された後も、その力で生き残る事は出来た。
襲い来る夜盗や獣もこの魔眼の前では恐れる程の物ではなかった。
けれど孤独と罪悪感に心をすり減らし、やがて生きる事を諦めようとした時。
師であるエルナーザ先生と出会った。
彼女もまた魔眼を持っており、それは呪いや私の様な支配の力に対して抗う事の出来る魔眼。
先生は私の魔眼とこの炎の記憶を魔法で封じ込めた、時々封印が緩んだ時は側に居て心を守ってくれた。
いつか自分自身の意思でこの力と向き合う事が出来る様に、多くの魔法や生き方を教えてくれた。
けれど、そんな先生はもういない。
あの時、私はサイダに認められたくて、無意識のうちに魔眼を使ってしまった。
けれどサイダの意識はとてつもなく複雑で、逆に私自身の頭がおかしくなりそうになって、無理に魔力を放出して、過放出の状態になってしまった。
私は急ぎすぎたのだ、先生の仇を討ちたいがばかりに、それ以外の事を考えていなかったから、サイダの事をしっかりと理解していなかったから、何よりも自分自身を見ていなかったから。
私は本当の事を言ってサイダに失望されたら、見捨てられたらと思うと、どうしようもなく怖い。
彼は私を救ってくれた、私にチャンスを与えてくれた、そして何より私を心配してくれた。
彼が居たからこうして今、私はここにいる。
だから、彼に黙ったままだとか、嘘をついたりだとかはしたくないと思った。
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「アルフィちゃん、どうしちゃったの?」
『生きている限り、人は壁にぶつかるとよく言います、彼女もまた壁にぶつかったのでしょう』
夜空の月を見上げるCYDのもとに一仕事終えたヒバナがやってくる、どうやら帰ってきてからのアルフィの様子のおかしさには気付いていたようだ。
「サイダってゴーレムの割になんていうか人が出来てるって感じがします」
『私の人格データは、かつてのパートナーとの交流によって大きく影響を受けています。彼無くして、今の私は無かったでしょう』
「そのパートナーさんは今どうしてるの?」
『戦死しました』
「それは……ごめん」
『よき友であり、よき兵士でした。彼の遺志を果たすべく、私も決して諦めなかった彼を見習いたいと思います』
「よかったら、その人の事をもっと聞かせて欲しい。サイダの事も」
そこにやってきたのは部屋に篭っていた筈のアルフィだ。
「アルフィちゃん!」
『もう大丈夫なのですか?』
「私はもう大丈夫、心配をかけた」
CYDのモノアイカメラを見つめ、アルフィは答える。
「私は、サイダの事をもっと知りたい」