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側近Bと吸血城3

オニキスがあたしの腕を掴んで引き留める。


 そんな筈は無いんだけど、と思いながら部屋を見ると、確かに装備をした人間が4人ほど、部屋の中を注意深く見回している所だった。

 どうやって来たんだろう。全く気づかなかった。


「あれは魔導大国の勇者達ですね・・・。魔物への隠蔽が高い装備を作ったとは聞いていましたが、凄い完成度です」


 部屋の中には壁中、天井に渡って沢山の高そうな絵が飾ってある。そして、中央のテーブルには何もはめられていない額縁が5つ。

ダンジョンにありがちな『謎解き』だ。

 勇者達は額縁と絵を見比べながらあれこれと話し合っている。


一人が、額縁の大きさでサイズの合わない絵は除外できる言えば、他の一人が額縁を調べてサイズ調節が出来ると応える。

5枚だから、季節に関係する、行事に関係する、神のモチーフが描かれた絵が丁度ある。という意見も次々出るが、結局魔族と人間では慣習も違うだろうということになり、全て却下になった。

なるほど、人間はそういう風に考えるのか。


ああでもないこうでもない、と言いながら彼らは壁から絵を外そうとする。

あ、まずい!

あたしは慌ててオニキスを抱き寄せて通路の天井にへばり付く。


途端、外れた絵から黒い靄が湧き出てきて、勇者達を絡め取り、床に突如空いた穴に『ぺっ』と放り込んだ。

勇者達の野太い悲鳴が辺りに響いたけれど、すぐに穴が消えたので聞こえなくなった。


良かった…。雨の絵だったから『水』かと思ったけど、『黒い腕』だった。


役目を終えた絵は床に放り出されたままだ。このままだと吸血鬼が直しに来るので、あたしはオニキスを離して部屋に入って、元の位置に直した。

たったこれだけで、部屋の中はもう元通りだ。勇者がいた形跡なんてどこにもない。


「うーん….」


これも吸血鬼の美意識らしい。ここは凄いと思うよ。


 隣を見ると、オニキスは唖然としていた。

 ふむ、とあたしは考える。人間は種族としての仲間意識が魔族より高いと聞いてる。あたしは、例えば吸血鬼が罠にかかっても全然気にしないけれど、オニキスは気にするかもしれない。


「・・・助けに行く?」


 出来れば行きたくない。全ての罠は生死に関わらず地下の同じ場所に通じていて、そこは混沌としていてどうなっているのか想像も出来ない。

 まあ、あたしは高位の魔物だから全然大丈夫だけど、臭いし、気持ち悪いし、面倒だから行きたくないんだ。でもオニキスが気になるなら・・・。

 それでも嫌だなあ、と思っていると、オニキスは不思議そうに首を傾げた。


「彼らをですか?」

「え、うん。人間だし、気になるでしょ?」

「いえ、あの国の勇者は転移が得意なので、心配いりません」

「そっか、なら良っか!」

 言われて探ってみたら、確かに地下には何も落ちていなかった。

 勇者って凄いんだなぁ。そういえば石になった勇者も凄かったなぁ、と考えて、思い出したくなかったので忘れることにした。


「じゃあ、次に進もうか」


 あたしは壁の絵を良く見て手に取り、一つずつ額縁に填めていく。

全て納めるとガタンと音がして、壁の一部が外れて次の部屋への通路が出来た。


「すごい・・・。どうやって見分けたんですか?」

「え? この絵の裏に順番が書いてあるんだよ、ほらここ、隅の小さいところ」

「え? ・・・あ、本当」

「ここの絵は、はめ方間違えると色んな罠が発動するの。その中に水攻めもあるから、通風口すら塞がれて、先に進むには一旦出てこないと行けないんだよね。

でもそんなに完璧に作ってるのに、管理は下位の吸血鬼とかに任せてるから、自滅してガンガン罠にはまって掃除が大変なことになってね。間違えないように模様に紛れて数字入れたんだよ」

「そ・・・そうなんですか」


 そんな裏事情知りたくなかった・・・と小さなつぶやきが聞こえた気がしたけれど、知らないなあ。どこも取り繕ってる表面以外はだいたいどーしょもないもんだよ。


 それからまたあたし達は通風口に戻って歩き出した。

 絨毯も敷かれていない床は本来なら足音が響くのだけれど、あたしもオニキスも足音を消して歩いた。

 ただ静かに目的地へと歩くのは思っていたダンジョン攻略と少し違うけれど、これはこれで良いかもしれない。



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