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俺、前世魔王だってさ。

※姉上の手紙と衛人のキャラが全然違うのはプロローグの衛人が手紙越しのキャラだからです。

手紙の内容がストーリーと若干違うのは次の話で書くと思いますが、手紙を書いたのが衛人本人でなく、また衛人が姉上を心配させないように一部を書き直したからです。


また、この物語はフィクションです。言わずもがな、バナナの皮が実際に踏むと滑るかどうか、それで川に流された場合に死んでしまうかどうかは、危ないので絶対に試さないで下さい。

 で、ここ何処だ?


「あらあら、貴方が金ヶ(かねがさき)衛人(えいと)きゅ、…君ね?」


 やたら美人な、やたら透き通った青い髪の女が突然現れ言った。


「俺が衛人なのは否定しないが…、噛むくらいならわざわざ君付けにして文字数を増やさなければいいんじゃないか?」

「気にしない気にしない♪うん!衛人きゅんはやっぱり生の方が可愛いねぇ♪」

「きゅん!?」

「えへへ~、噛んじゃった♪」


 (・ω<) てへぺろ、とでも聞こえそうな表情をしながら女は誤魔化す。

 まあ、別に呼び方なんざ気にはしないが、それにしたって


「本当に!?衛人きゅんって呼んでいいの!?くんかくんかペロペロしていいの!?」

「駄目に決まってるだろ!!つかあんた誰だよ!!」

「ハァハァ、私は…、女神様よ!ハァハァ」


 涎と鼻血を垂れながらジリジリと近づく女神?を避ける。

 いや、実際美人だし、別にペロペロされても構わないっちゃ構わないのだが、考えてもみて欲しい。美人な(恐らく24の自分より歳上)の女(神)が涎と鼻血を垂れ、ハァハァしながら自分向かってきゅん付けした名前を呼びながらにじり寄ってきたら誰だって逃げたくなるだろう。例え非モテ野郎でも多分引くぞ?

 あれで引かないのは純粋無垢なショタ位だろう。オネショタは嫌いじゃないが、悪いが俺は24歳の身長170の大人だ。

 せめて相手方が見た目がロリなら全然アリなのだが


「うぅ、所詮私は年増ですよぅ…」


 いや、多分さっきから心を読んでるのか知らんが、俺の考えてる事に反応するな…。今度は落ち込んでしまった。

 別に年増ってか見た目の問題で


「どうせ私はブスですよー、行き遅れちゃってますー、処女神ですよー…」


 面倒なやつだなー…。さっきの気の良い閻魔のおっちゃんの基準で考えちゃいかんのか、神様は。


「いいから俺を此処に呼んだ訳を話せよ…」


 俺が深く溜め息をつき、本題に入ろうとすると女神は上目遣いでこちらを見ながらうるうると「否定してくれないの?」と聞いてきた。


 心底どうでもいいし、かなりうざいし放っておいてよかったが、正直見た目は好みだし、あらあら、うふふ系な年上が目をうるうるさせた姿が激しく遺憾ながら、ちょっぴり可愛かった。


「大丈夫だよ、あんたがブスなら世の女共は鏡を全て割っている。周りの女神がどれだけ綺麗か知らんが、気にすることは、うわッ!?」


 全て言うまで我慢出来なかったのか、抱きついてきやがった!つか胸!胸当たってる!


「ふひひ、『あててんのよ』です!」


 問答無用でグリグリ胸を当ててくる。正直気持ち良いし、堪能していたいが、はやく本題を聞きたい。閻魔のおっちゃんの所から、天国行きか地獄行きか聞かずにここに来たのだ。不安で胸が一杯なのだ。

 今この状況を見てる野郎なら半数以上が爆発しろ!とか、もげろ!って言うかもしれないが、自分がもしかしたら地獄行きかも知れん状況でこんな目にあってみろ!どんな天国と地獄だよ!って言いたくなるぞ!?

 

「ふう、ちょっぴり満足♪」

「なにがちょっぴりなのか、ちょっぴりなのに満足ってなんやねん、とか突っ込みたいが、話を先に進めて良いか?」

「おっけー♪」


 いろいろ突っ込みたいが我慢我慢…


「わ、私に何を突っ込みたいの!?まさか、な、ナニを突っ込みたい!?それはもう…我慢せずに是非!!!」


 とりあえずエコバッグに入っていた会社の書類を折り畳み、折り畳み式のホチキスで止め、即席のハリセンを作成。

・ハリセン+1(ユニーク)

