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前半みづき視点、後半神奈月目線です
「2人とも初めてだよね。紹介します。オレの彼女の太田莉沙です」
「初めまして。太田です。武稀がいつもお世話になっています」
にこにこしながらペコリとお辞儀するその子は本当にかわいかった。
…“武稀”って呼んでる。
誰にでもフレンドリーだか、頑なに女友達には名前では呼ばせなかった彼に、名前呼びを許されている。
それは、太田さんが彼女だという紛れもない事実を示していた。
「島田がいつも言ってた彼女って、この子のことか」
神奈月くんもテンションが上がっている。
「ちょっと武稀!なに言ったの?」
「ん?莉沙がかわいいってこと」
なに言ってるの!と真っ赤になって照れる太田さんと、そんな彼女を、愛おし気な目で見る島くん。
こんな島くん見たことない。
他の女の子と違って優しく接してくれるから。私には違う態度だから。
自分は特別なのだと勘違いしていた。
胸が痛い。
苦しくて、涙が出そうで顔があげられなかった。
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一気に激甘な世界を作り出したふたり。
「そうだ!4人でご飯でも行きませんか?
武稀の学校での様子、聞いてみたいですし 」
空気を変えるように太田さんがいった。
「いいかも」
「ちょ、2人ともなに言っちゃってんの!?」
珍しく慌てる島田をからかう。
「藤崎もいいよな?」
意外とのりがいい藤崎は当然うなづくと思って隣に声をかける。
「私ちょっと体調悪いから、今日は帰る」
じゃあね、とうつむきながらそそくさと去っていく。
なんか、おかしい、と思う。普段の彼女はもっと礼儀正しく、こんな断り方や帰り方はしない。
「待って、具合悪いなら送る 」
追いかけて声をかける。しかし藤崎は振り向きもせずに、大丈夫だからと固辞して歩き続ける。
「ちょっと、待ってよ」
腕を掴んで少し強引に振り向かせる。
……!
こちらを向いた真っ黒な瞳は、水をたたえてゆらゆらと揺れていた。
なにも言えなくなり、手の力が緩む。
お願いだから、ひとりにして。
小さな震える声で懇願し、藤崎は、するりと俺の手から逃げたした。