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春風の中で  作者: 井藤りおう
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3


引き続き朱里目線です。


私の力不足により時系列が飛んだように思えますが、9月の下旬の設定です。



逃げ込んだ先は図書館だった。

それまでもたびたび避難場所(サボり場)としてきた俺のお気に入りの場所だ。


今撒いてきた女子は本なんて全く読まないのだろう。


確信をもってそう言える。今日も放課後教室で本を読んでいたらベタベタとまとわりついてきて、甘ったるい声で話しかけてきた。あまりに邪魔だったため顔をあげて睨んだら、顔をあげた途端、

本読むなんてカッコイイねぇ美緒なんて3行読もうとしただけで寝ちゃうよぉ。

などと間延びした喋り方で言ってきた。


これ以上教室にいてもゆっくり読書はできないとわかったので、カバンに本をしまい立ち上がった。「どうしたのぉ?」と言ってくるが無視して歩き出す。


「ちょっと!待ってよぅ!」


うるさい、めんどくさい。

バカっぽい女は好きじゃない。


急いで支度をしている音がするが気にせず歩く。


さて、どうするか。


このまま帰れば確実に校門まででつかまる。だからといってこんなやつのために走って体力を使うのも面倒だ。

考えながら、気持ちいつもより大股で歩く。


どこか、静かで本が読める場所は…


「あぁ、図書室だ」


小さくつぶやき、図書室に向かう。定番の場所なのに何故忘れていたのか謎だが。


数少ない友人や、親しい親戚たちほぼ全員に、「朱里(お前)って実は天然なんだな」と、苦笑されているのでそう言う事なのだろう。


図書室につき扉を開くと独特の紙とインクの匂いに包まれる。

この匂いってだいたいどこも一緒だよな、などとぼんやりと考える。


まだ、5時前なのに図書室には人気がなかった。たくさんの本たちが、今この瞬間は自分だけの物だと考えると少し嬉しくなった。


カバンに入った読みかけの本も気になるが、やはり大量の本を見ると物色したくなるのが本好きの性。

自称彼女から逃げてきた事も忘れて、面白そうな本がないか棚の間をさまよう。

しかし、なかなか心惹かれるものがない。こういう日はだいたい何も見つからない、という今までの経験から次の棚でなかったら諦めて自分の本を読もうと思い、ひとつ奥の棚に移動した時だった。





目に入ったのは本ではなく、艶やかな黒髪の後ろ姿。

人の気配に振り向いた女子生徒。


無人だと思っていた図書室に彼女がいた。




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