これは酷い昔話 -はなさかじいさんー
酷い。これは酷い。
昔々あるところにおじいさんが住んでいました。
おじいさんはちょっと変わった性癖を持っていたこともあって独り身でしたが、一匹の犬を飼っていました。その犬もおじいさんに似たのか無類の女好きで、ことあるごとに娘達の尻を追いかけておりました。
その様子を眺めること自体は好きだったものの、このままでは村八分にされて下手をすると焼き討ちされかねないと察したおじいさんは、そんなに尻が好きならワシので我慢しろと自らの尻を差し出すと、夜な夜な舐め始めるようになりました。
それがまた満更でもなかったようで。
元々趣味が人並みを外れていたおじいさんでしたから、そんな変態習慣が露出プレイに変貌するのに大して時間はかかりませんでした。そして当然ながら、そんな様子を隣の家に暮らしていたおじいさんに見られてしまいます。
ドン引き? いえ違います。それは羨望の眼差しでした。
隣のおじいさんはすがり付いて、その犬を一晩だけでいいから貸してくれないかと頼み込んできました。当初は渋っていたおじいさんですが、その熱意と吹聴するという脅しに屈して貸してあげることにしました。
そして待望のプレイ開始となったものの、犬は匂いを嗅ぐなり吐いてしまいました。罵られるのは大の好物だった隣のお爺さんですが、拒絶されるのは大嫌いだったこともあり、古傷を抉られたトラウマも重なって近くにあった鎌で犬を殺してしまいます。
そう、隣のおじいさんはただのドMではなく、ちょっと病んでいたのです。つまりヤンデレじいさんです。迷惑な話ですね。
もちろん、そんな事実が判明したからといっておじいさんの悲しみが癒えるハズもなく、おじいさんはお尻の快感を思い出しながら犬のお墓を作って供養し、その脇に小さな苗を植えてお世話することにしました。すると不思議なことに、その苗は見る見る成長を遂げて空を覆うほどの立派な大樹となりました。
奇妙なこともあるものだと驚きつつも、あの木はきっと犬の生まれ変わりに違いないと、擦り付けてオ○ニーしたりと楽しむことにしました。
そんなある晩、夢の中にあの犬が現れ、擦り付けるのも別にいいけどあの木で臼とか作ったらいいんじゃないかな、などと曖昧な助言を受けた気がしたおじいさんは早速とばかりに大樹を切り倒し、臼を作って餅をついてみることにしました。
すると何ということでしょう。餅をつく音と共に女性の喘ぎ声が聞こえてきて、まるでアレみたいじゃないですか。餅をつき終わったおじいさんは、まるで一発抜いたみたいな満足感で一杯になり、犬の粋な心遣いに手を合わせるのでした。
それをこっそり見ていたのが隣のおじいさんです。今度はさすがに貸してくれないだろうと思ったのか、おじいさんが出かけた隙に忍び込んで臼を持ち出し、自分の家で餅をつくことにしました。
ぶりぶり、びりりりりり。
喘ぎ声どころか、そんな汚らしい音が家中に木霊します。ドMではありましたが、スカトロだけは苦手だった隣のおじいさんは耳を塞いで餅つきをやめ、トラウマに震えながら斧で臼を叩き壊して釜戸に放り込み、燃やしてしまいました。
帰ってきたおじいさんはこの成り行きを聞き、がっかりとうな垂れてしまいます。そしてせめてもの慰めとばかりに灰を持って帰ると、壷にしまって大切に保管することにしました。
するとある晩にまたまた犬が夢に現れ、灰を撒いたら楽しいことが起こるかもしれない、などと曖昧なことを告げたので、早速とばかりに壷を抱えて外へと繰り出すことにしました。
世間は冬の終わり、春の訪れを待っている頃合で、桜はまだつぼみすら膨らんでいません。梅がやっと開こうかという頃合です。彩のない世に中に、おじいさんは灰色の粉を撒き散らしました。
灰は木枯らしに乗って舞い上がり桜の花を――咲かせませんでした。
あれーと思いつつ灰の行方を追いかけると、偶然通りかかった三人の町娘に降りかかり、不思議なことに着物が溶け出すではありまんか!
黄色い悲鳴と共に灰の使い方を理解したおじいさんは、灰をどんどん撒いていきます。その後には娘達の悲鳴と男たちのどよめきの声が響きます。おじいさんはどんどん楽しくなってきました。
そんな騒ぎを聞きつけて、隣のおじいさんも駆けつけます。あんなに酷い目に遭ってきたというのに、全く学習しないおじいさんです。今度こそはとばかりにおじいさんの壷から灰を掴み、娘達に向けて投げつけました。
すると灰は汚物に変わり、娘達は汚されてしまいました。スカトロ嫌いな隣のおじいさんはたまったものではありません。正直、全く嬉しくありません。
が、おじいさんの方はそれほど悪くもないらしく、これはこれでと褒め称えました。こうして和解した二人は町を練り歩き、灰を撒いて裸と汚物を町中に届けたのでした。
そしてもちろん、二人はしょっぴかれることになったのでした。
めでたしめでたし。