→片手剣

→攻撃+20

→重さ+0

→ユニーク:攻撃力を1にする。

クリティカル率80%UP

炸裂音増大


 ふむ、こんなもんか。俺は目を閉じて両手を広げ、バッチこーい、な状況の女神に対し、全力で、思いっきり、


   スッパーーーー………ン


 叩いた。うむ、良い音じゃ。


「いったーーーーい!くない!?あれ、正確には全然痛くない!」

「当たり前だろ。コピー用紙4枚程度重ねた即席のハリセンで全力で叩いて痛いはずないだろう。ほら、さっさと、おっと」


 こいつ、また性懲りもなく抱きついてきやがった…。


「えへへ~。やっぱり衛人君を選んでよかった!」

「ん?選んだ?なんかやらかしたから俺は此処に呼ばれたんじゃないのか?」

「やらかした、ね。うんそれも間違ってはいないね」


 いちいち突っ込むのをやめた俺は、突然後ろに現れたソファーにもたれ掛かり、横に女神をよいしょ、と退かした。


「えへへ~♪やっぱり衛人きゅんマジ紳士!だね♪こんな私を手荒く扱わないし、叩くときも痛くしないんだね♪」

「こんなって、…自覚があるなら自重しろ」

「んふふ、私にそんなこと言ってくれるのは衛人きゅんだけだよ?これでも偉い偉い女神様ですから!」

「あー、そいやそうだった。済まんな。人によって態度を変えるのは苦手なんだ。上司にもたまにタメ口になって焦る。一種のコミュ障だと思って許せ」


 女神はふふ、とさっきとはうってかわって見た目の年齢相応の妖艶な笑みを浮かべた。

 さっきまでの無邪気な笑顔でなく、全て知っているよ?と、言いたげな、恐らく神特有の笑みだろう。なんかエロいが、正直さっきまでの笑顔が俺の好みだった。


「知っているよ?君が、金ヶ崎家で、24年間。どんな人生を送ってきたか。君がどれだけ“自分”を犠牲にしてきたかを」

「…わかっているならいいさ」

「大丈夫だよ?今の君は強いじゃない。それとも昔に戻りたい?まだ異端児と呼ばれる前の…」


 女神がほざく前に彼女の胸の少し上、鎖骨のした辺りに手をあてる。


「…それ以上は言わないで、欲しい」


 それ以上は、俺も、感情で動きかねない。だから、その前に黙ってほしい。そう心の中で彼女に言う。目で、彼女に伝える。

 俺がそうすると、彼女はまるで品定めをするかのようにジッと俺を見つめ…そして、


「やっぱり、君で良かった。君が、君が金ヶ崎衛人でいてくれて良かった…」


 そう呟くと、そっと俺に身を預けた。


「金ヶ崎衛人。君はね。生まれる前から地獄行きが決まっていたんだよ」

「!?」

「君の前の人生と、その前の人生でね。君はとってもとっても、たくさんの命を奪った。本来は魂を地獄で燃やし尽くして、二度と転生出来ない位に…」

「冗談、では無いみたいだな…」


 彼女の雰囲気はさっきまでのおどけた雰囲気ではない。更にいうと彼女は神だ。嘘をついてまで此処に俺を呼ぶ必要がない。地獄行きにしろ天国行きにしろ、あのまま裁判を受けさせてていればそれで良いはずだ。


「…まて、ならなんで俺は此処に、いや、現世にいた?」


 彼女は下を向いて表情を俺に見せない。目を見て話したかったが、そうはさせてくれない。そして無理矢理こちらを向かせることは、俺にも出来なかった。

 俯く彼女の手元に水滴がポタポタと落ちるのが見えたからだ。

 幸い彼女はゆっくりだが、少しずつ話してくれた。


 まず、俺の魂は元々異世界の魔王だったこと。

 魔王は初めから魔王では無く、とある王国の王立魔法兵団の副団長で、その姉が団長だったそうだ。

 姉は誰よりも美しく、誰よりも強く、そして誰よりも周りから信頼されていた。

 また弟は誰よりも優しく、誰よりも花と音楽を愛し、そして誰よりも姉を愛していた。


 ある日、姉の人望に嫉妬した国王は立場を利用して彼女から杖を没収し、戦う術を奪ってから、王子四人とで一晩中彼女を辱しめた。

 彼女は翌朝、見回り中の警備兵に裸の上、ボロボロな姿で発見された。


 それが発端だ。


 姉はその後ショックで自殺し、弟は激怒した。

 弟は王子四人を殺し、国王にも杖を向けた。しかし直ぐに駆けつけた当時の近衛団長に逆に倒されてしまう。


 そして悲劇の本当の始まりはここからだった。


 彼は悲しみのあまり、自爆の魔法を放つ。自分の悲しみと残り僅かな命を、そして魂すらを糧に最期に王族を全員葬れるような大魔法を放ったつもりだった。

 しかしあまりの無念に魔法は、呪いへと姿を変え、呪いは男の魂に命の代わりとして定着し、元の肉体へと戻った。

 これが最初の転生。輪廻を無視した、偶然かつ結果的にではあるが、世界で初めての、そして最大の禁忌である死者蘇生を自分自身で行った。

 呪いが命の源となった彼は怒りのままに暴れ、大魔法を無差別に放った。魂は彼のままでも、呪いによって汚された彼の魂はもう自分でも何に対し怒っているかも忘れて、只ひたすらに自身の全力を世界に放った。


