俺、ロリ女神と風呂に入るってさ。
「…おきる」
ぺちぺちと顔を叩かれ目覚めた。
「んー、あと2時間…」
が、寝る。
昨日は散々だったんだ。限界まで寝たって誰も文句は言わないだろう。
幸い明日は休みだし。
まったく猫を助けたは良いが、自分が流されるとは…。油断したな。
てか俺、流されてどうなったっけ?バナナの皮で滑って流されて、その後の記憶が曖昧だな…。
自分の布団に入った記憶がない。
仕事帰りにスーパーに寄って、夕飯のおかずにこんにゃくの煮物とささみのフライ、晩酌用のつまみを買って…。
スーパーから出ると雨が酷くなってて…。
で、帰る途中に土手から滑って、スーパーの袋が手からすっぽ抜けて、氾濫した川に落としちまったから拾いに行って…。
途中に猫がいたからついでに助けて、岸から上がって。
…、あぁ、その後バナナの皮踏んで滑ったな。つか、ゆっくり思い出すと土手にもバナナの皮があったな…。
で、流されて…
「…あなたは死んだ」
「そうそう、死んだ後に閻魔のおっちゃんとカ○ピスのマンゴー味をこんにゃくの煮物で一杯やったんだった!おっちゃんああ見えて酒に弱いのな。俺も飲めんから人の事言えんが」
「…あの方はお酒で判決を鈍らせないために飲まない。…みんなを大切に思って公正な判決を下したいからこそ、大好きなお酒を飲まない。誰もやりたがらなかった、あの仕事も自分からやりたいと言った。悪口は、止めて」
「…あー、すまん。悪口のつもりはなかったが、気分を害したなら謝る(ただおっちゃん、ここだけの話、実は儂、酒が苦手なんじゃよw、とか言っていたのは黙っているのが吉なんだろうな)」
目の前に立っているロリ少女(脱字ではない。ロリ美少女、では決してない)は、ならいい、と言い、枕元にもたれ掛かった。
「…、どちら様?」
「かみさま」
ふむ。どうやらこのロリ少女は神様らしい。
ふん、そんな嘘に誰が騙されるか。大体神様が俺の枕元にいるはずがないだろ。つか神様の存在自体俺は信じちゃ…、ん?なんか違和感が…。
「閻魔様もアテナも神様」
「おぉ、寝ぼけてアテナの事忘れてた!つか閻魔のおっちゃんって神様なの!?」
「…神は人によって見える姿は違うけど、あの方は冥界の王。少なくともハーデスと同格か、それより位は上」
「あ、ハーデスもいるのか。つかアテナが出てきたのに、閻魔大王がいたり天使がいたり、神話がごちゃ交ぜなのに異議を申し立てたい!」
「…元は同じ天界に住んでいた。でも、地域ごとに神様が“俺が一番偉い”と人間に話を書かせたから、色んな神話ができた。違う神話体系に同じ神様が登場するのはその為」
「ふーん」
まあ、そんな事情があったのね。これを過激な信者に聞かせたら、女じゃないのに魔女狩りされそうだ。「ひと(人)狩り行こうぜ!」って。
今も昔も人間は狩が大好きだ。
お前も人間だろうって?俺は“狩り”じゃなくて“借り”が好きかな。借りぐらしの○リエッティ。歌がいいよね。
「…他に質問は」
「んー、今は特に」
ん?そいやなんか知らない天井だな。この布団も俺の布団じゃないな。
…つか布団じゃない!ベット!?いや天蓋か!!
そうだ、俺、異世界に行くんだった!やばい、寝ぼけてた!
「つかあんた誰だよ!?ここどこ!私は誰!…、あ、いや、俺は金ヶ崎衛人か…」
「…」
ロリ少女に白い目で見られた。いや、目の色自体は青かったが。
「…わたしはアーシラト。呼ぶときはイラトでいい。ここは異世界の天界。あなたは“旅人”」
「イラト?西アジアの、神々の女王だったか。…なに神話だっけ?つか異世界なのに知ってる名前なのは突っ込みをいれるべきか?」
イラトは驚いたのか、目を見張りこちらをじっと凝視する。
俺、なにか変な事言ったか?
