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ハーレムエンド  作者: PP
第二章:拘束地獄
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「またかよ……」


 うんざりした声で固は呟く。何故なら進んだ先の部屋は再び白一色。決して広くない空間だった。いい加減解放してくれと思っていた固とは違い、マリーは顔を伏せながら部屋へと入っていった。


 何故ならば、彼女は先ほどの部屋でお漏らしをしていた事に解錠後に気が付き、急ぎフレッシュの日常魔法を使用したのだ。まさか皆にバレてないよね? 先ほどはケニュントトの自爆により視線は全て彼女にいってるはず。そう、マリーは考えバレてない事を祈っていたのだ。


 そしてタニーマといえば、役に立つ事が出来なかった自分を悔やみ、次こそはこのアイテム、虹色ネイルを使いこなしお兄ちゃんの力になるんだと心の中で意気込んでいた。


「それでは皆様、ポジションについて下さい」


 わかったよとばかりに、三ケ所で発光する場所へと移動する固達。三人がポジションにつくと同時に、両手両足に光の膜が絡みつく。そして部屋の中心部分が再び盛り上がり始める。しかし先ほどの台座のような高さでは無く、ぐんぐんとソレは伸びて良き一本の柱となす。そこで初めて気が付く、部屋の天井が無い事に。伸び続ける柱は、ついには天辺が見えない程までに伸びていった。


「では改めて、両手両足の拘束部屋へようこそ。ここは非常に簡単な部屋ですね? 柱の上に鳥かごがございます。その中の鍵を使って先へお進みくださいませ。では、御愉しみ下さいませ」


 そうして部屋の中は静寂に包まれる。なるほど、先ほどは下半身と行動制限だったが、今度は両手と両足を縛られた状態で柱を登れというのである。


「なぁ、これっていよいよ無理じゃね?」


 思わず口走る固。しかし、タニーマが威勢よくいいきる。


「大丈夫、お兄ちゃん! 必ず私が何とかするから!」


 何度目だろうか、年下の女の子に弱音を吐いて見せたのは。固はこのままじゃだめだと思い、自ら一歩を歩み出る。


「ごめん皆、俺が弱きになっちゃダメだよな。いっちょ登ってみるか!」


 ピタリ、と両手を柱につける固。が、そこで彼の動きは止まってしまう。


「……これ握力で柱掴めって訳じゃないよな?」


 冷や汗が流れる。縛られた手で柱を登ろうなんぞ、誰が達成出来るというのだ? 仮に握力が異常に強くても果ての見えない柱を登り続ける事が本当に可能なのだろうか。


「きっと私の七色ネイルの力で何とかなるよ!」


 タニーマはそういうと、器用にも足の爪にネイルを塗りたくる。


「……どうにかなりそう?」

「……んー、何も起きないよぅ」


 瞳に涙を浮かべ、両腕を振り上げたままタニーマはピョンピョン跳ねながら固に抱き付くように突進する。そのまま、固の首の後ろへと拘束された両腕をまわした。勢いよく抱き付いた為、両足を拘束されている固はバランスを崩し後ろへと倒れる。


 一瞬だった。


 腕を首元に回した後、倒れる瞬間に浮いた足にタニーマは自らの拘束された足を器用にも固の足元へと潜り込ませる。更に彼女は実に1秒にも満たない一瞬のうちに体勢を捻り自らの体を下へとやってのける。


 ぼにゅん。固が感じた感触はまさにそれだった。


「うわっ、大丈夫……か?」

「おにいちゃーん」


 抱きしめらたまま倒れ込む二人。顔が間近にあるが、アッポイの唇とタニーマの唇とが触れる寸前の位置で、固は何とか衝撃に耐えた。


 そんな遊んでいる二人をみて、マリーはやっといつもの調子に戻る。


「何やってるのタニーマ! もぅ、固様も……大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だよ、それよりもタニーマの方が」

「おにいちゃーん」


 すりすりと固の胸元で頬擦りをするタニーマをみて、固の重さと倒れた衝撃で怪我をしてないかと心配する必要も無いかと切り替える。


「大丈夫そうですね、それにしても困りました。固様ですら1ミリすらも登れないとなると、正攻法では無理そうですね」

「そう、だな……近い近いっ!」

「おにいちゃーん……」


 少し元気が無くなったようにお兄ちゃんと繰り返すタニーマ。そしてついに彼女の口からトンデモ発言が出る。


「ごめんなさいお兄ちゃん、離れられなくなっちゃった」

「おまっ、まじで?」

「まじなのっ」


 二人抱き合ったまま、うまく立ち上がる事すら出来ず密着状態が続く。


「マリー、すまない……お前だけが頼りだっ!」


 固は言い放つ。身動きも取れず、タニーマに抱き付かれたままではとてもじゃないがこの部屋から脱する事は出来そうになかったのだ。だからこそ、固は一番年下のマリーに頼るという選択をとるしかなかった。


「わ、わわわ私、私なんかが固様の力になれるでしょうか?」

「なれるっ! 必ずなれるっ! 今もこうして、必死に俺達の為に頑張ってくれてるじゃないか。俺はマリー、君を信じているよ」


 信じている、これは魅了が解けても決して心変わりをしないで居てほしいという固なりのメッセージだった。まだ8歳だというのに、自らを魅了の魔法の実験に捧げ、魅了にかかっても皆をまとめようと必死に行動してくれているのだ。


 そんな健気な彼女を固は信じた。


「私が……固様に……頼られた……」


 途端、マリーの持つアイテムが輝きを放つ。


「……そう、そうなのね……私もわかりました」


 マリーはマイクを手にすると、声の拡張機能を入れる。


「私のアイテム、マイクの使い方がわかりました。固様、私を信じてくれて本当にうれしいです」


 頼られたい。それが彼女の持つ願望であり、力となる。


「固様ー! 愛してますわー!」


 大音量で部屋の中反響する声に、耳を塞ごうにも両手を拘束されている固とタニーマは耳を傷めながら、マリーの告白を聞き届ける。


 そして固はアッポイの視で視た。マリーがふわりと浮かび上がる瞬間を。


「私のアイテムは音声魔術。私の声の届く先まで自らの体を移動させる事が出来ますっ!」


 そうしてマリーは空高くへと舞い上がる。ドレスの下からのぞく下着をしっかりとアッポイの眼でキャッチしながら、その下着マリーが見えなくなるまで固は無事にマリーが戻って来るのを待つのだった。





 数分後、チャリンと部屋の中に一つの音が鳴り響いた。


「おめでとうございます、そちらの鍵をお使いになれば手足の拘束、そして次の扉の先へと進むことが出来ます」

「マリーは!? マリーはどうしたんだよっ!?」

「そう心配しないでくださいマスター。マリー様もケニュントト様と同じく覚醒を遂げました。なので場外でしっかり休んでいただいております」

「本当に大丈夫なんだろうな? 二人共」

「勿論でございます。そう怖い顔しないで下さい」

「……わかった、必ず二人と、俺達も無事返してもらうからな!」


 啖呵をきりながら、おちた鍵を拾うもタニーマと絡まった固は解錠に苦戦するのだった。





 余談である。マリーの履いていた下着は黄色だった。決して、汚れていたわけではない、断じて違う。汚れは先ほどフレッシュで取り除いたのだから。


 マリーは一人心の中で弁解をしていたのだった。

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