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ハーレムエンド  作者: PP
第一章:魅了地獄
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 トゥールは目を覚ますと、恥かしそうに固へと微笑みを送ると、ベッドの足元にあるクローゼットをあける。そこにある衣服を取り出すと、固が同室に居るにも関わらず着替えを済ましてしまうトゥール。勿論、固は着替え中は後ろを向いて自制心をどうにか保っていたのだが、終わったよと声をかけられ振り返ると可愛らしい私服を着たトゥールがどうかな? と更に頬を赤らめながら固に尋ねてきた。


「ああ、似合っているよ? ああ、おかゆは温めておいたから食べよう」

「ふふ、ありがとう。いただくわ」


 そういうと、ベッドの頭元に移動し座り直すと口をアーンと開けるトゥール。


「えっと、それは……」

「あーん。食べさせて?」

「お、ぉぅ」


 レンゲでおかゆを少量すくいとると、トゥールのあける小さな口の中にソレを放り込む。


「はふ、はふっ……んぅ、おいし」

「そっか」


 固も最初こそ恥かしかったが、だんだんトゥールへの餌付けに味を占める。気が付けば鍋の中身はあっという間に空っぽになっていた。


「あーん」

「あ、ごめん。さっきので全部なんだ」

「あう、私ばかし食べちゃってごめんなさい固様」

「あー待って、待ってくれトゥールさん。固様って呼び方はやめにしないか?」

「そ、それじゃぁあ・な・た……とか、きゃっ」

「落ち着いて下さい。固って呼び捨てで良いですよ」

「ふふ、わかったわ固。わたしもトゥールって呼び捨てにしてくださいまし」

「わかった」

「トゥールって呼んでくださいまし」

「お、ぉぅ。トゥール」

「はいっ!」

「ハハ、ハハハ」

「ふふ、ふふふ」


 何故だろうか、初対面の二人はあっという間に仲良くなっていた。


「固、その、恥かしいのだけどももう少し何か食べたいな」


 トゥールが恥かし気に俯きながらもう少し食事をしたいと言うと、丁度そのタイミングで固のお腹もクゥと可愛らしい音を奏でるのであった。


「そうだね、学食にいこっか」

「待って下さいな。私服に着替えたので、良ければその、商業区まで行きませんか?」

「商業区まで? 学食だと無料なのに何故?」

「その、固の好きなパンを私も食べてみたいのです!」


 固は目を輝かせて詰め寄るトゥールのお願いに根負けして、学食は諦め商業区へと一緒に行く事に決める。トゥールは固の好きな食べ物のリサーチは勿論、一緒にデートがしたいという目論見だったため、心の中でグッとガッツポーズをとっていたのだった。


「さぁ、行きましょう!」

「わわ」


 手を掴まれると、早速とばかりに部屋から連れ出される固。トゥールと隣り合わせで立ったが、身長は若干トゥールの方が大きく、固は好意を抱いてくれているだろう年下の女の子より背が低い事実に少なからずショックを覚えるのであった。




「しばらく戻ってくると思わなかった場所に数時間で戻って来るなんて思いもしなかったよ」


 とは声には出さず、うきうき顔のトゥールに引っ張られるがままに商業区までやってきた。


「何処のお店のパンが好きなんですか?」

「えっと、その……」


 固は言葉に詰まってしまった。何故パン食がメインなのか。それは固の父親の仕事に深く関係していた。父親の職場には、景品と呼ばれる物がいくつも陳列されているのだ。それらの景品の内に、焼きたてパンコーナーという、パンもいくらか景品として用意されていた。


 そうなのだ、余り物の景品パンを持ち帰り、それをそのままマーガレット家は食事に用いていたのだ。美味しいパンから素朴なパンまで様々な種類の景品があったのだが、美味しいパンを持ち帰れることは稀であった。しかし、間違いなく美味しいパンはあり、それが食卓にある時は皆ホクホク顔で頬張っていたのだ。


 で、だ。その美味しいパンは何処から仕入れていたのか。記憶では確かクーリュのパン屋で売られていたクリュパンだったはずなのだが、普段は父親が持ち帰る為に固はどのあたりにお店があるのか知らないのだ。