「…ウガリット」
「ん?」
「ウガリット神話。…まだ、わたしは、あたなの世界にいることになって、信じられて、いるの…?」
「いや、すまん。俺は無宗教だからそこまでは…。知識として頭に入っていただけだ」
「…なら仕方がない。気にしないで。…どのみち今はこちらの世界の神」
そういいつつも、ションボリしているのがわかる。
目の前でロリ少女がションボリしてると、なにか、こう、くるものがあるな。
ちなみに再度言うが、ロリ美少女では決してない。
可愛く無いかで言われたら、可愛いのだが、はっきり言って、ロリに言う台詞ではないのをわかってて言うが、
完全に見た目が喪女なのだ。
いや、これでは言い方が悪いか。
あれだ、完全に見た目が「私○テ」のも○っちなのだ。
髪は長く、ボサボサ。ジト目。服だってアテナと似たような白い服を着ているのに、こっちはなんか黄ばんでる…。
勿論、女神故かわからんが、素材は悪くない。肌が荒れているわけでも、髪質が悪いわけでも無い。顔だって整っている。
が、ただこいつにアテナのようにキスをしたくなるかと聞かれたら、答えはノーだ。
清潔かもしれんが、なんか、清潔感が無い。
「…ひどい言われよう」
「お前も人の心を読むのか…」
「…声に、出ていた」
「まじか!?スマン!」
「…心の声に」
「じゃあ、謝り損だ!俺の謝罪を返せ!」
「…女の子に言う言葉じゃなかったから、やだ」
「いや、女の子って、お前、俺より圧倒的に年上だろ!?ウガリット神話って“古代都市ウガリット”の神話だろ?じゃあ最低でも8000歳のばあさ」
「言ったら地獄に落とす」
「いやー、ジト目ロリ可愛いなぁ!みてくれよこの愛らしい癖っ毛!すべすべのお肌!もうこのまま異世界観光しないでずっと此処にいて女神様を愛でていたいぜ!」
「…」
「…」
「…ポ」
「頬を赤らめるな!つか、ここ風呂無いのか?」
「…あるけど、わたし専用、残念だけど、一緒には入れない。…でも、どうしてもっていうなら」
「あぁ、どうしても入りたい!」
「!?」
「こんな可愛い女の子が、冗談だったとしても、一緒に入れる可能性があるなら俺は…」
「…いや、でも」
彼女のはっきりしない態度にイラついた俺はゆっくりベットから立ち上がり、逆にイラトをベットに押し倒し、彼女の目をじっと見つめる。
最初は目を反らされたが、無理矢理顔をこちらを向かせ、反らすことを許さない。
「そんなに俺と一緒に、風呂に入るのが、嫌か?」
そう、彼女の目と鼻の先で問うと
「…嫌じゃ」
少し潤んだ目で
「嫌じゃ、ない」
そう、答えてくれた。
閑話休題
「ふう、これでどっからどう見てもロリ美少女だ」
「…エイトのエッチ」
だまらっしゃい。こちとらロリ体型に発情するほど女に飢えとらんわ!
俺はあの後、顔を赤らめた彼女の服を無理矢理ひっぺがし(何故か抵抗らしい抵抗は無かった)、髪を丁寧に洗い、トリートメントをよく洗い流し、ドライヤーで丁寧に髪を乾かせた。
ブラッシングの技術は会得していないが、髪質自体は“最上”と言っても過言ではなく、俺でも丁寧に櫛を使ってやれば、力強く流れ、飛沫でキラキラと輝く美しい川のような髪になり、そこに純白の新品の服を着させればあら不思議。
「ロリ美少女の完成だ。ついでに薄く化粧をさせようかとしたが、これなら素っぴんが一番だな」
「…エイトのエッチ」
「ほら、飴ちゃんあげるから機嫌直せって。お、リボン付のカチューシャもあるじゃん!ほら、これを着ければ完璧なロリ美少女だぞ!」
「…、はぁ」
「ため息!?俺だってなぁ!死んでいきなり異世界に観光行けって言われたり…ん?」
「…あ」
「…、あ」
そう言えば、俺は異世界に観光しに来たんじゃなかったか?なにロリ神の髪いじって遊んでんだ?
