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五話 冒険者登録

 スレイ達と冒険者ギルドへとやってきたグレンは、昨日のように中から人が飛んで来ないか少しドキドキしながら、スレイ達に続いて冒険者ギルドの扉を潜った。

 すると外からは分からなかったが、ダリュー村の十倍はありそうな広さと多くの職員が働いているのが分かった。ただグレンが思っていたよりも冒険者の数は少なかった。

 ただ冒険者達の装備している武具は、ダリュー村では見かけないような高価そうだった。


  ――昨日は緊張していたから冒険者ギルドの旗しか目に入らなかったけど、やっぱり王都にある冒険者ギルドともなると凄いんだな。

 グレンはダリュー村に造られた冒険者ギルドのことが頭に浮かんだ。


 そして辺りを見回した時にグレンはあることに気付き、スレイに尋ねることにした。


「王都の冒険者ギルドには、僕ぐらいの子供やラリーさんみたいに年齢で冒険者を引退しそうな人はあまりいないんだね」

「それは今がそういう時間帯だからかな。子供冒険者は早朝にはたくさんいるよ」

「どうして早朝に?」

「子供冒険者には大した依頼がないんだ。だけど早朝に張り出されるおいしい依頼があって、それの取り合いになるんだ。だから子供冒険者になら早朝に来れば会えるよ」

「そうなんだ」

「逆にラリーさん世代でまだ冒険者の方々はほとんどが高ランク冒険者だから指名依頼になるんだ。だから緊急性がない限りはもっと遅い時間帯に来ることが多いんだよ」

「スレイお兄ちゃんはやっぱり何でも知ってるね。僕が唯一知っているダリュー村の冒険者ギルドでは、本業とは別に副業として冒険者を兼業する人が多いから、どの年代も偏ることもなくいるんだって聞いてたから少し驚いたよ。地域によっても色々と変わるんだね」

 グレンは昔から疑問が湧いたらこうしてスレイに聞き、スレイはその疑問に答えられるように勉強していた。

 グレンは何でも知っているスレイが頼もしく、スレイもまたも自分とは違った視線で物事を捉えるグレンの発想が面白かったのだ。

 もちろんスレイもグレンの疑問に全て答えられる訳ではなかったのだが、そういう時は一緒に考えて結論を出していた。

 王都へ来てからは手紙だけのやりとりだけだったので、スレイはこのやりとりが懐かして、グレンの疑問に精一杯答えることにした。


「そうだね。まぁグレンが感じたように王都の冒険者ギルドは比較的成人になったばかりから、父さん達世代までの冒険者が多いのは事実だけどね」

「そうなんだ。ただそれにしては冒険者の数が少ないようにも感じるんだけど……これも時間帯だからなの?」

 グレンが疑問に思っていたのは広さに反比例した閑散とする冒険者ギルドだった。


「それはまず王都の冒険者ギルドについて説明することが必要かな……。この王都にある冒険者ギルドでは他の地域よりも重要な拠点となっているから、依頼に対する報奨金が高いんだ。そして人口が多いこともあって、依頼の数もかなり多い」

「うん。それはこれだけ冒険者ギルドが大きいから分かる気がする」

「ここからがグランの知りたがっていた働き盛りの冒険者が多い理由だけど、この王都の周辺にはいくつかのダンジョンが存在しているんだ」

「えっ、ダンジョン? それって昔スレイお兄ちゃんが創作してくれた物語の中だけのお話じゃないかったの?」

 グレンはダンジョンが本当にこの世界にあるとは知らなかった。

 グレンが知っていたのは昔スレイが創作した物語で、ダンジョンと呼ばれる世界を破壊しようとする魔物の住処があり、そこへ勇者達が世界の平和を守る為に挑んでいくという内容だった。

 しかしグレンはそれが本当に創作されたもので、ダンジョンはないものだとばかり思っていた。

 それにも理由があった。


 ダリュー村の近辺にはダンジョンがなかったこともそうだが、ダリュー村の大人達からもダンジョンという言葉は聞いたことがなかったのだ。

 そして当時のスレイからも思いついた物語として聞いたいたので、てっきりお伽話だったのだと認識していたのだった。

「えっ!? あ、そうか……グレンには勘違いさせちゃったか……」

「どういうこと?」

「ダンジョンは世界を破壊する魔物の住処って物語にしていたと思うけど、実際は空気中の魔力と瘴気、そして人々の欲望を吸って突然産まれる自然の要塞だとダンジョンを研究する人達は考えているんだよ」

