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ハーレムエンド  作者: PP
第一章:魅了地獄
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 あっという間に仲良くなったマロックと廊下を歩いていると、ふと思い出したかのように固に提案してくる。


「なぁ固、あの子に魔法をかけてみろよっ」

「ん、何だよ急に」


 自習期間にも関わらず魔法ギルド内には生徒がおり、正面から笑いながら歩いて来る三人組の女生徒が迫って来ていた。固はトゥール、クリュの件を相談したのだが、笑いながらそんな訳あるかと一蹴したのだ。


 だが、その後二人は沈黙して仮説を立てる。


 魅了が発動している? と。


 お互い、そんな事を思いながらも、固は脳内で一人悩むことしか出来ず、マロックはそんな固を見て試すしかないな、と行動にでたのである。


「魔法の詠唱ルーティンとか、何かキーになる行動って何か心当たりないのか?」

「えっと、もしかして魅了の事を言ってるのかな?」

「勿論。いやな? 二人の女性に同時にモテたという奇跡までは許容しよう。でもな? あまりにも出来過ぎているような気がしてな、物は試しっていうだろう?」

「うーん、そうは言うけど突然だったしなぁ……それに、ハッカさんと握手して魔力も譲渡してみたけど、何ともなかったんだぞ?」

「ははっ、成功率があるとか、何か条件が別にあるって事は考えなかったのか?」

「む、そういわれると……」

「まぁ悩むより行動だ、とりあえずあの三人に話しかけてみろよ」

「ええっ!?」


 突然の無茶振り。名前も知らない女生徒三人組に話しかけるというのは、初心な固にとってはあまりにもハードルが高かったのだ。


「お前なぁ、それで良く……まぁいい、待ってろ」


 待ってろ、と言われるまでもなくどうすれば良いのかわからない固はその場で棒立ちになって待機する。


「ねぇ、君たちどこの研究室?」

「あはは……ん、貴方は?」

「俺はシズク先生の温度研究室に所属してるんだけどさ、少し研究成果の交換とかいかが?」

「えー、私はパス、かな」

「私もパス、かしら」

「それじゃ私もー」

「そうか、じゃあこの話はここまでだ。それでさ、アイツなんだけどもまだ研究室を決めてないアイアンクラスなんだよなぁ、勧誘とかどうだい? 俺のところは断られちゃってさぁ」


 マロックの言葉につられ、目の色を変える女生徒三人組。マロックと対峙して会話していたはずなのに、気づけばダダダッと三人組は固の元まで詰め寄る。


「君、まだ研究室決めてないの!?」

「ねぇ、私達のところどうかな!」

「そうそう、おいでよ!」


 目の色を変える理由は簡単だった。純粋に研究員が増えれば魔法の研究がより進むのだ。誰だって魔法の研究成果を求め日々探究しているのだ、新人確保には積極的である。


「え、ええっと、俺でもいいの?」


 あまりの迫力に、ついオーケーを出そうとする固。


「良いの良いの! 私達の合成ダークマター研究室はいいわよ! 色々混ぜて、混ぜて、混ぜて、混ぜて」

「そう、混ぜて、混ぜて、混ぜて、混ぜてね」

「うんうん、それを飲むだけ。簡単ね」


 ローブをめくると、ローブの下から一つのビーカーを取り出して見せる。その中身はチャム先生に飲まされたような綺麗な色をしておらず、鼻を挿すような臭いが固の五感全てを刺激する。


