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多良崎城の戦い(四)

 水野重好は千兵を間断なく城門に向けさせた。重好にとっては早く攻めなければ戦況が不利になると思っている。掛け矢や丸太を用い城門を破壊すべく兵達が押し寄せてゆく。


 「者ども! 慌てるな! 手はず通り弓を放て! 」


 三の郭を守る曽谷時頼は声を上げ、短く命じる。

 命じられた兵達は次々と変わった矢を攻め手に放つ。その矢は先端が太く布が巻きつけられ火が付けられている。不細工な火矢だ。


 「おっ!? 何か飛んでくるぞ! 」火矢のようだが? 」


 矢じりの出ていない矢が飛んできても恐ろしい事はない。例え火が付いているとはいえ、そうそう簡単に鎧を付けている兵に延焼はしない。


 「ふんっ! やはり千葉重胤なぞは戦を知らぬ。恐れることはないわ」


 重好は飛んでくる火矢を眺め呟いた。



 と、その時である。


 『ばんっ!!!』


 鉄砲のような、何かが破裂するような音がこだました。それからその音は間断なく聞こえるようになった。


 「ぐお~!やられたっ! あ、足が、足が・・・」


 寄せていた重好の兵達は所々で負傷していた。


 「な、何事じゃ!? 」



 この不細工な弓は、先端に竹筒が付いており、その中には里見家では豊富な火薬が詰められていた。いわば手投げ弾のような物である。しかも中には小石を混ぜておるので、竹筒がはじめる時に小石が飛び散り兵の体を傷つけていた。


 瞬く間に火薬弓によって重好軍の数十名が命を散らし、あまたの兵が傷を負った。


 「す、すごいものですなぁ。この戦、負ける気がしなくなりました。」


 時頼に弓隊小頭が、興奮を抑えきれずに言う。


 「いや、落ち着いて見れば、そうでもないわ。火薬矢とて無尽蔵にある訳ではないからな。」


 たしかに時頼の言う通りで大急ぎで火薬矢をこしらえたのである。時頼は二百兵に一人あたり三つの火薬矢を作らせた。合わせて六百、残りは半数の三百ほどしかない。だが、見た事もない矢により、攻め手は動揺し足が止まった。時が稼げれば戦の行方は良い方に向かう。


 重好は一旦、兵を引かせてた。重好自身もそうであるが、未知の武器にやられると動揺が激しい。己の想像外の事に頭が反応できないのだった。


 「落ちつけっ! 敵は我らの半数にも満たぬ! 」


 重好は自らを落ち着かせるためにも声を張り上げた。その効果がでて、ざわついていた兵達も落ち着いてきたようだった。


 (さて、検分させたところ、こちらの被害は七十程で思うたよりやられておらぬな。時がないとなると、ここはやはり正攻法で攻める。)


 重好は改めて力押しで突破するしかないと決めた。


 「よしっ! 者どもっ! 丸太隊、掛け矢隊は激しく門を攻めよ。敵のおかしな矢は放っておけ。めったに死なぬわっ! 弓隊は丸太隊を援護せよっ!」


 多良崎城への攻撃が再開された。その攻撃は激しいものであった。



 掛け矢がかかり、丸太による城門への攻撃で、今まさに門が打ち破られようとしている時だった。重好の背後から雄叫びが聞こえた。

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