「それじゃあ魔物の住処じゃないの?」

 グレンは混乱しつつも、しっかりと自分の認識を正すことにした。

 知らないことを知ったように装ってしまうと、三年前に恵みの森でゴブリンにと遭遇するような窮地に陥った時、何も出来ず最悪の事態を引き起こす可能性があることを知っているからだ。

 そしてもしその時に他の人を巻き込んでしまったら……そう考えるようになっていたのだった。


「いや、ダンジョンには数多くの魔物が日々産まれているのは間違いないから、住処と呼んでも差し支えないと思う。ただダンジョンにはもう一つ産まれる物があるんだ」

「それって瘴気と魔力、それから人の欲望のどれかと関係してるの?」

「あるよ。そしてそれが冒険者達が依頼とは別に迷宮へ挑む理由でもある」

「もしかしてお伽話に出てきた聖剣が本当に産まれるの?」

「おしい。実は宝箱が産まれるんだ。もちろんその中身は一つ一つ違うらしいんだけどね」

 そのグレンの答えを聞いたアリア達はグレンを微笑ましそうに見つめていた。

 三人は会話に何度か入ろうとしたのだが、いつも肩に入っているパーティーリーダーのスレイが、今日は本当にリラックスしているのが分かったので、会話に入ることを遠慮していた。


「その言い方だと、スレイお兄ちゃんはダンジョンで宝箱を発見したことがないの?」

「いや、ダンジョンに入ったことはないんだ。迷宮には魔物と宝箱の他に、色々な罠が仕掛けられているみたいなんだ。だから王都学校に在学中はダンジョンに潜ることが禁止されているんだよ」

「そうなんだ。でも良かった。僕はお兄ちゃんに怪我をしてほしくないからね」

「そっか、ありがとう。さてズレてしまった話を戻すと、ダンジョンは危険な分、宝箱から本当に価値がある物も出土するんだ。だから王都の冒険者は依頼よりもダンジョンに潜る冒険者が多いという訳なんだ」

「でもそれだと王都の依頼が余るんじゃない?」

「そこでダンジョンに潜らない僕達王都学校の生徒の出番なんだ」

「それじゃあ余った依頼は王都学校の生徒が請け負うことになるの?」

「冒険者登録している生徒だけだよ。それに依頼を受けるかどうかは任意で強制ではないからね」

「それでもスレイ様が率いる【四元の竜】は同年代で一番勢いのあるパーティーになります」

 久しぶりの兄弟の会話に突如、割って入る声があった。

 グレンとスレイは割って入った声の主へと視線を向けると受付カウンター越しに猫獣人が立っていた。

「おはようございます、ジェリーニャさん。あの一番勢いのあるとか吹聴するのは止めていただけませんか?」


「本心からそう思っていたのですが、配慮が足りず申し訳ありませんでした。それでは改めましていらっしゃいませスレイ様。ご依頼ですか? 受注ですか? それともデートのお誘いでしょうか?」