「うっ、何が入ってるんですソレ……」

「えっとねぇ、土とサイレンの花と、犬の毛と雨水と麻を切り刻んだ物と、それとね!」

「確か塩と胡椒、蜂蜜と」

「私の髪の毛もいれたわ」

「け、けっこうでーーーす」


 あまりの内容の酷さに回れ右して逃げ出す固。その姿をみて、女生徒三人組はそれぞれ言葉を発する。


「ちっ」

「折角の実験台がぁ」

「ですよねぇ」


 その姿を見て、マロックは固と接するだけでは魅了が発動しないと確信するのだった。




「酷いよ全く」

「ごめんごめん、でもこれで魅了が闇雲に発動しないってわかったし良かったんじゃん?」

「むぅ、まぁ前向きに考えるか」

「そうだな、他に何か条件は無いかなぁ」

「えぇ、まだ探るの?」

「そりゃ、これくらいじゃまだわからんだろうに? 魔法は神秘だからな!」


 はぁ、とため息をつきながら外を歩いていると、正面にカボチャが浮いていた。そう、カボチャだ。中身はくりぬかれ、顔パーツの堀細工まである。


「なぁ、あれって何?」

「ん……ああ、あれか。あれはな」


 説明をしようとすると、フワリフワリとカボチャが近づいて来る。


「やぁ、アッポイ。珍しいね、こんな時間に」

「ウー、ウー」

「しゃ、喋ったー!」

「ウー、ウー」

「ははは、そんなに驚かなくても良いさ。こいつはアッポイ、魔法生物ってやつさ」

「魔法生物?」

「そうそう、魔力は生命力と直結してるって発想を逆手に取った研究成果の一つさ。アッポイを作ったのは……」

「ウー、ウー」

「まぁいっか。魔力でカボチャに命を吹き込んだって訳さ。ほら、可愛いだろコイツ? 中に灯る魔力の光で感情表現できるんだぜ?」

「ウー、ウー」


 固はまじまじとカボチャを見詰めるも、どうにも不気味にしかみえなかった。


「ア、アハハ。そ、そうだね? 可愛いカボチャだね」

「ウー、ウー」


 途端、アッポイの中に灯る魔力の光はピンク色に発光する。


「ん、アッポイ? 珍しい色で光る事もあるもんだな」

「ウー、ウー」

「わっ、ちょっ、何!?」

「ウー、ウー」


 アッポイはピンク色の光を発したかと思うと、固の肩に乗っかると普段の色へと戻っていた。


「な、なぁマロック? アッポイは人の肩にのって休憩する習慣でもあるのかな?」

「い、いや? 俺も始めてみたぞそんな行動。てか、早くアッポイを解放した方が良いぞ、奴が来る!」

「奴? 解放って何!?」

「ああ、さっそく……俺はここでお先に失礼するぜ相棒! また今度話しは聞かせてもらおう!」

「えぅ?」


 固が何も理解しないまま、マロックは来た道を逆走する。その後ろ姿を見守ると、次は正面から走って来る一つの影が迫り来る。


「うわっ!」

「貴方っ! うちのアッポイに何したのよ! いえ、そんな事はどうでもいいわ、私の物になりなさい!」

「いやいやいや、まって、その短剣おろして、ね?」

「う、わ、わかったわよ。あんたがそこまでお願いするならしょうがないわね……見ない顔ね? 名前は?」

「固、です」

「そう、好きな食べ物は?」

「またですかーっ!」


 逃げ出そうとすると、顔の正面にアッポイがやってきて固を脅かして見せる。うわっ、と声を出して尻餅をつくと、両肩を掴まれ上から顔を覗き込んでくる。


「私はスィーピン、スィーと呼んで良いわよ? この子は私が作ったアッポイ。まだ零歳よ」

「へ、へぇ」


 立ち上がろうと力を込めるも、鍛えた固の力をもってしても両肩を抑えつけられうまく達がる事が出来ない。


「貴方はおいくつ? 私は18歳よ、ここで3年間研究した初めての成果がこのアッポイなの、褒めてくれてもいいのよ?」


 スィーは顔を真上から覗き込みながら語り掛ける。固は頭上に柔らかい物を感じ取りながら、あまりにも近すぎるスィーの顔に口をパクパクさせる事しか出来なかった。


「もぅ、シャイなのね」


 そういうと片手を軸にさっと固の上に飛び乗ってみせる。


「さぁ、私ばかり話させないで、固の事も教えて?」

「え、えっと俺は15歳です。昨日きたばかりで」

「そう、年下さんね。ふふ、嫌いじゃないわよ私? どう、生命研究室にこない? 手とり足とり教えてあげるわよ?」

「えっと、その、まだ考え中でして」

「そう? つれないわね。でも不思議ね、私は貴方の事がこれっぽっちも魅力的に感じないし、好きなタイプでもないのに、何故かしら、私の魔力が、アッポイから流れ込んでくるこの感情は」

「えっと、さらっと貶すのはやめてくれませんか?」

「そうね、失礼したわ」


 そう言ってみせると、やっと固はやっと解放される。そこでやっとスィーの容姿をしっかりと確認する事が出来た。髪の毛は肩まで伸ばしており、服装は同じく学生用のローブを着用していた。先程のっかられた感覚から、鍛え上げられた筋肉質な体つきまではわかったが、残念ながら体のラインまではわからなかった。


 しかし、普段から鍛えている固よりも力、魔力ともに上だという予想から、あなどれない人だなと思う固であった。日中に出会った金髪少女のリリィと同じくらいの身長だったが、年上なので決して異性より身長が低くても悲しく思わない固であった。


「ああ、そうそう、アッポイは貴方の事が気に入ったみたいなの。しばらく面倒をみてあげてね?」

「へ?」

「変な事はしないでよ? 私の魔力と同期してるんだから、ああ、でもたまになら許してあげる」


 指をピッピッと口元で揺らしてそんな忠告をして立ち去っていくスィー。そんなご主人様を見送るアッポイは固の頭上でふわふわと浮遊し続けるのであった。



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