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春風の中で  作者: 井藤りおう
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みづき視点です。

「藤、崎?」


「えっ、あ…」


うそでしょ。あの神奈月くんが(若干怪しかったけど)名前覚えてた!

クラス1の美少女香坂美緒さんすら、「あんた誰?」ってのたまった神奈月くんが…!

そもそも、声聞くの何回目だっけ?ちょっと数えてみよう…

心の中で数えていると、


「あれ、違った?藤田、藤森?あれっ?」


私の微妙な返答で不安になったらしい神奈月くんが混乱していた。そりゃ、合ってるんだから、他のでしっくりこられても困る。

合ってるよ、と笑ってみせると、


「だったらそんな反応しないでよ 」


と、少しすねた表情になった。


さすがにあなたに名前覚えられていてびっくりしたから、とは言えず、えへへ、ごめんね?とごまかした。


「ところで、神奈月くんが図書室来るなんて珍しいね。本、好きだったの?」


まだ、不満気な神奈月くんに聞いてみる。


「ちょくちょく来てるよ。本も好きだし、ここ、静かで落ち着くから」


ん?ちょくちょく?私もよく来てるんだけど初めてあった気がする。

そんな私の疑問に気づいているのかいないのか、彼は続けて言い放った。


「ここ、授業中とか来ると本当にいい。

保健室と違って先生いないし、空き教室とかと比べるとあったかいし」


でた!サボり魔発言。真顔で言ったよこの人。


「だめでしょ。授業サボっちゃ」


呆れて苦笑混じりに言う私に、うん。だめだね。と、飄々と言う。

その詫びれもしない態度にくすりと笑いがもれる。


「本当、島くんが言ってた通りだ」


思わず出た言葉に訝しげになる彼。


「神奈月くんが実は天然入ってるって。

クラスじゃそんな風には全然見えないのに」


どうしよう。クスクス笑いがとまんない。


綺麗な顔に冷たい表情を浮かべることが多い神奈月くんが、子どものようなきょとんとした顔をしているということが、失礼かもしれないけれど、なんだか可愛くて。

なんで笑うのと言った時のすねた顔なんてまるっきり子供みたいで。

あまりの普段の彼とのギャップに、ようやく笑いが収まった頃には、完全にすねてしまっていた。


「ごめんね、神奈月くん。くふっ。

ごめんったら。すねないでー?」


「すねてないし」


「いや、すねてるでしょ、その顔。絶対に」


もうだめ、この人。

かわいい。おもしろすぎる。


私の中で完全にクールな神奈月くんのイメージが崩れさった頃、


「かみ」


と、一言、ようやく機嫌が直った彼に、唐突に言われた。


「え、かみ?」


唐突に発せられた一言を、理解できずに聞き返すと、今度はわたしを指さしながら


「髪の毛。おろしてるの珍しい。いつもしばってるのに」


と、言われた。


気がついてたのかと、またもや驚く。


「えっとね、ここ、棚の間は暖房の効き悪いでしょ?だから、ちょっと寒いから」


きょうは朝、暖かかったためカーディガンを忘れてしまった。


「でも、髪下ろすと首とか背中あったかいんだよ」


そう言うと、無言でブレザーを脱ぎ出した彼。不思議行動を黙ってみていると、その下に着ていたカーディガンまで脱ぎたした。不可解な行動に焦り出した私。神奈月くんはカーディガンを脱いだまま、もう一度ブレザーを着た。


「ん」


もはや1音。それだけを発し、ずいとカーディガンを突き出してくる。


正解を求めて本人を見る。すると、某有名アニメーション映画に出てくる主人公姉妹の姉にちょっかいを出してくる悪ガキ(絶対あいつ、あの子のこと好きでしょ。てか、あの子お兄とおんなじ名前!?)が、傘を貸すシーンとおんなじ顔をしていた。


目をそらしながら、ん、と言って押し付けるとか、カ○タそっくりすぎる。


どうしよう、さつき兄。ここにイケメンすぎるカン○がいます!



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