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兵力

 昨晩に引き続き正木頼忠達は集った。今宵は昨晩の面子に加え、蟄居させられた元家老・印東采女佑も来ている。


 「さて、各々方、腹は決まりましたかな」


 ここ明星山城の主・薦野頼俊が口を開いた。


 「私は腹を決めました。頼俊様に従う所存」


 頼忠は即答した。幾分、逸った顔をしている。

 その言葉に笑顔で頷き、伺う用な顔で長田義房の顔を見やる。義房はにこりともせずに

 「勝算がなければ難しいな。我らの……旗印の頼俊様の旗を掲げたとて、すぐに潰されてしまえば意味がない」

 と顎に手をやり答えた。


 「儂には後から支えてくれるお方がおる。悪いようにはせぬわ。そのお方の事を聞きたいか?」


 と頼俊は下卑た薄笑いを浮かべた。


 「ふむ。聞きとうござるなあ。まあ江戸方面のお方でござろうがな。まあ、そのお方がどなたであれじゃ。我らが団結したとしても兵の数が足りまい。昨日の五千貫で雇ったとて、合わせて三千程じゃろう。それではなぁ」


 「やはり義房殿は頭が回るの。儂の後盾も大凡の事は分かっておるようじゃな。確かに義房殿の算段ではちと兵は足りぬかな。

 そこで儂は一手、策を弄した。采女佑殿、説明してくれ」


 自信ありげに采女佑を促した。


 「では。まず里見家は急に頒図を広げた故、各地の城は押さえたものの領内の土豪どもを完全に従えた訳ではござらん。里見家に従う事を良しとしない土豪は少なからずおり申す」


 一同は采女佑の言に頷く。それを見て、さらに采女佑が続ける。

 

 「儂はこのひと月の間、頼俊様のご指示で、その土豪達を廻って参った。安西、湯浅、土橋などの土豪達は我らに与する約定を取り付けたのよ。合わせて四千程にもなるわ」


 「なんと!そうでござったか。我が城下で従う事を頑なに拒んでいた安西も、とは驚き申した。となると我らは七千ほどになりますな」

 頼忠は嬉しそうである。


 「七千か。それでも十分とは言えぬがな。戦い方によっては良い戦となるやもしれぬな」


 義房は一応、同調して頷いて見せた。その姿を見て、気を良くしたのか頼俊が言った。


 「里見家が動員できるのは二万程じゃろう。常陸を除くと一万五千ほどか。それが全てこちらに向かっては来れぬ。留守居の兵も置かねばならないしな。

 さて、義房殿、いかがする?」


 ここで嫌とは言えない。ここまで聞いたからには誘いを断れば、斬られるのは確実だ。


 「そうさな。面白そうじゃ。面子に加えて下され。じゃが、事を起こすのは、もう、しばらく時間をいただきたい。儂も寡兵せねばならぬし、準備を整えたい。やるからには負けては仕方がないですからな」


 「おお、そうか。これは心強いわ!のう頼忠殿、采女佑殿?」


 頼忠と采女佑も笑顔で頷き合っている。


 (めでたい奴らじゃな。時は里見家が貴様らに対するのに必要なのよ。それに里見家が二万程の兵力だと? 軽く見ておるわい。石高以上に商いで財政は豊か、儂の算盤では三万五千は下らぬ。しばし夢を見るがよい)


 義房は彼らが何処か哀れで可笑しくなって笑みを浮かべたのであった。


 「よし。では各々準備されよ。ひと月後に再びここで……」


 ひと月後に彼らは動き出す……。

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