表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第8話:魔王との遭遇


険しい山道を越え、森を抜けた先に、ついに魔王城が姿を現した。


黒い石造りの城壁は異様な存在感を放ち、空はどんよりと暗く、冷たい風が吹き荒れていた。


「ここが…魔王城か…」正一は思わず息を呑む。


アルトは剣を握りしめ、気合を入れる。


「正一さん、行きましょう!僕たちで魔王を倒すんです!」


「まあ…やるしかないな」正一も覚悟を決め、仲間たちと共に城門へ歩を進めた。


その時、城門がゆっくりと開き、漆黒の甲冑に身を包んだ魔王が現れた。


「フフフ…ついに来たか。面白い奴らだ」


魔王は冷たい笑みを浮かべ、巨大な剣を肩に担いで立つ。


^^

朝日が森を照らす。

最底辺パーティは、今日も依頼に向かって歩いていた。


「……今日も全員生きて帰れるか?」


女剣士が笑う。

「生きるための判断なら、心配いらないわ」


盾役も魔術師も、頷く。

そして、俺も静かに息を吐いた。


―――――


今回の依頼は、これまでで最も危険だった。

中規模の魔物討伐。

複雑な地形と、狡猾な敵。

上位パーティでも数人の犠牲は避けられないと予想される。


「……でも、俺たちは違う」


俺の心の中で、静かに決意が生まれる。


勝つためではない。

称えられるためでもない。

生きて帰るために動く。


―――――


森の奥、魔物たちは待ち構えていた。

数は多く、威圧感がある。


女剣士が前に出る。

盾役が防御。

魔術師が魔法で援護。


俺は、全体を見渡す。

危険を察知し、退路を確保する。

倒れた仲間を助け、道を作る。

戦わず、前に出ず、ただ生き延びるために動く。


「撤退!」


合図一つで、パーティは動く。

敵に追われず、混乱せず、無事に出口へ。


―――――


森を抜け、依頼を終えた時、四人は息を切らしながらも笑っていた。


「……やっぱり、あんたはすごいな」

女剣士が言う。


「何がですか?」

俺は照れくさく答える。


「全員を生かす判断を、迷わずできること」


その言葉に、胸が熱くなる。


「……まだ名前には及ばないけど」

そう言って、剣を鞘に戻す。


―――――


ギルドに戻ると、報告書はこう記されていた。


「討伐成功。死亡者ゼロ。被害最小」


かつては皮肉でしかなかった二つ名が、

少しずつ現実の評価に追いつき始めている。


受付嬢が微笑む。


「本当に、生存率だけは英雄級ね」


俺は静かに頷いた。

自分自身に、少しだけ自信が湧く。


―――――


夜、焚き火を囲むパーティ。


「結局、俺たちは何者なんだろうな」

盾役が呟く。


女剣士が答える。


「すごい最底辺冒険者」


皆が笑う。


「派手じゃない。勝たない。

 でも、生きて帰る」


その言葉が、この冒険者たちの強さを表していた。


勝てなくても、英雄級の価値はある。

最弱でも、生き残るだけで、十分すごい。


俺たちは今日も、

笑いながら森を後にする。


“生存率だけは英雄級”

最底辺だけど、世界にとっては、確かに英雄だった。


ーー戦闘開始。


アルトは勇者らしく剣を振るが、魔王の圧倒的な力の前に押される。


「うわっ…強すぎる!」


正一は、いつものように体が自然に動く。


・ 落ちていた岩を盾代わりに使う

・ 森の枝を武器に変え、魔王の攻撃をかわす

・ 偶然のタイミングで魔王の足元を崩す


「ちょ…俺、また勝っちゃうのか?」


正一は自分でも信じられない動きで、魔王を圧倒する。


魔王は怒りの咆哮を上げる。


「なんだと…!おっさんが、俺を!?まさか…!」


アルトは後ろで驚愕しながらも、正一の無双ぶりに圧倒される。


「お、おっさん…最強すぎます…」


戦いの末、魔王は地面に膝をつき、絶句した。


「…これは…面白い…いや、参った…」


正一は汗だくで立ち尽くす。


「偶然と経験の結果だ…俺は勇者じゃない」


それでも、異世界の人々にとって、彼の姿はまさに“伝説の勇者”だった。


その夜、仲間たちと焚き火を囲み、アルトがぽつりと言った。


「正一さん…やっぱり、あなたがいないとダメですね」


正一は微笑み、空を見上げる。


「そうか…俺の人生経験も、役に立つのか…」


こうして、魔王との初遭遇は終わり、正一の無自覚無双は異世界に深く刻まれた――


だが、魔王はまだ諦めていない。


「フフフ…次はもっと面白くしてやろう…」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