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一話 危険な勝負

皆様、ブロッコリーライオンです。大変ご無沙汰しておりました。

少し忙しい毎日を過ごしていましたが、何とか落ち着きそうなので、小説を書くことにしました。

しかし半年も書いていないと内容はもちろん、文書も酷くリハビリをすることに決めました。

そんな訳で今作『紋章に導かれる者』を通じて、他の作品を書いて参ります。


 木漏れ日が差す森の中を駆け抜けていく一つの小さな影があった。

「はぁはぁはぁ」

 その小さな影はどれだけ走って来たのか、とても苦しそうな荒い息遣いしていた。

 しかしそれでもその小さな影は駆けることを止めず、整備されていない森の中を器用に進み、時には道無き道でも草や木枝を掻き分けていく。

 その小さな影を見ればまだあどけない表情をした十歳よりも下に見える、茶色の髪をした少年だった。


 しかしさらによく見れば服はボロボロだし、掻き分けた枝や尖った植物の棘などであちらこちらからから引っかき傷が出来て出血までしていた。

 ではなぜ少年が痛い思いをしてまで森の中を駆けているのか? それはなんということはない。ただ単に魔物に追われているからだった。

 少年はまだ一人で魔物を倒したことはもちろん、遭遇したこともなかったのだ。


 ――怖い、怖い、怖い。このままだと直ぐに追いつかれちゃう。もしも追いつかれたらきっと殺されてしまう。速く村まで逃げなくちゃ……。

 少年はただ恐怖に怯えながら、それでも死にたくない生存本能から森を出て自分の住む村へ……自分の家へと帰ることだけ考えていた。


 身体の痛みも途中からは感じなくなっていたけど、身体がとても重くなっているのは分かっていた。

 しかしその甲斐もあり、ようやく森の出口が見えてきた。


 ――助かった。

 ふと少年がそう思った瞬間、いきなり鈍器で殴られた痛みが背中を襲い、少年は突然の出来事に足を縺れてさせて転倒してしまう。

 さらに全力で駆けていたため、頭から転倒してしまいその意識が遠退いていく。

 そして少年が最後に見た光景は醜悪な笑みを浮かべる魔物……三体のゴブリンの姿だった。







 豊かな自然が溢れるエイダル王国の中でも、奇跡の大地と称される王国最西端の地にあるダリュー村。

 そのダリュー村は毎日大変な賑わいを見せていた。

 ダリュー村が奇跡の大地と称される所以は、ダリュー村周辺の瘴気が極端に薄く、森はもちろん近海に棲息するのは弱い魔物だけだった。

 そして瘴気が薄いことで農作物が良く育ち、森には果物が多く生り、海では魚が大漁に水揚げされている。

 そんな恵みある土地を商人が放っておくはずもなく、一日に数多くの商人が往来し、その賑わい振りは村と言うよりは町に近かった。


 そのため利権が絡むことで、普通なら治安の悪化が心配されるのだが、ダリュー村の治安は引退した冒険者達によって守られていた。

 昔から商人達の護衛として数多くの冒険者もダリュー村を訪れており、護衛に訪れた際、冒険者達の中には引退したら終の棲家として暮らしたいと思わせる魅力があるらしく、引退間際に移住を希望者が多い。

 中には高ランクで名を馳せた冒険者もおり、人格的に問題がないと判断された者達のみ移住を村長が認めることで、高ランク冒険者がいることで悪さを計画する者はほとんどいない。

 さらに恵みの土地と称されるだけはあり、貧困によって食べる物がなくて犯罪に手を染めるということもないので、争いごともあまり起こらない。

 そんな土地である。

 

 そんな村の中で唯一目立った争いごとになるのは、農民の子供と漁民の子供による村の派閥争いだった。

 これはもはや村の伝統とされており、毎年コロコロ覇権が変わるため、大人達も子供達の覇権争いを楽しむ傾向にあった。

 しかし数年前に突如、二派閥以外に漁民の夫と農民の妻から生まれた子供が農漁派を立ち上げた。

 そのため今では農民派、漁業派、そして農漁派による覇権となっていた。


 まぁ覇権を取ったからと言っても土地がらおおらかな子供が多く、ただ伝統だから派閥に分かれているだけだったりもする。

 そのため覇権争いに勝つと遊ぶ場所を取り決めるだけで、今では一時的なもので本当に気に入らなければ決闘(かけっこで競争)するということも出来るが、ここ数年はそんなことが起こることはなかった。

