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2話 草原~結界都市ブルンー1

   ~~~~~既に暗くなっている草原~~~~~


「やっと出れた~~!」

「初めての外だー!」


 あれから程なくして草原に足を踏み入れた三人と一匹は、既に闇が支配する草原にも関わらず、実に爽快な気分で下手りこんだ。


 そして思わず叫ぶ健吾とクラミ。


「ホンット、長かったわね。……それにしても……」

「ああ、月明かりだけの暗闇。……互の顔すら見えないのでは先ほどの森にいた時と状況は変わらない。だから、凛奈」

「ええ『光の粒子は闇夜に輝く。何処までも続く光の惑星』《光星ライト・プラネット》」


 凛奈の詠唱が終了すると、健吾たちの周囲凡そ500Mが、まるでというよりそのまんま真昼の明るさになった。

 だが、当然というべきか、暗い中で慣れた目にはその光量は強すぎたため、健吾の口から苦情が漏れる。


「うわ!眩し!……てか、凛奈!?これはやりすぎだろ!?」

「あ、御免。……一応篭める魔力を少なめにしたんだけど、やっぱり試しってことでも最上位の光魔法はやりすぎだったみたい。……後、健吾君の作った魔道具が予想以上に性能がよかったのも原因の一つ。……今調整する」


 健吾の文句を素直に受け止め、すぐさま調節していく凛奈。

 するとすぐさま光量が調節され、健吾たちの周囲50メートルを昼間のような明るさが覆った。

 そこからだんだん暗くなって行っているという具合だ。


「……まあ、このくらいの明るさなら獣が出る事も無いだろうけど……。……っていうか、この明るさでもまだ時間がわかんないんですが?そこの所どうしましょう?凛奈さん?」


「健吾!明るいならそれでいいじゃないか!どうせお前くらいの暇人なら今くらいの時間では寝れんだろうし、夕食も食べる時間では無いんだろ!今の間にあたしが鍛えてやる」


 健吾の凛奈への質問にいい加減キレたライラは、健吾に明るいが故に鍛錬を付けようと申し出る。

 そして、凛奈の方を見て……。


「凛奈はその間に夕食の準備をしてくれ。……健吾、野菜と肉はあるか?」


「あるにはあるが……」


「?どうした?」


 言い淀む健吾の反応に、ライラも訝しむが……。


「いやな?肉は獣から幾らでも取れたけど、野菜はどういう条件で手に入るか分かんないんだよ、これが。だから、野菜が安定供給出来る事が分かるまで、肉だけで……」


「それはダメ!偏食は健康に良くない!」


「……そんなに気にする事なのか?凛奈」


 健吾が肉だけにしようと言おうとした時に、それよりも早く偏食を指摘する凛奈。


「ねえ、健吾君?」


「はい、なんでしょう。凛奈さん」


 その迫力に気圧され、つい敬語になる健吾。


「……今は確かにお肉ばかりでも問題ない。けど、そのお肉の種類でピタミンや鉄分の配合は大きく異なる。けど、どのお肉が草食系の動物のお肉か分からないでしょ?」


「……まあ、そうだな?」


「仮に草食系の動物のお肉を選別できるのなら、私も何も言わない。地球で言えば牛や豚、馬がその代表だけど、ああいった草食系の動物のお肉は、その特性上沢山の野菜の栄養が詰まってる。だから、地球でお肉ばかり食べても、油の量に気を付けて、後は運動さえすれば成人病とかにも成りにくいけど、肉食系の動物の肉は確かにビタミンAなんかは豊富でも、食用にはあまり適さないと言われてる。それに肉自体も運動する関係で筋が硬いとかの欠点がある。勿論、地球でもお肉ばっかりではダメだし、まあむつごいという理由でそれが出来ない人もいるのは居るんだけどね?けど、今はそれは別の話。……だから、カードのお肉を使うのは良いけど、それだけって事はしないで」


「お、おう……じゃあ、どうする?」


 あまりの健康に対する気迫に、何処までも気圧される健吾。

 そして、凛奈からアイデアが出る。


「何か、庭園系の土地付きの住宅とかってない?健吾君の話だと、そういう系統のカードもありそうだったけど?」


「あ、成程。……みてみるわ」


「おねがい」


 凛奈にこんこんと説明された事もあり、仕方なくと言った感じで調べ出す健吾。