「…、おぉ、よくぞまいった勇者よ」
「棒読み!?」
「…、おぉ、よくぞ我依頼をこなしてくれた。ほめてつかわす」
「いや、まあ、扉をくぐってきただけだがな」
「報酬になんでも1つだけ願いをかなえてしんぜよう。ほれ、遠慮はいらん。なんでも言うがよい」
「棒読みじゃ無くなったが一気にウザくなったな!?」
「…な、なんならわたしの、処女でも…」
「いや、あんた子沢山だろ。つか、それよか」
異世界観光の説明プリーズ!
ぶっちゃけ向こうでアテナからなんも情報貰ってないから、きちんと説明して欲しい。
「…それが願い事?つまらない願い事ね」
「ちげぇよ!むしろこれは俺を呼んだあんたの義務だろ!」
イラトは艶々になった自分の髪の毛をいじりながら、ぶー、と頬を膨らませ先に説明を始めた。
「…願い事を叶えたら、あなたをこの世界の何処かに送り出す。あなたは好きに観光する。以上」
「短い!!?」
「…それとも、なんの自由もない、ただ世界を見て回るだけのツアーが良い?」
それは絶対に嫌だ!
せっかく死んだのだ。もう二度と何かに縛られるのはごめんだ!他のやつは知らんが、観光に自由時間が無いとかただの拷問だろ。
まあ、綺麗な御姉様に縄で縛られるのなら、…って何て事言わせる気だ!まったくけしからん。
「…そう言うと思ったから、完全自由の旅。しかも最初の行き先をランダム設定にする事でミステリーツアーを再現」
「説明の短さに反して色々考えていたのか…」
「…説明OK?なら願い事をさっさと言う」
「急かすなぁ。まあ神だから忙しいのか」
「…見たい番組がそろそろ始まる。黄金都市伝説の無人都市1ヶ月0円生活」
「スケールでけぇ!1ヶ月0円生活!?つか天界にもテレビあるのか」
「TV高天ヶ原、テレタマ。他にも一文明終わるまで帰れま千年。とか」
「拷問か、それ!?」
1000年拘束とか、ヤバイな。もはや番組企画というか、一種の封印だよな。
「…出演者は、まがつ神だから大丈夫」
「やっぱり封印だった!」
「…願い事」
「言わせたいならボケるなよ!突っ込みし過ぎて喉が痛いわ!」
はぁはぁ、クッ、ロリ美少女の前にはぁはぁしてしまうだなんて。どんな変態だよ。
「…その前に」
話を区切ると彼女は突然俺の頬をむにむに引っ張り始めた。
「にゃんのまねぇや(なんのまねだ)」
「…祝福」
「しゅふふにゅ?(祝福?)」
「…これで、よし」
「ちょっと痛かった」
「…がまん。男の子、でしょ?」
「おっふ」
まさか見た目ロリにそんなことを言われるとは。危うくはぁは、おっとこれ以上は危険だ。
「ステータスと唱える」
「ん?もしかしてテンプレのあれか?自分のステータスが確認できるって異世界物のテンプレのあれなのかい?」
そうならテンションが上がってしまう。俺がラノベ好きっていうのもあるが、それよりも自分の今までの努力が、数値で現れるのだ。
楽しみでないはずがない。
「ステータス!」
ワクワクしながら唱えると、ボワンと、いきなり目の前に紙が出てきた。
基本ステータス
・名前
金ヶ崎衛人
・年齢
24
・職業
会社員
・ユニーク
####
身体ステータス
・筋力
###
・頑丈
###
・魔力
0
・素早さ
###
・運
0
称号ステータス
・S 魔を極めし王
・S 怨みと後悔の呪い
・B 人ならざる者
・S 知恵と戦の女神の祝福
・B 異世界間の旅人
・A 勇者
・S 神々の女王の祝福
「てめ、身体ステータスが文字化けし放題じゃねぇか!?」
「…、本当。珍しい」
「もしかして、あれか?限界突破してて表示しきれないとか?チートか?異世界チートかい?」
ワクワク、ワクワク
「…まだ魂が、世界に馴染んでないか、称号がステータスに反映している最中。わたしも、アテナもステータスは弄ってない」
しょぼーん(´・ω・`)
「まあ、運ステータスが0だし、たまたまじゃない、かな」
「…この称号ステータスってのは?」
問うと女神が紙にペタペタ触る。
すると称号ステータス欄に項目が追加される。
「…押すと効果が表示される」
称号ステータス
・S 魔を極めし王
→是を以て無限の魔の行使権とす
・S 怨みと後悔の呪い
→死は、始まりに過ぎないのだ
・B 人ならざる者
→身体的制限の解除
→筋力+20
→頑丈+20
→素早さ+20
・S 知恵と戦の女神の祝福
→大丈夫。また戻ってこれるから。でも衛人きゅん、浮気しちゃダメよ?メッ、だよ?