「確かクーリュのパン屋というお店のパンが美味しいんだけど、場所がちょっと」

「クリュパンの事かしら? 私も極稀に仕入れる事がありましたわ。味は良いのだけど日持ちがしないから仕入れが大変なのよねぇ」

「仕入れ?」

「ああ、私の家は商人の家系なの。パンよりも日持ちのする穀物を扱う事が多いの、それでお米派って訳……あっ、でもパンも美味しいから好きなのよ? 本当よ、信じて!」

「わ、わかったから! 顔近い近い!」

「ふふ、場所なら知ってるわ。行きましょう」


 商業区から西へと進むと、小さなパン屋が一軒建っていた。木造の建物には看板にクーリュのパン屋と可愛らしい文字で記載されていた。数百年前から爆発的に漢字ロストワードが広まり、今ではいろんな場所で使われるようになっていた。


「あそこあそこ、早く行きましょう」

「応、行こう」


 移動する間に益々お腹を空かせた二人は、お店の中へと入ると陳列されているパンの数々に頭を悩ませる。


「うわぁ、こんなに種類あったのか……」

「固と同じ物食べる!」


 いつも親父が持ち帰るパンを探すと、オススメと可愛らしい文字で書かれた札が立っている場所をみつける。そこには、一斤の食パンがあった。


「ああ、あれあれ。あれが美味しいんだよ」

「わっ、私あんなに食べれませんわ」

「アハハ、あれは柔らかいから切り分けて食べるんだよ。半分こして食べよう?」

「はいっ!」


 すいませーんと、声を出すと奥から小さな女の子が出てくる。カウンターよりも少しだけ背の高い女の子は、カウンター越しに二人を確認すると表に出てきてペコリと礼をする。


「いらっしゃいませ」

「ねぇ、このパンをいただけるかしら? 支払いは……ええ、そう……うん」

「トゥール? お金なら俺が出すよ」

「いいえ、固。ここは私に出させてください、先ほど介抱していただいたお礼もありますし」

「そう? うーん、それじゃ甘えようかな」

「ふふ、少し待って下さいね」


 トゥールはそういうと、何やら紙にサラサラサラっと書き込んでいく。


「ねぇトゥール? なんで小切手を……」

「オホホ、お気になさらずに」


 どうみてもパン一斤を買うよりも高い金額を記載しているが、固は見なかったことにした。


「それでは、毎朝配達という事で良いですね?」

「ええ、お願いします」

「まいどです」


 グッと固い握手を交わす二人だが、固はお店の看板娘をみながらふと呟くのだった。


「二人共、可愛いな……」


 クーリュのパン屋で働いている女の子はまだ10歳と子供だったが、パン屋の看板娘として働く頑張り屋さんであった。まだ身長も130㎝と小さく、トゥールが華奢だと思っていたが、更に子供相応な体系をしていた。最も、トゥールと違って髪の毛は肩辺りまでしかなく、楕円形の真っ白な帽子を被っていた。


 そんな看板娘が、先ほどまでトゥールと熱い握手を交わしていたはずなのに視線を固へとスライドしていき、そのままトテトテと固の目の前まで移動してきたのである。


「あの、お兄さんは何処に住んでいるのでしょうか」

「ふぁ?」


 突然の質問に、いきなり何を聞いて来るんだと戸惑いながらも素直に応える。


「その、魔法ギルドの学生寮、331号に今日から……」

「やたっ……コホン、いえ何でも無いです。トゥールさんと同室なのですね」

「え、あ、はい」

「まぁいいです。これから毎日パンをお届けします、クリュと申します。私がクリュパンを作ったのです、私が!」

「そ、そっかー。凄いね?」

「あふん、お、お世辞はそれくらいで良いのです。これはオマケです」


 クリュから小瓶を受け取ると、トゥールは固の手を取り外へ出ようとする。


「ふふ、それじゃ早速いただきましょう」

「そうだな、表にある席使わせてもらいますね?」

「はい、ごゆっくり」


 二人は表に出ると、机が一つに椅子が三つほどある食事ブースでクリュパンを頬張るのであった。そんな二人の姿を、店内からジーッと熱い眼差しでみつめるクリュの姿がガラスにうつっていた。

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