鉄の試練/8
空には月が昇る、ジュギーツの街は魔王軍の襲撃によって大きな被害を負った。
今は行方不明者の捜索や、負傷者の手当て、そして死者の弔いが行われながらも家を焼き出された者達に寝床を用意している。
30体居た防衛側のゴーレム・ゴルトンも無事なものは21体まで減ってしまった。
「サイダが瓦礫を持ち上げてくれますから、その間に救助をお願いします」
「わかった!頼みます!」
『了解、では持ち上げます』
アルフィはサイダと共に騎士団や自警団と協力して瓦礫に埋まってる者の救助を行っていた。
「サイダ殿、アルフィ殿、助かりました」
「……いい、まだ助けを求めている人は居るはずだから」
無事に助けられた事を確認すれば、アルフィは礼を言われても生返事で次へと向かう。
『アルフィ、休みましょう』
「私は疲れてない、動いているのはサイダだけだから、私は……」
『あなたは殆ど休息を取れていません、このままでは生命活動に支障をきたします。残りの救助作業は私が協力するのであなたは休息を』
「……ダメ、助けないと……」
強がるアルフィであったが既に体力は限界だった。
それもその筈、ナドーコの街が襲われてからCYDと出会い、このジュギーツの街にやってくるまで彼女はまともに眠れて居ない。
ついによろけて倒れそうになるが、CYDが身をかがめ右手でアルフィを支える。
『すみません、何処かでアルフィを休ませてあげて下さい』
「わかりました、自警団の集会場でよろしいですか?」
『お願いします、彼女の居たナドーコの街もここと同じ様に魔王軍に襲われ彼女を除いて全滅していて、ここまで来るまで彼女はまともに休めていませんので、できるだけいい環境で休ませてあげてください』
「な……わかりました!あなた達には随分助けられました、恩は返しますよ!」
自警団の若者に連れられていくアルフィを見送るとCYDは再び瓦礫の中の生命反応を探し始める。
「すまないサイダ殿、後程ナドーコの件について詳しくお願いします」
すると同じく救助活動を行っていた騎士の一人が近づいて来て、CYDにそう言う。
『わかりました、ですが今は救助活動を優先しましょう』
「賛成です、しかし人が何処に居るのか見えるのはすごい機能ですね」
『はい、こういった災害救助でも有用ですが、入り組んだ場所の様な視界の悪い場所での待ち伏せなどに対しても有効です』
こうしてCYDがアルフィ以外の現地の住人と会話するのは初めてだ、アルフィが何を理由に救助活動を手伝おうとしたのか定かではない、しかしCYDが人々から情報を得るにはちょうどいい機会であった。