(確かガチャで引いた中に無数に住居関係のカードがあったよな~?あのカード類がそのまま使えるかと、耐久性と何かのセキュリティーを混ぜ合わせて使えるかの実験もしときたい所だし……。あ、あった。取り敢えず説明を見るか。何なに?……基本的に食品関係と変わらないが、魔道具と同じで材料を掛け合わせると一つの製品に成って統合され、解体は不可能。重ね合わせは可能。……成程、要するに強化は自己責任でご勝手にってことね?そんでもって土地などのカードを後から横に設置すれば分解も可能っと……なら)


 っと、説明の大半を大まかに理解してから脳内画面で色々と選択。

 使用するカードは大量にある材料の中の【一戸建て2階建て住居】と魔法カード【索敵の眼まなこ】と【機械:通信衛星サテライト・スター】、そして数は少ないがSPレア魔法カード【古代機械神サイテスの加護】を入れる。

 このサイテスの加護というのは説明に由れば実に有能なカードだ。

 その機能は実に5種類。

 先ず魔道具の限界耐久値が減らない。つまりそのまま放置しても一瞬で破壊されない限り、魔力の供給源たる健吾のカードに戻る度に何度でも混ぜ合わせたカードが使用可能となるのだ。

 更にその掛け合わせたカードの性能を通常の何倍にも引き上げる効果がある。

 そして、面白いのが掛け合わせたカードが一般カードの場合、そのカードが機械類であろうが無かろうが各種設定を脳内画面で設定できる。

 しかも選択肢がほぼ想定の範囲内なら何処まででも。

 後、無いとは思うが【機械:通信衛星】を混ぜ合わせた場合に限り、超超遠距離からの魔法攻撃にも即座に対応して、召喚士に判断を求めて来てくれる。

 そして最後に会話機能。

 何故か魔法カードの癖にカードに意思を持たす事が可能なのだ。

 だが流石にこれは通常の戦闘画面では出来ず、しかも【機械:○○】が混ぜ合わせられたカードでしか不可能らしい。

 そして、ここからが本番だ。

 現在表示中の脳内土鍋に元になる【一戸建て二階建て住居】を入れ、その中に核となる魔法カード【古代機械神サイテスの加護】を入れ、十分に混ぜ合わせる。

 次に【機械:通信衛星サテライト・スター】と魔法カード【索敵の眼まなこ】、後【特殊:召喚:ガイア】を入れてしばし休憩。

 そして全てが溶け合わさる頃に再び掻き混ぜる。

 すると脳内土鍋の下が開き、そこから何故か3Dで表示されている住宅カード【古代機械神サイテスの創造建築物】となっている、黄金に輝くカードが落ちてきた。


(言いたいことはあるが、先ずは設定だな)


 そう考え、先ずは設定を利用して住宅にセキュリティーを付ける。

 一応外敵に対する備えは万全だろうが、中の事までは書いてないのでその関係だ。

 住宅内には流石に護衛も必要ないと思うし、いざとなれば凛奈達に色々して貰えばいいだろう思い、基本構造は変えない。

 但し、流石に内部に侵入された時用に、色々と現代風の防犯設備を付けておく。

 そして、次に風呂は洋風のシャワー付きで温度は浴室自体に脳は診断機を備えさせて考えただけで水温、室温を変化させる機能付きにする。

 その他、マッサージ機能に住宅の必要な備えを各種備えた設備を揃えさせ、快適な空間を作る。


(まさか……ここまで出来るとは!もはや何でもアリだな!俺の召喚士って実は物凄く優秀な職業?ゲームの世界では結構使い勝手悪かったんだけど……)


 そう、実は健吾のやっていたゲーム【魔術世界テクノガイア】でのタロットカード召喚士は戦闘行為に際し、使い勝手がすこぶる悪かった。

 それは普通のゲームの召喚士なら初めにボーナスとして召喚体及び召喚獣を一体リストから選択し、その召喚獣の倒した召喚可能生物を新たな召喚獣として使役出来、徐々に数を増やすというオーソドックスな職業だ。

 なのでNPCとの戦闘をやればやるほど戦闘員が増える。

 それに対し、タロット召喚型の召喚士は兎に角使える召喚獣が少ない。

 この世界の様な生活用品を召喚出来る事もない。

 ゲーム世界にあるタロット交換所にてそのレベルに合わせたカードを購入し、自身のレベルを上げるとフィールドに現れる召喚獣も増えるが、5体が限界。

 勿論魔導生命体なんて便利な物もない。

 他より優れた点は入手したカードが戦闘時その場で使える事と、倒した事もない召喚獣が戦闘画面でのみ使用できる事。

