9.
改訂しました。うーん、入れたい内容が上手く纏まっていないので、また改訂するかもしれません。
結局サーシャには何も言わなかった。
それというのも、公に発表するわけではないし、私に特にデメリットがないということを懇々と説明されたからだ。
うん、疲れたというのが一番正しいのかもしれない。
私は湯あみを済ませ、用意された部屋のベッドに力尽きて横たわった。
ディナーで、まさかの陛下と王妃様と王太子殿下と一緒にテーブルに着かされた私の心境を誰か察してください。
「何も味がわからなかったわ・・・」
折角の異国の料理、一人だったら堪能できたでしょうに…。陛下と王妃様からの質問攻めに合った私は、笑顔を顔に貼り付けるだけで精一杯でした。
王太子も便乗して話に乗って来る始末。いつ、お前とダンスを踊ったのか?いつお前の顔を見て頬を染めたのか?ちょっと、私に説明してみろ!!
「お嬢様、大丈夫ですか?」
サーシャがそっと近寄って来る。
それに大丈夫と返して、私は寝そうになる自身を叱咤し、体を起こす。
手紙を書かなければ。
父が隣国に行くのなら、毎日手紙を書くようにと言ってきたので、馬車の中でも必死に書いておりました。
書いた手紙は家族の元に運ばれているようで、家族からの返信を読みながら、何とか頑張っています。私、実は結構家族と離れていても平気だと思っていたのですが、どうやらホームシックのようです。
おうちかえりたい。
「今日の分よ。お願いね。」
「わかりました、お嬢様。久々のしっかりしたベッドですわ。ゆっくりお休みになってください。」
「ええ・・・。貴女も・・・ゆっくり・・・む」
既に半分睡魔に襲われているエリーズの言葉は意味をなさない。ふらふらとベッドに向かい、倒れ込むようにベッドに横になった途端、寝息をたてはじめた。
そんなエリーズにふわりと布団を掛け、サーシャは部屋を辞す。エリーズの部屋の隣が、サーシャたちに用意された部屋である。
「アントン。これが今日のお嬢様のお手紙よ。旦那様に届けて頂戴。そして、伝言を・・・。『本日、お嬢様は両陛下にお会いになられ、王太子殿下に何か言い含められたようだ』と」
「ああ。お前も気を付けろよ、サーシャ。お嬢様をなるべく一人にしないように」
「わかってるわ。まったく、長旅に慣れていないお嬢様にこんなことを強いるなんて。アンネマリア様にもキツク言ってもらわないといけないかもしれないわ」
「そうだな。王族の紋が入った馬車なんて用意されたら、俺たちに邪魔は出来ない。アルドロワ伯爵家が王家に反逆することになるからな」
これがもし、普通の馬車であれば、伯爵もエリーズを外に出す気はなかった。
しかし、王族の紋が付いた馬車ということは、王命である。一臣下である、伯爵が王命に背くとどうなるか・・・。いくら娘に惚れていても、そういうところに抜かりはない王太子である。
しかも、今回は、数日の準備日も用意されていなかった。
これでは、いくら自分やアンネマリア、リドア、ラルフが気付いたとしても止めることはできない。
そのため、伯爵は仕方なくエリーズを隣国への馬車に乗せたのだ。
それがわかっているから、エリーズについて来た供は皆、今すぐ馬車を引き返させたいのを我慢してここまでやって来たのだ。気持ちは皆同じ。
『隣国の王太子であろうが、エリーズに何かあったら許さない!』である。
彼ら、アルドロワ伯爵家で働く人間は、代々伯爵家に仕える家の中から選ばれている。
いざというとき伯爵家の人間を守れるように、幼いころから教育された彼らは、色々な技術に精通し、様々な格闘技を習得し、一般人とは比べ物にならない能力を有している。その中から特に優秀だと認められた者は、伯爵家で働いたり、伯爵領で情報収集の任についたりすることが出来る。そこで働くことを目標に、日々修行している彼らが、今の伯爵家を支えているのである。
ちなみにサーシャは、メイドでもあり、エリーズの護衛でもある。
アントンが所属する部隊の人間が、ローテーションを組んでエリーズの手紙を伯爵領へ届ける役を担っている。
今からなら、明日の夕方には伯爵の手にこの手紙が渡っているだろう。サーシャの伝言も明日の夕方には届くはず。
次の日の夕方までに届く・・・というのは、アントンが馬で伯爵領へ向かうからである。
伯爵領からシーリス王国へ、馬車で1週間もかかったのは、街道を進んできたからである。馬は、街道だけではなく山道も越えられるため、時間が短縮できるのである。
馬に乗れなければ伯爵家では働けないし、伯爵家の人間も馬に乗る。
もちろんエリーズも。「延々と馬車に乗るとか辛い。」というのは、エリーズが馬車に乗り慣れていないからに他ならない。
隣の部屋で疲れ切って眠ってしまった主人を心配しながらも、サーシャは明日の朝までのしばらくの平穏を望むのだった。




