プロローグ。そして遺言。
前に書いていた作品、二人で書いていたのですが、一年ほど前に仕事の時間帯が変わったらしくここ一年全然連絡がとれないので、一人で別の作品を書きました。前の作品も一人で頑張ってみるので応援して頂けると幸いです。
拝啓、姉上殿。
この度私は死にました。
自分でも驚きです。まさか猫を助ける為に氾濫した川に飛び込み、いざ猫を助け、岸に上がったはいいが、たまたま岸に流れ着いていたバナナの皮に足を滑らせ、そのまま川に落ちて流されるとは。
でも良いのです。猫は助かったみたいだし、バナナので滑るのが立証されました。きっとこの手紙をお笑い関係の部署に持ち込めば世紀の大発見と、喜ばれるでしょう。
さて、前振りが長くなって申し訳ありません。
本題に入らせて頂きます。
えーと、なんといったら良いか、自分でも混乱していて、迷いながら書いているのですが。
まず、この手紙を読んでいるのが本当に私の姉ならば、きっとバナナの皮の下りで爆笑していると思います。しかしながら、とりあえずバナナの皮は一旦捨て置いて下さい。
あ、でもバナナの皮は生ゴミなのできちんとポリ袋に入れて臭いが漏れないようにしてから黄色い指定されたごみ袋で捨てて下さいね。でないとまた私のような被害者が出る可能性がありますので。
あ、いえ違います。本題ですね。
聡明な姉上ならば爆笑しつつも疑問に思った筈です。
何故死んでいるなら手紙が書けるのか。
あ、安心してください。実は死んでいないというオチはありません。疑うなら○○橋に行ってみてください。彼女曰く、その橋の近くに犬○家のような状態で私の亡骸が浮いているそうです。
…実は少し恥ずかしいので、はやく回収して火葬していただけると幸いです。
で、は、な、く!
今私は恐らく高天ヶ原にいます。
えーと、最初から順番に話しますね。
まず、死んで直ぐに閻魔様のところにに行きました。強面でしたが、いざ話してみると好好爺という言葉がピッタリな笑顔の素敵な方でした。
「お前、生前どうだったん?怒らんけぇ、おじちゃんに正直話してみぃ」
的な展開になると信じていた私としては有り難く、ついつい猫トーク等をしながらちょうどスーパーで買ってきたこんにゃくの煮物を二人でつまみ、結局小一時間ほど話してました。
そういえば閻魔様のところにに着いたとき、私はスーツにエコバッグと、死ぬ前の格好でした。てっきり死ぬと白い着物と三角の頭に着けるあれ、えーと、天冠でしょうか、あれを着用するものかと。
で、閻魔様と雑談が一段落ついた頃にですね、使いの方がきて、さて天国か、地獄かと覚悟をしていた私にこう言ったのです。
「主が貴方をお呼びです」
可笑しいですね。私が生きていた頃は金ヶ崎家の異端児と呼ばれ、常に姉上以外の家族からは「お呼びじゃない」と言われていた私を呼ぶ方がいるだなんて。
その方に連れられ、チャーター機で30分ほど飛ぶと、雲の上にまるで神殿のような建物が建つ嘘のような場所にたどり着きました。ちなみに入口に「たかまがはら」と汚い、もとい拙い字で書かれた看板がありましたので、私は恐らく高天ヶ原だと推測した次第です。
ちなみにこの「たかまがはら」と書かれた看板、途中で拙いと言い直したのは、もし幼女な女神が一生懸命書いたと後で判明した場合、私は自分で自分が赦せなくなると思ったからです。
え?どうでもいい?…失礼しました。
で、ですね。そこの客間に案内された後でですね、その、激しく遺憾ながら、女神様に会いました。姉上のようにとても綺麗な方でしたよ(幼女じゃなかったけど)。髪も綺麗で透き通るような青でした(幼女じゃなかったけど)。胸は姉上の方が大き、痛いです!痛いです!止めてください!所詮年増?何を言っているのですか女神様。美しい女性は年齢に関係なく美しいものですよって、ちょ、抱きつかないで下さい!む、胸が当たってま、え?当ててる?…仕方ない女神様ですね…、その、今は大切な手紙を書いている最中ですから…少し、だけですよ?
閑話休題(所々紙がくしゃくしゃに、そして濡れた後がみられる)
えーと、失礼しました。それでですね、私その神様に自分の友達の神様の世界に来ないかと誘われたのですよ。
その友達の神様は異世界の神様で、世界に刺激が欲しいらしく、ある程度ハイスペックで、かつ魔王になって世界を滅ぼす可能性の無い、安全な人材を探しているらしいのです。
姉上もご存知でしょう。私のスペックは中々高いと自負しております。かつ、お恥ずかしながら、女神様に猫を助けた所をバッチリ目撃どころか、録画されていたらしく、こんなに優しい子が魔王になるはず無い!と、推薦してくれたみたいです。
そういえば女神様の録画したと言っていたROMに「金ヶ崎衛人きゅん其の2014」と、書かれていましたが、あれはどういう意味があったのでしょうか?そういえば女神様は私の金ヶ崎衛人という名前を初めから知っていましたね…。
流石神様ですね!きっと人の名前を全て把握しているのでしょう!尊敬してしまいます!
あ、済みません。で、私はこの後、異世界の神様の所に行って、あ!いい忘れていました!この話しなのですが、前報酬としてこちらとあちら、両神様がひとつずつ何でも願いを叶えてくれるそうです!この手紙も本来、死んだら現世に関わる事が出来ないのに、神様が無理をして姉上に届けてくれるそうです!
きっと私が突然帰らず、姉上は心配してくれていると思います。私がこの依頼を受けたのは姉上にこれだけ言いたくて、手紙を書かせて頂く為に受けたと言っても過言ではありません。
…本来これは言わない方が良いのかも知れませんが、聡明な姉上のことです。1を聞いたら10を知りおよそ1万通りの15を予測する姉上のことです。
きっと気に病むことでしょう。
私が姉上の前からいなくってしまうのは、別の世界に行くのは、…死んでしまったのは、貴女のせいでは決してありません。
まして、この手紙を届けるのに、願いをひとつ使ってしまったのは私の只の我儘です。
心配を掛けない為に手紙を書くのに、手紙が届くことで心配を掛ける弟を許して下さい。
私は大丈夫です。
姉上に鍛えられた私なら大丈夫です。
今は死んでいますが、生き返ってスタートか、転生してスタートか、はたまた神様の罠で、アンデッドでスタートでも構いません。
私は私である限り、大丈夫です。
まあ、記憶の引き継ぎがされなかったら駄目ですが(笑)
さて、長々と済みません。最後まで読んでいただきありがとうございました。
ここまで24年間、私が無事に生きてこれたのは全て姉上のお陰でした。私の中の最大限の感謝を姉上に。
そして、どうか忘れないで下さい。別の世界に行っても、私はいつまでも貴女を愛していると。
金ヶ崎衛人
追伸
知り合いの桜井飛鳥という少年に2億ほどお金を借りているので、私の貯金から、もしくは親父に12億ほど貸しているので、嫌がらせがてら全額彼に返しておいて下さい。ちなみに円じゃなくて$です。
異世界に行くのは次の次を予定しております。
あと姉上はきっと突っ込みすぎてこの手紙を最後には破っている姿が僕には見えます。
きっと僕だけではない、はず?