 しかし、これは兎に角初めの方は挫けるプレイヤーが多い。

 何せ戦闘方法が己のフィールドを構築するまで無いのだ。

 装備品も一般人としか言えない様な服しかない。

 電子マネーで購入しようにも装備品に制限レベルが設けられ、そのレベル以上でしか装備できない従来の仕様。

 これでは挫折しても可笑しくない。

 なので健吾のタロット召喚型の召喚士は数が少なく情報も少ない希少種だ。


 閑話休題


(……良し、取りあえずはコノくらいでいいか?まあ、設定とかは後でも変更可能っぽいし、いいかな?では、早速)


 健吾はカードを「カードゲルト」と言って手元に出し、目の前にカードを翳して「実体化クルト」と言って実体化させる。

 そうして現れた住宅を見て、凛奈とライラは呆れた表情になった。

 そして凛奈が堪らず健吾に白い目を向けて尋ねる。


「……健吾君?食事の事はどうなったのかな?」

「それはこの後!取りあえず中をみよう!」

「……まあ、それは私もみたいけど……。良いわ、序でに部屋も色々と見せて貰うわ」

「あ、それならあたしも参加する」

「僕はパパの部屋ね~!」


 と言って3人はさっさと中に入っていった。



「おお~!こりゃ、予想以上に快適な空間だ。インテリア的な物まで設定通りだ……」


 入ってまず感じたのは、まるで外とは隔絶された異空間の様な場所だという事。

 入ってすぐにリビングがあり、カーペットではなく靴で上がれるように大理石仕様。

 上にはシャンデリアがあり、まるで金持ちの別荘的な間取りだ。

 序でにどこから水場を引いているのか定かでは無いが、トイレにキッチン、風呂場まである。

 正に何でもござれ。

 その様相に、後からきた二人も……。


「……へ~、中々良さそうな家ね。これなら個人の部屋も期待できそう……。健吾君?」


「?なんだ?」

「私、2階の部屋を貰う。……良い?」

「あ、お「あたしは勿論、凛奈の隣だ」……わかったよ。てか、間取りを弄ったから人数分は有るぞ?それに粗方の必要な家庭家具は付けてるし」


 そう言って家の中を再度見回す。

 一応どうなってるか危惧はしたが、どうやら設定した物は粗方あった。

 後は食事だ。


「そして、野菜の農園だが。一応、さっき説明を見たら、農園系は確かにあって色々とメリットも多い。デメリットは、一々二つ出さなければ成らない鬱陶しさと、家と混ぜ合わせて無い故に庭園にのみ荒らされた場合の修復機能がないこと。後、水場等も家の水場を利用しなければ成らないと言ったところだな。これが混ぜ合わせた物ならば、庭園側にも水場を設定する事が出来るし、自動修復機能も追加されるが、こうすると広大な土地にしか建てられない使い勝手の悪い住宅になるみたいだ。だから、今の所はこの家の隣に付ける予定だ」


「それじゃー、それを出した後、私とクラミちゃんで収穫して来てあげる。そして食事も作ってあげるわ。その間に……あ、ダメ。今日は取りあえず健吾君とライラは情報整理。それから、食事の後交代でお風呂に入って、明日に備えましょう。ライラには悪いけど、今日一日で知らない間の疲れが出てると思うから、あまり激しすぎる運動は反って逆効果。……わかった?」


「……仕方ない。……命拾いしたな、健吾」


「殺すつもりだったのかよ……。まあ、言いたいことは分かった。んじゃ、早速」


 そう言って健吾は手に持っていた既にカード化済みの【肥えた土地の野菜農園】のカードを家の窓際まで持っていき、それを外に向かって翳しながら……。


実体化クルト


 と唱えた。

 すると一瞬で現れる広大な農園。

 まるで日本の田舎のビニールハウスを大きくした様な規模のデカイ物だった。


「……言いたいことは色々とあるけど……まあ、大きいに越した事は無いから突っ込みは無し。……じゃ、クラミちゃん?」

「は~い」


 そうして、凛奈とクラミは外へ野菜の収穫へ向かった。


「……じゃ、俺らは頼まれた情報整理をするか?ライラ」


「ひゃい!?……あ、ああ」


「……?」


 突然の健吾と二人きりの状態に、流石のライラも緊張を隠せない。

 その為、何故か上擦った声になった。

 しかし健吾はというと、呑気に備え付けのマッサージチェアに座り……。


