彼女に見える世界
今日、私は久しぶりに徒歩で10分位のところにある本屋に行った。
理由は昨日、お父さんに借りた本を読み終わり作品紹介のページを読んでいると、ある作品に目が留まった。
どうやら人の未来が見える男が、謎の組織に追われるという話らしい。
―未来が見える、か。
その言葉で興味を持ち、読んでみたくなった。
そして今に至る。
人の顔を見ないようにうつむきながら店の奥へと足を進める。奥に、特殊能力をもつ人が出てくる本が置いてあるからだ。
目の前に人がいないことを確認するため顔を上げる。誰もいないことを確認した上で小説を探す。
―あった。
数分もしないうちに見つかり、拍子抜けした。
あらすじをみて、面白そうなので中を見てみる。
するとある文が目に入った。
―『何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!ただ未来が見えるだけじゃないか…』主人公が組織から逃げている最中に心の中で叫んだ言葉だ。
それを見た私の心が共鳴する。一瞬、身体が硬直したがすぐ気を取り直す。
その本も気になったが、とりあえず他の本も手に取り、読んだ。
それを数回繰り返した結果、何も買わないことにした。
理由はよく分からないが、今日は何も買わない方がいい気がした。
私はきびすを返すとうつむき、そのまま店を出た。