ちゅうぶらり
俺は今、飛行船の中にいる。なぜかと言うと、SNSに溢れている『〇〇抽選キャンペーン!!フォロー&いいねした方の中から抽選〇名様で〇〇をプレゼント!!』みたいなやつ。
当たった試しがないやつだ。この間『世界旅行プレゼント!!』というものを見つけ、試しに応募してみたところ、まさかの当たってしまった。だが、喜ぶべきことだけではない。抽選7名のキャンペーンだったのだが、もちろんのことSNSで募集したので知らない人ばかり。職業柄、一人でいることが多いので、あまり人との会話に慣れていなく『コミュ障』みたいな印象になってしまったぽく、少し凹んでいる。
しかし、世界旅行なんて普通は船で行くものだと思っていたが、まさかの飛行船。これにはびっくりしている。しかし速度は走った方が早いのではと思うほどにゆっくりであった。
この飛行船はたくさんの部屋があり、キッチンやジム、菜園室なんかもある。快適極まりない飛行船だ。
「しののん!あっち見にいかね?」
こいつはさっき知り合った五十嵐 達人。俺の苗字が東雲だからしののんとマスコットみたいに呼んでいる。俺は男なのだが…
こいつがしののんとか呼んでしまったせいでみんなからしののんなんて呼ばれてる。どうしてくれんだほんと。
「あ、東雲さん。五十嵐さん。」
この子は暗田 隠子。唯一、俺を東雲と呼んでくれる良い人だ。偏見だが、中高校は図書委員だと思う。
ラウンジで三人で会話していた時に悲劇が起こる。
(……まずい、限界だ…)
ここからトイレまで走って2,3分。間に合うかどうか瀬戸際。なかなか言い出す隙がなく、気づけばこんなギリギリになっていた。
「…トイレ、行って良い?」
二人の承諾が降りた後、走ってトイレへ向かった。向かってる最中は冗談抜きでウサイン・ボノレトより早かったと思う。
トイレから戻り、二人と合流した途端、悲鳴。
声的に、一軍ギャルみたいな見た目してる大野 心愛だと思う。
急いで三人で向かう。
…違和感。少し中に着ていたTシャツが濡れている気がする。それより先にあそこへ向かうことだ。Tシャツなんか後で洗えば良い。
三人が着いた頃にはもう全員が集合していた。
…一人は死体になっているが……
犠牲者は多田野 萌歩子。左胸、腹、と二箇所にナイフか何かで刺された跡があり、手には包丁が握られている。
飛行船は無人運転。管理者のみ進行路を変えることができるが、管理者はここにはいなく、着陸国で待機しているとのこと。
身内が何かと亡くなったりすることが多かったし、職業上、死に直面することは慣れているが、ここまでの極限状態は初めてだ…
だが安心して欲しい。喜んではいけないのだが、俺が活躍する時がきた。そう、俺は今世紀最高(自称)の探偵なのだ!
死体がまだ温かい。…いや確認する前からなぜかそうだろうと思っていた。そんなことより、今はこれに集中だ。手に包丁が握られているが、二箇所も刺されているので、自殺は考えにくい。となると、息があるうちに反撃をしたか。となると最初は腹を刺したが、反撃されトドメをさしに左胸を刺したと考える方が自然か…
容疑者は5人。五十嵐、暗田、大野、加藤、相澤。
皆面識がないため、ただの快楽の為に行った犯行であり単独犯と考えるのが妥当。すると、五十嵐と暗田は二人でいたため弾いていいと考えると3人。
仕事の道具なんて持ってきているわけがないし、飛行船にそんな道具があるわけもない。今犯人を絞り込むのは少し厳しいか…
ひとまず遺体の安置所となる部屋を作り、各自解散。
一応、キッチンなどから全て包丁は取り、隠しておいた。多田野さんが握っていたものもだ。
言うまでもないが、防犯意識を高めるようにと注意した。
Tシャツを洗おうとシャワー室へ向かう。
血がついている。何か悪い予感がしてすぐに洗濯し、シャワーを浴びる。その瞬間激痛が走った。
背中がものすごく沁みる。
だが、こんな傷あったか?違和感を覚えた。
痛すぎてボディソープなんか使えないのでサッと体を流し、応急処置を施し、部屋へ戻った。
当然、眠れるわけもなく、ただベッドで仰向けになって今日のことを考えているだけだった。
だが、考えても何も進展はない。
防犯カメラでもあればいいのだが、そんな事件を解決できるようなものは一切ない。
朝日が昇った。夜のうちの犠牲者はなし。
今日は誰ひとりとして眠れた者はいなかったようだ。
快楽犯とはいえ、きちんと脳みそはある。緊張感から眠れない初夜は部屋に侵入することも難しいし、隣の部屋の者などから気づかれることもあるだろう。俺が犯人だったら絶対初夜に犯行を行わない。