「お゜お゜お゜!?これら気持ちいいぞ?……って、ライラ?何してんだ?お前も何処でも好きな所に座れよ。んでもって、お前らの情報を寄越せ。一応詳細を照らし合わせにゃならん」


「あ、ああ……、じゃああたしらの方で分かってる事を言っておく。先ず……」


 そうして、ライラと凛奈が検証した結果は、健吾とは多少違ってたが、大凡の予想範囲内。

 違いはといえば、来る途中に出会ったモンスターが、ライラ達のプレイしていたブレットガイアには出なかった魔物で、ライラの把握してる限りでは健吾のプレイしていたテクノガイアの魔物ばかりだったらしい。

 この点、健吾は見慣れたテクノガイアの魔物ばかりだったので、あまり戸惑わずに居られ運が良かったようだ。

 しかし、魔法に関しては健吾の様なアイテムは無く、たまたま使える(覚えている)魔法を何故か使えていたので、戦闘には支障は無かったようだ。

 因みにライラのアバターは普通の魔法剣銃師で、凛奈は電子魔法師というレアな職業。

 凛奈の電子魔法師の何処がレアかと言うと、先ず元素魔法は普通に最上級まで使え、更に記憶魔法増幅の書というスキルには、個人が勝手に創作した魔法を記録し、収め、行使できるというメリットがあるらしい。

 まあ、これは条件が色々と難しい上に、その苦労に合ったメリットでないという事もありあまり好まれてない職らしいが。

 だが、記憶力と想像力、理解力に長けたプレイヤーなら、その価値は跳ね上がる。

 ライラの話では、凛奈が使うと地震による液状化を特定のターゲットに合わせて使うことも可能だったり、複数の敵を同時に混乱させ、同士打ち状態にも出来るらしい。

 チートもここに極まれり!である。

 そういう感じで色々と検証を重ねたが、やはり健吾のカードの種類と量が有り過ぎて一向に仕分けすら出来ずに凛奈の食事の用意が出来た。

 そうして健吾の脳内通信でサイテスに家具の準備をさせる。


「お待たせ。やはり野菜が沢山あるとメニューも色々と考えつく。けど、今日は健吾君の実験を兼ねて、そして、ご飯も無いことからお鍋にしてみた。……健吾君、これをカードにして保存できるかやってみて」


 凛奈はそう言って何処から取り出したのか、大きな鍋に肉や野菜をふんだんに入れた物を持ってきた。

 そして、健吾前に器を置き、足元に擦り寄ってるクラミの近くに一つ、そして、自分とライラ前に一つずつ置いた。


「……?わかった」


 返事をし、健吾は目の前の鍋の端に手を触れ片「カードゲルト」と呟くが、反応なし。


「……カード化しないな……」

「そう……、ならこれをカード化出来るかやってみて」


 そう言って、今度は服のポケットに入れていたらしい玉ねぎを一個健吾に投げ渡した。

 その玉ねぎを健吾が「カードゲルト」と呟くと、今度は脳内画面にカードとして表示され【肥えた土地の野菜農園からの収穫物】玉ねぎ、との表示が出ていた。


「……これは、加工品はカード化出来ないが、それ以前だとカード化可能ってことか?」

「それは分からんぞ?健吾。……鍋が加工品かどうかは疑問が残る所だ」

「……じゃあ、少しよそいでみようか?……でも、鍋の中と変わらないから一緒かも?」


 そんな感じに意見を出し合い、その後普通に食事をすることになった。



「……お?やはり肉が美味いな。凛奈?」

「……何?私の味付けに不満?」


 健吾が話しかけると、それまで穏やかだった凛奈の目がスっと細まった。

 同時に体から何やらどす黒い物が溢れ出している。


「い、いやいや、別に不満なんてないって!ただ、肉の味付けはしたのかな?って思っただけだ。昼くらいにクラミがただ焼いてくれただけの場合でも、そこそこ肉の旨みが出てたから。……けど、この肉はそん時よりも更に旨いと思って」


「……ふふ、ありがと。一応キッチンに何故か揃ってた調味料で粗方には味は整えた。けど、確かにお肉自体に何故かそこそこの味が付いてたから、私がしたのは鍋自体の大まかな味だけ。後は素材の旨みが逃げないようにしただっけとこ。……大した工夫も出来なくて悪かったわね」


「……ははは……」


 説明した後、プイッと顔を横に向け不貞腐れた様に頬を膨らます凛奈。

 その様子に健吾は乾いた笑いを零す他なかった。

