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企み

 正木頼忠達は明星山城で談合する。大評定からひと月後である。評定の席で、少々不満を言ったので周りの目もあり、しばらくの間はほとぼりを冷ましたのである。


 「やはり、我らには加増はなかったのう。」


 薦野頼俊は酒を煽りながら二人の顔を見ながら言う。

 ここには先だって談合した時と同じ面子、正木頼忠、薦野頼俊、長田義房ら六名が揃っている。


 「ふん。外様は目立つゆえに得なものじゃ。しかし、こうなると我らは萎んでゆくばかりではござらぬか? そればかりか印東采女佑殿のように粛清されるやもしれませぬ。」


 危機感を抱いたならば、里見家のためになるような働きをすればよいのであるが、正木頼忠と言う男はそのような考えを持たない。ただ被害者意識が強いだけである。


 「そうさな。……この間の話じゃがな……。二人は考えてみたか?」


 薦野頼俊の言う『この間の話』とは義康に反逆の狼煙を上げるということだ。


 「い、いや、某の所はこの間も申した通り小兵。何もできませぬ。」


 正木頼忠は俯いてしまった。


 「義房殿はどうじゃ?」


 聞かれた義房は、顎に手をやり思案気な面持ちである。


 「考えなくもない。だが、頼俊様の後ろ盾となっているお方の素性と目論見が分からねば、何とも言えませぬなあ。」


 暗に頼俊を後援する者を明かせと言っているのだ。


 「ふむ。素性なあ。明かすのは良いが、それを聞いて抜ける事はできぬぞ。そなたらの腹が決まれば明かそう。まずはそのお方より預かっておる物がある。」


 頼俊はそう言うと小姓に大きな箱を持って来させた。

 頼俊は箱を開ける。


 「おお、銭じゃ。い、幾らあるのじゃ?」


 「ふふふ。五千貫よ。」


 「こ、この銭は?」


 「何、この銭で兵を雇えということじゃ。」


 臨時雇いの雑兵ならば千兵ほどは集められよう。頼忠の顔が明るくなった。


 「よしっ!これほどの財があるお方が後ろ盾ならば、儂はその話に乗ってみたい。」


 「おお、そうか、そうか。実は印東采女佑も儂の元に集ったぞ。采女佑には一つ仕事を頼んである。明日にでも仕事を終えてここに来るはずじゃ。また明日、ここに参れ。」


 いつものように下卑た笑いを浮かべる頼俊であった。


 「義房殿も明日には良い返事を聞かせて下されよ。」


 そうして今宵の談合はお開きとなる。



○稲村城


 明星山城から戻った長田義房と寄騎の楠市兵衛は明日の事に付いて話し合う。


 「義房殿はいかがされるおつもりか?」


 市兵衛が問う。

 

 「ふん。奴らの企み……上手くは行く筈がないわ。元々、儂には殿に背くつもりはない。じゃが、古参の者どもが不満を抱えよるのも事実。その事を殿にご理解いただきたいだけじゃ。」


 その言葉を聞いて市兵衛はほっとした。市兵衛は三百石扶持の小身ながら義康に忠誠を誓っていた。それに正木頼忠が嫌いであった。


 「それでいかがされるので?殿にご報告せねばなりませぬ。」


 「まあ、待て。儂が動けば目立つ。この際じゃ、膿を出す良い機会じゃろう。」


 (ここは一旦、頼俊の仲間に加わっておくのがよいだろうな。じゃが儂まで粛清されてはかなわん。)


 「市兵衛。今、殿へ書状をしたためる故、それを持って殿の所へ行くのじゃ。」


 市兵衛は明朝早くに義康の元へ行く。談合は夜からであるので間に合う。

市兵衛が義康の元へ向かっている間、義房は思案にふける。


 (後盾……。徳川じゃろう。調略となれば、本多正信か。まず間違いあるまい。本領安堵が餌か? いや、それでは弱いか。徳川には里見家は目障りこの上ない。さりとて里見家征伐に大軍を差し向ければ、江戸が薄くなる。我らの力から見てもすぐには勝敗は決まらぬ。

 そこで徳川の兵を裂くことなく里見の力を弱くするために、里見を割ろうと言うのじゃな。

 徳川領の抑えとして頼俊達を使う腹積もりか。)


 義房の読みは、ほぼ当たっていた。義房は考えを纏め、対抗策を考えていた。

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