犯人を考える時は犯人の立場になることが大切だ。確か某殺人ノートの漫画でも言っていた。だが、この考え方は今回の場合難しい。ここの乗客は誰とも面識がなく、皆の性格なんて分からない。五十嵐の性格は少し分かってきているが、今回は犯人から除外している白なので、今までこいつと関わって得た情報は役に立たない。
色々考えているうちに一日が終わった。
今日はみんなで同じ場所にいただけだ。あと何日で到着かも分からない。とりあえず今日は寝よう。
今日は二人で行動することになった。五十嵐・東雲ペア、暗田・加藤ペア、大野・相澤ペア。
基本はこの3チームで動き、用を足す時も決してお互いに離れない。二人で行動しているところは襲いづらいし、ペアのうち片方が死んだら生きているもう片っぽが犯人ということになる。この状況下で一番合理的な判断をとったと思う。
五十嵐と一緒に歩いている途中、こんなことがあったからか身近で亡くなった人の話になった。五十嵐は幼い頃に姉を高校に入ったくらいで父を亡くしているらしい。母は高校の学費も大学の学費援助も全て一人でやってくれて感謝しかない。だからこれからたくさん恩返ししてやるんだ。といい話だよほんと。俺はと言うと身内があまりにも亡くなりすぎている。両親、兄、妹、おじ、祖父母…なんなら仲の良かったクラスメイトや担任の教師、サークル仲間だって亡くなってしまっていた。しかも恐ろしいことに、祖父母以外は全員殺人によって命を落としている。祖父母は老衰により穏やかに亡くなっていった。そんなたくさんの人の死に関わっている訳だから当然、警察に疑われた。良く考えればこの仕事を始めたのも犯罪者を早く見つけ出し、それ以上の被害を抑えたいと思ったからだろう。だが探偵なんて職業は最初から稼げるはずもなく、始めたての頃はバイトをしながら食いつないでした。そこから仕事の回数を重ねる度に名は売れていき、今こそ贅沢はできないが、普通の生活ができる程度までは収入が入っている。ここまで軌道が乗ったのも奇跡のようなものだろう。そんなことを話しているうちに夕方になり、皆でラウンジへ集まった。またしても新たな犠牲者は出なかった。犯人は一度身を潜めて、大きな隙ができるまで待っているのかもしれない。殺人が起きた以上、呑気に平和ボケしちゃいられない。どんな時でも気を確かに身を引き締めて警戒しないければならない。そんな中のため、皆は精神が疲弊しているようだった。自分もなかなかやられている。
集まって話している途中、寝る時も一つの部屋を二人で使ったほうが安全なのではないか。という指摘が出てきた。確かにそうかもしれないが、こんな状況でも流石にプライバシーは守りたい。という反対意見が出たため、この話はお蔵入りになった。
今日もなかなか寝付けない。午前に五十嵐と話していて身近にいる人間が何人亡くなっているか数えてみた。今までは考えるだけで悲しくてできなかったが、今は精神が少し荒れているため、羊を数えるようなノリでスラッと数えることができた。
数はだいたい20ほど家族6人、クラスメイト5人、教師3人、サークル仲間3人、行きつけの店の仲の良い店長さんと店員さん。
殺人だけに絞り込むと祖父母はカウントしないので家族は4人になる。
あ、多田野さんを入れてちょうど20人だ。
そんなことを考えているうちに自然と眠りについた。
朝日が顔を出したと同時に大声。
どうやら加藤さんの部屋から応答がないらしい。
すぐに駆けつけたが、なにか臭うような気がする。いや、そんなことはどうでもいい。無理やりドアを開ける。案の定加藤さんは亡くなっていた。恐らくまた殺人。包丁を首で一刺しだ。
………包丁…?
ハッと思い出し、走って包丁の隠し場所へと向かった。
…三本ない。なぜ三本なのか二本ないのなら予備で取っといたのでは?というだけで説明がつく。だがなぜ三本か…もしかして二人組の犯行なのか?そんな考えがたくさん頭をよぎる。予備の予備?そんな几帳面なものが犯人なら一人目の犠牲者も寝ているうちなどに仕掛けるのでは?だが確かに犯人が二人いるのたなら毎日一人が行動しておけば犯行に気づかれたとしても二人目がまた犯行を行える。だが殺すのが目的なら二人一気にやった方が早いはず。それにもし考え通り快楽犯なのだとしたら一人だけ行動していたら不満が募るはずだし、交代で犯行に及んだとしても、日にちを開けて犯行が起こるってのは少しおかしいか…?