 因みに食事中はライラは行儀をキチンとする方らしく、黙々と食べていて、健吾にからかわれる事もなかった。

 そうして、粗方腹も膨らんだ事で、各自2階の部屋へ行って各々風呂へと入ろうと言う事で、時間を話し合ってずらして入る様にしてから、その場はお開きとなった。



 そして、凛奈の魔法が効果を無くした真夜中の時間帯。

 健吾の家が数度にわたって大きく揺れた。

 だが、疲れていたのか健吾は全く気づかない。


「……て、起きて……、……君、起きて」


「……~?」


(ん~?誰だ~?俺の部屋へ入れるのは親父か源だけの筈だが……)


「……ん~、誰だ~?親父か~?それとも源か~?」

「私よ、健吾君」

「……!!……凛奈?!……」


 一応は目は覚めたが、寝ぼけていて今が異世界だということを忘れている健吾は、次の瞬間に目の前にいる人物を見て、危うく大声を上げそうになった。


「ええ。その通り。……どう?一応健吾君に貰った寝巻きを着てるんだけど?」


 そう、この世界に来て何故か再会した学校の知り合いの凛奈が目の前にネグリジェ姿で健吾の股間の辺りに跨って座っていた。

 見るものが居れば、勘違い120パーセントの状態だ。


「……え~っと、似合ってるけど……。その格好でどうする気?」

「どうも。っていうか、今はこの格好に意味は無い。それより……今は別の話。まあ、真夜中でも元気なのは良いけど、今は下より上……頭の方を目覚めさせて、服を着てから下に来て。……どうやらお客さんみたい」


 話してる時に健吾の下半身に凛奈のお尻が当たっていた様で、少し後ろを見てから顔を少し赤くしてから健吾に向き直り、来客を告げてきた。


「……?お客さん?……誰?」

「さあ?今ライラがクラミちゃんに指示を出して、お客さんの通訳をして貰ってる。私はその間に、クラミちゃんから聞いた、健吾君の作れる多感リングと翻訳の首輪を二人分作って貰いに来たの」

「……そういや、俺自体が付けてたから気付かなかったが、お前らってこの世界の言葉が通じない可能性が十分にあったんだな」

「ええ。それに関しては、私もライラも本当に迂闊だった」


 凛奈はそう言って苦笑する。

 それから、健吾の上から退いてベッドの脇に降りてから……。


「時間がない。早く」


 そう言って手を差し出す。


(……どうでもいいが、昼間とは違ってやけに言葉が固いな。いや、こっちが素か?そういや、学校ではずっとこんな感じだったけ?……まあ、それより早く作るか)


 そう考え、早速とばかりに脳内で土鍋を出し、アイテムを作成する。

 とは言っても、健吾の持っている物と同じ物を作るだけなので、大してテカは掛からない。

 何故か一旦作った製品についてはレシピが登録されていて、次から作りたい物は、そのレシピをポインタで押せば、その通りに脳内のカード類が次々に土鍋に入り、工程も熟してくれるのだ。

 だから、健吾はレシピを選んで唯待てば良いのだ。


 そうして出来た多感リングと翻訳の首輪を実体化し、凛奈に渡す。



「……出来た、ほい」

「……ありがと。で、来れる?」

「1分待て」

「ん、分かった。待つ」

「……」


 そうして凛奈の行動を観察する健吾。

 だが、一向に部屋から出る気配がない凛奈。


「……あの~凛奈さん?」

「何?」

「俺、着替えたいんですが?」

「そう、早く着替えると良い」

「うん、だから。……そこいたら着替えられんのですが?」

「……何故?」


 健吾の問いに、本当に解らないといった感じに首を可愛く傾げる凛奈。

 そこで、健吾はストレートに近い、スプリットを投げる。


「……みたいの?男のアレ」

「別に、私は気にしない」

「……オーライ。では、恥ずかしながら、男健吾。只今より着替えさせて貰います」

「良いから、早くする」

「……」


 そんなこんなで、本当に泣く泣く凛奈に見られながら着替える健吾。

 因みに下を着替える時は、流石に健吾の方が恥ずかしかったので、後ろを向いて着替えた。


 そうして、二人して1階の、外が見える場所で警戒しながら客と応対しているクラミとライラに合流した。


 



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