「何言ってんのよ、この万年発情猫。今日はスレイの弟のギルド登録をしにきたのよ。それよりも何で今日も貴女がいるのよ? 今日は休みだったはずでしょ」

 しれっとデートと言い放った猫獣人の受付嬢に噛みついたのは今まで大人しくしていたアリアだった。

「これはこれはアリア様もご一緒でしたか。今日は静かだったので、いらっしゃるとは思いませんでした」

「それが受付の態度なの」

「まぁまぁアリア落ち着いて。ジェリーニャさん、今日は弟が王都までやってきたので、この機会に冒険者登録をして欲しいと思って来たんですよ」

 スレイに宥められたアリアは唸りながらジェリーニャを睨みつけたが、これ以上騒ぐのは迷惑になるとジェリーニャから目を切って我慢することにした。

 そんな様子をスレイは苦笑しながらジェリーニャへと視線を向けた。


「スレイ様の弟君ですか、それなら万事お任せくださいませ。それではこちらの紙に必要事項を記入してください」

 するとジェリーニャは心得たとばかりにアリアには構わず、グレンの冒険者登録手続きをプロらしく始めた。

 紙には名前 種族 年齢 出身地 得意武器 魔法属性を書き込むようになっていた。

 グレンは分かっていることを素直に書いていく。


「一応記入出来るところは書き終わりました」

「はい。それでは確認致しますね……グレン様、人族 九歳 出身地ダリュー村 得意武器短剣 魔法属性は水属性魔法の初級まで間違いないでしょうか?」

「はい」

「……問題ないですね。それではコレに血を一滴を願いします」

「えっ?」

 グレンは何となくジェリーニャが何かを期待して落胆しているように見えたけど、それよりも渡されたカードに血を垂らすということに驚き、直ぐにどうでも良くなった。

「冒険者カードは血液に含まれる魔力で認識するために必要なんですよ」

「でもダリュー村では魔力を流せればいらないと聞いていましたけど……」

「それはその通りなのですが、それは魔力を安定して操作出来る方のみなのです……」

「あの……一度試しても?」

「ええ、そこまで言われるならどうぞ」


 ――きっと期待されていないからなのかな……。それでも何だか決めつけられるのが嫌だな。

 グレンは初めて会った人に失望されるのはどうでも良かったが、スレイがそれによって迷惑が掛かるかもしれないので、見返すために渡されたカードへ魔力を注いでいく。

 一定量を安定して注ぐことで直ぐに冒険者カードに反応が現れた。

「これでいいですか?」

「ええ、もちろんです。これだけ素晴らしい魔力操作が出来るなんて……やはりスレイ様の弟君ですね」

 ジェリーニャはそう言いながらグレンから回収した冒険者カードを操作していく。

 そして冒険者として活動するにあたっての注意事項が説明された。


 ・ランク更新、または一年毎に冒険者ギルドを訪れ、冒険者カードの更新。

 ・ランクの説明……ランクはHからSSSまであり、AランクからAAAまでランクが増えること。

 ・ランクによって採取、討伐、護衛、特種or指名 緊急依頼があり、Cランク以降はバランスよく依頼を受けないと昇格することが難しくなる。

 ・またパーティを組んだ場合、ランクが一番上の者のランクで依頼を受けることが出来る。しかし失敗すれば降格する可能性もある。

 ・最後に依頼を失敗してしまった場合、違約金が発生する場合がある。もし払えない場合は依頼者と相談になるが、最悪の場合ではあるが、借金奴隷になる可能性があるので依頼は慎重に選ぶことを伝えられた。


 グレンは全てを聞き終えたが、まだ曖昧な部分が多いと感じたので、保険をかけておくことにした。

「……分からなくなったら、また聞きに来ても大丈夫ですか?」

「いつでも歓迎致します」

「ありがとうございます」

 グレンは深々と頭を下げたジェリーニャへお礼を言って 振り返るとスレイは微妙な顔をして笑った。


 この後、ギルドにある訓練施設でスレイと模擬戦をすることになり、今のグレンの実力を計り入学試験の合否の判断基準にすることになったが、模擬戦が始まってから間もなく、グレンは四人からは確実に合格出来るだろうと太鼓判を押された。

 ――まだ不思議な力は使ってないんだけどなぁ……。

 不完全燃焼ではあったけど、グレンは皆が褒めてくれるので 明日の試験は落ち着いて臨めそうだと肩の力を抜いた。

 ところが翌日の入学試験でまさかの事態が起るとは、夢にも思っていなかった。


お読みいただきありがとうございます。

レベルやステータスがあった方が分かりやすいと思いましたが、とりあえずの目安で記入しておきます。


 グレン 種族:人族 年齢:九歳

 LV5  

 HP :50/50

 MP :150/150

 STR :30(90) VIT :25(75) DEX :50 AGI :40(120)

 INT :25 MGI :25 CAR :75 LUC :70

 スキル

 短剣術Ⅲ 体術Ⅱ 闘気Ⅲ(操作、循環) 魔力Ⅳ(操作、循環)

 気配察知Ⅳ 気配遮断Ⅳ  並列思考Ⅱ


 魔法属性

 水

【称号】

 ○○の継承者 


 一般ステータス 種族:人族 年齢:九歳

 LV5  

 HP :30/30

 MP :10/10

 STR :10 VIT :10 DEX :10 AGI :10

 INT :10 MGI :10 CAR :60 LUC :50

スキルは二~三あれば優秀、スキルレベルはⅠ~Ⅱ

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