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側近Bと凍菓子5

部屋を出たあたしは、驚いてまばたきをした。


まず右。

延々と、赤い絨毯の廊下が続いている。先の方がぐるりとカーブしているのは、建物が丸いから?

次に左。

こちらも全く同じように、赤い絨毯。

そして正面。

これがすごい。巨大な吹き抜けになってる。


ふらふら吸い寄せられるように近寄ると、金の手すりに寄りかかって見入る。


高い天井は透明な硝子がはめられていて、きらきらと幾つもの光の帯が降り注いでいる。

そして梁から、様々な長さのシャンデリアが下がって、揺れるたびに反射する。


それらに照らされて一番下にあるのは、中庭だった。

大きな池と、川と、橋。ちらちらと赤い魚が泳いでいるのが見える。

その隙間を埋めるように色とりどりの花が咲き誇り、緑の芝生が生えた小島が、青々と水気を湛えて光っている。


人間って、こんなの建てられるの?

こんなにすごい建物、ドワーフの皆にも見せてあげたい。





○○○○○○○○○○○




ぽん。

と肩を叩かれて驚いて振り返るとオニキスが立っていた。

「どうしたんですか? 声をかけたのに、全然聞こえて無いみたいでしたよ」

心配そうに眉根を寄せている。

あれ、いつのまに背後に。


あたしは少し驚きながらも、この興奮を伝えたいとオニキスに詰め寄った。

「すごいね、ここ!」

それなのに、オニキスはきょとんと何でもないことのように言う。

「ああ、はい。初めて来た人は大体驚きます」

「そりゃ驚くよ! すごい高いけど、何階立てなの?」

「7階です。ここは5階ですよ」

「そんなに? この広さで? すごいよ。中庭もあるし」

「あの中庭は、何百年か前の王が人魚を妃にしたからと言われていますよ。この王城自体、その王がいつでも妃に会いたいからと財の限りをつくして建てさせたのだとか」


あれ、おかしいなあ。それどこかで聞いたことある気がするんですがメルト様。


「本当かは分かりません。ただこの通り大変な手をかけて作られているので壊すことも無い、と歴代使い続けているんです」

「そうなの」

200年経ってもこの状態なら、そうとうしっかり作ったに違いない。

メルト様…。


「よろしければ後で案内しましょう。ひとまず、こちらへどうぞ」

そう言ってオニキスが開いた扉は、あたしが出て来たオニキスの部屋の2つ隣のものだった。





○○○○○○○○○○○





「おお…!」

入ってすぐ、目に入ってきたのは、色とりどりの服、服、服。

毎日着たって一巡するのに一年じゃ足りない気がするくらい、とにかく服が詰まっている。

「すごい量! 人間って同じ服着ちゃいけないの?」

「いえ、これはすべてエメロード姉さんの服なのですが、ドレスを集めるのが好きなんです。

エメロード姉さんはダンジョンを幾つも踏破していて、その報酬で作るのですが、着たい服が多すぎて大体一度しか袖を通しません。ここにあるのは全て、もう着ないと思われるものですね」

「えっ!? それじゃあこれ、どうするの?」

「臣下に下げ渡したり、協会や孤児院に寄付しています」

「無駄にはならないんだ」

「当然です。エメロード姉さんは優しい方ですから」

本当に家族が好きなのだろう。とても良い顔でにこにこ笑う。

「これだけあれば気に入るものもあるんじゃないかと思いまして…好きなものを選んで下さい」

と言われて、なんであたしがここに連れてこられたのかやっと分かった。

「ええっ!? あたしが、これを着るの?」

「駄目でしょうか? 一度誰かが着たものだとやはり…」

「いやいやそれは別に良いけど。そうじゃなくて」


あたしは目の前にあった緑の服を広げてみる。

胸元がばーんと開いて、袖と裾がひらひらしていて、何かの宝石が縫い込まれていてきらきらしている。


「こんな動きづらそうなのはちょっと」

「そうですか? …これとか、似合うと思いますけど」


オニキスが出してきたのは淡い桃色のドレス。

胸や肩の部分がツルツルした布で出来ていて、胸の下からふわりと柔らかい生地が重ねられている。

「…似合わないでしょう」

「それなら、これとか、これ」

そして水色、若草色も出てくる。

全てあまり肌は出なくて、代わりにふわふわひらひら、もしくはキラキラした感じ


「無理」

「そうですか…」


がっくりとオニキスが落ち込んでいるけれど、あたしの服くらいでなんでそんなに真剣になるんだろ。

魔王様が喜んでくれる訳でもないし、あたしの服なんて何だって良いのに。

「何だっていいよ、動きやすければ」


「動きやすいというと…侍女服でしょうか。確か姉さんのお忍び用の服が…ああ、ありました。

これはどうですか?」

オニキスが広げて見せてくれたのは、黒い服だ。


飾りは何もついていない。袖は腕にぴったりと合う。

裾は膝くらいで長いけど、蹴り技を使わなければ邪魔にもならない。

「うん、それにする」


どうぞ、と差し出されたので受け取って、上からすっぽりと被って着る。

上着とスカートがくっついた服はワンピースというらしい。

「あ…あれ?」

この服着にくい。途中で頭が引っかかって、上手く着れない。


「オニキス、何これー」

「ちょっと待って下さい、動かないで」

ジジ…と音がしたと思ったら、ようやく頭が抜け出てほっとした。

「これ着にくいよ」

「待って! まだ後ろ止めてない!」

振り却ってオニキスに文句を言おうとしたら、肩を抑えられて止められてしまった。

また、ジジ、という音がして服がきつくなった。


「胸が苦しいんだけど」

「それはその…家で一番、サイズが近いのがエメロード姉さんだと思うので、それ以上は…」



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