・B 異世界間の旅人
→言語即時修得
→微生物耐性
→殺菌作用常時展開
→重力耐性
・A 勇者
→身体ステータス全て2倍
→聖剣の行使権
・S 神々の女王の祝福
→…ステータスを唱えると紙が印刷される。それと…また、一緒にお風呂はいろ?
なんじゃこりゃ。称号の前のアルファベットは、まあ、恐らく称号のランクだろう。その下が効果の説明だと思うのだが、Sランクのこれは、曖昧すぎて判らんな…。祝福に至ってはただのコメントだし。
「…大体その通り。Sランクは神からの贈り物。効果は無いけど、神のありがたいコメント付。ブイ」
いや、どや顔されながピースされても。
つまりそれSランクは使えない能力って訳じゃん。BとかAは中々素晴らしい事書いてあるぞ。
まあ、身体ステータスが表示されてないから+20がどれ程凄いかわからんが。
「このユニークは?これも文字化けしてるんだが」
「…ユニークは、この世界で誰もが1つは持っている力。ステータスアップ系から特殊能力系のユニークまで幅広い能力が、ある」
「文字化けの理由は?」
「…まったくの、謎」
寝る前から思っていたけど、神様役にたたないね。
「…でも、これで異世界物みたいになった、でしょ?」
「いや、まあ、そうだが」
「…あとは願い事だけ。それを聞いたらあなたを落とす」
「落とすって、表現怖いな」
「実際、ここは雲の上。落ちれば自動的に地上。堕ちれば自動的に地獄。」
「怖いって!!」
「墜ちれば棺桶の中」
「おちれば……、墜落か!え、俺いきなり死ぬの!?」
「…そろそろ、時間。じゃあ、ね」
そういってイラトはツンと俺を押す。
すると後ろはいつの間にか断崖絶壁。否、何もない。
「ちょ、おち!?」
「…願い事は落ちながら叫んで」
ま、て
「…それじゃあ、いってらっしゃい。出来れば長生きして、話を聞かせて?呪われたあなたを優しさで救ってみせた世界が、どんな世界になったか…」
く、好き勝手やりやがって!言いやがって!
なら俺だって遠慮しない!
「願い事だぁイラトォォ!願い事の回数制限を無くしやがれェェェ!!!」
落ちながら最後に見えたイラトの表情は、驚きに満ちていた。
ざまあみやがれ!いきなり落としてくれた罰だ!本当ならこんな冗談みたいな願いはする気無かったが、あんたがこんな対応してきたんだ!因果応報、恨むなよ?
さあ、これでチートプレイどころか、何でも、何回でも願いが叶う、神様待遇プレイの始まりだ!
観光しながらハーレムつくって、おっと、先に水や食料確保か。いや、いっそ金持にしてもらって観光せずに家買って、メイドハーレム作ってひきニートもありだな。
むふふ。想像するだけで楽しそうだ!
行くぜ異世界!待ってろ異世界!
俺の旅はまだ始まったばかりだ!
ようやく本編突入します。
今後も読んで頂けると凄く、物凄く喜びます。
そして作中の『死は、始まりに過ぎないのだ』の元ネタわかる人がいると更に喜びます。ヒントはスカラベが印象的な有名なミイラ映画。