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俺のどこかで聞いた冒険  作者: ファンタG
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第九話 仁義なき規格戦争!

旅の扉によって目的地へ到着した勇者一行! 目指す金の鍵の行方は誰が知る? 懸命に情報を集める勇者の前に、またもや立ちはだかる新手の巨大な影! そして、突きつけられる冷たい現実… 勇者はフォーマットの壁を乗り越えられるのか?

「さて、島に着いた。これから、鍵を埋めた犬を探す訳だが…」

 旅の扉を抜けて目指す南の島の大地を無事に踏みしめた俺は、頭上の看板と一同を見渡しながら訓示を述べた。

 楽しそうにはしゃぐ沢山の犬のイラストが可愛らしい看板には、『びわ湖わんわん王国』という文字が踊っている。

「これは難儀しそうだなぁ……」

「360頭の犬があなたをお出迎え、か……」

「レンタルして散歩も一緒にできるんですって、勇者さま♪」

 目を輝かせてはしゃいでみせるレムリアに、俺は勇者の威厳を込めてピシャリと諭した。

「だめだめ、テーマパーク側の思うつぼだぞ」

「え~、あたしパピヨンと一緒に散歩した~い~!」

 尻に敷かれた座布団状態の薄っぺらな男ならばレムリアの希望を即座に叶えているところだろうが、残念ながら俺は、あちこちの飲み屋で吝嗇との誉れ高い伝説の勇者なのだ。

 俺は即座にサムズダウンのポーズを示してレムリアに却下の意を伝えると、J・ザルゴの艶やかな毛並みを眺めながら、心の中で呟いた。

 俺、犬派じゃなく猫派なんだよね、と。


 かくして、俺たちは各自別れて情報収集を行うこととなった。パピヨンの犬舎の前から離れようとしないレムリアには戦力外通告を出し、残った3人で聞き込みをして回って得た情報を総合した結果、二点のことが分かった。

 最初の一点目、上野駅前で主人の帰りを待つ殊勝な犬がいるという情報はとりあえず関係なさそうだったのでスルーして、二点目である「長老犬の『びわ公』なら知っているかも」という情報に望みを託すことにした。なんでもびわ公はかつて王国の危機を救ったことのある勇者らしいので、さぞかし俺と共感できる点が多いに違いない。

 びわ公を探して園内を歩いていると、前方から一頭の犬が近づいてきた。その犬とはまだかなりの距離があるにも拘わらず、人間の大人くらいの背丈に見える。パースがおかしいんじゃないのかと考えているうちに犬はどんどん巨大になり、俺たちの目前に来た時には身の丈13メートルという途方もないサイズになっていた。

「えーと、びわ公?」

「いかにも、俺がびわ公だ」

 王国のマスコットキャラには似つかわしくない迫力満点なバリトンボイスが、頭上から飛び散る涎とともに降ってきた。その堂々たる圧倒的な風格を前にすると、「おまえが竜王と戦えよ」という台詞が喉まで出かかったが、そこはぐっと咀嚼して俺はびわ公に訊ねた。

「金の鍵のありかを知らないか?」

「知っているぞ」大胸筋をぴくぴくさせたびわ公は、俺たちを値踏みするような目つきで言葉を続けた。

「俺の望みを叶えてくれれば、教えてやろう」

 よくありがちな『クエスト中にサブクエストが発生する』というパターンだな。よし、望みとやらを訊いてみようじゃないか。

「何が望みだ?」

「『宇宙家族カールビンソン』のDVDをくれ」

 随分簡単な要求である。俺はAmazonで購入すべく早速スマホをいじってみた……って、VHSでしか販売されてない商品じゃないか!

 さて、どうするか? 俺たちはブレインストーミングを行ってこの難題に対する解決策を練ってみることにした。

「ようつべからダウンロードしてDVDに焼くといいよ!」

 J・ザルゴの意見に感銘を受けた俺は九分九厘この方法を採用する寸前になったが、残った一厘の天使が「違法ダウンロード、良くない」と囁いてきたため涙を飲んで却下した。

「ならば、VHSを買ってDVDに移せば良い」

 蔵人(クラウド)の意見は至極真っ当で二重丸をあげたいところではあるのだが、そうすると厄介な点が一つある。

 今時、後生大事にVHSデッキなんか持っている奴が、世の中にどれくらいいるのだろうか?

「誰かVHSデッキ持ってる?」

「J・ザルゴ、ベータなら持ってるよ!」え~い、使えん奴め!

「うちはHD DVDだ」そりゃご愁傷さま蔵人(クラウド)

「残るはレムリアが頼りか…お~い、レムリア~」

 俺の呼びかけに、レムリアがパピヨンのリードを持って駆け寄ってきた。あれだけダメだと言ったのに、ちゃっかりレンタルしてしまったらしい。

「何ですか、勇者さま?」

「おまえんちにVHSデッキある?」

「レーザーディスクならあるんですけど……」

 どうやら、レムリアの実家は割と裕福な家庭だったのだろうということが判明したが、現状の解決には全く役に立たない回答だ。

「勇者さまは持ってないんですか?」

「うちはUマチックだったから……」

「また、レアな物持ってますね~」

 レムリアよ、文句は芸能人気取りで60回ローンで購入したうちの亡き父親に言ってくれ。

 妙に気恥ずかしくなった俺は咳払いして場の空気を整えると、一同に言い渡した。

「こういう時は、秋葉原だな」

 読んでいただきありがとうございます。

 ついに毎日連載は挫折してしまいましたOrz 通勤の行き帰りでネタを考えてみるのですが、昨日は何も思いつきませんでした(;^_^A そして、今日こんな展開にしてしまって、この後どうしようか全く分かりません…

 よろしかったら、また次回もお付き合いくださいませ。

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