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側近Bと凍菓子9

「ああ、この惨状? それがねぇ、どうもこの子達、悪質な状態異常に掛かっちゃったみたいなのよ。『反転』という罠で、掛かった人間が自信家なら自信家なほど絶望するみたい。

という訳で、ウチで一番自信家なえっちゃんと、何があっても揺るがないマイペースな兄さんが見事やられちゃったのよー」


と、この大事にしか見えない部屋の状況を、アルビアはのんびりと語った。


困ったわぁ、と付け足すけれど、あたしにはそんなに困っているようには見えない。

考えていることが顔に出ていたのか、アルビアはすぐに訂正する。

「まあ、本当はそこまで困ってないの」

そしてベッドの中の黒髪の少女の髪を、さらさらと撫でた。とても優しい顔をしている。


「この子はね、きーくんの双子の姉で、サフィアっていうのよ。良ければさっちゃんて呼んであげてね。

さっちゃんはね、魔族すら越えるくらいの魔力を持っているの。それで魔導師として勇者様のお供をしているのよ。

今は、無理矢理に緊急帰還の魔法陣を紡いだせいで、魔力が枯渇して眠りに落ちているのよ」


確かに、顔色が紙のように白い。

魔力をそっと感知してみるけど、ほんの少し、ビンの底に残る水滴のようにしか魔力な感じられなかった。さっきまでのあたしもこんな感じだったのだろう。

そしてあまりにも大きな空白に身震いする。

この魔力量、あたしなんか簡単に越えてる。ユーディットレベルだ。

ということは、あたしが戦ったら負ける。

聖女と言い、この魔術師といい、勇者一行って怖すぎるよ。


「さっちゃんさえ目覚めれば2人の状態異常も治して貰えるんだけどね。この様子だと自然に目覚めるのは時間が掛かりそうなの。だからきーくんに魔力回復薬を作ってもらおうとしたのだけど、材料が足りないのよね」


と言うので、オニキスを見る。

オニキスは難しい顔をしてベッドの中のサフィアを見ていた。

「普通の魔力薬ならあるんです。でもサフィアほどの魔力保持量になると、意識を取り戻すまでにどれだけかかるか…。それに、一度枯渇寸前まで無くしてしまうと、一気に回復しないと魔力が抜けてしまうそうなんです。

高位の魔力回復薬なので、『竜枝』『呱々草』『不死者の爪』『妖精粉』が必要で、今手元には、『竜枝』しか…ありません」

と、暗い顔で俯く。


『竜枝』というのは下位ドラゴン(喋れないやつ)の小さな指の先(切り落としてもまた生える)で、

『呱々草』はあたしが魔王様に良くお茶としてお出しする呱々麦茶の元の草。魔王城の裏の森に生えてる。

『不死者の爪』はそのまま、吸血鬼の剥いだ生爪。

『妖精粉』もそのまま。妖精が漂っているとどこからともなく湧いてくるふわふわした光る粉。甘いので、あたしは良くお菓子に混ぜて使っている。


竜一族の火山、吸血一族の死者の谷、魔王城の前の迷いの森を全部踏破しないと作れない薬らしい。

面倒だなと思うけれど、人間であるオニキスにとっては、その程度で済む難しさじゃ無いんだろう。


「『呱々草』と『妖精粉』ならあるよ」

と言いながら、あたしは魔王様のお茶用の『呱々茶』の元と、砂糖代わりの『妖精粉』を取り出す。

どちらも魔王様専用に選び抜いた最高のものだけれど、仕方ない。


「これで足りそう?」

首を傾げつつオニキスに手渡すと、驚きながら受け取ってくれた。


「こんなに良質なもの…! 良いんですか?!」

「分かるの?」

「もちろんです!これだけ高品質なら…サフィアを回復してもまだ残るかもしれません」

キラキラと目を輝かせるオニキス。

あたしはいつも一生懸命良いものを作っているけれど、実は、魔王城のみんなはそこまで気付いてくれない。

気付いてもらえるのがこんなに嬉しいなんて思わなかった!(あ、魔王様は別だよ!)

「じゃあ良かった。使ってよ」

「でも…」

と、オニキスは渋る。

その態度がまた、あたしの素材を認めてくれてるみたいで気分が良い。


「きーくん。必要なものを遠慮するのは良くないわ。こういう時は、いただいた分お礼をお返しすればいいのよ」


と、アルビアが説得して、オニキスはしぶしぶ頷いた。

「ありがとうございます。このお礼は、必ずします」

と、綺麗に頭を下げた。

この律儀さ、慣れないからなんだから背中がむずむずするね。


「それじゃあ、あとは『爪』だけねー」

アルビアが、揃った材料を並べてのんびりと言う。


『死者の爪』は、吸血一族の生爪をいう。淫魔の爪は折れると命に関わるけれど、吸血鬼は大丈夫らしい。しゃくにさわるけど、淫魔より高位だから。


あたしは数秒考えた。

そしてちらりと勇者を見た。

…まさか、まだ石だったなんて、と思うと、やっぱり少しだけ悪いことをした気がしてきてしまう。

これを手伝って、魔術師を復活させたら無かったことにならないだろうか。

んー。ならなさそうだけど、まあ、オニキス困ってるし、いっか。


「じゃあ、取りに行こう。『死者の谷』はあたし詳しいんだ」

ぽん、と手を打って笑うと、オニキスは勿論、アルビアまで初めて驚いた顔をした。



お久しぶりです((((;゜Д゜)))))))

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