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マリーは怯え、ケニュントトは未知なる体験に身を震わせていた。ただ一人、タニーマだけは違っていた。
「うん、お兄ちゃん。私頑張るよ、お兄ちゃんが体を張ってくれたの私嬉しかったもん」
そう言ってみせると、一つだけ好きな物を持って行って良いと言われた棚のある方へと進んで見せる。そこでタニーマは何の迷いも無く一つのアイテムを手に取る。
「このアイテムが私を呼んでいたわ」
手に取ったアイテムの名は七色ネイル。小瓶についている蓋を取ると、先には小さな筆がついており爪をネイルする為の輝きを放っていた。
「赤色って綺麗」
一人、アイテムの仕様を確認する為にタニーマは右手の爪に綺麗な赤色で染めてゆく。そして、筆を小瓶に戻すと蓋をキュッと一捻りする。
「ふふ、今度は深い深い青色、ああ綺麗だわ」
今度は左手の爪を次々に青く染めてゆく。
「何て私好みのアイテムなんだろう……お兄ちゃん見て! 見て、どう? 可愛い?」
「ウー、ウー」
「似合ってるって? へへ、照れちゃうなぁ……」
タニーマはこのような意味のわからない空間に閉じ込められている事を忘れさせるかのような行動力に、マリー、ケニュントトも考え方を前向きにした。
「ご、ご主人様に私だって褒めてもらうもん!」
先に動いたのはケニュントトである。棚に向かうと何の躊躇も無く一つの首輪を手にする。
「私はコレ! 間違いなく可愛いもん!」
手にした首輪を自ら填めると、固の元へ褒めてもらうべく近づいて見せる。
「どうご主人様? 私も可愛い?」
「ウー、ウー」
「ふふ、タニーマなんかに負けないくらい可愛いって!」
「お兄ちゃんはそんな事言ってないよ!」
「へへーん、こっちの方が良いって」
ケニュントトの選びしアイテムは鉄製の分厚い首輪である。首に装着した瞬間、留め具になっている透明な球体がカチリと、首輪にロックをかけた。
「ご主人様、私を好きにしブフッ」
「ケニュントト! お兄ちゃんは私のなの!」
「首輪引っ張らないでよ! 痛いじゃないの」
二人が固にべたべたするのを見て、マリーもついに動き出す。
「私だって固様の役に立ちたいもん……」
マリーも棚に向かうと、二人同様何の迷いも無く一つのアイテムを手にする。
「固様ー! 私はずっと貴方の傍に居ますわー!」
キーンっと耳が鳴るほどの音量が狭い部屋の中に響き渡る。マリーが手にしたアイテムはマイクだ。銀色のソレはマリーの声を大音量に拡散する。
「ウー、ウー」
「あう、今度は耳がいたひ」
「おにいぢゃん」
それぞれ耳を塞ぎながら、マリーの声に動きを止めた。
「ウー」
「私がずっと、固様の傍にいますから」
そっと固に抱き付き、マリー含む三人は意味不明な現状でも一時の安らぎを得る。
「ウー、ウー!」
そんな三人娘の行動に動かされるように固も棚の方へと向かう。固も例外なく何の迷いも無く自然と棚の中にある一つのアイテムを手に取る。
「ウー……コ・レ・ダ……」
そのアイテムを手にした途端、固の体内に膨大な魔力が蠢く。
「固様!?」
「ご主人様!?」
「お兄ちゃん、声が!」
「シャベ……レル?」
アッポイの低い声のままだが、固はソレを手にした瞬間から魔力の操作が途端に上手くなり、カボチャ頭のまま声を発する事が出来るようになったのだ。
そのアイテムとは……。
「この……棒は一体?」
「固様、それは一体?」
「ご主人様、それで私をぶってくれるの?」
「お兄ちゃんになら私もいじめられてもいいよ?」
「待て待て、コレはそういう物じゃないよ?」
固が手にしたアイテムは30cm程の金属製らしき棒である。固は何故かその棒にひかれ、自然と手にしていたのだ。
「では皆様、次の部屋へとお進みください。次の部屋から拘束の間の本番となりますので、心行くまで堪能してくださいまし」
再び謎の声が部屋に響くと、先ほどまであった椅子や棚は綺麗さっぱり消失、かわりに進めとばかりに扉だけが残った。
「行くしかな、か」
「何処までも一緒についていきますわ」
「リードつけても良いんだよー?」
「るんるん~」
固以外、何の緊張感も持たないままに扉をくぐるのであった。




