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固、トゥール、リリィ、クリュ、マリー、ケニュントト、タニーマ。七名は魔法ギルドのローブを羽織ると西へと向かった。魔法耐性が高いローブを選んだ理由は簡単である。魔族の攻撃を受け止めたりすれば、筋力の差であっという間に殺されてしまうだけなのだ。
唯一、強力な魔法を使われても麻のローブは魔力を和らげてくれるのだ。これが精一杯の敵からの攻撃を防ぐ手段であった。後はやられる前にやる、それだけなのだ。
「本当に俺達だけで何とか出来るかな」
少し弱音を吐く固に、一番年下のマリーが声をかける。
「先ほどの固様はとても素敵でした、きっと何にも負けないです!」
先ほどの光景を思い出し、珍しく顔をだらしなくニヤケさせるマリー。つられるように、周りの少女たちも顔を赤らめるが爆音が外から響いて来る。先程も一度だけ学生寮の中にまで聞こえた音が、今再びなったのだ。
「行こう」
震える手を抑えつけ、固は棒片手に城門から出る。
王都の外に出ると、七人は同様に異常な光景を目の当たりにした。たった一人の少年が、襲い掛かる数十の魔物を警棒一つで応戦していたのだ。獣タイプの魔物たちは、少年を牙で噛み砕く事も、鋭い爪で切り裂く事も適わず尖った口から涎を垂らしながらイラついていた。
「あれは……スターウルフ」
リリィは一目で魔物の群れの正体を見破る。スターウルフ、瞳の柄が星型をしており、その星がグルグルと回転すればするほど魔力を高める獣。狼と違い、魔力で強化した牙と爪は、触れると全てを溶かすように切り裂くと言われているのだ。
そんな魔物たちに囲まれてなお、少年は一人すべての攻撃を避け、丁寧に弱点である腹部分を棒術で殴り飛ばしていた。
「岩砕突」
固も応戦すべく、背後から少年に飛びかかっていたスターウルフめがけスキルを発動させる。岩をも砕く威力は、堅い毛に覆われたスターウルフの装甲ごと貫き爆す。
「大丈夫か?」
「んー! 兄ちゃんの棒術かっこいいなぁ! それにあの技って岩砕突って言うんだ。っとと、次が来るからさっさと倒しちゃおう」
少年は一人楽し気に話し終えると、一瞬でスターウルフは倒れ込んだ。そう、固も、少女たちも誰も視認できない程の一瞬で少年はその脅威を排除していた。
「一人はちょーっとばかりしんどいかなって思ってたんだよー。ありがとな兄ちゃん達!」
「あ、ああ。俺は固って言うんだ」
「俺はフロイス! 宜しくな固兄ちゃん! それで、待ってるだけってのも癪だしどんどん魔物を倒していこうと思うんだけど、一緒に行く?」
固は少年の名を聞き思い出していた。大昔、この王都が一度魔王軍の侵攻にあった事があるという事を。そして、その大戦に終止符を打った男がフロイスの名を持っていたという事実を。リリィも、先ほど331号でその話をしていたので間違いない。この少年が、英雄の子孫に違いないと。
「ああ、フロイス君となら何も怖くない気がするよ」
「固兄ちゃん、褒めても何もでないぜー? それじゃ、行こう!」
ゆっくりと歩き出すフロイスの後ろに隠れるように、七人は歩み出す。