でも何か『気づいているのに気づいていないフリをしているモノ』があるような気がして仕方がない。この違和感はなにか?だが今はそんなことを呑気に考えている暇はない。まだ遺体の確認をしていなかった。
急いで遺体の元まで戻り、確認を始める。遺体は冷たく、反抗した跡もない。恐らく寝ている間に殺されたのであろう。物が散乱していないため隣の部屋の相澤さんも音で気が付かなかったのも無理はない。それに、天井についているダクトの蓋が開いていて、そこから侵入したのだろう。ダクトもかなり大きく、頑張って丸まれば成人男性も入れるだろう。それと最初に感じた匂いもダクトからのものだろう。
とりあえず遺体は安置所に置いた。
その後、皆に包丁の件をあえて話した。情報を出し、犯人にお前に近づいていると思わせることによりなにかミスが起こるかもしれない。そんな淡い期待に縋るしかなく、今日も終わりを迎えた。
また日が昇る。今日は平和に朝を迎えられた。今までのを見るにこれはとっても喜ばしいことだ。
相澤さんは俺らのところに入り、3人と2人のチームに別れることになった。
五十嵐、相澤さんと合流した途端気づくスマホを部屋に忘れてしまった。どうやら五十嵐はだいぶ俺のことを信用しているらしく、相澤さんを説得して二人で用を足しに行った。あとでラウンジで集合との事。
無事にスマホが見つかり、三人で談笑しているうちに気づいたら寝てしまっていた。
寝ていたことに気づいて起きた頃には日が一日ズレていた。それよりも女性陣の姿が見当たらない。まさかと思い、飛行船中を探し回った結果、二人ともトイレ内で刺殺されていた。今回も同じ包丁。恐らく外で待っている一人を殺害した後トイレの個室を無理やりよじ登り殺害したと思われる。スマホを取りに行っていたことから真っ先に俺の名が上がったが、スマホを取りに行く程度の時間だと二人を殺害するのは無理があるし、実際には相澤さんと五十嵐と合流が同時だったので、どの道そんな時間はないはず。そんなことを口論しているうちにまた『気づいているのに気づいていないフリをしているモノ』の感覚が頭を巡る。ずっとこの違和感の正体が分からずにいた。
とりあえず着陸まであと四、五日だろうと三人で寝ないまま夜を過ごした。そんなことを三日続けているうちに寝てしまっていた。立ったまま。いや寝ていたのではなく、意識がなかったのか?なにか手に感触があり、意識が戻る。目を開けたその時には相澤さん、五十嵐の二人が死体になって俺の目の前に転がっていた。なぜだか分からなくとても動揺していた。手には包丁。腹には返り血。全てが幻想のように思えた。怖かった。自分が怖かった。思い出した。『気づいているのに気づいていないフリをしているモノ』その正体は、自分が犯人なのでは?という考えだ。殺害初日の背中の傷。あれは前の傷が開いたのではなく、反撃で受けた傷だ。加藤さんが亡くなった日の匂い。あれはダクトからのものではない。ダクトを通ってきた自分の匂いだ。それに良く考えてみれば犯行が起こったのは自分が一人でいたり、自分の意識がなかったときだ。『気づいた』と認めてしまった途端、全ての辻褄が合い、自分が犯人なのだという確証を得た。恐らく隔離性の人格障害…いや今は病名なんてどうでもいい。俺はそのままラウンジの真ん中で立ち尽くしていた。
そして、三本の包丁だが、一本は相澤さんの左胸に、もう一本は五十嵐の喉に刺さっている。最後の一本は俺が今から使う。首に包丁をかざす。
さようなら、世界。
さようなら、もうひとりの俺。
皆さん初めましてです。城山です。
なんかパッと思いついてしまったので書いちゃいました。
この先暇があれば書きますが、投稿頻度はめちゃ遅だと思います。まぁ気が向いたらやるってことです。ただの趣味なので。
ファンとかできたら励みになるからさ、みんなファンになってな。
あと名前の白ってシロの方がいいよなってあとからなりました。まぁでもいいかって感じですね。直すのめんどくさいので。
それではまたどこかで会いましょう。