 そして子供達のリーダーは最年長者である十歳の子供が務めることになる。

 十歳を過ぎたら家業の手伝いなどで忙しくなり、ずっと遊んでいられないため引き継ぎが行われる。

 そしてその一年の大事な引継ぎの行事が始まろうとしていた。



 村の広場には新しく村のリーダーになるべく派閥のリーダー達が出揃った。

 農民十人の代表ヴァルゴ九歳

 漁民七人の代表サラン九歳

 そして農漁民一人の代表のグレン六歳だ。



 広場に三人が集まったところで、まだ幼いグレンを見ながら、ヴァルゴとサランはため息を吐きながら、説得にあたっていた。

「なぁグレン、俺達の派閥に入れてやるから大人しく3年は代表を辞退しろって」

「ねぇグレン、弱い者いじめはいけないってパパとママも言われているの。後三年はうちの派閥に入っておきなさい」

「真似すんなよ、ペタン子」

「うるさいわね脳筋。そっちこそ真似しないでよ」

 悪口の応酬が激しくなる中、グレンと呼ばれた少年は、前農漁民の代表だった兄スレイから代表を受け継いだことを思い出していた。


「いいかい、グレン。農漁民代表は派閥関係なく、ダリュー村の子供、皆が仲良く過ごせる唯一の派閥なんだ。最初は負けるだろうし大変だろうけど挑戦するということが大事なんだ。だから出来ればグレンには農漁民代表として頑張ってほしい」

 グレンは尊敬するスレイの言葉に従おうと思い、口論をする二人にちょっとだけ自分の決意を表明することにした。

「スレイお兄ちゃんから託されたから頑張ってみたい」

 そのグレンの言葉を聞いたヴァルゴとサランは苦笑いを浮かべて納得してしまう。

 グレンの兄であるスレイは今年で十歳になったグレンの兄だ。

 彼は八歳からの二年間で行われた勝負に見事全戦全勝し、ダリュー村の男の子達の憧れだった。

 さらにスレイは女の子達からも絶大な人気を誇っていた。

 それは勝負に勝つからではなく、勝負に勝っても威張ることなく皆で遊べる遊びを考えたり、仲間外れや楽しめない子供がいたら味方になる優しさも持っていた。

 さらにスレイはダリュー村で初めて王都の学校に入学した。

 王都の学校に入学するには勉強はもちろんのこと、高い武器を扱う技術……スキルを一つ以上、そして魔法の素質がないと入学する出来ない。

 それを突破したスレイはグレンにとって自慢の兄で自慢の家族であり、その勇知心を兼ね揃えたスレイはまさに子供達の憧れ存在なのだ。

 そのことを思い出したのか、ヴァルゴとサランは少しわざとらしく大きなため息を吐いた。

 しかしその息の合ったため息をしたところで、お互いの顔を見あって「「フン」」とお互いにそっぽを向いたのだった。

 グレンはその光景を見て、自分も兄であるスレイみたいに頑張らなければいけない、そんな使命感に駆られていた。


 そしていよいよ今年の覇権争いする勝負を決めることになった。

「まぁいいわ。それで今年の勝負はどうするの?」

「今年も森になってる果物を最初に取ってきたら勝ちでいいだろう」

 森というのはダリュー村から見える森で、少し森の中へ入れば果物が沢山生っている。

「そうね。グレンもそれでいい?」

「うん。いいよ」

 グレンは今まで数回しか森に入ったことはなかったけど、危険を感じたことがなかったので、直ぐに了承した。

 そしてヴァルゴとサラン、そしてグレンにより果物を持ち帰る競争がスタートされた。

 グレンはこの時、自分の身に危険が及ぶとは思ってもいなかった。






 グレンは当初、三人で喋りながら森へ入ると思っていた。しかしスタートした瞬間にヴァルゴとサランが走り出した。

 グレンも慌てて追いかけたけど、たかが三歳されど三歳だ。

 幼少期は成長する速度がとても早いく、三歳も違えば身長や体重、体格もかなり違ってくる。

 ましてや二人はリーダーに選ばれるぐらい体格も良く、ヴァルゴは百三十センチを優に越え、成長スピードが速い女の子のサランは百四十センチを越えている。

 グレンはようやく百センチに届いたところなので、みるみるうちに二人は森に消えた。

 九歳と六歳の体格差は思っている以上に大きく、あっけに取られながらも直ぐに自分のペースで二人を追ってグレンも森に足を踏み入れた。


 森に入っても太陽の光が森全体を入り、視界は良好だった。

 この森はダリュー村の者達から恵みの森と呼ばれていて、滅多に魔物も出ないし、薬草や木の実、そして果物が沢山生っているのが特徴だ。

 それでも六歳のグレンは森の奥へ進みながら、少しずつ怖くなってきていた。

 この森に入るときにはいつも兄でスレイや家族、冒険者などの子供好きと一緒に入っていたので、一人で森の中に入る経験がなかったために心細くなってしまったのだ。


 グレンは勇気を出るように、五歳の誕生日に祖父母からもらった水神様を象った細工がしてある守護短剣の鞘をしっかりと左手に握り抱えながら、そして両親からもらった豊穣の神を象った木彫りを紐に通したネックレスを右手で握りしめて、直ぐに果物が見つかるようにと願いを込めながら歩く。

