END2
固達は、背後から声をかけられ一瞬ビクリと驚くも、すぐにその姿を確認して安心していた。
「固、大丈夫だった? それに貴女達も、怪我は無い? コイツに何もされなかった?」
トゥールが心配してマリー、ケニュントト、タニーマの顔色をそれぞれチェックしていく。リリィとクリュは固の隣に割り込むと、固成分を補充するべくいちゃつきはじめる。そんな中、再び南国の少女ゾナダが再び姿を現す。
「マスター、そして皆様。地上にて問題が発生しているようでございます」
「さっきから固の事をマスターって呼んでいるようだけど、貴女は一体何者なの?」
「失礼しました。私は南国の少女ゾナダという者です、それよりも急いだほうが良さそうです」
何事だと、一同揃ってソファに腰掛けると南国の少女ゾナダの話を聞く。
「今、西より魔王軍の部隊が王都へと侵攻しています」
「はい?」
思わず固が声を出すと、アンタ声戻ったの? とトゥール。リリィとクリュは生声が聞けて顔がにやけている。そんな固達の反応をよそに、南国の少女ゾナダは話し続ける。
「残念ながら王都の戦力は既に8割方削られ、壊滅状態でございます。マスターのお力で、マスターの愛すべきこの場所をお守りください」
「なっ、魔王軍と戦えって?」
「待ちなさいよ? シルバークラスの私から言わせれば、王都を放棄するべき事態じゃないのかしら? 魔王軍の侵攻なんて過去に一度、ギリギリ防いだ記録しかないのだから」
リリィが思わず撤退を進言する。しかし、南国の少女ゾナダは首を振る。
「確かに。しかしその侵攻を妨げた者の子孫がマスター達に助力してくれるでしょう」
「信じがたいわね……でも、最近不穏な動きは確かに多かったわ」
唯一、レンジャーギルドの使者として王都へ訪れているリリィだけは南国の少女ゾナダの話を否定仕切れなかった。
「マスター達は、王都内に侵入しようと先行している魔物を討伐するだけでいいのです。後は魂の友が助けてくれるでしょう」
「おいっ、一体どういう……」
部屋中に白い光が満たされ、気が付くと七人は固のベッドの中で重なる様に倒れていた。
「ひー、おもひ、おもひよ……」
「アンタ」
「固!」
「固」
「固様!」
「ご主人様っ!」
「お兄ちゃん!」
六人の少女たちは固の顔を見て思わず笑みを漏らす。アッポイは頭から外れ、空中でふわふわと自立していたのだ。久々に見る素顔に見惚れていたが、そんな七人は何故か裸体のまま積み重なっていたのだった。全員の衣服は通路に落ちていた。
そんなハーレム状態にも関わらず、固は六人の重さに苦しさしか感じる事が出来なかったのだった。
一通り、固の体温を感じ終わった六人は少しだけ恥かしそうに服を着ると、先ほどまでの拘束の間での出来事を振り返る。
「本当に、何だったんだあの部屋は。ゴードンに問いただすか」
「無駄よ固。私達は最初にゴードンにアンタの場所を聞いたもの。でも彼は封印の間には誰も入ってないよって答えてくれたから」
「じゃあ一体あの場所は? それに、トゥール達こそどうやってあの場所へ?」
「愚問ね。私の魔法はいつまでも貴方だけを濡らす標となるわ、要するに……何でもないっ」
愛の力よ、と言いかけたトゥールはハッとなり言葉をきる。固へ向けた愛情は偽物の感情だったのだ、だからあの頃の自分の創り出した魔法を今も使える自分が悔しいと思うトゥールである。
「問題はそこじゃないでしょう? 魔王軍が来るって、一体どうすれば良いのよ? 私、命がけの戦闘なんてごめんよ?」
「わかった。私が魔法ギルドで情報を集めて来るから、このまま待っててくれるかしら?」
「ありがとうリリィ」
そういうと、リリィは駆けるように331号から出て行った。
「固様、私は固様を守ってみせます」
「ご主人様、私だってマリーと同じ意見だよ?」
「お兄ちゃん、私は死ぬときはお兄ちゃんと一緒だよ」
「こらこら、勝手に俺が死ぬ運命と決めるなタニーマ」
「アンタ達、すっかり固に毒されちゃってるのね……私がもっとしっかりしなきゃ」
ちゃっかりクリュが固の膝の上を独占しているため、タニーマはうらやましそうに見つめる事しか出来ないと無念の顔をしていた。そしてトゥールは固に懐いている三人娘をみて、私がもっと皆の心のケアをしなければと、再度決意するのだった。
そして数分後、予想よりも早くリリィが部屋に戻ってきた。
「大変だわ、極秘扱いだけど確かに魔王軍の侵攻が確認されてるみたい。そして……」
言いにくそうにするリリィは、深呼吸をして静かに言う。
「現勇者が魔王軍にやられたそうよ。下手をすると王都だけじゃなく、何もかもが虐殺される可能性が出て来たわ。つまり総力戦をする必要があるって事」
決して逃げる事が許されない現状。南国の少女ゾナダの言う、8割方の戦力が削られたというのはこの事だったのか? 全員が声を失い沈黙していると、外から爆音が聞こえて来る。
「本当に俺達で何とかしなきゃいけないのか?」
「ええ……でも、西の城壁が侵攻を妨げてくれているはず。まだ、ほんの少しだけ猶予はあるわ」
死ぬかもしれない。そう思った瞬間、全員が一つの事を考えた。
「俺、行くよ……」
戦うという意志。勇者ですら侵攻を止めれなかった魔王軍との敵対に、何の意味があるのかわからないが、このまま皆を見殺しにするわけにはいかなかった。
そしてもう一つの考え。死ぬ前に、好きな相手と……。
「良いわ、今だけ目を瞑ってあげる」
トゥールはそういうと、率先して固に抱き付くのだった。
次回より三章へ入ります。
三章(短め)で幕締めとなりますので、最後までお楽しみいただければいいな、と思います。
ここまで読んでくださった読者様へ、ありがとうございます。