 そして人類が絶望したとき、勇者が現れた。

人々らは魔王がなぜ人類を襲うのか知らなかった。魔王が誕生して初めての放った魔法が真実を知る者全てを殺してしまったからだ。

 しかし勇者はそれを知っていた。いや、知ったのだ。

 勇者は神が遣わした異世界の少年だった。神は少年に一振りの聖剣・心繋ぎを授けた。

 心繋ぎは相手の心を読み、他の誰かに疑似体験させる事でその想いをみせる事のできる聖剣だ。

 勇者は魔王の悲しみを知り、また彼の悲しみを生き残った人全員にみせた。

 人々は涙した。魔王の悲しみに。それは決して同情や哀れみではなく、聖剣・心繋ぎによって疑似体験した事による悲しみの涙。

 そして、その涙は悲しみだけでなく、魔王を助けてあげたい、という、優しい涙だった。

 そしてその涙が集まり、心繋ぎは新たな聖剣として生まれ変わった。

 聖剣・心渡しという聖剣だ。

 聖剣・心繋ぎによって知った想いに、聖剣・心渡しは、想いを返すことの出来る聖剣だった。


 人々の想いを受け取った魔王の魂は僅かにだが浄化さた。しかし人の心を一瞬取り戻した魔王は、人の心を取り戻したからこそ、一一済まなかった、そして、ありがとう一一そう言って勇者から聖剣を奪い、自らを滅ぼした。

 

 生き残った人々と勇者が彼を救えなかった、と悲しみに打ち拉しがれていると、その様子に心を打たれた神は魔王の浄化された魂を切り離し別世界に転生させることで、本来地獄で魂を焼き付くされる運命から逃した。



「で、その浄化された魔王の魂が俺だってか…」

「あ、いえ、衛人きゅんはそっちじゃないよ?」


 ん?ここまで長い話を聞かされて、違うと申すかこの女神は。

 

「つか何キョトンとした顔でみてんだよ!?え、何さっきまでのシリアスな空気どこいった?」

「あれは、辛い事件でしたマル」

「じゃねぇよ!!じゃあ俺何なの!?元魔王じゃないのかよ!」

「あ、いえ、衛人きゅんは元魔王ですが?」

「そのキョトン顔やめい!」



 スパーーーーーーン!



「あいたーーーーい!くない!?」


 俺はすかさずまたハリセンで全力攻撃をした。


「説明、今すぐ、プリーズ!」

「あ、はい。先程そっちじゃない、と言いましたよね?で、つまり衛人きゅんは、魂の浄化が、“されてない”部分の魔王の転生体なのですよ」


 うそん。


「え、じゃあ浄化されてる方は?」

「そちらはこっちの世界で、あ、今は絶賛ニート中ですね♪携帯小説サイトで異世界転生物のラノベを執筆してるみたいだよ!」


 なんじゃそりゃ。え、つかなに、俺とそいつ元々同じ魂なのに同じ世界にいて良いのか?


「あー、多分だけど、神様っていうのは大体大雑把で、魂の切り離しを世界を跨いでからやったんじゃないかな?だから同じ世界だし、向こうは魂の小さいからロースペックで、衛人きゅんはスーパーハイスペック!それで釣り合いが取れて問題なし!的な?」

「じゃあ、まるでソイツがニートしてるの俺のせいじゃん!すげぇ申し訳ないんだけど!?」

「あ、それに関しては大丈夫だよ?ロースペックと言いつつ、一般人からしたら充分ハイスペックだし。金ヶ崎っていう特殊な環境にいなければ君は正に異端児、化け物クラスのスペックなんだよ!」


 なんだか、いろんな意味で凹んだ。


「じゃあ、あれか?俺が此処に呼ばれた理由って…」

 

 今の説明を聞く限り、地獄に戻れ!とか、お前さん、裁判無しで直、阿鼻地獄な。とか言われてもおかしくないんだが!いやだぞ!無限に地獄を落下して焼かれるなんて!俺は御免被r


「あ、はい、あちらの世界の神が私の親友なのですが、『死んじゃったなら、地獄なんて汗臭そうなとこ行かないで、私の世界に観光来ない?』だそうです」

魔王とその姉ちゃんがもっと悲惨な過去になる予定でした。が、書いている途中で自分でも無いな、と感じ、急遽魔王の話を昔話風に仕立てて、若干マイルドに仕立て直しました。

ノーモア鬱展開。

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