「ううっ、二人とも全然見えないや」

 ――このまま帰ったらスレイ兄ちゃんも笑われるかもしれないし、それだけは嫌だな……。

 グレンはそれだけを支えにまだ明るい森の中を進む。



 程なくして果物が生った木を見つけることが出来た。

 だけどグレンが周りを見渡してみても、ヴァルゴとサランの姿はどこにも見えなかった。

 ――何で森に入ってすぐのこの果物取らなかったんだろう。

 グレンは首を傾げたが従来の気質からまぁいいかと、ニメートル程の高さあった果物目掛けて木に上り始めた。


 木のくぼみに足をかけながら少しずつ登って果物に到達。

 短剣で果物のヘタを切りことに成功すると直ぐに懐へとしまった。

 その時のこと森の奥に小さな人影を見つけた。

「お~い。お~い」

 グレンはヴァルゴとサランだと思い、声を上げたけど、少し離れているからか、聞こえていないみたいだった。

 グレンは仕方なく木を降りて人影に近づいて声を掛けることにした。

 しかしグレンが人影に向かって歩き出したところで、一気にグレンの顔から血の気が引いていく。

 何故なら人影がグレンの方へ振り向き、獰猛な顔して笑ったからだ。それはグレンが初めて見る魔物、ゴブリンだった。

 グレンは本能的にゴブリンとは逆側、村に向かって走り出していた。

 心臓の音、息を吐いて吸う音がうるさく聞こえる。

 その音の中に聞きたくない「グギャギャ」と、意味は分からないけど威嚇するような声が聞こえてくる。

 グレンは徐々にゴブリン達が近寄ってきていることは分かっていたけど、振り返る勇気はなかった。

 しかしここで前方に人影が映った。

 もう駄目かと思った瞬間に前方、村がある方向に人影があったことで、グレンは安堵しながら思いっきり叫んだ。 

 「タ・タスケテ・助けてぇぇ~」

 しかしグレンを待っていたのは新たな絶望だった。

 振り向いた人影はまたしてもゴブリンだったのだ。

 ――どうしてこんなにゴブリンがいるの? 今までは見たこともなかったのに……どうして。 

 グレンは絶望の海に叩きつけられ、そのまま沈んでしまう感覚を覚えた。

 それでもグレンはここで死にたくないと短剣を鞘から抜き、人が普段歩かない草が生い茂った自分の身体半分にもなる草を掻き分け、枝を切りと終わりだけど村を目指す。


 ゴブリンたちは追ってきているけど距離は変わらない。

 ――怖い、怖い、怖い。シヴァ様、タイタン様、どうかお助けてください。そう思ったところでようやく森の途切れから村が一瞬だけだけど見えてきた。

 既にグレンの身体はボロボロでまさに満身創痍という感じで、身体にうまく力も入らなくなってきている。

 それでも死にたくないという気持ちを気力へ変え、泣き言を言わず、眼から大漁の汗を流しながら、。

 出来る限りの力を振り絞って森の出口が見えたとき飛んできた何かが後頭部を打ちそのまま回転して木にもたれるようにして意識が沈んでいった。

 ――死にたくない死にたくないよ。そう思いながら。


 side ゴブリン

「オ~アタッタ。人間ノ子供喰ウ。頭マルカジリ」

「オレニモクレ」

「アレ、オレモホシイ」

「アレ、オレガ倒シタ。俺ノダ」

「頼ム」

「ムゥ……仕方ナイナ」

「オマエガ決メルナ、マァイイ。ココニンゲン来ル。基地ニ運ンデカラ丸カジリ」

「ジャアアノコドモハコブ?」

 ゴブリンがグレンに近寄っていくとグレンがゆっくりと立った。

「人間ノ子供マダ死ンデナカッタ?」

「殺ス」

 しかしグレンに近寄った途端、一体のゴブリンが倒れる。

「ナニヲシテイル」

 グレンへ短剣を向けたゴブリンが次の瞬間また倒れる。

 残ったゴブリンもさすがに不気味に思い「死ネ」と、グレンへ殴りかかった。

 しかし次の瞬間、ゴブリンの視界には回転して最後は空が映り込み、次に背中に痛みが奔った。

 そしてゴブリンの意識は一瞬にして刈られ、二度と覚醒することはなかった。


 side end


 そこは白い空間だった。

 周りには何もない。

 下を見るとそこはたぶん恵みの森で、倒れた自分の姿と三体のゴブリンの姿があった。

 ――ああ、僕は食べられちゃうんだ。そう思った次の瞬間、訳が分からないことが起こる。

 自分が立ち上がり、ゴブリンを次々に倒していく。

 そして最後のゴブリンを倒した瞬間に自分の身体も倒れる。

 するとゴブリンから青白い光がグレンがへと流れ込み、吸収されていた。

 それを見届けた白い空間にいたグレンの意識は徐々に遠退いて行く。


『………………………』

 そして最後にグレンは誰かの声が聞いた気がしたけど、そこで完全に意識が暗転して、何を聞いたのか分からないままだった。


お読みいただきありがとう御座います。

今後のスケジュールを活動報告へ載せておきます。

今後もよろしくお願い致します。

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