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俺のどこかで聞いた冒険  作者: ファンタG
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第一話 あの男に連絡だ!

 俺は勇者だ。名前はまだない。多分、今後もないだろう。何故なら、作者が俺のことをどうでもいい存在と思っているからだ。

 よく聞かれる質問だが、「勇者ってどんな職業なのですか?」ということについては、俺も常に自問自答している。

 やっていることを振り返ると、他人の家に勝手に入ってタンスを漁ったり、仲間の装備を剥いで売り飛ばして小銭に変えたり、他人の墓に押し入って銀の竪琴を盗んできたりといったところなので、まぁ、めんどくさいから「自由業」と答えることにしているが。

 ある日、俺は国王に城へ来るよう呼びつけられた。国王にも城にも名前はないのだが、今後違う国王や城が出てきたときに区別がつかなくなるので、仮に国王を「ひげのおっさん三世」、城は「グランドハイツ稲荷前城」と呼ぶことにする。

 グランドハイツ稲荷前城にはひげのおっさん三世とその奥さん以下、三十人程度の人間が徘徊している。城なのに人数が少なすぎるのではないか、という指摘は、俺にではなくデータ容量に言ってもらいたい。

 「グランドハイツ稲荷前城へようこそ!」程度のくだらない台詞しか喋らない衛兵たちをスルーして、俺はだだっぴろい王座の間に足を踏み入れた。王座の間にはいつも通り、ひげのおっさん三世と奥さんに大臣、衛兵二人しかいない。超A級スナイパーに依頼しなくても簡単に暗殺できそうな状況だが、きっと他の衛兵は訪問者への挨拶業務で忙しいのだろう。

「呼んだかい、ひげのおっさん三世?」

 そう尋ねた俺に、威厳と苦渋に満ちた風貌のひげのおっさん三世は、閉じていた目をかっと見開きのたまった。

「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない!」

 …まぁ、気にしないでやってくれ。どうもひげのおっさん三世のアルゴリズムにミスがあるようで、どんな会話でもこの台詞から始まるようになっているだけだ。デバッグは販売してからバッチで行えば良いという手法が市民権を得た時代では、よくあることだ。

 そんな俺の胸の内を知らないひげのおっさん三世は、悲嘆に暮れた悲痛な面持ちで言葉を続けた。

「実は、姫がドラゴンに誘拐されたのじゃ!」

 そりゃ物好きな、と出かけた言葉をぐっとこらえた俺は、次に続くであろう言葉を予想しながら確認した。

「で、助けてこい、と」

「その通りじゃ」

 ひのきの棒と布の服がデフォルトの俺にドラゴン退治を頼むとは酔狂だが、最近近所の連中にニート疑惑を持たれ始めている俺としても、ここらで働いてるんですよアピールをする必要がある。

「んじゃまぁ行ってくるわ。あばよ」

 ひげのおっさんに慇懃な出立の挨拶をした俺は、早速城の地下の宝物庫へ足を向けた。

 宝物庫の中には王国の秘宝・ドラゴンコロリという名剣が眠っている。それを使えばチート同然で楽勝になるはずで、宝物庫の前に立つ衛兵に扉を開けるよう伝えたところ、

「開けるには、世界に一つしかない金の鍵が必要です」

「じゃあ、さっさとその金の鍵を取ってこいよ」

「無理ですよ。金の鍵は遥か南の島の犬がどこかに埋めちまったんですから」

 言いたいことはいろいろあるが、そこは触れないのが大人の優しさというものだ。ワープして中に押し入る手段もあるのだが、失敗すると壁の中に出てしまってロストしてしまうので、俺はドラゴンコロリの入手を諦め、城下町へ略奪行脚に出かけることにした。

 いつも通りよそ様のタンスを漁り、街中のタルというタルを覗き込んで、50ゴールド・薬草・毒消し草・小さなメダルを手に入れた。小さなメダルには「パーラーDASUZE」と書かれており、多分どこかのパチンコ屋で使えるのだろう。

 こんな非道徳的な行動をしているとカルマが下がっていくらしいのだが、アバタールとかいう職業に興味がない俺には大きな問題ではない。

 物資の次は仲間が欲しいと考えた俺は、一攫千金を夢見る冒険者が集う「ギルがメッシュの酒場」に出向くことにした。その名の通り、店長のギルという親父の髪がメッシュである。

「よぉ親父、仲間を探しているんだが、いいのいるかい?」

「おぉ、ちょうど良い人材がいるぞ。一級建築士と公認会計士の資格を持ってて、プログラム開発もできるやつだ」

「いや、そんなのはいらんから戦えるやつを紹介してくれ」

「じゃ、ソルジャーとか言っている奴を紹介してやろう。お~い、蔵人(クラウド)

 親父に呼ばれて店の奥から、スーパーハードを三本くらい使って固めたであろうツンツン頭の金髪の若造が現れた。多分、普段はハードコアパンクバンドでエレキを弾いているんだろう。

「俺の名は、蔵人(クラウド)。ソルジャークラス1stだ」

「ファーストでもセンターでも守備位置はどこでもいいが、ちょいとドラゴン退治に付き合ってくれ」

「興味ないね」

「まぁ、興味ないのは俺も同じなんだが、この小さなメダルをやるから頼む」

 そんな感じでなんとか蔵人(クラウド)を説得して承諾させた俺は、次に、魔法を使える奴がいないか親父に尋ねてみた。

「ああ、そうだな…サリー・メグ・キキ・ぷにえって連中がいるぞ」

「なんか魔女っ子系ばかりのラインナップだな…てゆーか、最後の奴は魔法使いじゃなくて格闘家じゃないのか?」

 あんまりやり過ぎると著作権の絡みがあるので、魔法使いにはJ・ザルゴという猫みたいな顔の奴を選んでみた。本人の言葉によるといずれ大成するらしいから、頼もしい限りだ。お近づきの印ということで「J・ザルゴの炎のマント」という巻物をくれたので、いずれ試してみることにしよう。

 後は僧侶が欲しいところだ。ここまで男・男と続いているので、読者サービス的には一人くらい女を入れるべきだと考えた俺は、ギルの親父に尋ねた。

「親父、僧侶はどんなやつらがいる?」

「そうだな、サイチョウ・クウカイ・シンラン・ホウネンとかいう連中がいるぞ」

「いや、そんな宗派ぶったてそうな奴はいらん」

「じゃあそうだな、お~い、レムリア」

 親父に呼ばれてやってきたのは、腰下まで届くピンク色のツインテールが特徴的な小柄な女の子だった。一瞬、というか間違いなく嫌な予感がするのだが、「おねがい! ゆうしゃさま!」と言われないように気をつけていれば大丈夫だろう。

 こうしてパーティ編成は決まった。前線でガンガンやってくれるひねくれ者のソルジャー・蔵人(クラウド)、強力な魔法でフレンドリー・ファイアに巻き込んでくれる魔術師J・ザルゴ、戦闘中に様々なアイテムを渡してくれてパーティーを混乱に追いやる僧侶レムリア、そして戦闘になると颯爽と岩陰に潜んで息を殺してみせる勇者の俺。

 今後の展開によっては男塾なみに仲間が増えるかもしれないが、今のところはこの四人の冒険が、今、始まる。

 読んでいただいてありがとうございます。どこかで聞いたファンタジー、をテーマにしたパロディーです。作者がプレイしたファンタジーRPGをネタに、だらだら書いていきます。

 著作権絡みでダメということになりましたら、いきなり連載中断になるかもしれませんので、ご了承ください。

 それでは、よろしければこれからもご愛読のほどを、よろしくお願いします。

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